ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

きれいな涙って……逆に汚い涙はあんのかい?

では、本編どぞ。



第百七十四話 きれいな涙

 

 アリアが見つめる中、アベルは話を続ける。

 

 

「君は酷い怪我をしていてね……。僕の家で保護したんだよ。君が僕の家で眠ってる間、僕はここで独り身体を鍛えてさ。ある程度強くなった実感を手に入れてから君の様子を見に戻ったら、君が目覚めてて。びっくりしたんだ」

 

 

 ――っ、何で僕をじっと見てるんだ……!?

 

 

 アベルはアリアからの熱い視線(勘違い)に彼女の方には顔を向けられず、前方を見つめた。

 

 

「びっくり……?」

 

「……うん。君みたいな子と出会ったのは初めてだったから……」

 

「初めて……」

 

「……あの頃が懐かしいな。あの時、君は初めて遭った魔物に驚いて震えてたっけ……(可愛かったなぁ……)」

 

 

 アベルは出会った頃のアリアを思い出し、口角を上げる。

 真っ白なフリルのワンピースに真っ白な翼の小さな女の子は、見紛うことなき、天使そのものだった。

 

 

 ――僕にとっては、い、今も天使だけどね……っ。

 

 

 アベルはちらっと、今のアリアを窺い見る。

 アリアは今はアベルを見るのを止め、前を向いていて、宝石の瞳を時折瞬たかせていた。

 アベルはその瞳に吸い込まれそうになりつつ、揺れるプラチナブロンドの髪に手を伸ばす。

 

 

「まぁ……、そうだったんですね……。この洞窟で初めて魔物と……。でも、あれ……? さっき私アベルさんの自宅前で倒れていたって仰ったけど、怪我をしていたって……魔物にやられてしまったのでは? ……私この村出身じゃないんですか?」

 

「あっ……! ……うん、それはその……説明すると長くなるっていうか……」

 

 

 不意にアリアがアベルの方へ視線を向けるので、アベルは伸ばし掛けた手を宙に投げ、口篭った。

 

 

 ――アリアが元天使だということを今話してもいいのだろうか……。

 

 

 天使だと話せば、背中の傷のことを話さなければならなくなる。

 もしかしたら背中の傷のことを話したら思い出すかもしれないが、まだ自分からは言えそうにない……とアベルは黙り込んでしまった。

 

 

「……あの?」

 

「…………あ、えと……。アリアはこの村の出身じゃないよ。旅をしていてこの村に寄ったんだよ。……多分ね」

 

 

 アベルはアリアが元天使であることは今は伏せておき、とりあえず質問に答えることにした。

 

 

「え……ぁ。そうなのですね……。ではアベルさんは私がどこから来たのかはわからないんですか……?」

 

「ぅ……、うん……。訊かなかったから、ね……。というか、君あの当時から記憶喪失だから……」

 

 

 あの頃の僕は自分の事ばかりでアリアのことなんか全然考えてなかったな……。

 アリアの意思なんか無視して乱暴に連れ回していたし、手首をよく引っ張って痛がらせていたっけ。

 彼女が前世の話をしてくれた時も適当に聞き流してた気がする……。

 

 

 ――今は……、配慮出来ているのだろうか……。

 

 

 アベルは過去の自分は何て思いやりに欠ける男だったのだろうかと恥じて、もっとアリアを大切に扱おうと思うのだった。

 

 

「へ?」

 

「……君がどこから来たのかはわからない。だけど、君はそれを探そうとしていたよ」

 

「…………、…………そう……。私、そもそも自分が誰かわかっていなかったんですね……」

 

 

 アベルの話を聞き、アリアはショックを受けたのか俯いてしまう。

 

 

「落ち込まないで、アリア。僕がきっと君の記憶を取り戻させてあげるから。幸い僕も探し物をする旅をしている。一緒に行けば何か手掛かりを得ることが出来るかもしれないよ?」

 

「っ、アベルさん……、…………はい……。はい……っ、お願いします……っふ……」

 

 

 アベルが俯くアリアの頭にそっと手を乗せ撫でると、アリアは嬉しかったのかぽろぽろと涙を零し、アベルに気付かれないように拭うのだが、

 

 

「…………君って泣き虫なのかい?」

 

 

 アベルは気付いていたのか、眉をハの字にして口角を上げた。

 

 

「っ、すっ、すみません……っ、な、何でもないんですっ。そのっ、アベルさんの言葉が嬉しくって……、えへへ……」

 

 

 アリアが顔を上げ微笑むと、頬をぽろぽろと涙が落ちていった。

 泣き濡れた顔がキラキラと輝いているようにアベルからは眩しく見える。

 

 

「あ、ぅ……っ……」

 

 

 ――何て綺麗に泣くんだ……?

 

 

 アベルはアリアの涙に釘付けになってしまった。

 

 

「ふふっ、アベルさんが泣かせたんですよ?」

 

「っ、べ、別に僕は何も……! っ、これ使って!」

 

 

 はいっ、とアベルはアリアにハンカチを渡す(包んでいたパンは既に消費済みで、ハンカチも洗濯済みである)。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 アリアはハンカチを受け取るとそっと涙を拭った。

 

 

 あれ? “アヘル”……って書いてある。

 小さい頃書いたものなのかしら?

 随分と癖のある字ね……、どこかで見た事がある字だわ……。

 

 

 アリアは借りたハンカチに書かれた名前に既視感を覚えたのだった。

 

 

 

 そんな中、

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、……あ、あの~……、お二人さん。じゃれ合ってる所悪いんだけどさぁ」

 

 

 アベルとアリアより大分先を歩いていたヘンリーが走って戻って来る。

 

 

「……ん?」

 

 

 そういえば、ヘンリーとピエール、前を行く二人と随分離れてしまったなと今更ながらにアベルが気付いた。

 

 

「はぁ……魔物の群れが出たんだけどぉ……、手伝ってもらってもいいかい……? ピエールが一人で応戦中なんだけど……」

 

 

 ヘンリーが走って来た方へと指を差すとその先ではピエールが魔物の群れと戦っていた。

 

 

「っ、ピエールさんっ!? すぐ行きますっ!!」

 

 

 アリアは腰に掛けた【チェーンクロス】を手にして急いで走って行く。

 

 

「あっ、アリア!(早っ!?)」

 

「……二人の会話邪魔すんのも悪いかなって思って、そっとしといたんだけどさ。悪いなっ!」

 

「何言ってんだよ、そんなこと気にしないでくれっ」

 

 

 ヘンリーとアベルもアリアの後を追った。

 アベルとヘンリーが駆け付ける頃には……。

 

 

「はぁぁっ!!」

 

 

 ピシッ、ピシッ、ピシッ!

 

 

 鞭のしなる音が洞窟に響き渡る。

 アリアは鞭を振るって魔物を一掃していた(元々ピエールが体力を削っていたらしい)。

 

 

「おおお……! お見事!」

 

 

 ヘンリーはアリアの鞭(さば)きにぱちぱちと拍手を贈る。

 

 

「っ……、っ……。ぅぅ……。打たれたい……(ああ、魔物が羨ましい……)」

 

「お前ね……(まだ呪縛が解けてないのかよ……)」

 

 

 ヘンリーの隣でアベルが恍惚とした顔で言うので、ヘンリーは“べしっ”と軽くチョップを入れておいた。

 

 

「ふぅ……。ぁっ! アベルさんっ、そちらにもう一匹いますっ」

 

 

 アリアがアベル達の近くに大きな木槌を掲げ、今にも振り下ろそうとしている【おおきづち】の上位種【ブラウニー】を見つけると、指差し教えてくれる。

 

 

「っ!? わかった、任せてくれ!」

 

 

 アベルはハッと我に返ってすかさず【やいばのブーメラン】を投げ、【ブラウニー】を倒したのだった。

 




ブラウニー……。
久しぶりに焼こうかな(あ、ケーキの方です)。

涙は女の武器……。
今のアリアさん、女の嫌なとこ凝縮してる気がするわw
azatoi!!

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読んでいただきありがとうございましたっ!
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