サンタローズの教会にいるシスター可愛いよね。
切りどころがわからず今回はちょっと長めです。
では、本編どぞ。
「……皆さんはどちらから?」
しばらくアリアの寝顔を見ていた二人の元に、シスターリリィが掃除を終えやって来る。
「あ……、シスター……、僕は……」
「その昔、ここはとても美しい村でしたのよ。しかしある日、ラインハットの兵士たちが村を焼き払いに来て……」
アベルが口を開くとシスターリリィは話しだし、徐々に表情を硬くしていった。
「ラインハットの兵士が村を焼き払っただって?」
ヘンリーが驚きの声を上げる。
「酷い! 酷いわ! パパスさんのせいで王子さまが行方不明になっただなんて!」
シスターリリィは瞳に涙を溜め、取り乱すように首をニ、三度横に大きく振るった。
「は? お前の親父さんのせいでオレが行方不明だって……? す……、すまないアベルっ。こんなことになってるなんてオレ、思いもしなかった……」
「ヘンリー……」
アベルは驚き狼狽えるヘンリーの肩に手を置く。
「あらごめんなさい。あたしったら急に取り乱したりして……。見ず知らずの人にパパスさんの話をしても仕方なかったですわね……」
「いえ、シスターリリィ。僕、そのパパスさんのこと知っています。だって、彼は僕の父さんなんだから……」
シスターリリィが零れ落ちそうになる涙を拭い、取り乱したことを詫びるがアベルは彼女に笑顔を向けた。
「え? パパスさんを知ってる? あなたの父親ですって? そんなっ……!」
アベルの笑顔にシスターリリィの瞳に再び涙が溢れ出す。
「……シスターリリィ。僕、アベルです。パパスの息子アベル」
「でも確かにあの時の坊やの面影が……。アベル! アベルなの!?」
目を見開き瞬きも出来ない様子のシスターリリィにアベルは無言で頷く。
「こんなことって……。こんなことって……。ああ、神さま!」
シスターリリィの瞳から大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。
シスターリリィはそのまま長椅子に近付くと、自分を見上げるアベルを優しく抱きしめたのだった。
「アベルっ、アベルっ! よく生きて……!」
「…………はい。僕は……、その……。僕だけが……」
アベルの背を、シスターリリィが優しく撫でてくれている。
――シスターリリィは確か、父さんのことを慕ってくれていたんじゃなかったかなぁ……。
アベルは彼女に十年前の出来事を話そうと思うが、すべて話してもいいものかと躊躇う。
そんな時、ふと隣の席のアリアがアベルを見ていることに気が付いた。
「…………アベルさん……」
「ぁ……、アリア起きてたんだ」
「はい……」
アリアが不安そうな顔でアベルを見るので、アベルは大丈夫だよと目を僅かに細める。
アリアは悲し気な瞳で目礼を返してくれた。
「……アベル? 十年前、一体何があったというの?」
シスターリリィが十年前のことを訊ねて来る。
アリアが十年前のことをどの程度知っているのかはわからないが、自分の口から話すのも必要かと思い、渡りに船でアベルはシスターリリィに話すことにした。
「……あ、はい。十年前、父さんと僕はここから旅立って……」
アベルが話し出すとシスターリリィはアベルを解放し、隣に腰掛け うんうんと頷き始める。
アベルは十年前の出来事を、アリアのことだけ上手く伏せてすべて話したのだった。
「そうだったの……。そんなことがあってパパスさんはもう……。そしてパパスさんに代わってアベルがお母さまを捜し出すつもりなのね。ああ、どうかアベルに幸運を……、神さま!」
シスターリリィはアベルの手を両手で握って祈りを捧げる。
「…………パパスさん……、アベルさんのお父さま……」
アリアはアンドレを抱きしめながら小さく呟いた。
そして、それを何度か繰り返し呟いている。
「……アリア……?」
――まさか何か思い出したのか?
アベルが立ち上がろうとすると、
「アベル、そろそろ陽が暮れます。良かったら今晩は宿に泊まって行って」
山の斜面に昔道具屋だったところが今は宿屋になっているのです。とシスターリリィはアベル達に今夜サンタローズに泊まることを勧めた。
「はい、では今晩はそうします。みんな、それでいいかな?」
「ああ、いいぜ」
「あっ、はい!」
アベルの一声で、ヘンリーとアリアは快諾する。ピエールはよく寝てる。
アンドレもアリアに抱かれ満足そうに涎を垂らし眠っていた。
「アベル、フィーロ神父にも顔を見せて差し上げて?」
「フィーロ神父?(名前、イトメじゃなかったんだ!)じゃあ、せっかくだからお祈りもして来るね」
シスターリリィが祭壇で祈りを捧げるフィーロ神父へと視線を移動させると、アベルは促されるままにフィーロ神父の元へと向かった。
「……アベル、大きくなりましたね」
「はい、神父様はお変わりなく……目が細い……ですね」
目が開いているのかわからない程細い糸目は健在だなとアベルは思いつつ、壇上から優し気に自分を見下ろすフィーロ神父に笑い掛ける。
昔アリアが“糸目なのに目力が強い”と言っていたことを思い出し吹いてしまいそうになった。
「……ん? あははは…………、そうかな? 先程話を聞いていましたが、苦労したのですね……。君の行く先に幸多からんことを」
「……ありがとうございます」
フィーロ神父がアベルの旅の無事を祈り、目を細める。が、元々目が細すぎて表情は正直よくわからない。
「……では気を取り直して……。生きとし生けるものは、みな神の子。我が教会にどんなご用かな?」
「あ、お祈りしに来ました」
「では、神の前に これまでの行いを告白なさい。そして、この冒険の書に記録してもよろしいかな?」
――………………、この流れ懐かしいなぁ。
そう思いながらアベルは祈りを捧げ、【冒険の書】の記録をしてもらったのだった。
そうして、アベル達はシスターリリィに進められた宿屋を目指す。
◇
教会から出ると外はまだ明るいが、日は傾き始めていた。
アベル達一行は山の斜面にあるという宿屋に向かう。
「もうすぐ夕暮れかあ……この村、山の上だし夕日が綺麗に見えそうだな」
「そうだね……(見たことはないんだけど……)」
ヘンリーが日の沈むであろう方角を額に手を添え眺めると、アベルは同意した。
ヘンリーの緑の長い髪が風に揺らぐ。
「……いい風が吹くなぁ……(昔は綺麗な村だったんだろうな……。オレのせいで……、こんなことに……)」
ヘンリーは厭でも目に入る焼け落ちた民家を前に、何か考え込む様に黙り込んでしまった。
「…………、今日は風が強いですね。それともここはいつもこうなんですか?」
アベルとヘンリーの後ろを歩くアリアも同じように日の沈む方角を眺めて風に揺れるスカートを押さえて訊ねる。
と、そんなアリアの様子などお構いなしで、またしても悪戯な風は気ままに吹くもので。
「…………きゃっ!」
村に吹く風がアリアのスカートの中へと迷い込み、スカートを巻き上げた。
「っ……っっ!(アリアっ、ありがとうっ!!)」
アベルは目を大きく開いて その瞬間をしっかり見届ける。
――僕は、期待を裏切らない君のことが…………
と思っていたら、アリアがアベルを可愛く睨み付けている。
「っ、あんっ、もうっ! アベルさん、見ちゃダメですってば!」
「っ、ごめんっ」
ぷくっとアリアは頬を膨らまして、アベルの方へと走って来る。
「もうっ、えっち! アベルさんのも捲っちゃうんだからっ!」
「えっ? ……あっ、アリア、もしかして本気で怒ってる?」
アベルに追いつくと、アリアはアベルの服の裾に手を掛け引っ張ったが、布の形状からしてアリアのスカートのように捲れることは無かった。
「怒ってますっ! 私ばっかり、ずるいっ!」
ポカポカっとアリアはアベルの胸辺りを叩く。
アベルの胸に、アリアの拳が打ち付けられる小さく乾いた音が鳴るが、痛みは特に感じない。
「っ、ご、ごめん……っ、アリアが可愛くって……つい……」
アリア、叩いてるのに全然痛くないんだけど……?
打ち付ける度、振動が心地良い……!
――何……、これぇ……?
胸がきゅうっって、きゅううっって! 締め付けられるっ……!?
アベルの脳内に大量の幸せホルモン、オキシトシンが分泌されていく。
気付けばアベルの口はだらしなく開いて瞳も穏やかに微笑んでいたのだった。
「へ? な、何を……(今なんて……?)」
はたと、アリアは手を止めアベルを見上げる。
「あ……っ、いや、何でもない」
アベルが見下ろすとアリアと視線が絡み合い、二人の顔が急速に茹った。
「「ぁ……」」
二人は二の句が告げず、さりとて視線を逸らすことも出来ず黙り込んでしまう。
そんな中、
「…………オレ、先に宿に行ってるな……」
ヘンリーは居た堪れないような表情でアベルとアリアをちらりと見やると、宿屋へと独り行ってしまった。
何やら考え事をしているようで、その顔は暗かった。
「……ヘンリー?」
「ヘンリーさん……?」
アベルとアリアはヘンリーの様子に互いに首を傾げ、すぐさまヘンリーの後を追ったのだった。
ちな、後ろにはピエールも居て、アリアのパンチラを見て恥ずかしさにアンドレに掴まり蹲ってしまっていたと、さ。
キャッキャウフフv
誰かと触れ合うと分泌される幸せホルモン、オキシトシン。
ペットでもいいそうです。
互いに分泌されるんだって。
アベルさん幸せそうで私も嬉しい。
ヘンリー君が居た堪れない……www
あ、シスターリリィとフィーロ神父の名前はオリジナルです。
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