ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

伝説の勇者の話を訊いてみます。

では、本編どぞ!



第百八十八話 伝説の勇者の話と小さなメダル

 

 酒場のカウンター奥へと向かうと、バニーさんの父親らしき身体の大きなマスクを被った男が、帳面に羽根ペンで事務作業をしていた。

 熊のような大きな手に小さな羽根ペンが ちぐはぐに見える。

 親子で切り盛りしているのだろう、今月の仕入れ、借入金、売掛金、純利益……等々が書き込まれていた。

 

 彼に近付くと“う~ん……今月は厳しいなぁ……”などと独り言が聞こえる。

 

 

「あの、お忙しいところ、すみません。お話を聞かせてもらってもいいでしょうか?」

 

「あん? 何だ?」

 

 

 アベルが声を掛けるとマスク男が振り返った。

 

 

「僕達、伝説の勇者について話を聞きたいんですが……」

 

「なに!? 伝説の勇者について話を聞きたいだと!? よし! 話してやろう。だいぶ昔の話だが……、闇の帝王エスなんたらが復活し、世界を滅ぼそうとしたことがあったんだ。しかし、天空の武器防具を身につけた勇者がな、そのエスなんたらを倒し世界を救ったっちゅうことだ」

 

 

 マスク男は羽根ペンを置いて帳面を閉じ、アベルに快く話をしてくれる。

 帳面とずっと睨めっこしていたようで肩が凝ったのか腕を回していた。

 

 

「……闇の帝王エスなんたら……」

 

 

 アベル達は互いに視線を交わし、眉根を寄せる。

 男の話は続いた。

 

 

「ちなみに勇者の武器防具とは、天空の剣、天空の鎧、天空の盾、天空の兜の四つだったそうだ」

 

「……四つ……。あの……、勇者はその闇の帝王を倒した後どこに……?」

 

 

 アベルは勇者のその後を知りたくて訊ねる。

 

 

「え? その(あと)の勇者かい? う~ん、一説には天空に戻ったとも言われてるけど、そこまでは知らんなあ。まあ、大昔のことだし、どっちにしても もう生きてはいないと思うぞ。勇者の子孫くらいなら、どこかにいるかもしれんがな」

 

 

 俺が知ってるのはこれくらいだな。どうだ? 役に立ったか?

 

 

 話し終えるとマスク男は背伸びをして、「さあ仕事仕事」とまた羽根ペンを持ち帳面を開いて唸りだしたのだった。

 

 

「ありがとうございました……」

 

 

 アベルは忙しそうなマスク男に頭を下げ、アリアとヘンリーに視線を移す。

 

 

「伝説の勇者も気になるけど、オレはそれ以上にエスなんたらのなんたらが何なのか気になるな。あ~、もうメチャクチャ気になるっ!」

 

 

 ヘンリーは赤ら顔でマスク男の背後にあるベッドに勝手に倒れ込んで頭を抱えた。

 

 

「勇者の子孫がこの世界の何処かに……、うん、きっといらっしゃいますよ! ねっ、アベルさんっ! さがせばいいんです。さがせば」

 

 

 アリアは繋いだ手を持ち上げ、空いた手でアベルの手を包んで元気付けるように微笑む。

 

 

「アリア……」

 

 

 ありがとう、アリア。

 君はいつも前向きなんだなぁ……。

 

 ……でも、その顔、ちょっと……ヤバい。

 そんな色っぽい顔で僕に微笑み掛けないで……。

 

 

 アリアのほんのりと上気した顔にアベルは唾を呑み込んだのだった。

 ふと、そのアリアの後ろ、部屋の最奥に地下へと続く階段が見える。

 

 

「…………あれ? 地下室があるみたいだ」

 

「え? あ、行ってみますか……?」

 

「うん、アリアも行く? ヘンリーは……」

 

 

 チラッとベッドに勝手に横になったヘンリーを見ると“ぐごー”と(いびき)を掻いていた。

 恐らくマスク男のベッドだと思うが、マスク男は今月の収支に夢中で気付いていない。そんなに経営が不味いのか、それとも月の目標があるのか……。

 

 

「……寝ちゃったね。余所の家なのに……、二人で見に行ってみようか」

 

「あっ、はい!」

 

 

 後で起こせばいいよね、とアベルはアリアを連れて地下室を見に行くことにした。

 余所の家の地下室に勝手に行くアベルもアベルなのだが、記憶の無いアリアがツッコむことは無かった。

 すっかりこの世界に馴染んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 階段を下りて行くと、大きなツボが三つと見慣れない赤い扉がある。

 二人は先ずツボを調べることにした。

 

 

「何か入ってるかな?」

 

「あっ! 私、投げてみてもいいですか?」

 

「え? うん、いいよ」

 

 

 アベルがツボに手を掛けると、アリアが挙手する。

 十年前、ツボが壊れるのを見て驚いた顔をしていた少女が今、そのツボを壊す側へと成長した瞬間だった。

 

 

「……んっ!」

 

 

 アリアはツボの縁を掴んで気合を入れ持ち上げた。

 気合を入れた声がちょっぴり婀娜(あだ)っぽく聞こえる。

 

 

「……っ!?」

 

 

 アリアの声、いちいち色っぽいんだよなぁ……。

 

 

 瞬刻、アベルの脳裏に良からぬ妄想が過り、アリアの後ろで顔を隠すように俯いたのだった。

 そうしている内に、アリアはアベルのように投げ飛ばすことは出来なかったようで、床にツボを落とす。

 

 

 パリンッ!

 

 

 ツボが床に落下すると、見事に割れて中から【小さなメダル】が飛び出て、コロコロと転がった。

 

 

「あっ! 何か入っていましたよ」

 

 

 ツボの破片は消え失せ、床には【小さなメダル】だけが残る。

 アリアがそれを拾って手の平に載せるとアベルに見せた。

 

 

 すると、

 

 

 “送って、送って……。メダル王に送って……クレメンス。”

 

 

 【小さなメダル】から小さな声が聞こえてくる。

 その声はメダルの妖精の声なのだろうか?

 だが、決して可愛らしい声などではなく、ちょっと高めではあるが、明らかにおっさんの声だった。ちょっとねっちょりしてる感じ。

 

 まさか、メダル王の声ではないだろう……と、思いたいアベル。

 

 

「小さなメダルだね(……送って……って?)」

 

 

 ――クレメンスって何だ?

 

 

 アベルの耳に届いているらしく、アベルはじっと【小さなメダル】を見下ろした。

 

 

 “送って、送って……。メダル王に送って……。”

 

 

 メダルは尚もアベルに語り掛けるが、アベルはアリアに説明するのが先とばかりに、とりあえず無視することにする。

 

 

「小さなメダル……?」

 

 

 “送ってクレメンス、送ってクレメンス……。”

 

 

 メダルはしつこくアベルに語り掛けてくる。

 

 

「メダル王っていう人がいて、その人に送ると枚数に応じて色んなものをくれるらしいよ。せっかくだからそれ、送ろうか?(送って送って(うるさ)いしね……)」

 

 

 アベルは【小さなメダル】に人差し指で触れながらアリアに親切に教えた。

 

 

 “送ってちょーよ、送ってちょーよ……。”

 

 

 尚も、メダルはアベルに訴えてくる。

 いい加減、しつこい。

 

 

「あ、はい。じゃあ、お願いします」

 

「……任せて」

 

 

 アベルはアリアの手から【小さなメダル】を摘まんで手にすると、静かにメダル王に届けと念じた。

 すると、メダルは10センチ程浮き上がってスゥッと宙に消える。

 

 

「あっ……!(消えちゃった……!)」

 

 

 アリアが今何が起こったの? と瞳をぱちぱちと瞬かせた。

 

 

「……どういう原理で送れるのかはわからないけど……、こうして見つけると小さなメダルから語り掛けて来るんだよね」

 

「語り掛けて来るんですか……?」

 

「うん、アリアは聞こえなかった? メダルが見つかった途端、“送って、送って”って」

 

「いえ……、私には何も……」

 

 

 アベルの質問にアリアは首を横に振る。

 アリアには聞こえなかったらしい。

 

 

「そうなんだ……。僕だけが聞こえるってことかな……? メダル王って不思議な人だな……」

 

 

 アベルは腕を組んで首を傾げた。

 

 

「……そんな方がいらっしゃるんですね。お知り合いですか?」

 

「ううん、全然知らない」

 

「っ!? 知らない方なのに、送ってしまって良かったのですか?」

 

 

 メダル王の事など知らないというアベルにアリアは目を丸くする。

 

 

「大丈夫。……何故かはわからないけど、大丈夫だって気がする」

 

「……そう、ですか……。では、メダル王様もさがさねばですねっ!」

 

「そうだね。旅先で見つかるといいよね」

 

 

 アリアが“ファイトです!”と両手拳を胸の前でグッと握リ締める様子を、アベルは可愛いなぁと優し気な瞳で見下ろしていた。

 そうして残りのツボ二つも同様に落として壊したが、中には何も入っていなかった。

 




小さなメダルの精……否、声の主は一体誰なんでしょうか……。
とりあえずおっさんの声っつーことでw

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
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