聖なる原石を手に入れましょう。
では、本編。
「ぜんぶこわす!」
「あっ、おいっ、ブラウン!」
突然大岩に向かってブラウンは木槌を振り上げる。
アベルは【アストロン】状態のまままだ戻れていなかった。
ヘンリーが止めに入るが、彼の制止を振り切りブラウンの一撃は大岩に激突!
ガラガラガラ。
と、岩が僅かに崩れ、岩に開いた割れ目から変わった石の欠片が見えた。
きらり。
石の欠片は洞窟の僅かな灯りを反射し光っている。
「何かの宝石みたいだな……」
「あっ! その光! さっき上から見えたものですっ!」
ヘンリーが覗き見ていると、アリアがやって来て告げた。
「なるほど、アリアさんはこれを見てたのか」
「綺麗な石ですね」
ヘンリーとアリアは石の欠片を前に、近い距離間で会話している。
【アストロン】中のアベルは不安な面持ちで二人を見ていた。
「欲しいかい?」
「え? あ……」
「届きそうだから取ってあげるよ」
手を伸ばせば届きそうなので、ヘンリーが石の欠片を取ってやろうとするのだが。
「…………っ、解けた! っ、僕が取るっ!」
「ん……? っ、痛っ!?」
「えっ!? あっ、アベルさんっ!?」
【アストロン】からようやく解放されアベルは二人の間に割って入って開いた穴に手を突っ込んだ。
二人の間に割って入った際にヘンリーの肩にぶつかってしまい、ヘンリーは顔を顰めて肩を押える。
アリアはサッと一歩引いて避けていた。
「っ…………(嫌われたっ!!)」
アリアに避けられたことに、アベルは泣きそうな気持ちになりながらも穴へと手を伸ばす。
指先に確かに触れているのに、掴むに至らない。
もう少し腕を伸ばして……。
「……もうっ、ちょ……っと……」
「…………あのっ、アベルさん私別に、要らな……」
「っ、もう……、少し……!」
アベルの後ろでアリアが要らないと云うが、アベルは何としても取ってあげたいと思ったのだ。
――これを手に入れたら、見直してもらえるだろうか?
やってしまったことは取り消しにはならないが、アリアの為に何かしたい。その一心でアベルは手を伸ばした。
「っ、と、取れたっ!!」
石の欠片は無事にアベルの手に収まり、アベルは差し込んだ手を引き抜く。
「……アベルさん……」
アベルはアリアの前に石の欠片を掴んだ手を開いてみせた。
アリアからの反応は特にないが、長い睫毛が上下し石をじっと見下ろしている。
「待ってて、今、調べてみるから」
「え?」
「……インパス!」
アベルは鑑定呪文【インパス】を唱えた。
「……聖なる原石っていうみたいだ」
なんと【聖なる原石】を見つけた!
アベルは【聖なる原石】をアリアに“はい”と手渡す。
「そうなんですね……。綺麗ですね」
アリアは渡された【聖なる原石】を持ち上げ灯りに透かしてみた。
【聖なる原石】は光ってはいるものの、その光は鈍い。
原石なだけあって不純物も多く付着しているため、このままだと使い道がわからない代物である。
「…………、……君にあげる」
「へ? あっ、いえっ、要りません!」
アベルが良かれと思って言うのだが、アリアは即拒否した。
「ええっ!!? 欲しかったんじゃないの!?」
「私、そんなこと一言も言っていません……。貰っても使い道がわからないのでお返しします」
アリアはアベルの手を取り、手の平に原石をのせた。
「っ……アリア……」
あまりにはっきりと云われた所為か、アベルは俯いてしまう。
僕からの贈り物は受け取って もらえないのか……?
そういえば、彼女の耳に掛けた花……すぐ無くなってたっけ……。
仲良くなれていると思っていたのは自分だけだったのか、とアベルは原石を握り締めるのだった。
けれども、そんなアベルの腕にアリアの手が伸びる。
「…………アベルさん、ここ、擦り剥いていますよ」
「え……」
「……ホイミ」
アリアの声にアベルは顔を上げる。
すると、アリアはアベルの岩穴に突っ込んだ腕の擦り傷に触れ、回復呪文を掛けてくれる。
温かく滑らかな手が離れると、擦り傷は綺麗に治っていた。
「……アリア……」
「……無理しないで下さい。私の所為で怪我させたかと思っちゃいました」
アリアは申し訳なさそうにしながらも微笑む。
「君の所為なんて僕は……」
「……私が上から下を覗いていたから落っこちてしまったんです。ごめんなさい」
「っ、何で謝るんだ? 謝る必要なんて全然ないよ」
「っ……でも……」
アリアが頭を下げるので、アベルは頭を左右に何度も振った。
その後で前髪を引っ張ったり撫でたりしながら口を開く。
「僕の方こそ、その…………、……何度も……抱きしめて……っ、ごめん……ね?」
たどたどしくも、今までの非礼を詫びるアベルだった。
そんなアベルに対しアリアはというと。
「ぁっ、……っ、い、いえ……。私も嫌いだなんて言ってしまって……すみませんでした。本心じゃないのに……」
アベルと視線を合わせないように瞳は伏せられていたが、耳が赤い。
「えっ!? ほ、本当!?」
「っっ!!?」
アリアの言葉にたちまち目を見開き、アベルは距離を詰める。
アリアは“ビクッ”と驚いて後退ってしまった。
「ぅっ!!(やっぱ嫌ってる!?)」
アベルはアリアの動きに気付くと それ以上は近付かないよう、動きを止める。
そこへヘンリーの手がアベルの肩に置かれて……、
「……アベル、ちょっとこっち来てみ」
「ん? な、何だい?」
「いいから! アリアさん、ちょっとブラウンとここで待ってて」
あ、はい。とアリアが返事する前にヘンリーはアベルを連れて大岩の反対側へと向かった。
ブラウンが役に立って良かったなぁ~っと。
記憶喪失中のアリアさん、書きにくい……。
はよ元に戻って。
アベルさんは記憶があろうとなかろうとアレですよね、アレ。
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