芽吹いちゃった。
では、本編どぞ。
プラチナブロンドの長い髪に紫水晶の瞳、スラっと細く、出るとこは出ている見目麗しい女性が、持って来た本を祭壇の上にそっと置いて額に薄っすら掻いた汗を拭った。
彼女は本が重かったのだろう、“ふぅ”と小さく息を吐き出す。
「っ……!?」
は~~!! めっちゃくちゃ綺麗な
天使みたいだ……、こんな美人が世の中にいるんだ!?
ヘンリーは彼女の見目に驚き、目を奪われる。
「……ん? ……あっ、あなたはタルに入っていた方ですか……?」
「ぁっ、は、はい……(……声まで綺麗だし……)」
女性がヘンリーに声を掛ける。
女性の声は透き通るような落ち着いた美声で、ヘンリーは二度びっくりした。
――あれ? この声、何処かで聞いたことがあるような……?
「……ご無事で良かったです……。お連れのマリアさんが心配していらっしゃいましたよ。もうお一方のアベルさん……? ……は、先程お部屋に寄ったのですが、まだ目覚めてらっしゃらないみたいですね……」
「あ、そ、そうなんだ。その内目覚めると思う……ます!」
――って、何だよ、思うますって!!
綺麗な女性に見られてヘンリーは頬を赤らめ、テンパってしまう。
「……心配でしょうけど……、私、お世話頑張りますから、どうか目覚めると信じて下さいね」
「あ、ああ、もちろん! 大丈夫大丈夫! あいつ頑丈だから!」
女性が不安そうな顔をするので、ヘンリーは励ました。
すると、
「ふふっ、そうなんですね。それならよかったです」
女性は天使のような優しい笑みで目を細める。
「っ!!??」
彼女の笑顔にヘンリーは目を丸くした。
その笑顔、どこかで見たことがあったような……!?
いや、でもこんな綺麗な女の子の知り合いなんていないはず……。
そんなことを考えていると、マザーが女性の持って来た本を確認しながら告げる。
「ヘンリーさん。マリアさんがもう少ししたら沐浴されるので、会いに行くのでしたらお早めになさるか、後にするかでお願いしますわ」
「あっ、今行って来ます!」
「ええ、早い方がマリアさんも安心されると思いますわ」
マザーから急いだ方がいいと急かされ、ヘンリーはマリアの居るであろう寝室へと向かうため、女性に会釈し階段を下りていく。
すると、階段を下りるヘンリーの背後、祭壇からマザーと女性の会話が聞こえた。
『あら、この本一冊間違っているわ。
『え? あっ、すみませんっ! 同じタイトルだったから間違えて持って来てしまいました。下巻が必要だったんですね! すぐお取替えします!』
女性は赤い表紙の本を手にする。
「っ!!??(今なんて言った……? アリア? アリアだって!?)」
マザーの言葉にヘンリーは振り返って祭壇を見上げた。
と、丁度女性が本を抱えて階段を下りて来る。
「…………ぁ。……どうかなさいましたか?」
階段途中で立ち止まったままのヘンリーを訝しみ、女性は首を傾げた。
「っ……。き、キミは……、アリアっていうのかい?」
「え? あ、はい…………、アリアと申しますが…………」
急ぐのでお先に失礼します……と、【アリア】と名乗った女性はヘンリーとすれ違い、階段を先に下りて書庫へと入って行った。
ヘンリーの手がカタカタと震える。
「っ!? う、うそだろ…………!? そんな……、そんなことって……!!!? っ、うわっ!?」
脚もガクガクと震え、不意に足を滑らせるとヘンリーは一階へと転げ落ちた。
「っ!? だ、大丈夫ですか??」
大きな落下音にマザーが祭壇から離れ、階段上までやって来て上から声を掛ける。
「だ、大丈夫です……。っ、ててて……、ちょっとお尻を打っただけ……」
お尻を強打したものの他は何ともないので、ヘンリーはマザーに軽く手を振ると、立ち上がって歩き出した。
……アリア? アリアだって!?
そんなはずないだろ?
そんなわけないじゃないか!!
彼女は天使で、普通の人間には見えない存在なんだぞ!?
――あんな綺麗な天使みたいな女性がアリアなわけ…………。
天使? ……あ。
彼女、
ヘンリーはアリアが消えた書庫の扉に視線をちらっとだけやって、マリアの居る寝室へと向かうのだった。
◇
「……マリアさん!」
ヘンリーがシスター達の寝室に入ると、部屋の奥、一番端のベッドにマリアは身体を起こし本を読んでいた。
服は借りたのか、真っ白なワンピース姿だった。
身体や髪も洗ったのかすっかり綺麗になって、それだけで随分垢抜けた気がする。
「ヘンリーさん! 気が付かれたんですね。ああ、良かった! アベルさんは? アベルさんはどうなのですか!?」
ヘンリーが声を掛けるとマリアはアベルの事を訊ねて来たのだった。
「え、あ……、う、うん。アベルは大丈夫だよ、まだ気が付かないけど……、何か気持ち良さそうに寝てたからその内目を覚ますはずさ」
そうだ、マリアさんはアベルのことを……。
って、マリアさん綺麗だな……。
こんなに綺麗だったとは……。
奴隷姿のマリアは薄汚れてはいたが、可愛らしい顔立ちをしていたよなとヘンリーは思い出していた。
「そうですか……、それなら良かったですわ……。心配ですけれど、今は修道院の方々にお任せして、私達も元気にならねばいけませんわね」
「うん、そうだね。って、オレもう結構元気なんだけどな。目覚めてすぐここまで歩いて来たし」
マリアが“私はまだふらついてしまって動けないんです”とはにかむとヘンリーは隣のベッドに腰を下ろし、力こぶをマリアに見せつける。
「まあ! ふふふっ、頼もしいですわ。ヘンリーさん」
「はははっ、そうだろっ?」
「心配していたので、お会いできて嬉しいですわ。私も明日には元気になると思うのですが……」
マリアは申し訳なさそうに瞳を伏せた。
「ゆっくり静養しなよ。アベルもまだ目覚めてないし、ここの人達も元気になるまでいればいいって」
「…………はい」
ヘンリーがそう言うと、マリアは目を細めて穏やかに微笑んだのだった。
それからヘンリーはマリアに【光の教団】のことや、兄ヨシュアの事、奴隷となった経緯等々を訊いたり、自分の身分は黙っておいて、アベルとの仲を話したりと身の上話に花を咲かせた。
タルで漂流していた時は船酔いで話どころではなかったので、苦しい場所から脱出した者同士、意気投合する。
「ふふふっ、本当にそうですわね……!」
「だろっ!? そう思うよなっ!」
――マリアさんと喋ってるの楽しい……っ!!
ヘンリーの話にマリアが相槌を打ち、笑う。
ヘンリーはマリアの笑顔に癒され、先程出会ったアリアのことなどすっかり忘れてしまうのだった。
と、そこへ。
コンコン。
扉がノックされ開いた。
「……マリアさん、そろそろ沐浴のお時間なのですが、宜しかったでしょうか?」
聞こえて来た女性の声にヘンリーはハッと我に返る。
アリアが大きなタライを抱え部屋に入ろうとしていたのだ。
タライの中にはタオルや着替えが入っており、扉前でアリアは立ち止まっていた。
アリアとの再会にアベルもびっくりしてたけど、ヘンリーもびっくりしたよね!
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