ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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アベルがカワイイ。
アベルがカワイイ。
ホンマにカワイイ。

妄想全開いってみますっ!

では本編どうぞ!



少年期【ビスタの港~サンタローズ】
第一話 またか……


 

 ――もう、何度目だろうか。

 僕はこの光景を何度も見ている気がする。

 

 

 紫色のターバンを巻いた黒髪に、可愛らしい顔付きの少年アベルの目の前には大海原が広がっていた。

 

 歳はまだ六つ。

 その彼は船の甲板で遠くを見つめていた。

 

 いつからなのかは思い出せないが、随分前から父親と共に旅をしている彼は、今、船で航行中である。

 

 小さい身体にまだあどけない愛くるしい瞳が、穏やかな海を映していた。

 その瞳は少し大人びていて、憂えたようにも見えるのは気の所為なのか。

 

 

「…………、また……」

 

 

 アベルがそっと瞳を伏せると、背後から鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 

 

「……あ、カモメだ」

 

 

 声のする方へと視線を向けると、カモメが数羽、羽ばたいていた。

 遠くに陸地が見える。

 

 

「坊や、ビスタの港が近いぞ。下船の準備をして来るといい。お父さんにも教えてあげな」

 

「うん」

 

 

 傍を通りかかった船員に言われて、アベルは父の居る船室へと向かった。

 

 

「……何度目かなぁ……、この光景……」

 

 

 全てを憶えているわけではない。

 ただ、この光景を何度か見ている気がする。

 

 

 甲板を歩きながらアベルは考えていた。

 

 

「……何だっけ……。うーん……、わかんないや……」

 

 

 アベルは額に手を当て、思案し続けるが、頭の中に靄が掛かったようにそれ以上は考えが纏まらなかった。

 

 

「……わかるのは……、また(・・)ってことだけ……かぁ……」

 

 

 アベルは“ふぅ”と息を吐いて、父パパスが居る部屋への階段を下っていく。

 

 

「父さん、もうすぐ港に着くって」

 

「おお、そうか。わかった。忘れ物をしないようにしよう」

 

 

 アベルがパパスに告げた頃、船は陸へと近付いていた。

 舵を取る船員には既に港が目に入っている。

 

 

 ……もうすぐビスタの港。

 

 

 小さな港ではあるが、パパス達親子を降ろすために船は立ち寄る。

 船が桟橋に接岸し始め、パパスとアベルも下船するために甲板へと上がって来ていた。

 

 

 ――この光景、やっぱりいつもと一緒だなぁ……。

 

 

 って、いつもってなんだろ……?

 さっきからなんで僕はこんなことを思うの……?

 

 

 アベルは前を歩く父を見上げながら、はぁ、と溜息を吐いたのだ、が。

 

 

「…………っ、…………え!?」

 

 

 パパスの頭上、帆柱の先端程の高さの上空に、翼の生えた白っぽい髪の幼い少女がフラフラと流れていくのを見つけてしまった。

 

 

「うそ……(いつもと同じじゃない……!?)」

 

 

 アベルは目を見開いて、立ち止まってしまう。

 

 

「アベル、どうした?」

 

 

 その内にパパスが振り返り、後ろについて来ない息子の様子を窺った。

 

 

「父さん、……天使。天使がいるよ」

 

 

 アベルは空を漂う少女を指差す。

 

 

「天使? ……はっはっは。私にはお前が天使だよ、アベル」

 

 

 パパスはアベルの指差す方をちらりと見やるが、少女を見つけられなかった様子で、アベルの頭に手を置くと、優しい笑顔で撫でた。

 

 

「っ…………(本当なんだけどな……、あっ……! 行っちゃう……!)」

 

 

 アベルはパパスに頭を撫でられながらも、少女を目で追うが、少女は陸地へと流れて行ってしまった。

 

 

 ――どこに行くんだろう……? こんなこと初めてだ……。

 

 

 ドキドキとアベルの小さな心臓が逸る。

 アベルは少女の姿が見えなくなるまで眺めて、胸の高鳴りを感じていた。

 

 

 すると。

 

 

「さて、アベル船が泊まったようだ。そろそろ行こうか」

 

「う、うん……(あの子……一体どこに行ったんだろう……? 一緒の方向だといいんだけど……)」

 

「村に戻るのはほぼ二年振りだ……。アベルはまだ小さかったから村のことを憶えていまい」

 

 

 パパスに連れられ、アベルは少女が消えた空を見ながら降り口へと向かう。

 降り口には歩板(あゆみいた)が既に設置されていて、直ぐにでも下船できる状態だ。

 

 

「おや? 船長。どなたか船に乗り込まれるようだな」

 

 

 降り口へと着くと、パパスの声がしてアベルは港を見下ろした。

 護衛らしき人と、恰幅のいい上質な生地の服を身に纏ったおじさん、それに小さな青い髪の女の子が船に向かって歩いてくる。

 

 

(あっ……、あの子は…………、…………誰だったっけ……?)

 

 

 アベルは青い髪の女の子に気が付くと、目を見開いた。

 

 彼女のことを知っているような気もするが、よく思い出せない。

 ……アベルは黙って三人を見ていた。

 

 

「おお! ルドマン様。お待たせ致しました!」

 

 

 船に乗り込もうとする恰幅のいいおじさん、ルドマンに船長が声を掛けると。

 

 

「これは旅のお方。お先に失礼致しますよ。ご苦労だったな、船長」

 

 

 ルドマンは船に乗り込んだのだ。

 

 

(ルドマンさん……。どこかで聞いたことがある気がするなぁ……)

 

 

 アベルは、立派な髭を手で弄びながら話をするルドマンをじっと見るが、やはり思い出せずにいた。

 

 

「お帰りなさいませ、ルドマン様! そのご様子では今回の旅は素晴らしいものだったようですな」

 

「もちろんだよ船長。さあ、わしの娘を紹介しよう! フローラや。こっちへ上がっておいで」

 

 

 ルドマンが船の向こう、歩板の上で控えていた女の子、フローラに声を掛けると、彼女は船に上がろうと試みる。

 だが、幼年の女児には入口が高くて上がれなかったようだ。

 

 

「おや? フローラにはこの入口は高すぎたかな?」

 

「どれ私が手を貸しましょう」

 

 

 パパスはフローラの傍に寄ると、彼女の手を引いて船に乗り込ませてやった。

 

 

「あ、ありがとう……」

 

 

 フローラは恥ずかしがり屋なのか、照れたように軽く会釈する。

 

 

「これは旅のお方、ありがとうございました。よしよしフローラや。長旅で疲れたろう。悪いがフローラを奥の部屋に連れていってやってくれ」

 

「はい! かしこまりました!」

 

 

 ルドマンから指示を受けた船員がアベル達がいた部屋とは異なる奥の部屋(・・・・)とやらへフローラを連れて行った。

 その際にフローラがちらりとアベルに視線を送っていく。

 

 

(ん……? あ、……今、目が合っちゃった……。可愛い子だったなぁ……。何だろう……なんだか懐かしい感じがしたな……。)

 

 

 アベルはフローラの背中を見送った。

 

 

「いや、お騒がせしました。さあ、港へどうぞ」

 

 

 フローラも無事乗り込み、ルドマンは乗り口の場所をパパス達に譲ると奥の部屋へと去って行く。

 

 

「さあ、アベル忘れ物はないか? タンスの中も調べたな?」

 

「うん」

 

「では、長い船旅であったがこの船ともお別れだ。降りるとしよう」

 

 

 パパスとアベルは歩板に降りると、船に振り返った。

 

 

「じゃあ船長! 随分世話になった……。身体に気を付けてな!」

 

「元気でな。坊やもたまにはおじさん達を思い出してくれよ?」

 

 

 船長に頭を撫でられ、アベルは「うん」と笑顔で答える。

 

 そうして二人は歩板から桟橋へと下りて、船を見送ったのだった。

 




アベルがカワイイ。
アベルがカワイイ。
ホンマにカワイイ。

そんなパパスでした。

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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!

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