十年前パパスさんと通った道を行く。
では、本編どぞ~。
第二百二話 地下道を抜けて
地下道へと続く入口を塞いでいたトムがそこから退くと、彼は口を開いた。
「またこうしてヘンリー王子に会えるとは、夢にも思いませんでした。あの頃は泣かされましたが、今となってはいい思い出ですなあ」
「へへっ、会えて良かったよ」
ヘンリーが腕を曲げ前腕を差し出すと、トムも前腕を重ね合わせる。
トムの顔は喜びに満ちていた。
「アベル、行こうぜ」
「……ああ。アリア、行こう」
トムに地下道へと通してもらい、ヘンリーが先に階段を下りて行くとアベルは背後のアリアに声を掛ける。
ところが、
「あっ、はい、っ、あのっ、トムさんっ!」
「えっ? あ、はい?」
アベルが声を掛けたものの、アリアはトムの傍に寄って行った。
「アリア……?」
何だろうとアベルが首を傾げていると。
「ホイミ」
アリアはトムの赤いタンコブに触れて回復呪文を掛けたのだった。
「ぁ……」
アリアに回復してもらい、トムの頬が赤く色付く。
「おでこ、赤くなっていたので……。お大事になさって下さいね」
「あ、ありがとうございます……(天使……! 天使がいる……)」
アリアが優しい笑みを浮かべると、トムが ぼーっと彼女に見惚れる。
アベルは慌ててアリアの元へと駆け付け手を引いた。
「っ、ほら、アリア行くよっ!」
「あっ、はいっ!」
そうしてアリアはアベルに手を引かれ、地下道へと消えて行ったのだった。
「お気を付けて~~……(あの顔……どこかで見たことが あるような……?)」
トムは先程までの厳しい顔は何だったのか、へらへらとアリアに手を振って見送っていた。
彼の後ろのテーブルの上に城から届いた書類が風に揺れる。
その中にはアリアの似顔絵(あまり似ていない)も“手配書”と書かれ、置かれていた。
◇
そして、地下道へと至る――……。
大きな河の下に掘られた地下道には灯りが点され、やや暗いものの通行するのに不便はなかった。
ここは十年前、パパスとアリアとプックルと共に歩いた道である。
十年後の今、アベルはアリアとヘンリー、ピエール、他の仲間と共に同じ道を歩いている。
あの頃、アリアの姿は自分以外には誰にも見えず、アリアはアベルだけを頼りにし(プックルも居たよ!)、アベルもアリアを頼りにしていた(プックルも居たってば!)。
それが今や、アリアは行く先々で様々な人々を魅了してしまっている。
美し過ぎて一見近寄りがたい美人なのにも関わらず、人懐っこいものだから皆勘違いするのだ。
「っ、たく油断も隙も無い……、ただでさえライバルが近くにいるというのに……(アリアが笑顔を振り撒くのが問題かなぁ……)」
「…………、…………っ(アベルさんの手……っっ……!!)」
ぶつぶつとアベルが文句を垂れる中、アリアはアベルに手を繋がれたまま歩いており、恥ずかしくて頭が飽和状態のため 彼の呟きなど耳に入ってこなかった。
そんな中、前を行くヘンリーがアベルとアリアをちらりと見やって舌打ちをする。
「……ちっ。あ! 対岸に出るぞ!」
――くそっ! オレだって手ぇ繋ぎたいぞっ!!
ヘンリーは対岸の明かりを指し、歩いて行った。
「……アリア、対岸に出るよ」
「ぁっ、はいっ」
アベルに声を掛けられ、俯いていたアリアは顔を上げる。
「っ……? 顔真っ赤……、だね……(何故……?)」
アリアの頬が赤みを帯びていたのでアベルが訊ねると、
「っ、だ、だって……、手を……」
「あっ! っ、ご、ごめん……!」
アベルは手を繋いでいたことに今更気付いたらしく、アリアの手を慌てて放した。
(っ、手っ! 繋いでたのかーーーーっっ!!??)
……無意識だったようで、十年前の癖が出たらしい。
「ぃ、いえっ」
アリアは首を左右に振るう。
「…………ごめんね。痛かったかな……?」
「え? あ、全然……」
「……僕、昔君を強引に連れ回してたんだよ……。手首とか無理やり引っ張ったりしてさ……」
アベルは申し訳なさそうに俯きがちにアリアを窺い見た。
「そうなんですか?」
「君はいつも“痛い”って言ってたのに無視してさ……」
「アベルさん……」
「はは……、あの時はごめんね」
アベルは苦笑してからアリアに謝罪する。
「……憶えていないので大丈夫ですよ。小さな頃ならよくあることでしょうし、それに……強く引っ張ってくれたってことは、放さないでいてくれたということですし……」
「え、あ、うん。確かに放さなかったけど……」
アリアの言葉に あの頃は君に依存してたからなぁ……、とアベルは頷いた。
そんなアベルの頷きに、
「……っ……、昔の私と仲良くしてくださっていたんですね。ありがとうございます……、う、嬉しいです……」
アリアはもじもじと頬を染め、上目遣いでアベルを見たのだった。
「あ……っ、う、うん……! 仲良くしてた! すごくっ!! 毎晩一緒のベッドに寝てたし!」
「へっ……!!??」
アリアは驚き息を呑む。
「あっ、君が僕と一緒じゃなきゃ寝ないって言うからねっ!(ウソだけど!)」
アベルはつい、嘘を口にしてしまう。
アリアの記憶が戻ったら何て言われるかわからないのだが……。
「あっ……、す、すみません……。私そんな我儘を言っていたんですね……。やだ……もぅ……恥ずかしい……。ごめんなさい……」
恥ずかしさにアリアは顔を覆って首を振ってしまった。
「…………あ、えと……(しまった。今更ウソでしたなんて言えない……!)」
アリアに謝罪され、チクリとアベルの良心がちょっぴり痛んだ。
そんな時、先に階段を上がり終えたヘンリーが上から声を掛けてくる。
「あーもう、また二人でイチャついてる。ほら、二人共置いてくぞー!」
「「イチャ!?」」
ヘンリーの言葉にアベルとアリアは目を合わせる。
「「っ……」」
しばし見つめ合うと、二人は頬をほんのり赤く染めながら階段を上がったのだった。
◇
対岸へと出ると、見晴台に一人の老人が佇んでいるのが見える。
「あのお爺さんもしかして……」
「……アベルさん?」
アベルが老人の背中が淋しそうに見え呟くと、アリアが首を傾げた。
「あ、寒くないかなって。もしかしたら町に行きたいのかもしれないし、声を掛けて来るよ」
「私も行きます」
「そう? じゃあ、一緒に行こうか」
「はいっ」
アベルが老人に声を掛けるというので、アリアもついて行くと告げると、アベルの瞳が細められる。その顔は嬉しそうだった。
アベルの優し気な表情にアリアも嬉しそうに顔を綻ばせる。
「っ、オレも行くぞ! あの爺さん風邪引いたら可哀想だからな!」
(仲間外れにすんなよなっ!)
ヘンリーは慌てて二人を追った。
トムさん、ちょっと抜けていたためアリアは華麗にスルーw
アベルさん、「君が僕と一緒じゃなきゃ寝ないって言うからね」とか嘘吐いちゃったw
アリアの記憶が戻ったら違うってバレるのに、可愛い。
ヘンリー君はまだちょっぴり未練があるみたいw
二人の邪魔をそれとなくしていくスタイル。
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