ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

サンタローズの洞窟攻略行ってみます。

では、本編!



第百七十一話 サンタローズの洞窟、その奥へ

 

「アベル、心配なのはわかるけど……大丈夫だって。解毒出来るって言ってたんだ、きっと元気になるよ」

 

「うん……」

 

 

 ヘンリーが何度も宿屋を気にして振り返るアベルに声を掛けると、アベルは後ろ髪を引かれるのか、心あらずで生返事をする。

 

 

「……重症だなあ……。そんなに心配ならさっさと行って早く戻って来ようぜ!」

 

「……うん、そうだね」

 

 

 アベルの肩を組み、ヘンリーはアベルを激励したのだった。

 

 

「…………正直、ここに居るのは結構辛いんだ。……今のオレに何が出来るわけでもないし……、お前の手伝いをすればちょっとは気持ちが晴れるかもしれないな……」

 

 

 教会の前まで肩を組み歩いて来ると、ヘンリーはアベルから腕を放し村を見渡して哀し気な瞳で呟く。

 ヘンリーの瞳には燃え朽ちた家々が映り込み、村に吹く風が二人の髪を揺らす。

 彼の小さな呟きはアベルにはよく聞き取れなかった。

 

 

「……ヘンリー?」

 

「あ、ごめんな。何でもないよ」

 

「…………、…………そう」

 

 

 アベルの瞳にも同じように崩れた家々が映っていたが、それは哀しみだけではなく、昔の美しい村も同時に思い起こされ、いつか復興するといいなとアベルは願うのだった。

 

 

 ――またアリアとこの村で、散歩……いや、デ、デートしたいなぁ……。

 

 

 アベルは目を閉じ、そんなことを妄想する。

 母を捜さなければいけないというのに、すっかりアリアにやられているようだ。

 

 

「なあ、アベル」

 

「ん? 何だい?」

 

「洞窟にはどう行くんだ?」

 

「ああ、そこの階段を下って橋を渡って行くんだよ。でも……、僕が昔行った洞窟は行き止まりで何も無かったなぁ……」

 

 

 井戸の【スライム】は洞窟の奥だと云っていた。

 奥って……、もしかして川を挟んだ向こう側のことなのかな……。

 

 

 確か子供の頃に入れなかった場所があったような……とアベルは思い出す。

 

 

「ふーん、なあ、こっからイカダが見えるけど、あれ乗れば奥に行けるんじゃ?」

 

 

 ヘンリーが高台を下った西側の家の奥、桟橋にイカダが置かれているのに気付き指を差す。

 その側で杖をついた老人が佇んでいるのが見えた。

 

 

「あ……、イカダ。……そういえば父さん、イカダに乗って洞窟の奥に行っていたっけ。何してるのかなって思ってたけど、井戸のスライムが言ってた大事な部屋(・・・・・)っていう所に行っていたのかもしれない」

 

「決まりだな。んじゃ、行ってみようぜ」

 

「あっ、ヘンリー! そんなに急がなくても……!」

 

 

 アベルが告げるとヘンリーは走って教会前の階段を下って行く。

 

 僕がアリアを気にしているから気を遣ってくれたのだろうか? と、アベルも後を追おうとすると、ピエールが先に階段を下りて行った。

 

 

「…………、主殿。参りましょう」

 

 

 ピエールがアンドレに行く先を任せ、顔だけ後ろのアベルに向ける。

 

 

「ピエール……」

 

「……洞窟の奥にて、主殿はこれから行く先の道標を得るでしょう」

 

 

 アベルも階段を下り、ピエールと共に西の家へと歩きながら話を続ける。

 

 

「……道標……? そっか……。まだ僕は思い出せていないけど、君はわかっているんだね?」

 

「……ええ、恐らくは」

 

「……恐らく……、ってことは、完全ではないってことかな?」

 

「そんなところです。この世界は今までと違うようですから、私の記憶が全て役立つとも思えません。出来る限り最大限のサポートはするつもりですが、あまり期待はなさらないで下さい」

 

「うん……、わかってるよ。ありがとう、悪いね。君に依存しないよう気を付けるよ。君もあまり無理はしないでくれ」

 

「はい」

 

 

 アベルとピエールが西の家へ着くと、既にヘンリーが扉を開け家の中へ入り、「こっちこっち」と二人を手招きしていた。

 

 

「あっちの扉から裏に出るみたいだぜ」

 

 

 呼ばれるままにアベルとピエールがヘンリーに追い付くと、ヘンリーは裏口へと向かい扉を開く。

 

 三人は裏口から外へと出た。

 と、先程高台から見えた川岸に佇む老人に、アベルは声を掛ける。

 

 

「お爺さん」

 

「はて? どちらさまだったかのう……?」

 

 

 突然現れたアベル達に老人は首を傾げる。

 十年前より明らかに老けた老人の顔はしわしわ(頭のてっぺんはつるっつる真っ白な口髭を蓄えている)で、目の力も弱々しくしょぼくれていた。

 

 

「僕は、アベル。この村の村長だったパパスの息子です」

 

「なんと! パパス殿の息子のアベルか! おお! おお! 大きゅうなって……。立派になったのう……。してパパス殿は?」

 

 

 アベルが自己紹介をすると、老人はそれまでしょぼしょぼしていた瞳を見開き、急に活力が溢れたようにアベルを見上げると、彼の腕を泣きそうな顔で撫でる。

 アベルに会えて嬉しかったのだろう、その声は震えていた。

 

 

 

 

 ――……アベルはこれまでに起きたことを老人に説明した。

 

 

 

 

「……なんと、そんなことがあったのか!? 苦労したんじゃのう……。この村もほれ、見た通りの有り様じゃが……。パパス殿までが若い命を奪われるとはのう……」

 

 

 老人が神妙な面持ちで眉尻を下げると、白い口髭を撫で川面を見つめる。

 その視線は次第に川の上流、洞窟へと向かった。

 

 

「そういえば、あの当時パパス殿は洞窟の中に大切なものを隠していたようじゃ。何年も経っているのでどうなっているかは知らんが……。おそらく洞窟の中はあの頃のまま残されているはず! 気を付けて調べなされよ」

 

 

 “そこのイカダを使いなされ”

 

 

 老人に桟橋に結ばれたイカダを使って奥へ行くようにと促され、アベル達は洞窟の奥へと行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 イカダを操り洞窟の奥へと向かうと、小さな小島に下り階段が見えてくる。

 その階段を下りると、ここは昔遺跡か何かだったのだろうか、立派な柱が六本左右に聳え立ち、その奥にはまた下り階段が見えた。

 柱に迎えられるように、アベル達は奥へと歩みを進めてゆく。

 

 その先は複雑に入り組んだ洞窟になっており、アベル達は出て来る魔物達と戦いながら奥へと進んで行った。

 

 今は……地下三階までやって来ている。

 

 

「この先は無理だな……」

 

 

 辺り一面、地底湖のような水に覆われたフロアに出る。

 湖の奥に上り階段が見えるが、進めそうになくアベルはこのフロアから先に進むのは諦めた。

 

 

「……あの宝箱、どうやって取るんだろう?」

 

「え? ……うーん……」

 

 

 ふと、ヘンリーが水辺の奥に宝箱を見つけるが、泳いで渡るには危険と判断し、アベル達は宝箱を断念する。

 そのフロアは諦め、別の道を探すことにした。

 

 湖のフロアを出て通路を歩き、先に進むと前に上り階段が見えて来るが、左奥にも通路が続いているので、アベル達は一度奥を調べてから階段を上ることにする。

 

 

「へへっ、すばやさの種と鉄の胸当てか。洞窟っていやあ 宝箱だよなっ」

 

 

 通路の先は行き止まりだったが、宝箱が置かれていたためアベル達は中身を回収し、上り階段前まで戻って来ていた。

 ヘンリーは魔物と遭遇しつつも、村にいた時よりは元気そうに笑っている。

 

 洞窟に入るまでのヘンリーはといえば……――。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 ――つい先程のことだ。

 

 

「お前の村がこうなったのって、やっぱりオレのせいだよな……」

 

 

 イカダに揺られ洞窟に入る際ヘンリーは、遠ざかる村の方へと視線を向けてぽつりと呟いた。

 

 

「何言ってるんだ、ヘンリーの所為じゃないよ」

 

「ありがとうな、気を遣ってくれて……」

 

 

 アベルが即答するとヘンリーは今にも泣き出しそうな顔で笑う。

 

 

 ――村だけじゃない。

 

 

 アベルの親父さんだけでもない、アリアが記憶を失ったのも、全部オレの所為なのに。

 

 アベル、お前はオレを責めないんだな……。

 お人好しが過ぎるぜ……。

 

 

 自分を責めないアベルにヘンリーは余計に心苦しくなったのか、俯いて顔を上げられなくなってしまった。

 

 その後はしばらく黙ったままアベルとピエールについて来ていたのだが、魔物に襲われる回数が増え、地下三階までやって来ると少しずつ喋り出したのだった。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 階段を上り地下二階へとやって来ると、形がまちまちな石床のフロアが現れる。

 その奥、通路の先に下り階段が見えるので、アベル達は石床の上を通って行こうと疎らな石床を踏みしめた。

 石床は踏みしめた途端、下の土が柔らかいのかゆっくりと沈み込む。

 

 

「おっ、何だここ。石床が沈む……!?」

 

「不思議な感触だね……」

 

「面白い! 全部踏んでみようぜ!」

 

 

 アベル達は踏めるだけの石床を全て踏みしめていった。

 石床を全て沈みこませると、

 

 

「よし、すっきりした! こういうのは全部踏まないとな!」

 

「ははは、良かったね。じゃあ奥に行ってみようか」

 

 

 ヘンリーが“ふぅ”と息を吐き晴れやかに笑う。

 アベル達は奥の下り階段へと下りて行ったのだった。

 




ヘンリー、大人になったなぁ。

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