ラインハットの洞窟は暗いんですよね……。
では、本編どぞ。
右隣の牢の扉のすぐ傍には白髪の老人が居るのだが、その目は白く濁っていた。
「ご老人……少しお話をお訊きしたいのですが……」
「ん? 誰か来たのか……。何年もここに居て目も耳もすっかり悪くなったわい」
アベルの声掛けに、老人は何となく気配がわかるのか反応を見せたが、目が見えない様子で目線が合うことは無かった。
「……お爺さん目が……」
アリアが悲しそうに眉尻を下げる。
「しかし、これだけは言うとくぞっ! ヘンリー王子を亡きものにしたのは元王妃、今の太后さまじゃ!」
目線の合わない老人は鉄格子を掴み、語気を荒げた。
「っ!!」
ヘンリーが顔を顰める。
老人は唾を飛ばしながら話を続けた。
「なのに自分もヘンリー王子の行方知れずを悲しむふりをし、すべてパパス殿の責任に! パパス殿が住んでいたサンタローズの村にまで攻め込んだんじゃ。あんな性悪な女は見た事がない。今に天罰をくらうぞ!」
云い終えた老人は“はぁはぁ”と興奮していたのか呼吸を整えている。
「やっぱり、全てはあの女が? デールの母だし信じたくはなかったが……。もう許せねえ! オレが自ら天罰をくらわせてやるぜっ!」
ヘンリーも鼻息荒く息巻いていた。
「……お爺さん、あまり興奮するとお身体に障ります。どうか落ち着かれてください……」
「ん……? おぉ……この手は何とスベスベな……。若い娘さんかな……?」
アリアが老人の手に触れ語り掛けると、老人は彼女の手の甲をさわさわと撫でる。
アリアは瞬時に固まってしまった。
「……っ、えっ、と……(ど、どうしましょう……)」
「っ、アリア、この人元気そうだから大丈夫だ! 行こう!」
戸惑うアリアの手をアベルが掴んで老人から取り上げる。
「……娘さん?」
「ぁ……、えっと……(お爺さん、目も見えていないし、声も聞こえていないみたい……)」
老人の手が彷徨いアリアの手を探すが……、
「お爺さん! すぐ出してあげるから待っててねっ!!」
アベルは宙を泳ぐ老人の手を掴み、大きな声で言ってやった。
「よし! 行こう!」
「ぁっ、アベルさんっ!?」
老人が納得した様子はなかったが、アベルはアリアの手首を引っ張って歩いて行く。
隣の女性達にも「もう少しだけ待っていて下さい」と告げてアベル達は牢を後にした。
◇
牢屋を離れアベルを先頭にし、城内を目指し通路を進んで行くと、ヘンリーが隣を歩くアリアを見て口を開く。
「アリアさんてさー……、自らトラブルを引き寄せる人なんだな」
「え……? そ、そうですか?(トラブルって何だろう……???)」
隣を歩くアリアは何のことなのかわからず首を傾げる。
「……自覚ないみたいだな。……アベル、頑張れよ」
「えっ!? あ、うん?」
ヘンリーは前を歩くアベルの肩を叩いたのだった。
「……えと……?(何でアベルさんが頑張るの……?)」
アリアが首を傾げアベルを見ると、アベルは「ははは」と乾いた笑いを浮かべ、頭の後ろを掻いていた。
そんな話をしていると、通路の奥から「
「……何だ?」
「奥から声が……」
ヘンリーが声のする方へと顔を向けると、アリアも同じ方を見つめた。
ヘンリーは奥へと歩いて行ってしまうが、奥の通路は灯りも少なく暗いため、アリアは二の足を踏んでいる。
「地下牢に出るお化けだったりして……(なーんてね)」
「ひゃっ!?(お化けっ!?)」
アベルはその場に留まり、悪乗りしてアリアの背後から耳元にそっと囁くと、彼女はビクッと肩を震わせ怯えた。
「あ、ごめん……、冗談だよ(そんなに怖かった!?)。さっきの人達みたいに誰か囚われてるみたいだね。行ってみようか」
「っ……アベルさぁん……、っ、いじわるです……」
アリアの反応に不味いと思ったアベルはすぐさま謝って、奥へと歩いて行こうとするが、彼女は涙目でアベルのマントを掴んだのだった。
掴んだその手が僅かに震えている。
「アベルさん先に行って下さい……。う、後ろについて行きます……」
「…………っ、そんなに怖いなら……、て……手をっ! ……手を繋ごうか……?(なーんて……繋ぐわけ……)」
アベルが手を差し出すと、アリアはその手を見下ろした。
そして、
「…………、…………、……ぎゅってしてて下さいね。放しちゃイヤです……」
アリアはアベルの手を取ると、きゅっとその手を掴んだ。
「っ、放さないから大丈夫だよ」
アベルはヘンリーやピエールの手前、少々恥ずかしかったが、アリアが望むならと指を絡め合わせ、簡単に外れないよう繋ぎ直した(所謂恋人繋ぎというやつである)。
アリアの手柔らかい……。
小さくて、滑らかでもちもちしてて……なんて触り心地がいいんだ……!!
アリアを怖がらせて申し訳ない気持ち半分、言って良かったという気持ち半分のない交ぜになった気持ちで、手から伝わる温もりにアベルの胸が満ち足りていく。
「……コホンッ……。さ、先に行かせて頂きますよ……」
アベルとアリアの後ろに居たピエールが気まずそうにヘンリーを追った。
「…………行こうか」
「……はい」
残された二人も奥へと向かった。
「アベルっ! ちょっと来てくれ! そこの牢に入ってる人のことなんだけど……!」
奥の通路に進んで行くと、ヘンリーの声が聞こえて来る。
「……何かあったんでしょうか……?」
「……行こう」
アベルはアリアの手を引き、駆け出そうとするのだが。
「あっ、アベルさん、手、もう大丈夫ですよ」
「え?」
「ヘンリーさんの口振り……、お化けではなさそうなので。それに、ヘンリーさん達の前じゃ恥ずかしいでしょう?(ピエールさんに見られてしまいましたし……)」
アリアは繋いだ手をあっさり解いてしまった。
「あ……、…………、……うん。じゃ、じゃあ、行こう」
アベルは離れてしまった手を見下ろす。
そりゃ恥ずかしいけどさ!
さっき“放しちゃイヤ”なんて言ったのはアリアなのにそんなにあっさり外さなくても……!
そうは思ったが、アリアの言い分も最もだと思ったアベルは名残惜しいが そのままヘンリーとピエールの元へと向かった。
何だかいい感じにいちゃついてるな~っとv
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