待機所の兵士達の中には……。
では、本編どぞ。
「……そんなに戦いが多いんですか?」
アベルが今度は山賊風の男の隣に座るガイコツに話し掛ける。
アベルの後ろでアリアの肩がビクッと揺れた。
「世の中に戦いほど楽しいことはないぜ。人と人とが血を流し合う。たまんねえよなあ……。ぐひひひ」
ガイコツが酒を飲むが、骨なので酒は骨を伝って床へとじゃぶじゃぶと零れ落ちている。
「……そうですか……」
アベルはガイコツの様子を冷ややかに眺めてテーブルから離れた。
「こんな所に魔物が!? オレの目が悪いのか? なんで、誰も何も言わないんだよ~!」
テーブルから離れるとヘンリーがガイコツをチラ見してから目を擦る。
そして再びガイコツを見て……、
「……魔物……、だよな。多分、あの向かいにいる奴も……そんな気がするぜ」
酒を飲み酔っぱらう【さまようよろい】にヘンリーが苦々しい顔を見せた。
「……ガイコツ……」
ふとアリアが呟いて、ふるふると小さく震える。
そんなアリアにアベルは目を細めた。
「大丈夫だよ。僕の傍に居たら怖くないよ」
「アベルさん……」
アベルはアリアの頭をぽんぽんと撫で、慰めたのだった。
「あっちの二人にも話を訊いて来るよ。ヘンリー達はここで待ってて」
山賊風の男達の隣のテーブルにも男二人が座っており、今度はその二人にも声を掛けてみようと、アベルは近付いた。
一人は大柄な体形の戦士風の男、もう一人は貴族風の優男だ。
二人は酒を飲みながら何かぼやいている。
「……あと一人が捕まらないんだよなぁ」
「白い髪の女だろう?」
テーブルに頬杖をつき貴族風の男が酒瓶を傾けると、戦士風の男はジョッキを握りながら答える。
「違うよ、銀髪だよ」
「いや違うぞ、ありゃどっちかというと金に近いな。オラクルベリーで見たから知ってる。人間離れした美貌の持ち主だった」
「いや、私は銀と聞いたが? ……まあ、どっちでもいい。珍しい髪色なんだ。見れば一発でわかるだろう。修道院に住んでいたらしいが数日前に逃げ出したそうだ。タイミングが良すぎるよな」
「ッチ、本当だな。修道院から正式な断りの手紙も来たらしい。姑息な手を使う。乗り込んで連れて行く筈が、その手が使えなくなった……。その女さえ手に入れば太后様もご納得いったろうに……」
「まあ、船も出ないし、アルカパまで足を延ばせば、いずれ見つかるだろ」
「……見つかるのも時間の問題か、わっはっはっはっ」
酒を飲み飲み話す男二人の会話を盗み聞きし、アベルは声を掛けるのを止めヘンリー達の元へと戻って来る。
「アベル……、今の話聞こえたぜ」
「……うん、アリアのこと、捜しているみたいだ」
ヘンリーの言葉にアベルは頷いた。
「……ぎりぎりセーフでしたね」
「うん……良かったよ……」
アリアが俯いたまま告げると、アベルはいーこいーことアリアの頭を撫でる。
「っっ……!!?(何で撫でるんですか!?)」
さっきから何度も頭を撫でられ、アリアは俯いたまま軽くパニックを起こしていた。
ヘンリーも“何かっていやぁアリアに触って……”とアベルをジロリ。
ピエールも何か言いたげにアベルを時々見ていて、アベル一人だけご満悦の様子で情報収集していたのだった。
「あっちにも兵士が居るね。話を訊いてみようか」
ヘンリー達は各々思う所があるものの、黙ってアベルについて行く。
「こんにちは、ここの太后様が兵士を集めているとお聞きしたんですが、あっちに集まっている方達がそうなんですか?」
「あぁ……、兵士志望の方ですか? それでしたらここではなく……」
アベルが待機所奥の仮眠室をうろつく兵士に声を掛けると、兵士は疲れた顔で薄っすら笑って応対してくれる。
「僕達でも戦力になりますかね?」
アベルは適当に話を合わせて訊ねてみた。
すると、兵士はアベルの傍に寄って小さな声で話し出す。
「最近思うのですが、太后様の集めた連中は気持ちの悪い人ばかりで……」
「気持ち悪い……?」
ちらりと兵士がテーブルへと視線を移すと、アベルも目で追った。
【さまようよろい】にガイコツ、ガラの悪い男に……戦士風の男と貴族風の優男もよく見ると何だか様子がおかしい。
戦士風の男の眼が半分飛び出している。片目に至っては眼帯をしていた。
優男の方は腕が異様に細く、肌は青色。
オラクルベリーで会った魔物のように人間に擬態している魔物なのかなとアベルは思う。
――確かに、気持ち悪い……かな?
「ああっと! 私がこんなこと言ったなんて人には言わないで下さいよ」
「あ、はい」
兵士がハッと我に返り視線をアベルに戻すと慌てて口止めをしたのだった。
「あいつらを気持ち悪いと思えるなら、あの兵士はまともだな。ひょっとして城の兵士たちは全員おかしくなってるのかと心配してたけど、安心したよ」
アベルが兵士と別れると、ヘンリーもテーブルを一瞥してから少しだけホッとした顔をしていた。
これで待機所にいる兵士達の話は大体聞き終えたわけだが、アベルはもう一人、仮眠室のベッドで横になっている兵士がいるのを見つける。
「待機所にいる兵士は彼で最後かな。寝てる所悪いけど話を訊いてみようと思う」
「だな」
ヘンリーに同意をもらい、最後に仮眠室のベッドで寝ている兵士の方へと向かった。
「う~ん、う~ん……」
「……何だか
アリアは眠る兵士を覗き込む。
兵士は唸りながら眉間に皺を寄せていた。額には大粒の汗が滲んでいる。
「起こしてやろうぜ」
「ああ、……大丈夫ですか?」
ヘンリーに云われアベルは魘される兵士の肩を揺すった。
「う~ん、う~ん……」
「大丈夫ですか? 随分
「は! 夢だったかっ!? しかし今思い出してもあれはイヤな戦いだった……。いくら太后様の命令とはいえ、なんの罪もない村を滅ぼしてしまったのだからな」
兵士が目を覚まし、上体を起こすと俯きながら零す。
兵士の云う村というのは恐らく、サンタローズの事なのだろう。
アベルとアリアは黙り込んでしまった。
「……起こしてくれてありがとう。覚めない悪夢から解放されたよ」
「あ、いえ……」
兵士にお礼を云われ、アベルはそれ以上何も聞けなくなり、アリアの手を引いてその場を離れる。
「アベルさん……」
アリアは引かれた手をぎゅっと強く握った。
「サンタローズに攻め入った時には、すでにこの国はおかしくなってたんだな。くそっ!」
ヘンリーはギリッと歯噛みし、顔を顰める。
アベル、オレの所為でごめんな。
お前の親父さんも、アリアの記憶も、サンタローズの村も、全部オレがダメにしちまった。
謝っても謝っても足りないよな。
この償いは必ずするからな!
アベル達の後を追いながらヘンリーは心の中でアベルに謝罪し、償うことを誓ったのだった。
ゲーム中には出ないキャラが二人おります。
にしても魔物も兵士にしちゃう太后様ってどう考えてもヤバイ。
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