だいじゅーきゅーわ。
三人はアルカパに一度戻ります。
では、本編どうぞ!
「さすがにサクサク解決とは行かないわね」
「そうだね。この辺りの魔物には慣れて来たけど、何も準備しないまま行くのは危険だから」
三人は月明かりの下、森を出てアルカパに向け平原を歩いて行く。
平原は見通しが利く分魔物に見つかりやすいが、三人共背が低い為に草の陰に入りやり過ごすことも容易だった。
アベルとビアンカは時折現れる魔物に瞬時に戦うかどうか判断し、戦うこともあれば、戦闘自体を回避するために草の中に身を潜めやり過ごしている。
それをアリアはハラハラしながら二人の邪魔にならないよう下がって見ていた。
そんな緊迫した状況にも拘わらず、ごく普通にアベルとビアンカは楽しそうに会話を続けている。
「あっ、伏せて!」
『わぁっ!?』
「伏せてるよっ」
不意にアベルはアリアの頭を押さえて、彼女に圧し掛かるようにして草むらの中へと身体を沈ませる。
ビアンカは既に伏せていたのか、サムズアップして得意げに微笑んでいた。
三人が身体を伏せ終え少し経つと、ドラキーの群れがパタパタパタと通り過ぎていく。
そうしてドラキーの群れが去って暫くしてから、アベルはアリアにこっそり「もう大丈夫」と声を掛けて立ち上がった。
「……明日こそレヌール城に行かなくちゃね」
「うん、そうだね。でも僕、明日サンタローズに帰っちゃうけど……?」
何事も無かったようにアベルとビアンカは歩き出す。
さっき戦闘になっていたら怪我をしていたかもしれないというのに、何故こんなに冷静なのか。
『すご……』
気が付くとアリアは小さく呟いていた。
……すごいなこの子達、魔物が襲ってきても冷静に対処してるし……。
異世界人すご過ぎ……。
みんなこうなの……?
と、アリアは黙って二人の後ろを歩いて行く。
「えっ!? やだ、それは困るっ。ネコさんを助けなきゃ! アベルどうにかして明日も泊まって行って?」
「え……、あ。うん、そうだよね。助けてあげないとだよね」
と、アベルは前にもこんなことがあったような気がして、苦笑いを浮かべた。
「そうだよ! ネコさんが待ってるんだからっ」
ビアンカは子ネコを助けるために必死だ。
「じゃあ、父さんに話してみる……?」
「え、それはダメ。これは私達が解決しなきゃ! 大人が入って来るとややこしくなるんだから」
アベルの言葉にビアンカは「何かいい方法ないかなぁー……」と腕組みしながら歩いて行く。
「……アリアは、どうしたらいいと思う?」
『へ……? あ、私?』
ビアンカが一人でぶつぶつ云いながら前を歩いているので、アベルはすぐ後ろに居るアリアに声を掛ける。
「うん、どうしたらいいかな? 子ネコを助けるにはレヌール城に行くしかないよね?」
『……うーん……。けど、子供達だけで行かせるのは心配だな……。パパスさんも心配するんじゃ……?』
「…………? ……アリアも子供だよ?」
アリアが顎に手を当て唸ると、アベルは不思議そうな顔で呟いて……、
『はっ! そ、そうだったね……(私、中身は違うの……、とは言えない……)』
「ははっ。アリアって何か時々お母さんみたいなこと言うよね」
『そ、そう? ……ってだから、私はアベルの一つお姉さんなんだって……、……わわっ!?』
突然小石に躓きアリアは前のめりになるが、咄嗟にアベルが手を引いて転ばないように支えてくれた。
『っ、ありがと……』
「足元気を付けてね。……あははっ、ビアンカの方がしっかりしてるよね」
アベルが前を歩くビアンカを見ると、彼女は俯き加減でぶつぶつ云いながらも目の前に大きな岩が迫ると、スッと避けて歩いている。
「つまり……、パパスおじさまがもう一泊してくれるように仕向ければ……」
ビアンカはどうにかアベル達をアルカパにもう一泊させる方法を考えているようだ。
アリアは感心して見ていた。
『……すごい』
「……ね、アリアって……」
『ん……?』
「……飛べたりするの?」
アベルは今更ながらにアリアに訊ねてみる。
サンタローズの洞窟でも、アルカパに行く時でもアリアは歩いていて、目覚めてから一度も空を飛んでいない。
気にはなっていたが、訊く機会がなかったので今になって訊いてみたのだ。
『へ……? あ。えと、何かね、動かすことは出来るんだけど……、上手く浮かないの』
「そうなの? 僕、君が飛んでるところを見たから飛べるんだと思ってた」
『あはは……、飛べたら便利だよねぇ……。どこにでも行けそうだもの』
アリアはパタパタと翼をはためかせてみる。
それは僅かに風を起こすと、アベルの前髪を揺らした。
「っ、だめだよっ!!」
アベルは突然大きな声で告げる。
『へ……?』
「ん……?」
アベルの大声に前を歩くビアンカが振り返った。
『ど、どうしたの……?』
「アベル、何がダメなの? パパスおじさまに風邪を引かせる作戦はやっぱりマズかった?」
アリアとビアンカが同時にアベルを見るので、アベルはどっちに答えるべきか息を呑む。
「っ、あっ……、いや……。何でもない……って……、父さんに風邪を引かせるって!?」
アベルはビアンカの提案に驚き、訊き返していた。
「ええっ! 風邪を引いたらしばらく家に泊るしかないでしょ? お部屋戻ったらお布団取っちゃおうかなって! お水もこっそり身体に掛けちゃえば冷えるし、どう? いい案でしょ?」
ビアンカは弾けるような可愛い笑みを浮かべる。
『……それはちょっと無茶なんじゃ……(子供って残酷だなぁ……)』
聞こえないだろうとわかりつつも、アリアはツッコミを入れた。
「そ、それはそうだけど、父さんを病気にするのはちょっと……」
そんなことしたら父さんが苦しむじゃないか……。と、これにはアベルも苦笑いするしかない。
「……そうよね……。私のお父さんも苦しそうだったもの。でも薬ならあるし……」
どうかな?
と、ちらり。
アベルを見て来るが……。
「いやいやいや……」
『いやいやいや……』
ビアンカの言葉にアベルとアリアは二人して片手をふりふりと振って否定した。
「うーん……、なら他にいい方法あるかしら」
「うーん……、考えておくよ」
「お願いね!」
そんな会話をしている内にアルカパが見えて来る。
アリアはアベルに「だめだ」と言われたことなどすっかり忘れているのか、ビアンカのすぐ隣を歩いていた。
「……ん? 何だかいい匂いがする」
「え……?」
すんすん……。
と、ビアンカがアリアの方を向いて鼻をひくつかせる。
ビアンカの鼻先にはアリアの翼があった。
『っ? っ、私の翼!?(臭うの!? いや、でもいい匂いって……)』
急にビアンカに近寄られて、アリアは驚いてビクッと身体を強張らせる。
くんくん。
尚も、ビアンカはそれを嗅いでいる。
ビアンカの小さな可愛らしい小鼻が小刻みに動いた後、心地良さそうな面持ちで彼女は微笑む。
「……? 何だろ? 干したお布団……あ、お日様みたいな……いい匂い」
安らぐなぁ……ビアンカはずっと嗅いでいたいなどと言い出す。
「あ……、……うん。わかる」
『……っ?(何がわかるの!?)』
アベルがビアンカの様子を窺いつつ、アリアに笑い掛けると、彼女はわけが分からず首を傾げた。
「落ち着くよね」
「そうそう、そんな感じ……。ふぁああ……、何だろ、干したお布団みたいな匂い嗅いだら何だか眠くなって来ちゃったわ」
アベルの言葉にビアンカが
「僕も」
アベルが同意する頃にはアルカパの町へと戻って来ていた……――。
※明日のみ更新は22:22にします。ゾロ目合わせです♪
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!