山賊のアジト……。なんぞ、それ。
では、本編!
遺跡内部を歩いていると、行く手に通路をうろうろする戦士を見つける。
まだアベル達には気付いていないようだが、辺りの様子を窺っているようだった。
「あの戦士……、こんな所に何の用なんだろう……? まさかアリアを追って……?」
先頭を行くヘンリーが戦士を見て眉を顰める。
アリアの追っ手なら彼女を隠さないと……と一瞬緊張が走ったのだが、
「声を掛けてみますか……?」
アリアは気にしもせずに告げた。
「大胆だな! 追っ手だったらどうするんだよ!?」
アリアの提案にヘンリーはツッコミを入れる。
「あ、多分違うと思います。追っ手の方達はいつも複数で行動されているので。……あの方はお一人ですから……。それに太后さまもこんな所に女一人で逃げ込むなんて思わないのでは?」
「そうか、なるほどな……(アリアって冷静に見てるんだなぁ……)」
――こういう冷静な所、昔と変わってない……。
アリアの冷静な分析にヘンリーは感心するように首を縦に下ろし、懐かしい彼女が垣間見えた気がして目を細めた。
「……僕が声を掛けて来るよ」
黙って後ろについて来たアベルが前にやって来て、そのまま戦士に話し掛けに行く。
「あの、あなたはどうしてこんな所に……?」
「私は安住の地を求めさまよう戦士だ。かつてこの地より多くの人々が聖なる土地に運ばれたと聞いたのだが……。今ではただの廃墟。何もないようだな」
アベルの質問に戦士はそれだけ云うと辺りを見回して去って行った。
「聖なる土地ってもしかしてあの神殿のことかよ? この世の地獄の間違いだろう?」
アベルがヘンリー達の元に戻って来ると、会話が聞こえていたのか、念の為アリアを自分の背に隠していたヘンリーが訝しい顔をする。
「……光の教団はいつか潰さないといけないね」
ヘンリーに呼応するように、アベルは難しい顔をした。
「……アベル、勇者に任せればいいんだ。お前が潰す必要はないよ」
「……そうかな?」
「お前……、自分から苦労を背負い込むタイプだよな」
ヘンリーは憐れむような目でアベルを見て「はぁ」とため息を吐く。
「そうかなぁ……。僕だって好きで苦労してるわけじゃないんだけどね……」
憐憫を掛けてくるヘンリーの瞳にアベルは……。
“毎回、苦労
……とは言えなかった。
「……アベルさんならいつか光の教団を潰せそうな気がします。その時は私もお手伝いしますねっ」
ヘンリーの背後からアリアが出てきて破顔する。
「……アリアと一緒なら心強いね。じゃあ、お互いもっと強くならなきゃね」
「はい、頑張りますっ」
「……光の教団を潰すのが楽しみだなぁ……」
――アリアと一緒なら、何でも出来るような気がするよ……。
アリアの美しい笑顔にアベルは癒され、にへら~とだらしなく口を開けたのだった。
「…………潰すのが楽しみって……(オイオイ……アベルさんよ……。あそこから逃げて来た身で無茶言ってんじゃねーよ……)」
ヘンリーは嬉しそうな顔をするアベルに、もうツッコむ気さえ起きず、小さな声で“はは……”と乾いた笑いを浮かべる。
そうして歩いて行った先に十年前、誘拐犯達が根城にしていた小部屋を見つけ入ってみることにした。
◇
「ヒッ、ガイコツっ!?」
びくぅっ!! とアリアが身体を強張らせる。
かつて誘拐犯達が酒盛りをしていた部屋には二体の屍が転がっていたのだった。
「これって、ひょっとしてあの誘拐団のなれの果てか? 一体何があったんだろう」
ヘンリーがガイコツを見下ろし部屋の中を見回す。
「……さあ……」
アベルも別のガイコツを調べていた。
(このガイコツって、やっぱりあれかな……、ヘンリー達を攫った山賊の……?)
「山賊さーん……?(なんて……答えるわけないか……)」
アベルはガイコツに問い掛けてみる。
すると……、
“返事がない……。
ただの しかばねの ようだ。”
急にアベルの頭の中に声が響いた気がした。
「……え……? 何だ……? 今の……?」
「アベルさん……? そ、それ動きませんよね……?」
アベルが首を傾げると、背後から恐る恐るアリアが訊ねて来る。
「あ、うん。大丈夫、ただのしかばねみたいだ」
「……そうですか……。では死者が浮かばれるようにお祈りを……」
アベルが大丈夫だよと伝えると、アリアは手を組み祈り出した。
アリアは修道女ではないが、祈るくらいなら……という思いやりかららしい。
「こんな奴等に祈りなんて要らないだろ……(アリアも攫われたってのに……)」
ヘンリーが屍を前に複雑そうに顔を顰める。
「アリア……(神々しいな……)」
アベルは祈るアリアの姿に見惚れていた。
「…………、……どうか、安らかに……。…………、……この方達はどうしてこんなことになってしまったのでしょうか……」
「何があったかはわかんないけど、魔族と関わると碌なことがないってことだな」
アリアが祈りを終えぽつりと零すと、ヘンリーが頭の後ろで手を組む。
「魔族……。アベルさん達が大神殿に連れて行かれたのは、魔族の所為でしたね」
「君に掛けられた呪いもね」
手を組んだままのアリアが告げると、アベルは彼女の様子を見ながら返した。
彼女の顔色は悪くない。今日は今朝彼女が云った通り元気そうで安堵する。
「……魔族は巧みに人々を騙すと聞いています。もしかしたら、山賊の方達も巧く誘導されたのかもしれません。魔族はどうしてそんなことをするのでしょうか……」
「魔族の考えてることなんてオレ達にわかるわけがないよ」
「そうですよね……」
ヘンリーに一蹴されアリアは俯いてしまった。
彼女は何か考え込んでいる様子で、足元を見下ろしている。
「アリア……? 何考えてるの……?」
アベルは訊ねてみることにした。
「……あ……、魔族と解り合えたらいいのになって……」
アリアの言葉にアベルは目を見開く。
(何だって!? 魔族と解り合うだって!!?)
「っ……!? そ、それはさすがに無理じゃないかな……。僕にもそれは出来そうにないよ……」
幼い時に母を攫われ、父を殺されている自分には到底そんなこと出来そうにない。
アベルはアリアの意見は何でも受け入れたいと思っていたが、これだけは受け入れられず、首を左右に振る。
「あっ……、ごめんなさい。アベルさんはお父さまを……。……忘れて下さい。私、変なこと言いました……」
アリアは縮こまりながらアベルに深く、深く頭を下げた。
「あっ、いやっ、別にそんなに小さくならなくても!」
「っ、ごめんなさい。私、無神経なことを……! あぁ、どうお詫びしたら……」
「もういいからっ」
アベルが「顔を上げて!」と言うも、アリアは頭を下げ続けていた。
中々顔を上げてくれないので、アベルは仕方なくアリアの頭を撫でる。
フードを被ってないアリアの頭を撫でるのは少し緊張してしまう。
けれど彼女の柔らかい髪の感触は心地良く、懐かしい。
そういえば、十年前はアリアの髪を撫でるのが好きだったっけ……。
相変わらず柔らかいし、サラサラしてて綺麗だなぁ……。
「いいんだよ、アリア」
アベルは滑らかで絹のような感触の艶髪をナデナデして堪能しつつ、アリアを慰めたのだった。
誘拐団なのか、山賊なのか……。
只今脱線中、脱線中。
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