後悔するくらいなら始めからすんなってね。
では、本編どぞ。
「「…………?」」
ヘンリーとマリアは部屋に入って来ないアリアに首を傾げる。
と、パタン。
開いた扉が閉まった。
「……え……(閉まったぞ?)」
ヘンリーは眉を顰める。
カチャ、と再び扉が開く。
……だが、アリアは入って来なかった。
――再び扉が閉まる。
「……あの……ひょっとして、アリアさん入って来れないんじゃ……」
「え」
「昨日も確か扉の前に立ってらして、中々入って来られなくて……。良かったら開けて差し上げて下さいませんか?」
「あっ! そ、そうだなっ! わかった!」
マリアに云われ、ヘンリーは扉へと向かった。
「…………だ、大丈夫ですか?」
「っ、あっ! すっ、すみません……。ちょっと横着してしまって……」
ヘンリーが扉を開けると、アリアは顔を真っ赤にして湯の入ったバケツを二つ腕に掛け、タライを持ち、部屋に入ろうとしていた。
腕がぷるぷると震えている。
「……横着……、…………確かに。オレが持つよ」
ヘンリーは彼女から荷物を奪う。
「あっ、す、すみません……! では、私が扉を押えていますねっ」
アリアが扉を押さえると、ヘンリーは彼女から奪ったタライとバケツをマリアの元へと運んだのだった。
「ここに置けばいいのかな?」
ヘンリーはマリアの隣のベッドの上にタライを、ベッドの脇には湯の入ったバケツ二つを下ろした。
「あっ、はい。ありがとうございます。……マリアさん。これ、新しいお洋服です。沐浴が終わりましたら着替えて下さい」
アリアはタライに入っていた洋服とタオルをまとめてマリアに手渡す。
「ありがとうございます、アリアさん。……すみません。ヘンリーさん、私これから沐浴で……」
「あっ! っ、そ、そっか! ごめんっ、オレもう行くわ! また後で来るよ!」
ヘンリーは“ぽっ”と頬を赤くして慌てて部屋を出て行った。
残ったアリアはというと、
「マリアさん、お手伝いが必要ですか?」
「あ、いえ。もう大丈夫です。自分で出来ます」
昨日はマリアの沐浴を手伝ったらしく、今日も介助が必要かタライを床に置きながら訊ねていた。
マリアは必要ないとワンピースを脱いで、下着姿になるとアリアにそれを渡す。
そして、タオルを湯に浸して絞ると身体を拭きだしたのだった。
「わかりました。ではまた後で片付けに伺いますね、この服洗っておきますので」
「何から何まで……ありがとうございます」
「ふふっ、昔、私もこうしてお世話になっていたんです。気になさらないで下さい」
アリアはマリアの着ていた服を手に部屋を後にした。
◇
「……よし、次は洗濯っと」
寝室から出たアリアは今度は洗濯をしに修道院の外へと出て行く。
「…………本当に、アリア……、なのか……?」
確かに面影はあるけど……。
けど、オレのこと何で憶えてないんだ……?
外に出るアリアの背後で柱の陰に隠れていたヘンリーは、眉根を寄せ腕組みをし彼女を見ていた。
うじうじしているのは性に合わない。
こんな時には直接訊いてみるに限るぜ!
ヘンリーはアリアを追って外へ行こうとするのだが。
「……ヘンリーさん、お待ちになって。お訊ねしたいことがあるのですが、ちょっと宜しいですか?」
急にマザーに呼び止められたのだった。
「え……? ま、マザー? 別にいいです、けど……?」
何だ? 何かまだ話すことあったっけ?
ヘンリーは首を傾げるが、マザーが“ここではちょっと……”というので、書庫へと連れて行かれたのだった。
◇
書庫――――。
そこは別名【特別室】というらしい。
そこで本を虫干ししていたショコシスにマザーは声を掛け、彼女に外してもらった。
ショコシスが扉を閉じて部屋から居なくなるとマザーが口を開く。
「……これで、お話が出来ますわね」
「……あの?」
「十年」
「は?」
突然マザーが目を閉じ告げるので、ヘンリーは瞳を瞬かせる。
「…………、ヘンリーさん。あなた、アリアさんを知っていらっしゃるのね?」
「っ!!?(な、なんで!?)」
マザーの指摘にヘンリーは何故わかったのか問いたかったが、それよりも先に彼女が話し出すので言えなかった。
「……アリアさんは、十年前この近くで……――――」
マザーの話をヘンリーは黙って最後まで聞いた。
アリアが大怪我を負ったこと、八年もの間眠っていたこと、目覚めてからはここで奉公していること。
そして最後まで聞くと、受け入れたくなかった現実を突き付けられ胸が痛んだ。
――アリアはオレの所為で記憶を失ってしまった……。
「っ…………、そう……、だったんですか…………」
ヘンリーは話を聞き終え拳を握り締める。
「彼女とはどういったお知り合いなのですか? もしかして、アベルさんともお知り合いなのでしょうか? 十年もの間、彼女に関する情報が何も無かったのです。どうかお教えいただけませんか? 私は彼女をお救いしたいのです」
マザーは胸に余る思いでいるのか、眉根を寄せヘンリーに頭を下げ頼み込む。
「……ぁ……、あー……っと……。オレとアリア……、いやアベルもだけど……、十年前、オレ達三人は友達だったんです」
マザーのあまりの必死さに、ヘンリーはアリアのことを話し出した。
アベルとアリアは元々友達だったこと、途中で自分も友達になったこと。
そして…………、
「……っ、ただ、ア、アリアは途中で親が迎えに来て……、オレ達とは別れたんです……よ。だからその後何があったかは分からないんだ」
ヘンリーは嘘を吐いたのだった。
ヘンリー君……。
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