じゅーはちわ。
アリアメイン(?)の回です。
前回もそうだったっけ???
……では、本編どうぞっ。
アベルとアリアの二人は、ビアンカを捜しに森の奥へと歩いて行く。
前をアリア、少し後ろにアベルが続いていた。
「森の中なのにあんまり暗くないね(真っ暗じゃなくて良かった……)」
「ん? いつもこんなもんじゃないかなぁ……」
「へぇ……そうなんだ(夜なのに……。ゲームだからかな……? 視認性の問題とか何とか……? ふふっ、面白いなっ)」
なるほどね、とアリアが上を見上げると、樹々の合間から月明かりが差し込んでいる。
夜の森でも視界がそこまで悪くないのは、仕様なのかどうかはわからなかったが、歩くのに不自由がないのはありがたかった。
そうして二人で歩いていると、少し開けた場所に出たかと思ったら丁度ビアンカがアリアに向かって走って来る。
そして――。
“ドンッ!!”
……アリアに衝撃が走った。
「きゃぁ!?」
『きゃぁ!?』
ビアンカとアリアが勢いよくぶつかり、少女二人が尻餅をついてしまう。
「あっ!」
二人の様子に驚いたアベルは、目を見開き口を大きく開けていた。
「いっ! たたたた……もぅ何よ~……、アベル痛いじゃない……」
『あいたたた……。っ(お尻思いっきり打っちゃった……)』
ビアンカとアリアは互いに鏡合わせのような恰好で地面に座り込んでいる。
「だ、大丈夫?」
アベルは二人の間に入って、それぞれに手を差し出した。
「ありがと…………、……ん?(アベル何でそこに居るの……? 私とぶつかったよね……?)」
『ありがとう、アベル。びっくりしちゃった。でもビアンカちゃんが無事で良かった』
ビアンカは眉をひそめ不可解な面持ちで、アリアはほっとしたような顔で、それぞれアベルの手を取る。
アベルは二人を力強く引き上げ立たせた。
「怪我はない?」
アベルは二人を交互に見ながら声を掛ける。
「うん、平気。というか、私、今何にぶつかったの……?(人にぶつかった感じがしたんだけど……?)」
『……私でーす……』
ビアンカがお尻に付いた土を払いながらアベルに問うと、アリアもお尻を
「あははっ」
……アベルは吹き出してしまった。
アリアは目の前にいるのにビアンカはやっぱり見えないんだなと、笑った後で“ふぅ”と息を吐いた。
「何で笑うの? 何か変なこと言った?」
アベルが笑うので、ビアンカが訝しい顔で訊ねてくる。
その間、アリアはアベルの方を向いているビアンカの目の前で、満面の笑みを浮かべ両手を振ったり、彼女の額に息を吹き掛けたり、変顔をしてみたりと色々試していた(ちなみに額に吹き掛けた息はビアンカの前髪を揺らすことは出来た)。
「あはははっっ!!(ちょ、アリア見えないからってやりすぎだよっ)」
アベルは腹を抱えて笑う。
「ちょ、ちょっとアベルどうしたのよぅ……。急に笑い出したりなんかして……何か変なものでも食べたの?(今生温い風が当たったような……?)」
突然笑い出すアベルにビアンカは心配になり、「お腹痛いの?」とだけ告げて、“それとも頭がおかしいの?”とは言わずに眉根を下げた。
『……やっぱり見えないんだねぇ……(前髪は揺れたけどさ……)』
ビアンカの数センチ手前、鼻先が触れそうなくらいの距離でアリアはしょんぼりしながらビアンカを見つめる。
リアルビアンカちゃん、可愛いなぁ……。
今こんなに可愛いんじゃ将来美人さん確定だわ……。
アベルの未来のお嫁さん……だもんね。
……ビアンカを見つめるアリアの瞳はうっとりと惚けていた。
「ははっ……あっはっは! アリア面白すぎ……っ!」
「ありあ……? また
アベルがアリアの名を出すと、ビアンカの動きがピタリと止まる。
「え? あ、うん。アリアだよ?」
「それ……、ひょっとして人の名前?」
「うん」
ビアンカの質問にアベルは素直に頷いた。
『ちょっと、アベル』
「ん?」
『……ねえ、ビアンカちゃんには言わないで? 町の人とかに知られちゃうよ?』
アリアがビアンカから距離を取り、アベルの方へと向き直ると声を掛ける。
しぃ。と人差し指を口元に持って来て気まずそうに眉をひそめた。
「何で? 大丈夫だよ」
『……けど、私のせいでアベルが変に思われたらイヤだよ……申し訳ないわ(将来に関わって来るのよ!?)』
「大丈夫だよ。ビアンカは僕より二つも年上で、しっかりしてるから言いふらしたりしないと思うし」
――アリアは僕が変に思われるのがイヤなんだ……?
アリアの気遣いに、アベルの心はなんだかこそばゆい。
別に変に思われたって気にしないんだけどな……と、アベルはアリアを安心させるため、彼女の手を取りぎゅっと握った。
『……でも……。あなたは主人公だし……ヒロインに嫌われたりしたら……』
「主人公? ヒロイン? 一体何の話……?」
……アベルは目をぱちぱちと瞬かせながらアリアをじっと見つめる。
『っ、ぅ。その瞳で見ないでよ……(アベルに見つめられると、可愛すぎて何も言えなくなってしまうじゃない……)』
「ねえ、アリアー?」
つぶらな黒い瞳を真っ直ぐ向けられ、アリアの頬がぽっと赤く染まるが、暗くてアベルにばれることは無かった。
『っ、いや、まぁ……ヒロインならもう一人居るし……(いつ会えるのかは知らないけども……)』
ブツブツとアリアが小声で云う中、ビアンカが再び訊ねてくる。
「ねえ、アベル。そこにアリアがいるの?」
「あ……、えと……」
ちらり。
アベルはアリアに視線を投げるが、アリアは首を左右に振っていた。
「…………いるの?」
「…………うーん…………」
――アリアが嫌がるなら、言わない方がいいのかな……?
ビアンカにもう一度問われアリアの手を放すと、アベルは腕組みをして唸った。
煮え切らないアベルの様子にビアンカはしばらく黙っていたものの……。
「…………、はぁ……、もうどっちなの? まあ、いいや。それより今日はもう町へ帰りましょ。夜が明けちゃうわ」
「え? あ、そうだね」
ビアンカが空を見上げ、樹々の合間の月を指差すと、先程よりも随分と傾いていた。
「……戻ろっか」
『あ、うん。黙っててくれてありがとう、アベル』
「……うん。アリアが嫌なら言わないよ」
『アベル……』
アベルはアリアに声を掛けると、前を歩くビアンカに続く。
アリアはアベルの優しさに“聡い子だなぁ、さすが主人公”と感激していた。
アベルはそのカワイイ瞳で、誰でも従わせてしまう恐ろしい子なのです。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!