サンタローズの洞窟攻略行ってみます。
では、本編!
「アベル、心配なのはわかるけど……大丈夫だって。解毒出来るって言ってたんだ、きっと元気になるよ」
「うん……」
ヘンリーが何度も宿屋を気にして振り返るアベルに声を掛けると、アベルは後ろ髪を引かれるのか、心あらずで生返事をする。
「……重症だなあ……。そんなに心配ならさっさと行って早く戻って来ようぜ!」
「……うん、そうだね」
アベルの肩を組み、ヘンリーはアベルを激励したのだった。
「…………正直、ここに居るのは結構辛いんだ。……今のオレに何が出来るわけでもないし……、お前の手伝いをすればちょっとは気持ちが晴れるかもしれないな……」
教会の前まで肩を組み歩いて来ると、ヘンリーはアベルから腕を放し村を見渡して哀し気な瞳で呟く。
ヘンリーの瞳には燃え朽ちた家々が映り込み、村に吹く風が二人の髪を揺らす。
彼の小さな呟きはアベルにはよく聞き取れなかった。
「……ヘンリー?」
「あ、ごめんな。何でもないよ」
「…………、…………そう」
アベルの瞳にも同じように崩れた家々が映っていたが、それは哀しみだけではなく、昔の美しい村も同時に思い起こされ、いつか復興するといいなとアベルは願うのだった。
――またアリアとこの村で、散歩……いや、デ、デートしたいなぁ……。
アベルは目を閉じ、そんなことを妄想する。
母を捜さなければいけないというのに、すっかりアリアにやられているようだ。
「なあ、アベル」
「ん? 何だい?」
「洞窟にはどう行くんだ?」
「ああ、そこの階段を下って橋を渡って行くんだよ。でも……、僕が昔行った洞窟は行き止まりで何も無かったなぁ……」
井戸の【スライム】は洞窟の奥だと云っていた。
奥って……、もしかして川を挟んだ向こう側のことなのかな……。
確か子供の頃に入れなかった場所があったような……とアベルは思い出す。
「ふーん、なあ、こっからイカダが見えるけど、あれ乗れば奥に行けるんじゃ?」
ヘンリーが高台を下った西側の家の奥、桟橋にイカダが置かれているのに気付き指を差す。
その側で杖をついた老人が佇んでいるのが見えた。
「あ……、イカダ。……そういえば父さん、イカダに乗って洞窟の奥に行っていたっけ。何してるのかなって思ってたけど、井戸のスライムが言ってた
「決まりだな。んじゃ、行ってみようぜ」
「あっ、ヘンリー! そんなに急がなくても……!」
アベルが告げるとヘンリーは走って教会前の階段を下って行く。
僕がアリアを気にしているから気を遣ってくれたのだろうか? と、アベルも後を追おうとすると、ピエールが先に階段を下りて行った。
「…………、主殿。参りましょう」
ピエールがアンドレに行く先を任せ、顔だけ後ろのアベルに向ける。
「ピエール……」
「……洞窟の奥にて、主殿はこれから行く先の道標を得るでしょう」
アベルも階段を下り、ピエールと共に西の家へと歩きながら話を続ける。
「……道標……? そっか……。まだ僕は思い出せていないけど、君はわかっているんだね?」
「……ええ、恐らくは」
「……恐らく……、ってことは、完全ではないってことかな?」
「そんなところです。この世界は今までと違うようですから、私の記憶が全て役立つとも思えません。出来る限り最大限のサポートはするつもりですが、あまり期待はなさらないで下さい」
「うん……、わかってるよ。ありがとう、悪いね。君に依存しないよう気を付けるよ。君もあまり無理はしないでくれ」
「はい」
アベルとピエールが西の家へ着くと、既にヘンリーが扉を開け家の中へ入り、「こっちこっち」と二人を手招きしていた。
「あっちの扉から裏に出るみたいだぜ」
呼ばれるままにアベルとピエールがヘンリーに追い付くと、ヘンリーは裏口へと向かい扉を開く。
三人は裏口から外へと出た。
と、先程高台から見えた川岸に佇む老人に、アベルは声を掛ける。
「お爺さん」
「はて? どちらさまだったかのう……?」
突然現れたアベル達に老人は首を傾げる。
十年前より明らかに老けた老人の顔はしわしわ(頭のてっぺんはつるっつる真っ白な口髭を蓄えている)で、目の力も弱々しくしょぼくれていた。
「僕は、アベル。この村の村長だったパパスの息子です」
「なんと! パパス殿の息子のアベルか! おお! おお! 大きゅうなって……。立派になったのう……。してパパス殿は?」
アベルが自己紹介をすると、老人はそれまでしょぼしょぼしていた瞳を見開き、急に活力が溢れたようにアベルを見上げると、彼の腕を泣きそうな顔で撫でる。
アベルに会えて嬉しかったのだろう、その声は震えていた。
――……アベルはこれまでに起きたことを老人に説明した。
「……なんと、そんなことがあったのか!? 苦労したんじゃのう……。この村もほれ、見た通りの有り様じゃが……。パパス殿までが若い命を奪われるとはのう……」
老人が神妙な面持ちで眉尻を下げると、白い口髭を撫で川面を見つめる。
その視線は次第に川の上流、洞窟へと向かった。
「そういえば、あの当時パパス殿は洞窟の中に大切なものを隠していたようじゃ。何年も経っているのでどうなっているかは知らんが……。おそらく洞窟の中はあの頃のまま残されているはず! 気を付けて調べなされよ」
“そこのイカダを使いなされ”
老人に桟橋に結ばれたイカダを使って奥へ行くようにと促され、アベル達は洞窟の奥へと行くことにした。
◇
イカダを操り洞窟の奥へと向かうと、小さな小島に下り階段が見えてくる。
その階段を下りると、ここは昔遺跡か何かだったのだろうか、立派な柱が六本左右に聳え立ち、その奥にはまた下り階段が見えた。
柱に迎えられるように、アベル達は奥へと歩みを進めてゆく。
その先は複雑に入り組んだ洞窟になっており、アベル達は出て来る魔物達と戦いながら奥へと進んで行った。
今は……地下三階までやって来ている。
「この先は無理だな……」
辺り一面、地底湖のような水に覆われたフロアに出る。
湖の奥に上り階段が見えるが、進めそうになくアベルはこのフロアから先に進むのは諦めた。
「……あの宝箱、どうやって取るんだろう?」
「え? ……うーん……」
ふと、ヘンリーが水辺の奥に宝箱を見つけるが、泳いで渡るには危険と判断し、アベル達は宝箱を断念する。
そのフロアは諦め、別の道を探すことにした。
湖のフロアを出て通路を歩き、先に進むと前に上り階段が見えて来るが、左奥にも通路が続いているので、アベル達は一度奥を調べてから階段を上ることにする。
「へへっ、すばやさの種と鉄の胸当てか。洞窟っていやあ 宝箱だよなっ」
通路の先は行き止まりだったが、宝箱が置かれていたためアベル達は中身を回収し、上り階段前まで戻って来ていた。
ヘンリーは魔物と遭遇しつつも、村にいた時よりは元気そうに笑っている。
洞窟に入るまでのヘンリーはといえば……――。
◇◆◇
――つい先程のことだ。
「お前の村がこうなったのって、やっぱりオレのせいだよな……」
イカダに揺られ洞窟に入る際ヘンリーは、遠ざかる村の方へと視線を向けてぽつりと呟いた。
「何言ってるんだ、ヘンリーの所為じゃないよ」
「ありがとうな、気を遣ってくれて……」
アベルが即答するとヘンリーは今にも泣き出しそうな顔で笑う。
――村だけじゃない。
アベルの親父さんだけでもない、アリアが記憶を失ったのも、全部オレの所為なのに。
アベル、お前はオレを責めないんだな……。
お人好しが過ぎるぜ……。
自分を責めないアベルにヘンリーは余計に心苦しくなったのか、俯いて顔を上げられなくなってしまった。
その後はしばらく黙ったままアベルとピエールについて来ていたのだが、魔物に襲われる回数が増え、地下三階までやって来ると少しずつ喋り出したのだった。
◇◆◇
階段を上り地下二階へとやって来ると、形がまちまちな石床のフロアが現れる。
その奥、通路の先に下り階段が見えるので、アベル達は石床の上を通って行こうと疎らな石床を踏みしめた。
石床は踏みしめた途端、下の土が柔らかいのかゆっくりと沈み込む。
「おっ、何だここ。石床が沈む……!?」
「不思議な感触だね……」
「面白い! 全部踏んでみようぜ!」
アベル達は踏めるだけの石床を全て踏みしめていった。
石床を全て沈みこませると、
「よし、すっきりした! こういうのは全部踏まないとな!」
「ははは、良かったね。じゃあ奥に行ってみようか」
ヘンリーが“ふぅ”と息を吐き晴れやかに笑う。
アベル達は奥の下り階段へと下りて行ったのだった。
ヘンリー、大人になったなぁ。
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