アリアさんの呪いを解くカギ。
では、本編どぞ。
◇
「アリアさんっ!」
アベルが教会へと続く階段を駆け上がると、アリアは立ち止まり肩を上下させ荒い呼吸をしていた。
「はぁっ、はぁっ……、ぁ……、すみません。私……」
「いや、いいよ。君こそ大丈夫だったかい?」
「あっ、……えと、仕事中はああいった方もいらっしゃったので平気だったんですけど……、今は仕事中じゃないので……、びっくりして……」
ぶるぶるとアリアは両腕で自身を包む様にして肩を震わせる。
「なっ! そんな失礼な奴が!? …………怒れば良かったのに」
自分のことは棚上げしつつ、アベルは勝手に憤って告げた。
「え?」
「……昔、君はあのお爺さんに怒っていたよ?」
「え、そうなんですか?」
「……うん、さっきみたいなことをされたわけじゃないけど……」
――よくわからなかったけど、あれは多分、僕の為に怒ってくれていた気がするなぁ。
アリアは自分の事ではあまり怒ったりしない人だった気がする……と、遠き日の記憶をアベルは思い出していた。
けれども、今のアリアにはわからないようで……。
「……思い出せません……」
瞳を伏せて頭を左右に振る。
「はは……、みたいだね。あ、丁度ここから村全体が見渡せるから、見てみたらどうかな?」
「はい。…………あ……、っ……」
アベルの勧めに村の全景を見渡しアリアは黙り込んでしまう。
焼け落ちた民家の数々、踏み荒らされ毒の水に満たされた畑。かつては緑に囲まれた美しい石畳の小路は掘り返され地肌が剥き出しのまま荒れている。
村人もすっかり減って、疎ら……。
目の前の光景はあまりに昔とは違い過ぎた。
「あ……、……うん、そうだったね……。ごめん」
「この場所に居ると、正直いたたまれなくなるよ。子供の頃のオレってなんて考えなしでバカだったんだろう……」
アベルが“これじゃ思い出せないよね”と額を抱えると、アベルとアリアの後ろでヘンリーが呟いて俯いてしまった。
「ヘンリー……。君の所為じゃ……」
「一体ラインハットはどうなってしまったんだ? こんな惨いことをするなんて……」
「……シスターリリィに挨拶して来るよ。皆はここで休んでいて」
「……ああ……」
アベルの声にヘンリーは俯いたまま顔を上げなかった。
アベルはヘンリーの様子が気になりつつも、教会の扉に手を掛け開くと中へと入って行く。
◇
教会に入ると――。
「あら、アベル。アリアさんと会ったかしら? 彼女、解毒が済んだらアベルはどこにいるのって訊くから、教えたらすぐ出て行ってしまったのよ」
シスターリリィはいつものように掃除をしながらアベルが教会に入って来たことに気付くと、笑顔で話し掛けて来たのだった。
「あ、洞窟の前で会いました」
アベルは無事会えたことを伝える。
「そう、入れ違いにならなくて良かったわ。彼女不安そうな顔で飛び出していったから……」
「えっ、あっ、本当に……?」
――アリア、僕をさがしに……?
トクン。
と、アベルの胸が疼いた。
「ふふっ、彼女、やっぱりアベルのいい人なのね?」
「えっ!? ぁっ、いやっ、だからそういうんじゃぁ……なぃ……けど……、そのぉ……。そうなってくれたら、いい……かなぁ……っ、って……」
シスターリリィが目を細めて穏やかに訊ねて来るので、アベルは後ろ頭を掻き掻き肯定した。
ヘンリーには言えないが、シスターリリィには言ってもいいだろう。
……というか、何でみんなわかるんだ……!?
僕ってわかりやすいのかな……。
アベルはみんな鋭過ぎるだろと、苦笑いを浮かべる。
「まあ、やっぱりそうだったのね! 昨日は誤魔化すからどうなのかと思っちゃったわ」
「はは……」
「……でも、彼女、呪われてるけどいいの?」
シスターリリィは破顔一笑してから眉を下げる。
「っ…………、彼女の呪いは……僕の所為なんです」
アベルはシスターリリィの言葉に詰まり、唇を噛み締めた。
僕が、未来に気付くのが遅かったから……。とアベルが俯くとシスターリリィが目を丸くする。
「えっ? どういうこと?」
「っ……、アリアから聞いたかもしれませんが、呪いはある魔族との接触が原因なんです。それに、彼女記憶喪失で……。それも理由は言えないけど僕の所為で……。だから僕が責任を持って記憶を取り戻させてあげようと思ってるんです」
目を丸くしたシスターリリィに、昨日は話さなかったアリアの事についてアベルは掻い摘んで話した。
「…………、…………そう。昨日聞いた他にも色々あったのね。……そういうことなら、彼女の呪いのことだけど……」
「はい……?」
「フィーロ神父と話していたんだけれどね。世界中の教会で少しずつ呪いを解いてもらっていけば、いずれは解けるんじゃないかって。もしくは元凶となった邪気を直接払うか……」
シスターリリィの言葉に、アベルは頷く。
世界中の教会で呪いを解くか、ゲマを倒せば解ける……?
本当に?
けど、アリアに掛かった呪いってそもそもどんな呪いなんだろう?
アベルは気になって訊ねることにした。
「…………あの、呪いって、どういったことが起こるんでしょうか……。急に暴れたりとか……? あ、修道院でそういうことが一度あったと聞いたんですが……」
「暴れる……? それは珍しい症状ね……。う~ん……、そう、ねぇ……。一般的に呪われると体力を失ったり、魔力を失ったり、動きが鈍くなったり、呪文が言えなくなったり、魔物と戦っている時に起こると言われているわね。フィーロ神父の見立てによれば、彼女の背中の傷が癒えれば呪いも解けやすくなるかもしれないと……」
「背中の傷……」
一体どれ程酷い傷なんだろうか?
僕の回復呪文で治せないのかな……。
修道院でも聞いたが、アリアの背中の傷をアベルは知らない。
バニー姿の時も長い髪で上手く隠していたし、昨日宿に泊まった時もそうだった。
今はマントで覆われていて見えないし、とアベルは一度確認してみたいと思うのだった。
「見せてもらったけど……酷かったわ。女性の身体にあんな傷を付けるなんて魔族は酷いことをするわね……」
シスターリリィの言葉にアベルはハッとする。
「っ、まさかフィーロ神父も見たんですか!?」
「え?」
「アリアの背中っ!!」
「え? ええ……、まあ……、呪いについてアリアさんに訊かれたものだからその流れで……」
「っ!!」
アベルは“バッ!!”とシスターリリィから祭壇に立つフィーロ神父に視線を移し、睨み付ける。
フィーロ神父は突然アベルに睨まれ何事かと首を傾げていた。
――何でっ!? アリア、僕がまだ見ていないのにフィーロ神父に肌を晒したのか!?
「あっ、アベル!?」
アベルは無言でフィーロ神父の元へと歩いて行く。
「フィーロ神父……。アリアのことなんですけど……」
据わった目で、アベルはフィーロ神父と視線が絡む様に見るのだが、フィーロ神父は糸目なので、合っているのかどうかわからなかった。
「生きとし生けるものは、みな神の子。我が教会にどんなご用かな?」
フィーロ神父はアベルの鋭い眼力に臆することなく告げる。
「……アリアのことなんですけどっ!!」
「……呪いを解くのは至難の業でしょう。彼女は気長に旅をするとおっしゃっていましたよ」
アベルが向きになって云うのだが、フィーロ神父は静かに微笑む。
「っ、そういうことじゃなくて! アリアの肌っ……!」
悔しさからなのか食って掛かろうとするが、アベルはそれ以上口に出せずに息を呑んだ。
アリアの素肌を見たんでしょうが!!
僕もまだ見てないのにっ!!
なんでこんな糸目のおっさんが先に見るんだよぉおおおおっ!!!
と、つい感情的になってしまったのだが、フィーロ神父はアベルの怒りの矛先がよくわからず首を傾げていた。
「…………ん? なんでしょうか……? 肌がどうかしましたか?」
「っっ!! 何でもないですっ! お・い・の・りをお願いしますっ!!」
フィーロ神父の表情はずっと穏やかで何も変わらないので、アベルは急に恥ずかしくなり すかさず話題を変えた。
ちゃらららちゃーちゃーちゃー……♪♪
……【冒険の書】に記録してもらった(昼間もしたのに)。
僕が見てないのにって……ねwww
いつか見る気満々ですな。
世界中の教会巡りでもしよっかな~っと。いうことで、これでアリアさんの旅の理由が二つ出来ました。
一つ、記憶を探す
二つ、呪いを解く
もちろんアベルと一緒に行きますよっ!
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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。
読んでいただきありがとうございましたっ!