早めにチェックイン!
では本編どぞ!
――あれから酒場に戻るとピエールも目覚めており、四人は酒場を後にした。
外に出ると、まだ明るいので昼間から酒を飲んで居たことになる。
「じゃー、宿に行きますか!」
ヘンリーはアリアをエスコートしながら町を歩いて行く。
アベルはその後ろでズキズキと胸を痛めながらピエールと共に歩いていた。
「主殿」
「……ん?」
「どうかなさったのですか? 何だかお顔が暗いようですが……」
「……あ、何でもないよ……。ただ……」
――アリアが何を考えているのか全く分からないんだ……。
ヘンリーと楽しそうに会話するアリアの横顔に、アベルは切なげに溜息を吐き出した。
「はぁ……(さっきまですごくハッピーだったのに……)」
項垂れるようにアベルは宿屋へと向かうのだった。
◇
アベルが重い足取りで宿屋に戻って来ると、先に入っていたヘンリーとアリアが受付をしていた。
二人は既に手を放し、宿の人とやり取りをしている。
アベルは大勢で行くのもどうかと思い、
この宿屋のロビーにはテーブルと椅子が置かれていて、旅人は到着したらまずここで一息を吐くのだ。
――昔、ビアンカとここでレヌール城に潜入する作戦をこっそり話して、アリアがそれを優しく見守ってくれてたっけ……、
と、アベルは懐かしさを感じながらテーブルに肘をついて、アリアの背中を惚けたように見つめていた。
「……主殿。まだまだ日は明るいようですから、部屋を取ったら庭にでも行ってみませんか? ……気分転換に」
ふと、ピエールが誘って来るので、アベルはすぐ隣に佇むピエールに視線を移す。
「え、あ、うん。そうだね(どうしようかな……)」
「…………アリア嬢は手強いでしょう?」
こそっとピエールが口元に手の甲を添え告げるので、アベルの頬が瞬時に赤く染まってしまった。
「っ!? な、何のことだいっ!?」
「ははは! わかっておりますとも!
ピエールは首を縦に何度も下ろしながら納得するように頷いている。
その態度がどうにも引っ掛かる。
「っ? 何ピエール? 今のどういう意味だい……?」
「何がですか?」
「…………君、何か知ってるのか?」
――前にも感じたことがあるけどピエールの態度が……、何だか勝ち誇ったように見えるのは気の所為か……?
ピエールは自分よりも記憶がはっきりしている。
つまり、この先に何が起こるか知っている可能性が高い。
そう思ってアベルは訊ねるのだが。
「何かと申しますと……?」
ピエールは首を傾げて何のことやらと とぼけてみせた。
「……僕の必要な時、必要なことを教えてくれる……んだったよね?」
「…………あぁ……。はい。ですが、話せないこともありますと以前お話したと思います。……特にアリア嬢に関してのことはお話し致しかねますね」
アベルの質問にピエールが今度は首を横に振る。
「っ、ピエール! そんなこと言わないでさ!」
「私は彼女の傍に居れるだけで良いのです。主殿のような
「なっ……!? しっ、失礼だな、ピエール! ぼ、僕は別にやましいことなんて一つも……!!」
ピエールが指摘すると、アベルの額から汗粒が浮き上がり、たらたらと頬を伝っていった。
――キ、キスしようとしたけど……、アリアに疚しい気持ちなど、持ち合わせた事なんて断じてない!!
……わけがないのである(前科有り)。
「…………本当に? ……彼女の後見人としてアベル殿に伺います。私に誓って言えますか?」
「うっ……。ち……ちか、…………っ(誓えるわけがないっ!!)」
ずずいっとピエールが座るアベルに迫り、兜越しに奥の瞳が光った気がした。
ピエールはあくまでも騎士でアリアを慕ってはいるが、彼女を護る立場であろうとしているようである。
彼女を自分の娘か妹であるかのように見守っているのだ。
そんなピエールから迫られ、アベルは何も言えなくなってしまった。
(……どうせ、僕はやましいことばっかり考えてるよ!!!)
そもそも“アリアがあんなに魅力的だから悪いんだ!”と、アベルは黙り込んだまま目をぎゅーっと閉じて口をへの字にする。
「おーい、アベル。何しょっぱい顔してんだよ。部屋取れたぞ。三階だってさ、行こうぜ」
ヘンリーが受付を済ませアベル達の元へとやって来る。
その後ろにアリアもおり、アリアはピエールに声を掛けたのだった。
「私とピエールさんは二階ですよ」
「ぁっ、はいっ!」
アリアに声を掛けられたピエールはさっきまでキリッとしていたのだが、喜びに身体をゆらゆら揺らして、アリアにワントーン下げた良い声で返事をする。
四人は部屋に向かおうと廊下を歩き出した。
先頭をヘンリー、アベル、後ろにはピエールとアリアが続く。
「…………、…………後見人ねぇ……ふーん……」
階段を上がりながらアベルがちらりと後ろにいるピエールを窺うと、ピエールは移動をアンドレに任せ、後ろを向いてアリアに一生懸命話をしていたので、アベルはチクリと突いてやったのだった。
「…………な、何ですか?」
声が聞こえたのか、ピエールが身体を前に向けアベルを見上げる。
「……やましい気持ち、本当に持ってないんだ?(一目惚れしたんでしょ?)」
「ぐ……」
アリアに聞こえないようにアベルが問い掛けると、ピエールの兜からカタカタッと音が聞こえた。
動揺しているらしい。
「……ピエールさん、どうかしたんですか?」
「ぁっ、いえっ!! 私は決してそんな邪な気持ちなどっ!!」
「え? よこしま……? この間、縦縞の方が好きっておっしゃってませんでしたっけ?」
「あっ、その、そういうことでは!!」
最後尾のアリアに話し掛けられ、ピエールは狼狽えアリアとアベルを交互に視線を移す。
すると、丁度アベルも振り返ったのか、タイミング良くアベルはアリアと視線が絡んでしまったのだった。
「…………あ、……っ」
「ぁ……アベルさん……」
ぽぽぽぽっ、
二人は目が合った途端、地下室での事を思い出したのか頬を染め俯いてしまう。
「…………っ(気まずい……、あんなことしなきゃ良かった……!)」
アベルは目線をヘンリーの背の方へと戻し、残りの階段を上る。
アリアも熱い頬に手を当てながらピエールの後ろについて行った。
◇
二階へと上がると、ヘンリーが部屋の一室を指差し口を開く。
「そこが今夜のアリアさんの部屋だな。お! あっちは何だろ? ちょっと寄ってみるか!」
「あっ、おい、ヘンリー? そっちは確かバルコニーだよ?」
ヘンリーが廊下の奥に扉を見つけると、歩いて行ってしまう。
アベルは昔の記憶を頼りに説明するのだが、
「へ~! バルコニーか! へへっ、大きな宿屋って面白いな!」
ヘンリーが“行こう行こう”と楽しそうに告げるのでアベルは仕方なくついて行くことにした。
「……ふふっ、ヘンリーさん楽しそうで良かった」
「…………ええ」
アベル達の後ろでアリアとピエールが微笑み合い、二人の後に続いた。
アベルさん、青春真っ只中ですね。楽しそうv
一方でヘンリー君は笑っているけど、色々複雑な想いを抱えているんでしょうね。
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