ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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では本編どぞ!



第百九十話 宿屋にて

 

 ――あれから酒場に戻るとピエールも目覚めており、四人は酒場を後にした。

 外に出ると、まだ明るいので昼間から酒を飲んで居たことになる。

 

 

「じゃー、宿に行きますか!」

 

 

 ヘンリーはアリアをエスコートしながら町を歩いて行く。

 アベルはその後ろでズキズキと胸を痛めながらピエールと共に歩いていた。

 

 

「主殿」

 

「……ん?」

 

「どうかなさったのですか? 何だかお顔が暗いようですが……」

 

「……あ、何でもないよ……。ただ……」

 

 

 ――アリアが何を考えているのか全く分からないんだ……。

 

 

 ヘンリーと楽しそうに会話するアリアの横顔に、アベルは切なげに溜息を吐き出した。

 

 

「はぁ……(さっきまですごくハッピーだったのに……)」

 

 

 項垂れるようにアベルは宿屋へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 アベルが重い足取りで宿屋に戻って来ると、先に入っていたヘンリーとアリアが受付をしていた。

 二人は既に手を放し、宿の人とやり取りをしている。

 アベルは大勢で行くのもどうかと思い、待合所(ロビー)で待つことにした。

 

 この宿屋のロビーにはテーブルと椅子が置かれていて、旅人は到着したらまずここで一息を吐くのだ。

 

 

 ――昔、ビアンカとここでレヌール城に潜入する作戦をこっそり話して、アリアがそれを優しく見守ってくれてたっけ……、

 

 

 と、アベルは懐かしさを感じながらテーブルに肘をついて、アリアの背中を惚けたように見つめていた。

 

 

「……主殿。まだまだ日は明るいようですから、部屋を取ったら庭にでも行ってみませんか? ……気分転換に」

 

 

 ふと、ピエールが誘って来るので、アベルはすぐ隣に佇むピエールに視線を移す。

 

 

「え、あ、うん。そうだね(どうしようかな……)」

 

「…………アリア嬢は手強いでしょう?」

 

 

 こそっとピエールが口元に手の甲を添え告げるので、アベルの頬が瞬時に赤く染まってしまった。

 

 

「っ!? な、何のことだいっ!?」

 

「ははは! わかっておりますとも! ()はどうぞ存分にその感情を味わわれると良いでしょう!」

 

 

 ピエールは首を縦に何度も下ろしながら納得するように頷いている。

 その態度がどうにも引っ掛かる。

 

 

「っ? 何ピエール? 今のどういう意味だい……?」

 

「何がですか?」

 

「…………君、何か知ってるのか?」

 

 

 ――前にも感じたことがあるけどピエールの態度が……、何だか勝ち誇ったように見えるのは気の所為か……?

 

 

 ピエールは自分よりも記憶がはっきりしている。

 つまり、この先に何が起こるか知っている可能性が高い。

 

 そう思ってアベルは訊ねるのだが。

 

 

「何かと申しますと……?」

 

 

 ピエールは首を傾げて何のことやらと とぼけてみせた。

 

 

「……僕の必要な時、必要なことを教えてくれる……んだったよね?」

 

「…………あぁ……。はい。ですが、話せないこともありますと以前お話したと思います。……特にアリア嬢に関してのことはお話し致しかねますね」

 

 

 アベルの質問にピエールが今度は首を横に振る。

 

 

「っ、ピエール! そんなこと言わないでさ!」

 

「私は彼女の傍に居れるだけで良いのです。主殿のような(やま)しい心など持ってはおりませんし」

 

「なっ……!? しっ、失礼だな、ピエール! ぼ、僕は別にやましいことなんて一つも……!!」

 

 

 ピエールが指摘すると、アベルの額から汗粒が浮き上がり、たらたらと頬を伝っていった。

 

 

 ――キ、キスしようとしたけど……、アリアに疚しい気持ちなど、持ち合わせた事なんて断じてない!!

 

 

 ……わけがないのである(前科有り)。

 

 

「…………本当に? ……彼女の後見人としてアベル殿に伺います。私に誓って言えますか?」

 

「うっ……。ち……ちか、…………っ(誓えるわけがないっ!!)」

 

 

 ずずいっとピエールが座るアベルに迫り、兜越しに奥の瞳が光った気がした。

 

 ピエールはあくまでも騎士でアリアを慕ってはいるが、彼女を護る立場であろうとしているようである。

 彼女を自分の娘か妹であるかのように見守っているのだ。

 

 そんなピエールから迫られ、アベルは何も言えなくなってしまった。

 

 

(……どうせ、僕はやましいことばっかり考えてるよ!!!)

 

 

 そもそも“アリアがあんなに魅力的だから悪いんだ!”と、アベルは黙り込んだまま目をぎゅーっと閉じて口をへの字にする。

 

 

「おーい、アベル。何しょっぱい顔してんだよ。部屋取れたぞ。三階だってさ、行こうぜ」

 

 

 ヘンリーが受付を済ませアベル達の元へとやって来る。

 その後ろにアリアもおり、アリアはピエールに声を掛けたのだった。

 

 

「私とピエールさんは二階ですよ」

 

「ぁっ、はいっ!」

 

 

 アリアに声を掛けられたピエールはさっきまでキリッとしていたのだが、喜びに身体をゆらゆら揺らして、アリアにワントーン下げた良い声で返事をする。

 四人は部屋に向かおうと廊下を歩き出した。

 先頭をヘンリー、アベル、後ろにはピエールとアリアが続く。

 

 

「…………、…………後見人ねぇ……ふーん……」

 

 

 階段を上がりながらアベルがちらりと後ろにいるピエールを窺うと、ピエールは移動をアンドレに任せ、後ろを向いてアリアに一生懸命話をしていたので、アベルはチクリと突いてやったのだった。

 

 

「…………な、何ですか?」

 

 

 声が聞こえたのか、ピエールが身体を前に向けアベルを見上げる。

 

 

「……やましい気持ち、本当に持ってないんだ?(一目惚れしたんでしょ?)」

 

「ぐ……」

 

 

 アリアに聞こえないようにアベルが問い掛けると、ピエールの兜からカタカタッと音が聞こえた。

 動揺しているらしい。

 

 

「……ピエールさん、どうかしたんですか?」

 

「ぁっ、いえっ!! 私は決してそんな邪な気持ちなどっ!!」

 

「え? よこしま……? この間、縦縞の方が好きっておっしゃってませんでしたっけ?」

 

「あっ、その、そういうことでは!!」

 

 

 最後尾のアリアに話し掛けられ、ピエールは狼狽えアリアとアベルを交互に視線を移す。

 

 すると、丁度アベルも振り返ったのか、タイミング良くアベルはアリアと視線が絡んでしまったのだった。

 

 

「…………あ、……っ」

 

「ぁ……アベルさん……」

 

 

 ぽぽぽぽっ、

 

 

 二人は目が合った途端、地下室での事を思い出したのか頬を染め俯いてしまう。

 

 

「…………っ(気まずい……、あんなことしなきゃ良かった……!)」

 

 

 アベルは目線をヘンリーの背の方へと戻し、残りの階段を上る。

 アリアも熱い頬に手を当てながらピエールの後ろについて行った。

 

 

 

 

 

 

 二階へと上がると、ヘンリーが部屋の一室を指差し口を開く。

 

 

「そこが今夜のアリアさんの部屋だな。お! あっちは何だろ? ちょっと寄ってみるか!」

 

「あっ、おい、ヘンリー? そっちは確かバルコニーだよ?」

 

 

 ヘンリーが廊下の奥に扉を見つけると、歩いて行ってしまう。

 アベルは昔の記憶を頼りに説明するのだが、

 

 

「へ~! バルコニーか! へへっ、大きな宿屋って面白いな!」

 

 

 ヘンリーが“行こう行こう”と楽しそうに告げるのでアベルは仕方なくついて行くことにした。

 

 

「……ふふっ、ヘンリーさん楽しそうで良かった」

 

「…………ええ」

 

 

 アベル達の後ろでアリアとピエールが微笑み合い、二人の後に続いた。

 




アベルさん、青春真っ只中ですね。楽しそうv
一方でヘンリー君は笑っているけど、色々複雑な想いを抱えているんでしょうね。

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