ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

三階の部屋へとやって来ましたよ。

では本編。



第百九十二話 三階からの眺め

 

 ――そうして、三階にやって来たアベルとアリアはというと。

 

 

「お邪魔します。わぁ……! 素敵なお部屋ですね!」

 

 

 三階の客室にやって来るなりアリアは瞳を輝かせていた。

 部屋の様子は十年前と変わっていない。

 アリアは窓の方へと歩いて行くと、窓を開け放った。開いた窓からは心地好い風が入ってきて、アリアの髪を靡かせる。

 ふわふわとスカートも微かに揺らすが、捲れることは無かった。

 

 

「いい眺めですね~っ!」

 

 

 アリアは風に揺れる髪を押えながら、町を見渡している。

 ここが町一番の高所になる為、広場のある湖が見え、水面がキラキラと輝く様や、教会の屋根の上の十字架に小鳥が止まる様、町を歩く人々の様子がよく見えた。

 

 その後ろでは、

 

 

((っち、惜しい! もうちょっとだったのに!))

 

 

 アベルとヘンリーは舌打ちをして互いに見合っていた。

 

 

『っ、何見てるんだ! ヘンリーはダメだよ!?』

 

『何言ってんだ、お前もだよ!』

 

 

 こそこそと二人はいがみ合う。

 

 

「……あ。いけない。お部屋よく見てみなきゃですね!」

 

 

 アリアがアベルとヘンリーに振り返ると、二人は互いに首元を掴み合っていた。

 

 

「え……、ど、どうしたんですか??(喧嘩!?)」

 

 

 アリアが瞳をぱちぱちと瞬かせ二人を窺うと、二人は同時に手を放す。

 

 

「あ、い、いや……何でもないよ? なっ、ヘンリー?」

 

「ああ、な、何でもない。なっ、アベル?」

 

 

 “オレ達は仲が良いんだぜ!”

 

 

 ヘンリーは咄嗟にアベルと肩を組んで仲良しアピールをした。

 アベルはアリアから わからないようにヘンリーの肩を強く掴む。

 

 

 ギュゥゥゥゥ!

 

 

(地味に痛ぇ! アベルの奴!)

 

 

 咄嗟にヘンリーはアベルに仕返しと、彼の足を踏んづけたのだった。

 アリアとの間にベッドがあるので、踏んづけた様子は彼女からは見えない。

 

 

「いっ!!?」

 

 

 アベルは眉を顰める。

 

 

「ふふっ、そうですか。喧嘩するほど仲が良いとも聞きますよね。アベルさんとヘンリーさんは本当に仲良しなんですね(あれ? 今アベルさん何か言わなかった?)」

 

 

 アリアが二人を見つめるが、アベルとヘンリーはにこにこするだけで黙り込んでいた。

 

 

「……? どうかしましたか?」

 

 

 何だか二人の様子がおかしい気がする……、とアリアは首を傾げるのだが、アベルとヘンリーは彼女に笑顔を向けながら互いに地味な争いを繰り広げる。

 

 

『っ、アリアをそういう風に見るなって言ったよね!?』

 

『うるさいな、可愛いんだからしょうがないだろ』

 

『君にはマリアさんがいるだろう!?』

 

『それとこれとは別だよ!(ってかそもそもアリアも好きなんだけど!?)』

 

 

 ベッドの下で二人は互いの足を踏ん付け合う。

 意地になってやり合い、二人はちょっぴり涙目になっていた。

 

 こんなこと初めてしたような気がする……と、アベルは足を痛め涙目になりつつもこう思う。

 

 

(やっぱりアリアと居ると、退屈しないなぁ! ……痛い……)

 

 

 ヘンリーに負けるわけに行かないので、決して“痛い”なんて口には出さなかった。

 

 

 不意に、ピィ、と。

 

 

 窓に一羽の小鳥が何処からともなく飛んで来て、窓枠に止まる。

 

 

「…………? あ、小鳥……」

 

 

 アベルとヘンリーの様子を見ていたアリアだったが、小鳥の声に窓へと向き直った。

 

 

「ふふっ、小鳥さんこんにちは。私はアリア。あなたは……?」

 

 

 アリアが人差し指をそっと小鳥の前に差し出すと、小鳥は小さな翼を羽ばたかせアリアの肩口に乗っかる。

 

 

 “チチチ……ピィ”

 

 

 小鳥がアリアに返事をするようにさえずった。

 

 

「へえ……、旅をしているの? ふふっ、私と同じだね」

 

 

 “ピィピィ”

 

 

 アリアが言葉を掛けると、小鳥がさえずる。

 小鳥がさえずると、アリアは穏やかに目を細めて微笑んだ。

 

 彼女のその様子にアベルとヘンリーはいつの間にか足の踏みつけ合いを止め、見惚れる。

 

 

((天使……いや、女神がいる……!))

 

 

 つい、ぼーっとしてしまう二人。

 そうしてアリアが小鳥と二言三言会話をし終えると、小鳥は飛び去っていく。

 

 

「またね」

 

 

 アリアは手を振って、飛んでいく小鳥を見送っていた。

 

 すると、

 

 

「……アリア」

 

 

 アベルがヘンリーから離れ、アリアの傍へとやって来る。

 

 

「……あっ、ごめんなさい。私ったら小鳥に夢中になってしまって……」

 

「いや、いいよ。もしかして、アリアって動物と話が出来たりするのかい?」

 

 

 アリアがアベルの声に振り返ると、アベルは優し気な瞳で彼女を見下ろしていた。

 

 

「え? あ、はい……何となく……ですけど……」

 

 

 ほんのりと頬を赤らめ、アリアはアベルを見上げ小さく頷く。

 

 

「へぇ……何となくわかるんだね……」

 

 

 身長差で自然と上目遣いになってしまう彼女にアベルは、

 

 

 “くっ、可愛い……!!”

 

 

 と、胸がきゅぅっと締め付けられ「ぉぅふっ!」と妙な声を上げてしまった。

 

 

「…………おふ?」

 

「っ……、な、何でもないんだ……。ぼ、僕は魔物の気持ちが何となくわかるんだ」

 

 

 ――アリアに見つめられると顔が熱くなるな……。

 

 

 アリアが首を傾げるとアベルは視線を外し、彼女の隣に移動して窓枠に手を掛ける。

 恥ずかしくて彼女の顔をまともに見れないので、町の景色を見下ろした。

 

 

「ふふっ、そうですよね。アベルさん、魔物を仲間にしちゃえるくらいですもの。すごいです」

 

 

 アベルさん頬っぺが赤いです……。

 もしかして、照れているのですか……?

 

 

 アリアははにかみつつも、頬の赤いアベルの横顔を見つめる。

 アベルはアリアの視線に、腋汗が滲んでいくのを感じた。

 

 

(アリアが僕を見てる……。嬉しいけど恥ずかしい。緊張する……!!)

 

 

 アベルの鼓動がドクドクドクと逸る。

 

 

(い、言わないと……!)

 

 

 ヘンリーやピエールといつも何を話しているのかはわからないが、僕だって話したっていいはずだ。

 “アリアともっと話がしたい!”その一心でアベルは口を開いた。

 

 

「……ど、動物と魔物の言ってることがわかるなんて……僕達、に、に……」

 

「…………、……にに?」

 

 

 窓の外を見下ろしながらアベルは話すが、どうにもうまく言えずに(つか)えてしまった。

 最後の一言だけでも、彼女の目を見て言いたいものだ、と。

 

 アベルは隣に立つアリアに顔を向けた。

 

 

 

 

「似てるよね……?」

 

「っ! …………、ぁ……、は、はい……」

 

 

 アベルが恥ずかしさに打ち勝ちアリアに優しく笑い掛けると、彼女は小さく息を呑んでうんうんと頷く。

 彼女も恥ずかしかったのだろうか……、俯いてしまった。

 

 

「……アリア……(何でそんな反応するんだ……?)」

 

 

 アベルの位置からは髪の間から彼女の耳が見えて、その耳が赤く色付いているのがわかる。

 

 

 ――君がそんな反応すると、勘違いしてしまいそうだよ……。

 

 

 可愛いからしばらく見てようかな……とアベルはアリアが顔を上げるまでじっと彼女を見下ろしていた。

 

 

 そんな中、

 

 

「…………、オレ、ちょっと外で空気吸って来る。ここ、甘ったるくてヤダ」

 

 

 ヘンリーが呟いて静かに部屋を出て行き、扉の閉まった音がした。

 




ヘンリー君、居た堪れないよね……。ごめんね。

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