ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ビアンカちゃんはどこに行っちゃったのさ。

では、本編どぞー。



第百九十一話 ビアンカの手掛かり

 

 二階のバルコニーに出ると、色とりどりの花の鉢植えが置かれ、心地良い緑の風を感じながらゆったりと寛げるようにテーブルセットが置かれていた。

 そのテーブルに宿泊客なのだろうか、独りの老人が寛いでいる。

 

 

「ん~!! ここの空気は美味しいなぁ! あ! 三階にもバルコニーがあるんだな!」

 

 

 ヘンリーが背伸びをしながら何気なく上を見上げると、三階のバルコニーが見えた。

 三階のバルコニーには葡萄(ぶどう)の樹が植えられているらしく、熟しているとはいえない薄緑色の小さな実が僅かに見てとれる(まだ収穫時期ではないらしい)。

 

 後で行ってみようかな、とヘンリーは見た事のない葡萄の樹を間近に見てみたい衝動に駆られたのだった(ぶどう自体は王子時代に食べたことはある)。

 

 

「……気持ちいい風ですね。景色もいいですし……(部屋からの眺めも良さそうです!)」

 

 

 バルコニーに面してアリアの泊まる部屋の窓が見え、彼女は泊るのが楽しみになる。

 町を囲む森から吹く緑の爽やかな風が、アリアの長い髪を掬っていった。

 この町の風は緩やかで、スカートを捲るような悪戯な風が吹くことは無さそうだ。

 

 

(綺麗だなぁ……)

 

 

 アベルはアリアに気付かれないようにこっそりと彼女を窺う。

 その瞳はもうすっかりアリアに夢中のように見えた。

 

 

 そこにふと、

 

 

「……旅のお嬢さん、ここはいい所じゃろう?」

 

 

 テーブルで寛いでいた老人がアリアに声を掛けてくる。

 

 

「あっ、はい! とっても!」

 

 

 アリアは風で乱れた後れ毛を耳に掛けながら、美しく微笑んでみせた。

 

 

「わしは昔、この宿をやっていたダンカンさんの知り合いでの。久しぶりに会いに来たのじゃ。けどダンカンさんは身体を悪くして宿屋をやめ、はるか海の向こうの山奥の村に引っ越して行ったらしい。あのかわいい娘さんにも会いたかったのう。残念じゃわい……」

 

 

 老人は話し終えると“丁度お嬢さんと同じ位じゃったな……”とアリアに笑みを向けてから淋し気に瞳を伏せてしまう。

 

 

「それって……(ビアンカさんのことかしら……?)」

 

 

 アリアがアベルに視線を移すと、アベルは黙って静かに頷く。

 アベルの瞳が寂し気に揺れた気がした。

 

 

「そうだったのか……残念だったなアベル。オレもお前の喜ぶ顔が見られなくて残念だよ……」

 

 

 ヘンリーも聞いていたのか、アベルの傍へとやって来て彼の肩に腕を回して励ます。

 

 

「…………、……うん」

 

「アベルさん……」

 

 

 静かに頷くアベルの元にアリアもやって来て、彼の手に触れると彼女はその手を自分の両手で優しく包み込んだ。

 

 

「ぇ……?」

 

「……元気出してくださいね」

 

 

 アリアはアベルを見上げ、弱り目で僅かにはにかむ。

 

 

 ……トクン。

 

 

 “あなたのことを心配していますよ”というアリアの表情に、アベルの胸が甘く疼いた。

 

 

「っ、あっ、僕は元気だよ!? 大丈夫!!」

 

 

 ――君が居るからね!

 

 

 アベルは空いた手をアリアの手の上に置いて逆に包み込む。

 ……と、アリアは固まってしまう。

 

 

「っっ!!?」

 

 

 ――アベルさんの手っ、大きいっ!!

 

 

 自分の手がアベルの手によって隠れてしまい、アリアは頬が熱くなった。

 

 

「……何だよ、アベル。あんまり残念そうでもないじゃん……、てか、何手を取り合ってんだよ……」

 

 

 ――オレの前でやめてくれる!?

 

 

 ヘンリーは二人の様子に頬を膨らませる。

 

 

「え……あっ! ご、ごめんっ! ごめんね、アリア!!」

 

「あっ、は、はい! だ、大丈夫です……」

 

 

 アベルが慌てて手を放すと、アリアは手を組み恥ずかしそうに俯いていた。

 

 

「……そろそろ行こうぜ。ここすげー熱くて居心地悪い」

 

「えっ、良い風が吹いて涼しいじゃないか」

 

「あー、熱い熱い。早く部屋で横になりたいぜ」

 

 

 アベルのツッコミなど聞く耳を持たず、ヘンリーはアベルとアリアをチラ見すると、扉を開けて建物の中へと入って行ってしまう。

 

 

「ヘンリー!? 一体どうしたんだ……?」

 

 

 ――こんなに涼しいいい風が吹いているっていうのに?

 

 

 アベルは微風に揺れる前髪に触れて、ヘンリーが何故去って行ったのか考えたが、わからなかった。

 

 

「……ぇと、も、戻りましょうか……」

 

「ぁ…………うん。っ、い、行こうか……」

 

「ぁ、は、はい……。ではお爺さん失礼します」

 

 

 アベルとアリアは互いに頬を赤く染め、ぎこちなく言葉を交わすと老人に会釈してバルコニーを後にするが、ピエールは独りポツンとバルコニーで風に吹かれ、背中に哀愁を漂わせていた……。

 

 

 

 

「アリア嬢も……主殿を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋内へと戻ると、アベルは一旦アリアの泊まる一人部屋へと彼女を送って行く。

 

 

「……へえ、一人部屋ってこんな感じなんだね。結構広いね。ゆっくり休んでね」

 

 

 アベルは部屋を見渡し、ふかふかのベッドとセンスのいい鉢植えと引き出しにやっぱりこの宿屋はいい宿屋だなぁと思うのだった。

 

 じゃあ、僕はこれで……とアベルは去ろうとするのだが。

 

 

「あっ、私、アベルさん達の泊まる部屋を見てみたいです」

 

 

 アリアはアベルを呼び止めていた。

 

 

「え? あ……、そうだ。昔、三階に泊ったことがあるんだった。うん、見に来て」

 

「あ、本当ですか? はいっ!」

 

 

 アリアはアベルの後ろについて、三階へと行くことにした。

 部屋を出ようとするとピエールが部屋に入って来たので彼女は……、

 

 

「ピエールさん。私、ちょっと三階を見に行って来ます。昔泊まったことがあるらしいので、何か思い出せるかもしれません。すぐ戻るのでピエールさんは休んでいて下さい」

 

 

 ピエールに部屋で休んでていいと告げ、アリアはアベルと共に三階に行ってしまった。

 またも見送る立場になったピエールは、黙ったまま廊下まで出て階段を上がって行く二人の背を見つめる。

 アベルとアリアは互いに はにかんでいて、心なしかそわそわしているように見えた。

 

 

 

 

「……時期が来れば、お辛くなるでしょうに……」

 

 

 

 

 ぽつりと零し、ピエールは二階の部屋の扉を閉めた。

 




アリアは二階に泊ることになってるので、老人の泊まる部屋は一体どこなのでしょうね……www
見えない部屋が複数ある! ……ということにしておこう。

確かドラクエVの世界ってキャラ達には視認できない町や村がたくさんあるとか何処かで聞いたような聞いていないような。
なので、ゲーム上に表示されていない家や部屋があっても不思議はない……ということでここは一つ良しなに!
というかアベル達が居なくても客の数が明らかに多いんよ……。

元ビアンカが居た宿屋が二部屋しかないなんて、そんなことある筈がないよね!

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
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