サンタローズには妙齢の女子が居ないんですわ。
では本編どうぞ。
アリアとブラウンを残し、大岩の裏側へとやって来たアベルとヘンリー。
ヘンリーはアベルに耳打ちしていた。
「いいか、アベル」
「ヘンリー、何?」
「……アベル、お前がアリアのことを好きなのはわかってる。オレも女の子の扱いが上手いかどうかはわからんけど、距離の詰め方があれじゃ多分ダメだと思う。あれじゃその内本当に嫌われるぞ?」
「えっ、べ、別に僕はアリアのことなんて好きじゃないけど!?」
「……お前それ本気で言ってんの?(バレバレなんですけどー!?)」
ヘンリーがジト目でアベルを見る。
「…………記憶が戻ってからはっきりさせるって言ったよ?」
「はぁ……、もう面倒臭いなぁ……。まあとにかく、あんまりアリアに押しを強くするのは止めた方がいいと思うぞ」
アベルの言葉にヘンリーは額を抱え、溜息混じりにアベルに意見した。
「何で」
「……前にも言ったけど、今のアリアは昔のアリアじゃない。性格がまるで違う別人みたいなもんだ(似てるとこもあるけど)。もっと気遣ってやらないと」
「っ……、気遣う……。気遣ってるつもりなんだけど……難しいな……」
知らない間に距離を詰めてしまっているんだ。
どうしようもなくないか?
けど、嫌われたくない……。
アベルは眉間に皺を寄せる。
「嫌われたくないなら、少しずつ、少しずつだぜ? でないとオレが掻っ攫っちまうかも?」
「それはやめろ」
アベルは険しい目付きでヘンリーを牽制する。
「っ、おー、こわっ! 冗談だって。お前、アリアが絡むとヤバいな!」
何でこんなにガラッと豹変するんだよ、とヘンリーの額に汗粒が浮かんだ。
「……もう少し、距離を取って少しずつ距離を縮めた方がいいってことかい……?」
「……だな」
ヘンリーは頷く。
「…………じゃあ、“さん”付けに戻した方がいいか……」
「え?」
「僕、アリアのこと今呼び捨てで呼んでるんだよね」
「え……、あ、そういえば! そうだったな! アリア普通に流してっから気付かなかった。んじゃオレも呼んでみっかなー」
今言われて気が付いた! とでもいうようにヘンリーは目を丸くした。
「恥ずかしがったりして」
「そろそろ慣れてくれてるだろ?」
「…………どうかな」
――とは言ったものの、アリアとヘンリーは僕より楽しそうに話してるんだよな……。ヘンリーが羨ましい……。
ヘンリーはアリアのことを本当は諦めてないんじゃないかと、アベルは焦燥感に駆られる。
「アベル、お前が羨ましいよ」
「は? それはこっちの台詞なんだけど?」
「…………オレは……、ほら……」
アベルが言い返すと、ヘンリーは口篭って何やら難しい顔で黙り込んでしまった。
彼は何だか神妙な顔をしている。
「…………うん、ヘンリーのいう通り少し距離を取って様子を見てみるよ。これから一緒に旅をするんだし……」
「…………うまくやれよ」
「……っ、だから僕はアリアのことなんて……」
「あーはいはい」
アベルはヘンリーに云われたことを何とか実践してみることにして、アリアとブラウンの元に戻った。
「……アリア……さん、何か思い出したかい?」
「え……。ぁ……、いえ……」
アベルが戻って来て声を掛けると、アリアは一瞬瞳を瞬かせ首を横に振った。
「そうか……、うん、じゃあ、もうここに用はないね。戻ろうか」
「あっ、はい」
ここでも記憶は戻らなかったか……、と残念に思いながらアベル達はサンタローズの洞窟を後にすることにした。
◇
洞窟を後にし、教会でシスターリリィに挨拶をしてから村を出ようとしたのだが、先程会った桟橋側の民家の老人が家の前で佇んでいたのでアベルは声を掛けることにする。
「あ、お爺さん。先程はありがとうございました。無事、天空の剣を見つけました」
「なんと洞窟で天空の剣というのを見つけなされたか?」
「はい。ですが、僕には装備出来ないみたいで……」
アベルは参ったなと頭を掻いた。
アベルの弱った顔を見ると、老人は話を続ける。
「しかしその剣は勇者にしか装備できぬと。なるほどのう……。かつてパパス殿が、なぜ自分に装備できぬかと嘆いておったのはその剣じゃったのか。パパス殿のあんなに悔しそうな顔を見たのは、その時が初めてじゃったのう」
「…………そうだったんですか……」
――父さんも僕と同じことを……。
眉尻を下げ話す老人の言葉に、父程強い者でも装備出来ないとなると、勇者とはいったいどれほど強い人物なのだろうと期待してしまう。
いつか必ず見つけてみせる、そして母さんを……! アベルは拳を握り締めたのだった。
「どうか、気を付けて旅をなされよ」
「はい……」
老人にぽんぽんと腕を叩かれ、アベルは深く頷いた。
「あれだけ強かったお前の親父さんでも装備できなかったなんてなあ……。やっぱり伝説の勇者にしか装備できないっていうんだから、特別な資格が必要なんだろうか」
老人とアベルの話にヘンリーが腕組みして難しい顔をする。
「……うーん……特別な資格か……(強さだけではないということか……)」
――他の世界じゃ、僕が装備出来ると思ってたんだけどなぁ……。
アベルも唸ってしまった。
「……天空の剣……、伝説の勇者……ですか……。アベルさん、よかったら後で詳しく教えて下さいね」
「あっ、うん、もちろん!」
アリアが声を掛けると、アベルは破顔して返事をする。
「……ん? そこのお嬢さんは……?」
唐突に老人はアベル達の後ろに居るアリアに声を掛けて来た。
「……え? わ、私ですか……?」
「……はて、どこかで……?」
「え? は、初めてお会いすると思うのですが……(あ、でも昔会っているのかな……?)」
不意に老人がアリアに近付くと、彼女は戸惑い首を傾げる。
「そうか……。こんなに綺麗なお嬢さんを見たのは初めてで ドキドキするのぉ……。握手をしても宜しいかな?」
「へ? ぁ……、はい……」
老人に手を差し出されアリアはそっと その手を握る。
「…………ほぅ……滑々じゃのう……(はて? 昔会ったことがあるような……?)」
さすさすと老人がアリアの手を撫でると、彼女は目を見開く。
触り心地が良いようで、老人は目を細め嬉しそうである。
その内老人の手が腕の方へと伸びていくので、どうすればいいのかわからずアリアは手元を見ながら固まってしまった。
「っ……」
「っ、お爺さん!(そこまで!)」
アベルはアリアの手を取り上げ、慌てて止めに入る。
アリアの腕には鳥肌が立っていた。
「……はっ! す、すまんかったな。つい……」
「っ……し、失礼しますっ!」
老人が謝るも、アリアは頭を下げて逃げるように走って行ってしまう。
「あっ、アリアさんっ!!」
「オレが追い掛けるよ!」
ヘンリーが走り出すが、
「っ、僕も行く! お爺さん、失礼します!」
「あ、ああ……」
アベルもヘンリーと共にアリアを追って走り出した。
綺麗な人は綺麗な人なりに苦労があるもので……。
お爺さん、久しぶりに若い女の子を見て嬉しかったんでしょうね。
でもお触りしちゃーダメよ。
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