ぜんぶこわす!
では、本編どうぞ。
「さすがアベルさんっ!」
アリアが弾けるような笑みをアベルに向けて褒める。
「はは……、いや殆どピエールとアリアで倒しちゃったけど……?」
昔と違って本当、逞しくなっちゃったなぁ……。
全然物怖じしないし……、でも、まあ……可愛いからいっか……。
アベルは乾いた笑いを浮かべるも、今のアリアもこれまた好しと目を細めた。
「ピエールさん、ヘンリーさんお怪我はありませんか?」
アリアがヘンリーとピエールの様子を窺う。
「大丈夫だよ」「ええ、問題ありません」
「なら良かったです。怪我したら教えてください、回復呪文掛けますから」
皆に気遣うアリアを見ながら、アベルは惚けていた……。
と、
「……あ。アベルさんっ!」
「ん? あ」
アリアの声にハッとして、アベルは先程倒したはずの【ブラウニー】が立ち上がったのを見て武器を構える。
「ぜんぶこわす!」
【ブラウニー】は木槌を振り上げ左右に軽快なステップを踏んだ。
「っ!?(な、何を壊すんだ……!?)」
アベルは【やいばのブーメラン】を投げようとするが……、
「あ、まちがえた。たいとるがちがった。ぼくをなかまにしてっ、してっ!」
【ブラウニー】はぴょんこぴょんこと跳ねて、仲間にしてくれと懇願してくる。
敵意は感じられないので、アベルは【やいばのブーメラン】を仕舞った。
「た、タイトル……???(何の話?)」
「「「タイトル……?」」」
アベル達は首を傾げ、【ブラウニー】の【ブラウン】を仲間にすることに。
……ブラウンは変わった奴だった。
「ぜんぶこわす! ぐぐぐ…こわせない!」
「いや、壊さなくていいよ……、危ないし……」
壁に向かいブラウンが木槌を打ち付ける。
土壁が壊されることは無かったが、僅かに土が剥がれたので、放っておけば本当に壊しそうでアベルは怖くなった。
アリアと歩きたかったのに……と思いつつ、壁のあちこちに木槌を打ち付けるブラウンが心配でアベルは彼の隣を歩く。
アリアは後ろでヘンリーと楽しそうにお喋りしながら歩いていた。
あまりぞろぞろ仲間が居ても……と、ピエールは一時的に馬車へと戻っている(ブラウンが一緒に行きたいと申し出た為である)。
「おかしいな、つちかべならこわせるはずなのに……。やっぱりたいとるがちがうとこんなものなのか……」
ブラウンはしゅんと俯いてしまう。
「…………はぁ(大丈夫かなこの子……)」
アベルは わけのわからないことを言い続けるブラウンに溜息を吐いた。
――そろそろ馬車もいっぱいかな……。確か、馬車には八人までしか乗れなかったような……。
次に仲間が出来たら誰かをモンスターじいさんに送らないとなとアベルは、ブラウンを候補に入れることにしたのだった。
そんなこんなで下り階段までやって来ると、地下一階へと下りるわけだが、
ブラウンはなんと!
階段まで壊そうと木槌を振り回し始めた。
ブンブンブンッ! っとな。
「ちょ、ブラウン! ここに魔物はいないから……!」
「ぜんぶこわす! ぜんぶこわす!」
「壊さなくていいっ!」
階段を壊そうとするブラウンにアベルは戦々恐々し、何とか宥め
この子、アホの子なのか?
困ったなあ……。
見た目が可愛らしいからアリアが喜ぶかと思って連れて来たけど……、木槌を常に振り回すからアリアが近寄って来れないじゃないか……。
一緒にモフりたかったのに……。
どうしたものかと、アベルは頭を抱えた。
そういえば、モンスターじいさんの所のイナッツさんが賢さがどうのと云っていたなと思い出す。
「……馬車に送れば良かった」
ぽつりと零すが、後悔先に立たずである。
◇
そうして、アベル達一行は地下二階へと何とか下りて来た。
「アリアさん、落とし穴だ。気を付けて」
「はいっ」
ブラウンから目が離せないので、アベルはちらっとだけ背後にいるアリア達を見る。
アリアが落とし穴を身を乗り出して覗いていたらしく、ヘンリーはアリアの手を繋いで落ちないように引っ張っていた。
『あっ!(いつの間に!)』
「あっ! っ、あ、アリアさん、ほら、もう行こうぜ!」
アベルが声を上げると、ヘンリーが慌ててアリアの手を引いて穴を覗くのを止めさせようとするのだが、
「んー……、もうちょっと……。下に……光るものが見えた気がして……」
アリアは益々身を乗り出し、柵を越えようとする。
そんな中アベルは木槌を振り回すブラウンを押さえながら、ヘンリーを恐ろしい形相で睨み付けていた。
「っ、アリアさんっ! 危ないって!(アベルの顔が怖いんだって!)」
「ほらっ、やっぱり光ってる! ヘンリーさん、あそこっ!」
アリアは暗闇の奥底に光るものを見たらしく、穴の底を指差す。
「っ、そんな睨まなくたっていいだろっ! 今放すって! 放せばいいんだろっ!」
ヘンリーはアベルの視線に耐え切れず、アリアから手を放した。
「ん? あっ……」
ぐらり。
アリアの身体が柵の上で揺れる。
「っ、ヘンリー! 今手を放すなっ!!」
「へ? あっ! アリアっ!!」
アベルが大声で怒鳴り、今にも落とし穴に落ち行くアリアの手をヘンリーは掴もうとするが、落下する方が早く空を切ってしまった。
『きゃあああああああっっっ!!!』
叫び声と共にアリアの身体は落とし穴へと吸い込まれて行く。
「アリアーっ!!」
アベルはブラウンを放して落とし穴に駆け寄り彼女の名を叫ぶ。
すると、
『…………、…………大丈夫ですっ。でもっ、大丈夫じゃないかもっ!』
下の階からアリアの声が聞こえたのだった。
「すぐ行く! 待ってて!」
アベルが告げると、アリアから『はい、お待ちしていますっ』と言う声が聞こえる。
行こうぜ! とヘンリーがすぐ歩き出すのだが、
「ぜんぶこわす! ぜんぶこわす!」
もう一匹の仲間、ブラウンはアベルから解放され辺りの壁に木槌を打ち付けていた。
アベルは静かにブラウンの背後に近付き、冷ややかな瞳でそっと囁く。
「……ブラウン、何も壊さずついて来てね。でないと……、君を壊すことになるかもしれないよ……?」
「ぜんぶこわす! ぜんぶこわ…………、こわっ!!」
アベルの一言にブラウンは背筋が凍ったのか、それまで振り回していた木槌を止め、背中に背負った。
そして、歩き出すアベルの後ろに大人しくついて行く。
とてとて、と。
ブラウンは歩きながらアベルの背に話し掛けた。
「……ごめんね、ついまえのくせがでちゃったみたい」
「……前の癖? よくわからないけど……、もう君は僕の仲間だよ?」
ちらっと、ブラウンを振り返り見ると、つぶらな瞳が申し訳なさそうにアベルを見上げている。
「うん、ぼくはあるじのしもべ。あべる、ぼくのあるじ、ぼくあべるおぼえた。ぼくもうこわさない、でもこわしたい……ぜんぶこわ…………」
そこまで云うと、じろりとアベルに睨まれ黙り込む。
「…………君みたいな子があそこにいたら大活躍だったんじゃないかなあ……」
採石場で岩を砕くのは君達みたいな魔物で良かったんじゃ……?
アベルは奴隷時代を思い出し、そう思った。
ブラウンさん、ちょっとDQBから来たっぽいですw
転生なのか転移なのかは知らんけど。
時々クロスオーバー(という程ではないが)するビルダーズシリーズ。
DQBではブラウニーが拠点を壊しに来るのですが、DQB未プレイの方用に説明をば。
素材の硬さで壊せるか壊せないか判定があるのですが、脆い素材だと壊され、硬い素材だと壊れないっていう。
そしてブラウニーが拠点にやって来た時の台詞が、
「ぜんぶこわす!」と「ぐぐぐ…こわせない!」
なのです。
土素材の壁だと黙々と壊していき、部屋判定が次々と消えていきます。
石垣素材だとブラウニーは壊せず「ぐぐぐ…こわせない!」と嘆くのです。
DQB2だと仲間に出来るけど、イベント仲間の奴しか仲間にしてないわ……。
使い道がわからん……。
----------------------------------------------------------------------
評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。
読んでいただきありがとうございましたっ!