アルカパの宿に二泊で、記念品をプレゼント!
では、本編どぞ。
宿屋に着くとカウンターにアリアの姿はなく、アベルは宿の主にアリアを知らないか訊ねていた。
「ひょっとしてあなたがアベルさんかな?」
「え、はい」
「あの綺麗なお嬢さんなら庭に行きましたよ。あと、お部屋はご予約頂いているので、昨日と同じお部屋をお使い下さい」
宿の主はそう云うと庭へと続く扉を指した。
「あ、ありがとうございます……」
――……何か、昔もこんなことがあったような気がする……。
アベルは十年前も同じようなことがなかったっけと思いながら、庭へと向かうのだった。
◇
庭に出ると、アリアが庭に置かれたテーブルで修道服を着た女性と向かい合い、話をしていた。
「「見つけた!」」
「あ、みなさん!」
アベルとヘンリーが声を揃えて大きな声を上げる。
と、アリアはそれまで真剣な顔をして女性と話をしていたのだが、アベル達に気付くと一気に破顔した。
まるで花の蕾が一瞬で花開いたかのようである。
(((カンワイィ~……)))
アベル達はアリアの笑顔に釣られ、自分達の表情までもが緩むのを感じる。
可愛い女の子の笑顔があるだけで、癒される気がした。
「アリア、部屋を取ってくれてありがとう。こちらの方は……?」
「あ、今お話を聞いていたんです。何だか怖くなっちゃいました……」
アベルがアリアの隣に腰掛けると、アリアは自己を抱きしめ ぶるっと震える。
「……どんな話を聞いたんだい……?」
――僕が居るから大丈夫だよ!
……とは皆の手前言えなかったが、アベルは“ぽんぽん”とアリアの頭を優しく撫でたのだった。
アリアはアベルを見上げて安堵したように目を細める。
するとアリアの向かいに座る女性が静かに口を開いた。
「私は旅の尼。私には感じることができます。かつて神が閉ざしたという、魔界。その封印の力が次第に弱まりつつあります。もし封印が破られれば、世界は再び闇に覆い尽くされることでしょう。ああ!」
女性は話し終える最後に恐怖からなのか祈るように手を組む。その肩は震えていた。
「……魔界の封印が……?」
――魔界の封印……? 何か引っ掛かるな……。
アベルは女性の話に腕組みし考えてみるが、今は何も思い当たらない。
ただ“魔界”という言葉に何となく惹かれたのみである。
「今まであんまり実感がなかったけど……オレたちの世界、かなり大変なことになっているんじゃないか?」
アベルの呟きにヘンリーが眉を顰めていた。
「…………、…………うん、かもしれないね」
「……魔界……、闇で覆い尽くされるなんて怖いですね……」
アベルが首を縦に下ろすとアリアも呟いて俯いてしまう。
彼女の肩がカタカタと小さく震えている気がする。
「アリア……、大丈夫だよ。伝説の勇者をさがして闇を払えばいいんだから……」
アベルはテーブルに肘をついて隣のアリアを覗き込む。
「……はい……。そう、ですよね……」
アリアは僅かに口角を上げるが、その顔は俯いたまま憂わし気である。
「なんだったら、僕が魔界の王を倒してあげるから。あ、そんな奴が本当に居るのかは知らないけどね。……いたら倒すよ。だからアリアは安心して笑ってればいいんだ」
「え……」
アベルの言葉にアリアがふっと顔を上げた。
「……あっ、いや……。もしそんな奴がいたら、今のままじゃ、無理だろうけど……、これから鍛えていけばいつかは倒せるかもしれないだろう?」
「ぁ……、っ、アベルさんたら……。……ふふっ。お一人じゃ無理ですよ……」
「……アリアが一緒だったら勝てるかも」
「へっ?」
「……僕は君がいてくれたら、何でも出来る気がするんだ」
アベルはアリアに向けて目元を優しく緩ませる。
「っっ!!??(それって!?)」
アベルに優し気に見つめられ、アリアは目を丸くし瞬かせた。
「っ、あっ、ほら、君って呪文が得意だからね! 一緒に強くなろう。それで補助呪文でサポートしてもらえたら、勝てる気がする!! そう、それ!! き、期待してるよ!? ……いや、でも君を戦いに連れて行くのは違うか……」
アリアの態度にアベルはハッとして慌てて笑ってみたり、真剣な顔をしてみたり、難しい顔をしてみたりと百面相しながら言い直したのだった。
その頬は赤く色付いている。
「……っ、は、はい。私、どこまで戦えるかわかりませんが……頑張りますねっ」
アリアは手を組み深く頷くと、“魔界……”と呟いてまた黙り込んでしまった。
「……何もアベルが倒さなくてもいいだろ……そういうのは勇者に任せておけばいいんだよ(ていうか、隙あらばオレの前でいちゃつくの止めてくれる?)」
アベルとアリアの様子を見ていたヘンリーがつまらなそうに口を挟んでくる。
「……そうか……、確かに。じゃあ勇者のサポートが出来たらしようかな」
「……あっ、私も!」
アベルの言葉にアリアが小さく手を挙げると、
「一緒に頑張ろうね」
「はいっ!」
二人は互いに視線を交わして笑った。
「……頼もしい方々……。どうかあなた方に神のご加護があらんことを」
旅の尼がアベル達の話に少しだけ安堵したような顔で祈りを捧げる。
ピエールは黙ったままアベル達のやり取りを見ていた。
そうしてアベル達は女性に別れを告げ、庭から屋内へと戻り部屋へと向かうのだが、その間ピエールはずっと黙ったままで、何一つ発言することはなかった。
ただ、実は一言だけ、アベルがある単語を口にした時、ピエールは呟いていたのだが、それは誰にも聞かれることは無かった。
『魔界の王』
ピエールは前を歩くアベルの背中をじっと見ていた。
昨日と同じ部屋割りで、それぞれ二階と三階に分かれ早々に身体を休める。
次の日朝早くにアルカパを出ることにし、この日は早く休むことにしたのだった。
◇
次の日――。
朝早くに目覚めたアベル達は出発の準備を整え、宿の新しい女将と話をしていた。
「あたしら夫婦は七年程前、ダンカンっていう人からここを買い取って宿を始めたのさ。是非二回以上お泊まりになって、あたしに声をかけてちょうだい、記念品を差し上げちゃうよ」
「昨日、一昨日と二泊させてもらいました」
昨日も似たようなことを云ってたけど、忘れてしまったのかなと思いながらアベルは二泊したことを報告する。
まぁ、お客なんていっぱいいるだろうし、憶えてないか……。
けど何だろう……、たまに感じるこの何とも言えない違和感……。
誰かと話をする度、時折訊いてもいないことを話す人々がいて、何とも言えない気持ち悪さを感じることがある。
何故なのかはわからなかったが、人々は
「え? もう二回以上ご利用? 毎度ご
女将が“ちょっと待ってておくれよ”と立ち上がり、奥の部屋へと歩いて行く。
待っていると、奥からふかふかの【安眠枕】を手に女将が戻って来た。
「はい、どうぞ。また良かったら泊まりに来てちょうだいよ」
アベルは【安眠枕】を女将から受け取る。
【安眠枕】は割と大きめのサイズで、両手で抱えると前が見えなくなる程に大きい。
しっかりと綿が入っているのか頭を優しく包んでくれそうだ。
ほのかに葡萄の甘い香りがした。
「へえ……これが安眠まくらか。いいニオイだなあ……すりすり」
アベルが抱える枕にヘンリーが顔を“ぽふっ”と埋め頬擦りをする。
すると、ヘンリーから「ぐうぐう」と寝息が聞こえてきたのだった……。
「僕が魔界の王を倒してあげるから」
フラグ立てるなアベルさんよ……w
そして、安眠枕を貰ったヨ!
祝!二百話!!☆彡☆彡☆彡
200話まで来ましたね~! の割りにストーリーはあまり進んで無くて参っちゃうね、アハハ!(本日は2022/05/30です)
公開日は八月半ば予定ではありますが、話の進み具合によっては二話更新して行くので多少前後すると思います。
ヘンリーと離れ難くてつい長旅になっておりますが、ラインハット以降はちょっと端折って行く予定でいます。
つい、モブキャラとの会話も楽しんでしまう悪い癖がでなければ。
最後まで完結させるつもりでいますので、読んでいて飽きることもあるかと思いますが、思い出した頃に時々読んでもらえたら幸甚に存じます。
本当、私の妄想にお付き合いいただきありがたき幸せv
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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。
読んでいただきありがとうございましたっ!