女の子って難しい、いや、女の子の扱いが難しい。
では、本編どぞ。
◇
アリアから“すぅすぅ”と寝息が聞こえて来る頃、ピエールも部屋にやって来て、アリアのベッド脇でアンドレに背を預け微睡み始めていた。
ベッドは二台しかない為、アベルとヘンリーの二人は今夜は同床である。
「……アベル、お前さ、アリアにめっちゃ優しいのな」
「そ、そう? 仲間の心配をするのは普通だと思うけどっ?」
二人は背中合わせで会話する。
アベルはアリアのベッドに近い方を陣取って、アリアの寝顔を見つめていた。
穏やかに眠っている彼女の顔にほっこりする。
「……オレもアリアのこと好きだったけど……、お前には適わないなって思うよ」
「…………何が?」
ヘンリーの告白にアベルはちょっぴり照れながら何のことかとはぐらかした。
「……ははっ、まだ誤魔化すか。まあいいけど」
「…………、……アリアは僕の事をどう思ってるんだろうか……」
アリアの寝顔を見ながらアベルは小さく呟く。
呼び捨てで名前を呼ぶことを許してくれたし、
キス……は未遂に終わったけど目を閉じてくれた気がしたし……、
僕が見つめたら頬を染めるし……、嫌われてはいないと思うけど……。
“私そんな気無いですよ?”
彼女の言葉がアベルの心に引っ掛かっていた。
「ん……?」
「…………何でもない。女の子って難しいなって思っただけ」
アベルは身体を仰向けにし、天井を見上げる。
アリアを見ていなくとも、暗闇の天井にアリアが浮かんで見えた。
こんな風に女の子の事ばかり考えるなんて、別世界じゃなかったはずだとアベルは不思議に思う。
前はもっと、辛い旅だった気がするんだ……。
なのにアリアが居るだけでこんなに楽しいなんて……。
ヘンリーには悪いけど、とアベルは背を向けるヘンリーを一瞥した。
「…………そうだなぁ……。オレ達、男だからなぁ……。女の子はドレイ達の中にも居たけど、こんな風にずっと一緒に過ごしたことなかったもんなっ。しかもアリア美人だし、正直なところオレ毎日ドキドキなんだぜ? 本当、ありがとうございますって感じ……?」
「っ……、だからアリアをそういう目で見るのはやめてくれと……」
アベルはガバッと、上体を起こしヘンリーの胸倉を掴んだ。
「……そう言うなよ。お前だってそうなんだろ? ていうか、お前はアレを見て何とも思わないのか?」
ヘンリーは隣のベッドに眠るアリアを指す。
アリアは暑かったのか、布団を捲って身体を仰向けからアベル達のベッド側に寝返りを打ち、横向きになっていた。
彼女はマントを着たまま寝ていたのだが、それも暑かったらしく眠りながら器用にボタンを外すと、脱ぎ去りすっきりしたような顔をする。
腕と腕に挟まれ強調された大きな たわわと、股の間に掛布団を挟み、滑らかなツヤツヤの太ももが露わに。スカートは捲れ白の紐パンが覗いて、無防備な姿を晒していた。
「っ……!? な、なんて恰好を……!!」
――っ、マズイッ!!
もう何度目になるだろうか、アリアの姿を目の当たりにした途端、アベルの牡が反応してしまう。
「……こんなん、見せられてムラムラしないなんて男じゃないだろ……。この子、なんていうか……、えっちだ」
はーっ、とヘンリーは顔を覆ってしまった。
ヘンリーの耳が赤くなっている。
「……っ……。そういえば、ヘンリー……この間アリアの……」
ふとアベルはオラクルベリーでアリアの入浴をヘンリーが覗いていたのではと思い出し訊ねてみた。
「…………この間? 何のことだ……?」
「オラクルベリーで……、僕とピエールが留守にしている時だよ」
「…………っ!? さぁなっ! っ、オレちょっと散歩してくるわ!」
「っ!? ぼ、僕も行くっ!!」
二人は同時にベッドから起き上がって部屋を後にする。
アベルとヘンリーが部屋を出て行くとピエールは起き出し、掛布団を引っ張り掛け直そうとする。
が、
「…………、…………アリア嬢。お風邪を召しますよ。…………っ、……私も少々失礼しますっ!!」
掛布団を引っ張る前にアリアの柔肌が間近に見え、ピエールは退散とばかりにアンドレを部屋に残し出て行った。
三人の男達が戻って来たのはそれから三十分程経った頃――。
「「「あ」」」
宿屋の前で三人は合流する。真っ暗闇の中、三人はそれぞれ違う場所に散歩に行っていたらしく、互いに「あははは……」と頭の後ろを掻いて皆で仲良く部屋に戻ったのだった。
何をしていたのかは知らないが、散歩で頭が冴えたのか皆すっきりしたいい顔をしている。
部屋に戻ると、アリアは今度はきちんと掛布団を掛けて眠っていた。
「……ふぅーー。うん、今なら難題も楽々解けそうだ。よし、ラインハットの事を考えてみるか!」
「……ヘンリー……あのね……」
ヘンリーが腕組みして難しい顔でベッドに腰掛けると、アベルも同じベッドの反対側に腰掛け眉間に皺を寄せる。
アベルは不満そうだ。
ピエールに至っては気まずそうにアンドレに抱きついていた。
「……明日、城に行ってみるかなぁ……」
「ヘンリー……」
「……悪いな、アベル。アリアを危険に晒すことになるけど、彼女を絶対渡したりしないから付き合ってくれよな」
「ああ。わかってるよ」
首だけ向けて告げるヘンリーにアベルは背中越しに頷く。
「明日、呪いの症状が出ないといいんだけどな」
「うん……」
「彼女、辛いとか何も言わないからなぁ……」
「……そうなんだよね……。何でだろう……、信用してくれてないのかな……昔はそうじゃなかったのに……」
昔は手を強く掴んでよく痛がらせていたので、今更ではあるが申し訳なく思っているアベルだった。
「…………信用か……、それだけかな……」
ヘンリーが腕組みして“うーん”と唸る。
「え?」
「なーんかよくわかんねーけど……、今のアリアって他人を寄せ付けない所がある気がしないか? 昔はもっと、こう……オープンっていうかさ……」
――オレのこと、優しく抱きしめてくれたじゃん……?
ヘンリーは十年前のアリアと比べ、今の彼女の性格が違うのが気に入らないらしい。
「あ……確かに……」
「記憶無いからなんかな……、何か壁があるんだよな……。こっちがちょっと心配すりゃ“迷惑を掛けたくない”とか言っちゃってさ。……淋しいよなぁ」
「……ヘンリー……。…………うん」
ヘンリーが口を尖らせるとアベルは眠るアリアを見つめる。
アリアはすぅすぅと静かに寝息を立てていた。
彼女が別人だとは思わないが、十年前のアリアはオープンマインドな心の持ち主で、素直に自分をよく頼ってくれていた。
積極的に迷惑を掛けるタイプではないが、一人で抱え込むタイプでもなかった気がする。
優しい所は変わらないが、ヘンリーの云う通り、確かに記憶喪失とはいえ性格が変わり過ぎている。
――前世がどうのとか言ってたし、もしかしたら、元々はこういう性格だったのかもしれないなぁ……。
アベルは絶対にアリアの記憶を取り戻してやると拳を握り締めるのだった。
いや、年頃だもの。
近くに可愛い女子がいたらそりゃあ……ね。
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