ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

いちゃいちゃ。

では、本編どぞー。




第二百二十一話 何も知らない

 

 あれから、アベル達は二度程魔物と遭遇したが、マッシュの活躍で難なく勝利を手にしていた。

 そうして、無事ラインハットへと戻って来る。

 

 

「アリア、ラインハットに着いたよ。フード被ってね」

 

「あっ、はい!」

 

 

 アリアがキャビンから飛び降りようとすると、アベルがアリアの頭を指差した。

 彼女はサッとフードを被って、馬車から飛び降りる。

 

 

「…………んんっ……あり……コホンッ(ありがとう……!)」

 

 

 アリアのスカートがふわり。

 アベルの目の前で飛び降りたので、お約束の白いレースの紐パンが一瞬見えた。

 その一瞬を見逃さなかったアベルの頬はほんのりと赤らんでいる。

 

 

 ――いかんいかん。お礼を口に出しそうになってしまったじゃないか……!

 

 

「あり……?」

 

「……っ、コドランはどうかな……?」

 

 

 アベルの様子にアリアが首を傾げるので、アベルは慌ててコドランの様子を訊ねた。

 

 

「スラりんさんと、ドラきちさんが看てくれるそうです。コドランさんも楽しそうにしてますよ。やっぱり魔物同士通じるものがあるんですね」

 

「そっか、良かった。じゃあ、アリアはマッシュと交代しようか」

 

「わっ!(アベルさんっ!?)」

 

 

 アベルはアリアが自分を見上げて来るので、頭をぽんぽんと撫でつけながら下げさせる。

 

 

「……アリア、ここはラインハットだから顔上げちゃダメだよ? 念には念を入れてね?」

 

「ぁ……、は、はい……(でも……だからって頭を撫で過ぎなのでは……?)」

 

 

 アベルの声が頭上に降ると、アリアは俯いたまま返事をした。

 ナデナデとアリアの顔が見えないのをいいことに、アベルは目を細めて彼女の頭を撫で続ける。

 

 

「……そう、いい子いい子……」

 

 

 本当は直接髪を撫でたいけど、緊張するから無理なんだよね……。

 ……これなら緊張しないから少しくらい このままでもいいよね……?

 

 

 アベルはアリアに触れるせっかくのチャンスなので、心行くまで彼女の頭を撫で続けたのだった。

 

 

「……私、子どもじゃないんですけど……」

 

「ん……? あっ! ご、ごめんね! 嫌だった!?」

 

 

 ボソッとアリアの呟きが聞こえると、アベルはパッと手を放す。

 嫌われるわけにはいかないので、自分の欲求をどうにか堪えた。

 

 

「……いえ……、別に嫌というわけでは……ない……です、けど……」

 

 

 ――何だか、子ども扱いされているみたいで……。

 

 

 アベルに頭を撫でられるのは落ち着くらしく嫌ではないのだが、彼は何故自分の頭を撫でるのだろうと、アリアは俯きながら不思議に思っていたのだった。

 

 

「じゃあ、もう少しだけ」

 

「えっ!? ぁ……、っ……、はい……」

 

 

 フード越しでもわかるアベルの優しい手付きに、アリアは頬が熱くなるのを感じる。

 

 

 私、今、多分顔が真っ赤だわ……。

 顔を上げられなくて良かった……。

 

 

 アリアは黙ったまま、アベルの気が済むのを待つことにした。

 

 

 と、

 

 

「はぁぁ……(主ぃ……。嬢ちゃんと交代しに来たでぇ……)」

 

 

 マッシュが身体をゆらゆらさせながら馬車の後部へとやって来る。

 

 

「あ、マッシュさん。私と交代です」

 

「はぁぁ……(嬢ちゃん、気張りや……)」

 

 

 アリアが声を掛けるとマッシュは頷いて、キャビンへと飛び乗る。

 

 あの巨体で跳躍は向いていないと思ったが、なんと!

 マッシュは傘を巧みに操り、風を捉え見事にキャビンへと着地したのだった。

 

 

「……マッシュさんすごいっ!」

 

「はあぁ……(せやろせやろ)」

 

 

 マッシュは身体を反転させアリアに流し目を送ると、奥へと歩いて行った。

 その動きは体躯に似合わずスマートに見える。

 

 

「……マッシュは有能なんだよ。戦闘中も頼もしかったし……。正直有能過ぎてびっくりしたくらいだよ」

 

「そうなんですね! キノコのスペシャリストってだけではないんですね!」

 

「ぷっ……。キノコのスペシャリストって……あははっ!(何ソレ……!?)」

 

「あっ……、えと…………」

 

 

 アベルの指摘にアリアは顔を上げるが、顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。

 

 

「フフフッ! アリア、君って面白いよねっ!」

 

「……っ、……ぁぅ……。そんなに笑わなくても……」

 

 

 恥ずかしいのか、アリアの瞳に涙が滲む。

 

 

「っ!? あっ、ごめんっ! つい面白くて……! 別にバカにしたわけじゃないよ!?」

 

 

 ずきんっ。

 

 アリアの表情にアベルの胸が痛んだ。

 彼女が可愛くて笑っただけなのだが、アベルは反省する。

 

 

 ――人を無闇に笑ってはいけないよね……!

 

 

「ぁ……、いえ……いいんです。私、思い込みが激しい所があるみたいで……お恥ずかしい限りです……」

 

 

 アリアは落ち込んだのか項垂れてしまった。

 

 

「……ごめんね、アリア。僕、本当失礼だよね……。君を泣かせるつもりはなかったんだ。許してくれないかな?」

 

「泣いてはいないです……」

 

「……そうかい?」

 

「はい……。恥ずかしいだけで……」

 

「…………、…………本当に?」

 

 

 アベルは身体を横に傾け、俯くアリアを覗き見る。

 

 

「っっ!?(アベルさんっ!?)」

 

「……ぁ……、…………っ、泣いてるぅ……、うっ!!」

 

 

 彼女と目を合わせると、アリアの瞳から一筋涙が零れ落ちた。

 アベルはすかさず両膝を地面に打ちつける。

 

 

「…………、っ、ごめんなさい……。もう笑いませんから許して下さい」

 

 

 土下座とまではいかないが、そのまま頭を下げたのだった。

 

 

「ぁっ、アベルさんっ、違うっ! これっ! 恥ずかしくてちょっと零れちゃっただけで……謝らないで下さいっ!」

 

 

 “全然大丈夫ですから!!”

 

 

 アリアはそんな所に膝をつかないで立つようにと、アベルの腕を引く。

 

 

「……ううん、思えば僕は昔から君をよく笑ってた……。バカにしてるつもりじゃないけど、よくよく考えたら失礼だよね。それも合わせて今謝らせて欲しい」

 

「憶えていませんから結構です!! そんなことより早くお城に行きましょう!(ヘンリーさん達ずっと待ってらっしゃるんですよ!?)」

 

 

 土下座しそうな勢いのアベルにアリアは語気を強めて止め、馬車の前方に視線を移す。

 

 と、馬車の前ではヘンリーとピエールが二人の様子を眺めていた。

 

 何だかもう、アベルとアリアに声を掛けるのも面倒なようで、早く終わらないかな~と、ヘンリーはパトリシアにちょっかいを出しては唾を吐きかけられながら、ピエールはアンドレを撫でながら、アベル達を見ている。

 

 

「……っ……、そ、そう?」

 

 

 ――アリア怒った……?

 

 

 アベルは目をゴシゴシと擦るアリアの様子を窺いつつも、彼女に腕を引かれるので立ち上がった。

 

 

「っ、早く行きましょう……!」

 

 

 アリアはアベルの背を押す。

 ヘンリー達の元へと連れて行くつもりのようだ。

 

 

「……アリア……。ごめんね……? 怒ってる……?」

 

「……もぅ……、全然怒ってなんてないですよ。私のことなんて気にしないでください。私、涙腺が緩いだけなんですから……」

 

 

 ぐいぐいとアリアに背を押され、アベルは背中の彼女に首だけ向け窺う。

 俯いたままのアリアではあったが、声は明るかった。

 

 

「…………、…………泣いてる君も可愛いよ(なんてね~……)」

 

「っっ!? な、何言ってるんですか……、もぉ……! 誰にでもそんなこと言うんですか? っ、ほら、行きますよっ!」

 

 

 アベルの発言に一瞬だけアリアの足が止まった気がしたが、すぐにまた背を押される。

 

 アリアはカジノでアベルが色んな女性を見ては頬を赤く染めたり、踊り子の女性と楽しそうに一緒に踊ったりしているのを見ていたからか、アベルが誰にでもそういうことを言っているのだと思っているようだ。

 

 

「僕は君にしか言ってないけど……?(ってアレ……? なに? さっきの口に出てた!? いや今も出てない!?)」

 

 

 アベルは慌てて口元を覆う。

 

 

「…………っ……、……何か言いましたか? よく聞こえませんでした」

 

「あっ、いや、何でもないよ……!?(気の所為!? どっち!?)」

 

 

 アリアは聞こえない振りをして、アベルの背を押していく。

 アベルは思考から どの言葉が漏れ出ていたのかわからなかったが、照れからか首を横に振って否定したのだった。

 

 

 

 

 

 

「…………、…………お待たせしました!」

 

 

 そうして漸くヘンリーとピエールの元へとアベルを連れて行った。

 

 

「おー、ご両人、やっと来たなぁ!」

 

「なっ、なんだよっ、そんなに掛かってないだろう?」

 

 

 ヘンリーにからかわれ、アベルは顔を赤くする。

 アリアは何を言うでもなく、アベルの背から手を放し、思う。

 

 

 ……アベルさんはモテる方だから、本気にしちゃダメ……。

 

 ヘンリーさんやピエールさんにもお優しいし、馬車の中の方達にも優しい……。

 アベルさんを見る女性は皆さんアベルさんを好意的に見ていて……。

 きっと誰にでも優しい方なんだわ……。

 

 呪われた私にも優しいもの……。

 

 

 

 アベルさんの好きなものって……何だろう……。

 

 

 

 

 ――私、何にも知らない……。

 

 

 

 

 アリアはヘンリーに脇腹を突かれて照れ笑いを浮かべるアベルを遠目に見つめていた。

 

 




いちゃついたり、離れたり。忙しい二人。

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