呪いの症状は様々。
では、本編どぞ。
アベル達が道具屋に入ると店主が客用テーブルで帳簿を付けていた。
奥にあるカウンターテーブルには誰もいない。
「いらっしゃいませ。……っと言っても、もう今日は終わりました。すみません、明日またお願いします」
店主はアベル達に気付くと、羽根ペン片手に顔を上げ軽く会釈する。
「あ、すみません。やってるかわからなかったので入って来てしまいました」
「昔は姉が店をやってたんだけど、ここの売上げじゃとても税金が払いきれなくて……。オラクルベリーまで出稼ぎに行ってるんです。昔はこの城の方がずっと栄えていたんですけどねえ」
店主が話しながら眉間に皺を寄せる。目線は手元の帳簿に注がれていた。
税金の項目に頭を悩ませているようで、そこから計算が進んでいないらしい。
「そうなんですね……」
“うーん”と帳簿と睨めっこし頭を悩ませている店主に、アベルは忙しそうだなとヘンリーとアリアに目配せをした。
二人は小さく頷いている。
「ご用がありましたら、明日の昼間にまたお越しください」
「はい、わかりました……」
アベル達は店主に頭を下げ、道具屋を後にした。
道具屋を出ると、ヘンリーが口を開く。
「他にも出稼ぎに行ってる人がいるんだろうな。……城下町が淋しくなるワケだ」
ここは城下町だ。
夜間とはいえ、外を出歩く人が二人しかいないなんておかしいと思ったんだよ。
そもそも人が国から出ていっていたとは……。
ヘンリーはラインハットの現状を知る度、胸を痛めるのだった。
「……ヘンリー……」「ヘンリーさん……」
「……ん? あ、へへっ。……まあ、今更気にしてもしょうがないよなっ」
アベルとアリアが憂いを帯びた顔のヘンリーを窺うと、彼は慌てて笑顔を取り繕う。
「……さぁ、じゃあそろそろ宿屋に行こうか。………………アリア?(何か様子がおかしい……?)」
アベルが声を掛けると、アリアはぼーっとした様子で顔を上げる。
「…………、…………ぁ。はい?」
「もう眠い?」
アリアが首を傾げると、アベルが窺う。
「…………ぁ、ごめんなさい……、少しだけ……。今日はちょっと体力が落ちていて……」
ご迷惑をお掛けして……とアリアは頭を下げた。なんだかぐったりしている気がする。
「え?」
ぱちぱちとアベルの瞳が瞬いた。
あれ? 彼女、何だか具合が悪そうじゃないか……?
顔色が悪いような……。
「……何か体調悪そうだけど……、大丈夫かい?」
ヘンリーも気付いたのか「宿屋へ急ごう」と告げた。
「ぁ……、呪いの所為で……、その日その日で症状が変わるんです……。何もない日もあるんですけど……、今日は体力が落ちる日みたいで……」
アリアは申し訳なさそうに“さっきまでは元気だったんですけど……”と後れ毛を耳に掛けた。
「っ、そういうことは早く言ってくれっ!」
「え? あっ! わっ!?(アベルさんっ!?)」
アベルが慌ててアリアを横向きに、背と膝裏に腕を差し入れ抱き上げる。
「おいアベルっ!?」
ヘンリーが驚きの声を上げた。
「あっ、アベルさんっ!!? だ、大丈夫! 私、歩くっ、歩けますっ!!」
アリアは急に抱き上げられ驚いて手脚をばたつかせた。
「っ、いいからっ!!」
「で、でもっ!!」
「暴れないで、じっとしててくれ!」
アベルは語気を強めアリアに言い聞かせ、宿屋へと向かうのだった。
◇
ラインハット城下町、宿屋――……。
宿屋に着くなりアベルはアリアを抱えたまま、おかみに話し掛ける。
「ようこそ旅の宿に。夜道を歩かれて、さぞやお疲れでしょう。ひと晩64ゴールドになりますが、お泊まりになりますか?」
宿屋のおかみが悠長に訊いて来るのだが。
「っ、彼女を早く休ませたいんです! 早く部屋へ案内してくださいっ! ヘンリー、ここからお金を出して払ってくれっ。早くっ(目の前の状況見えていないのか!? アリアの顔、真っ青じゃないか!!)」
外では気が付かなかったが、宿内の灯りでアリアの顔色が真っ青なことに気が付くと、アベルはおかみに早く部屋に案内するよう告げたのだった。
アリアは「だ、大丈夫ですってば……」と、恐縮している。
「えっ? お、おう、わかった!」
アベルの奴、珍しく慌ててんな……。
そういや、アベルってアリアの事となると冷静さに欠けるんだよな……。
ヘンリーは「早く早く!」と急かしてくるアベルに言われた通り【ふくろ】からお金を取り出し、カウンターに64ゴールド置く。
すると、
「はっ、はい、ただいまっ!!」
おかみがこちらですと、急かされるように二階へと案内を始めた。
その後ろにアベルはアリアを抱えたまま ついて行く。ヘンリーもすぐ後ろに続いた。
ばたばたばた。と、
部屋へと案内され、アベルは一番奥のベッドにアリアを寝かせる。
掛布団を彼女にしっかりと掛けて、ポンポンポンと優しく布団越しに撫でてやった。
「そ、それではごゆっくり おやすみください」
おかみが会釈して部屋から出ていくと、アベルはやっと一息吐く。
「……ふぅ。これで一安心……」
額に掻いた汗をアベルは拭った。
その様子をアリアがじーっと見上げ、汗を拭うアベルに声を掛ける。
「ぁ……あの……」
すると、アベルは床に両膝をついてアリアと目線を合わせたのだった。
「……ごめん、気付いてあげられてなかったね……」
「ぁ、私の方こそ黙っていて……ごめんなさい……」
アベルが真っ直ぐにアリアの瞳を見つめると、アリアは掛布団を鼻まで引っ張り上げ目だけ出して謝る。
「うん……。それは本当に、そうだと思う……。体調が悪い時はちゃんと言って欲しい」
少しだけムッとしたような顔で、アベルはアリアのフードを捲った。
「…………ごめんなさい……。またご迷惑を掛けてしまいました……」
「あっ、や、ちがっ、そうじゃないよっ!?」
しゅーん、とアリアが落ち込んだ途端、アベルは狼狽え両手の平と頭を左右に何度も振る。
「え……?」
「……迷惑だなんて思ってない。そうじゃなくて……、辛い時は教えて欲しいだけなんだ」
ちょっと強く言い過ぎたかなと、アベルは彼女に誤解させないよう言い直した。
「アベルさん……」
「呪いの症状がどう出るのか訊いておけば良かったなって。そしたらほら、馬車で休むことも出来るだろう? ……だから症状がどんなものか教えてくれると嬉しいんだけど……」
答えてくれるかはわからないが、アリアの身に起きていることを知りたい。
アベルはその一心で彼女に訊ねていた。
「ぁ……、……主に体力の低下と、魔力の低下が起こるみたいです。ただ、毎日でもないですし、私自身あまり気にしてはいなくて……。今日はたまたま長距離を歩いたのと重なってしまって……ごめんなさい」
アリアは上体を起こそうとするが、アベルはそれを止める。
「謝らなくていい。その呪いはアリアの所為じゃないんだから」
「アベルさん……?」
「注意深く見てたつもりだったけど……、もっと注意した方が良さそうだ。っ、もっと注意深く見ることにするけど……、いい?」
「え? 注意深く見る……? あ、はい……、よくわかりませんが……、よろしくお願いします……?」
起き上がろうとしたアリアの身体を再び横たえ、アベルは ずれてしまった布団を直してやった。
「うん。……安心して。僕がきっと君の呪いを解いてみせるよ。記憶も取り戻させてあげる。だから今日はもうおやすみ」
「……ぁ、はい……。ありがとうございます。おやすみなさい……」
アベルに頭を撫でられ、アリアは目を閉じる。
体力が低下しきっていた所為か、彼女はすぐに睡魔に襲われ意識を手放したのだった。
お姫様抱っこ……v
アベルのアリアに対する愛情が日に日に増してる気がします。
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