ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

お喋りしながらの旅、楽しいですよね。

では、本編どぞ。



第二百三話 関所を越えて

 

「お爺さん、ここは川風が強い。風邪を引きますよ? 僕達これからラインハットに行くんですけど、よかったら馬車に乗って行かれませんか?」

 

 

 見晴台に上り、アベルは老人に声を掛ける。

 

 

「ほっといて下され。わしは川の流れを見ながらこの国のゆく末を案じているだけじゃて……」

 

「! あなたは……」

 

 

 振り向きもせず無表情で言い放つ老人の言葉に、アベルは同じ台詞を聞いたことがある気がして彼を見下ろした。

 

 

 ――お爺さん、十年前にもここに居なかった……?

 

 

 あの時僕は父さんに肩車をしてもらって……と、あまり憶えてはいないのだが、よくよく見たら十年前よりも随分皺が増えた老人の横顔に、アベルは時の流れを感じたのだった。

 

 

「……お爺さん……。あの、これ良かったら……」

 

 

 アベルの後ろからアリアがやって来て【ておりのケープ】を老人に差し出す。

 

 

「……なん……?」

 

 

 アリアを前に老人は振り向くと、面食らった顔で瞳を瞬かせた。

 

 

「……ここは見晴らしがいいですね。これ、差し上げます。お風邪を召しませんよう羽織って下さい」

 

「……娘さん、ありがとう……」

 

 

 老人は嬉しそうに目を細め、アリアから【ておりのケープ】を受け取ると、早速羽織った。

 

 

「温かいのう……」

 

 

 そう云って老人はまた川へと視線を戻す。

 先程は無表情だったが、若干表情が和らいだように見えた。

 

 アベル達は老人の傍から離れ、自分達も少しだけ景色を眺めることにした。

 

 

「アリア……、君って子は……(優しい子だな……)」

 

「お爺さん、ここにずっといらっしゃるみたい。手織りのケープを渡す時、手がとても冷たかったです。何か……、気に病まれているのかもしれませんね……」

 

 

 大河の流れを臨みつつ、川風に髪を靡かせるアリアをアベルが眩し気に見つめると、アリアは老人の方をちらりと見やって淋し気に笑った。

 

 

「あんな爺さんに案じられる程ラインハットは悪くなったってことか……」

 

 

 ヘンリーがアリアの隣で“はぁ”と溜息を吐く。

 

 

「……あのお爺さん、十年前にもあそこに居た気がするよ?」

 

 

 ふと、アベルが思い出したように告げた。

 

 

「まあ、そうなのですか?」

 

「うん、多分だけどね」

 

「……近くにお住まいなのでしょうか……」

 

「ははっ、それは知らないけどね。……そういえば、ここ、君も一緒に来たことがあるけど……、どうかな? 何か思い出せるかい?」

 

「え? ……あ……」

 

 

 アベルに問われ、アリアは見晴台と川面や対岸をよく見てみるのだが。

 

 

「…………、……うーん……」

 

 

 アリアは辺りを見渡してみたが、何も思い出せなかったのか首を左右に振ったのだった。

 

 

「……ごめんなさい」

 

「いいんだよ、アリア。大丈夫、大丈夫」

 

 

 しゅんと俯き落ち込むアリアの頭をアベルは優しく撫でる。

 

 

 まだ方法はあるから、そんな顔しなくていいんだよ。

 君は笑ってればいいんだから。

 

 

「……アベルさん……、…………ぁ……」

 

 

 アリアが顔を上げると優しいアベルの瞳が自分を見下ろしている。アリアはその瞳に射抜かれ、ぽ~っとしてしまうのだった。

 瞳孔が開き、アベルから目が離せない。

 

 

 やだ、頬が熱い気がする……。

 恥ずかしくないのに……、どうして……?

 

 ……あ、でもやっぱり恥ずかしいかも……。

 

 

 アリアの頬が徐々に赤く色付いていった。

 

 

「…………っ……(カワイイ……)」

 

 

 アベルもアリアと目が合うと囚われたように固まる。

 

 

 アリアの瞳は何て綺麗なんだ……。

 吸い込まれそうだ。

 その瞳に僕だけを映してくれればいいのに。

 

 

 二人は黙ったままつい見つめ合ってしまう。

 

 

 と、当然。

 

 

「…………、…………はいはい、そろそろ行きましょぉーねぇええーー!!」

 

 

 怖い目をしたヘンリーがアベルとアリアの背を押し、一行は関所を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラインハットへの関所があんなに物々しい雰囲気になってるなんて……」

 

 

 平原を行き、ヘンリーが関所を振り返り呟く。

 

 関所を出た直後、アベルとアリアの二人が一緒だと隙あらばイチャついて困る為、ヘンリーとピエールは相談し、ジャンケンで組み分けをしていた。

 アベルとアリアは知らないが、もちろん裏面工作済みである。

 

 そんなわけで、前はアベルとピエール、後ろはヘンリーとアリアでラインハットを目指していた。

 日は傾き、空は茜色に染まり始めている。

 

 

「……一体何があったんでしょうか……」

 

「……オレは十年前までしかいなかったし、城の中しか知らなかったからよくわかんないけど……、あんな悪評ばかりの国ではなかったと思うよ。いや、思いたいだけかな……?」

 

「そうなんですね……。私も修道院に居ましたし、求婚のお話があるまでは噂に聞いたくらいでよく存じ上げなくて……」

 

 

 ガラガラガラガラと馬車の車輪が回る中、ヘンリーとアリアはお喋りしながら歩く。

 

 

「ごめんな、アリアさん。君にまで迷惑掛けちまって……(デールの奴……、何だってハーレムなんか……って、太后の所為か……?)」

 

 

 ヘンリーはアリアに頭を下げたのだった。

 

 

「そんな……、ヘンリーさんの所為ではないじゃないですか。それに私、ちゃんと逃げますから心配しないで下さい。頭上げて下さい」

 

 

 アリアは両手を胸の前でふりふりと振って、ヘンリーに頭を上げるよう促す。

 すると、ヘンリーは頭を上げた。

 

 

「アベルと逃げるのかい?」

 

「えっ……、あ、協力して下さる……みたい……? ですけど……」

 

「ふーん、二人で逃避行か……。何か駆け落ちみたいだな」

 

 

 ニッとヘンリーは悪戯に笑う。

 

 

 アリアはちっとも自分など見ていない。

 

 それに気付いたヘンリーは可愛さ余って憎さ百倍、どうせだからと冷やかしてやることにしたのだった。

 と、思ったのだが、アリアからは思わぬ返答が。

 

 

「えっ!? 駆け落ち!? ど、どういうことですかそれっ?(ヘンリーさんだって居るのに……?)」

 

 

 アリアは目を丸くして信じられないといった顔で、逆に質問して来たのだった。

 

 

「えっ!? だ、だってさ! アリアさん、アベルのこと……!」

 

「っ……???」

 

 

 ヘンリーが訳が分からず瞳を瞬かせると、アリアも何のことと首を傾げる。

 

 

「うそん、えぇ……、こっちも自覚無しなわけ……?(いや、アベルは再会してから即落ちてたよーな……)」

 

「え? 自覚? 何ですか、自覚って……?」

 

「いや、散々人前でイチャついてたじゃん?(アリア、とぼけてるのか?)」

 

 

 アリアの態度にヘンリーはただただ瞳を瞬かせる。

 狐に化かされてるような気さえした。

 

 

 ――まさか、あれ、全部演技だったのか……!? 女の子って……!?

 

 

 アベルを前にしたアリアは、自分の時とは違う態度の気がしていたが、あれは全部演技だったのかと疑ってしまう。

 

 

「っ……、イチャって……。や、やだヘンリーさん。私そんな気無いですよ?」

 

 

 アリアはほんのり頬を赤く染め、チラッとヘンリーを見る。

 

 

「はぁ!? っ、いや、意味わかんない。全然意味わかんないんだけど……!?(てか、そんなこと言ったらアベル凹むって!)」

 

 

 ヘンリーはつい、大きな声を出してしまった。

 前を歩くアベルが何事かと振り返ったが、ヘンリーは慌てて笑顔で手を振っておく。隣でアリアも手を振っていた。

 

 すると、アベルはヘンリーの隣のアリアをチラッと見やってからまた前を向いて歩き出したのだった。

 

 

「…………、…………ぁ、私……、記憶無いんですよ」

 

 

 ヘンリーの隣で振っていた手をゆっくりと下ろし、アベルの背を見ながらアリアは瞳を伏せる。

 

 

「知ってるけど……」

 

「……自分が何者かもわからないのに、誰かを好きになんて……、なれるわけありませんよ……。そんなことになったら、アベルさんに迷惑が掛かってしまいますし……、それに…………」

 

 

 アリアはそこまで云って黙り込んでしまった。

 何か気に掛かっていることがある様子で瞳を伏せてしまう。

 

 

「アリアさん……?」

 

「ぁ。ふふっ、私は一人でいいんです。ほらっ、呪われてますし! あまり近付かない方がいいですよっ! 呪いが移っちゃったら大変!」

 

 

 ヘンリーがアリアの様子がおかしいと感じて近付くと、アリアはヘンリーから距離を取るのだった。

 




アリアさん、何が気になってるんでしょうかね。
男の子にはわからないんだろうなぁ。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
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