シリアスなとこも、アリアで和んでもらえたら……。
では、本編どぞ!
アリアがヘンリーに微笑み掛ける様子を、先頭に居たアベルはチラ見していたのだが……。
その背中から禍々しいオーラが湧き出ていることにヘンリーが気付いた。
「……っ……、けっ、けど、オレの事は心配しなくても大丈夫だぜっ!?」
「え……、そ、そうですか……? ご迷惑でしたか……(そうですよね、記憶喪失の私なんかに心配されてもご迷惑ですよね……)」
ヘンリーの言葉にアリアはしゅーんと、下を向いてしまう。
「あっ、いやそうじゃないんだけどなっ! 傍でどす黒いオーラを感じた気がしてさっ!」
慌ててヘンリーがアリアに告げるも、背を向けていたアベルが後ろを振り返り、彼女の背後からヘンリーを睨み付けているではないか。
――アベル! アリアにわからないようにオレを睨むんじゃない!!
ヘンリーは普通の会話くらい許せよ、心の狭い奴だな……と冷や汗を流した。
「……どす、黒い……? アベルさん、何か感じますか?」
「……ん? 全然? ……アリア、城内に入ったしフードを被ろうか」
アリアがアベルに振り返った途端、アベルの瞳は柔和に戻り彼女に薄っすらと微笑み掛ける。
そして、彼女にフードを被せたのだった。
「あっ、ごめんなさいっ!」
「うん、…………いい子いい子」
「…………っ、子どもじゃないですよ……」
フードを被せるとアベルはアリアの頭を撫でる。
アリアは一言文句を付けたものの、アベルの手を振り払うことは無かった。
「……もう、勝手にしてくれ……」
アベルの奴、アリアに嵌り過ぎだろ……。
アリアもアリアだよ……!
隙あらばイチャついちゃってさっ!
二人の様子にヘンリーは呆れてものが言えなくなってしまった。
ピエールの反応はどうだったかというと、彼は意外にも二人の様子に反応することはなく、心ここにあらずで何か考え事をしている様子で腕組みをしていた。
「おや、あんた達、新人さんかい? 何が必要なんだい?」
不意に、火のついていない窯に薪を入れる女中のおばさんに声を掛けられる。
「あ、僕達は……(何て答えよう……!?)」
「あの、小腹が空く頃ですので、デール様に何かお持ちしたいのですが……」
ヘンリーがサッと顔を背ける中、アベルがどう言おうかと考える前に、アリアが機転を利かせておばさんに告げていた。
「ああ、もうそんな時間なのねえ。じゃあ、モモガキでも剥くわ。少し待って頂戴な」
「はい」
おばさんは窓の外を見るなり陽の傾きで時間がわかったのか、果物カゴから【モモガキ】を持って来て剥き始める。
アベル達はその様子を眺めていた。
すると、おばさんは【モモガキ】を剥きながら口を開く。
「太后様も、王妃様の頃は息子のデール様を あんなに可愛がっていたのに……。デール様が国王になり自分が太后様になった途端人が変わってしまって……。今では国王のデール様を邪魔にさえ思っているご様子。まったく、どうしてしまったのかねえ」
話し終える頃には綺麗にモモガキを剥き終え、皿に載せるとおばさんはそれをアリアに渡した。
「最近、食も細いようだし、食べてくれるといいけどねえ……」
デールの事を心配しているのか、おばさんは「お食べにならなかったらあんた達が食べちゃっていいからね」と弱り目で呟くと、自分の仕事に戻っていった。
「やっぱり今の太后は本物と入れ替わってるみたいだな。問題は、そのことを証明する方法なんだが……どうしたもんかな」
「……うーん……」
ヘンリーが頭を抱えると、アベルも腕組みして唸る。
――さて、どうやって証明しよう……?
真剣な顔でアベルとヘンリーの二人が考え込む。
その隣でアリアはというと、
「……これ、どうしましょう……? とってもおいしそうですね……」
アリアは渡された【モモガキ】を見下ろし告げた。
途端、“ぐ~きゅるるる”とアリアの腹の虫が鳴る。
「あっ……やだ…………っっ……(私ったら……!!)」
アリアは二人から顔を背けるように俯いてしまった。
顔が真っ赤だが俯いている為、気付かれていない。お腹の音も気付かれていなければいいとアリアは願った。
が、そんなわけはなく……
「…………、…………ブッ! 今のなにっ!?」
「…………、っ…………、…………プハッ!」
ヘンリーとアベルが二人して吹き出してしまう。
真顔だった二人の顔が一気に破顔する。
“あははははっ!!”
とアベルとヘンリーが腹を抱え笑い出してしまった。
「ぁ……ぅ……。ご、ごめんなさい……。真剣なお話をしている時に私のお腹ったら空気が読めなくて……」
アリアは深々と頭を下げる。
「くくくっ、アリアさん、それっ、食べていいよ!」
「はははっ! うん、食べなよ!」
「っ、こ、これはデール様のだから……!」
二人に食べていいよと言われたものの、アリアは首を横に振って拒否した。
“これを持って行けば怪しまれずに謁見できますよ!”ということらしい。
「……アリア嬢……、なんとお可愛らしい……」
ピエールの表情はわからなかったが、声は穏やかだった。
◇
それからアベル達は台所から出て、王の間を目指した。
二階に続く階段を上りながら、何度かアリアのお腹から虫の鳴く音が聞こえたが、鳴る度アベルとヘンリーは聞こえていない体で、吹き出しそうになるのを堪える。
きゅるるる……。
「っ、アリア、我慢しないで食べていいんだよ?」
――昔、君はモモガキを美味しそうに食べていたじゃないか。
アベルはアリアが我慢しているのが可哀想で、さっきから何度も食べていいと言っていたのだが。
「っ、だっ、大丈夫ですっ! これは、デール様にお渡ししないとっ! それに、きょ、今日は、お腹の虫が鳴る呪いが発動しているだけですからっ!!」
アリアは俯いたまま首を横に振ってやせ我慢をしていた。
「腹の虫が鳴る呪いって…………、…………っっ……くくっ……!!」
――そんな呪いあるの!?
二階に着くなり、笑ってはいけないと思いつつ、アベルは堪え切れずに笑ってしまうので、ヘンリーがアベルの脇腹を突いて止める。
「……アベル、あんま笑ってやるなよ。アリアさん恥ずかしがってるだろ?」
ヘンリーはアリアに「ピエールとちょっとここで待ってて」と謁見室に続く扉の前に二人を置いて、アベルを壁際に連れて行きこっそり耳打ちした。
「なっ、何で…………、ヘンリーだって笑ってたじゃないか……!」
「……オレはもう笑ってないよ。しつこいのは良くないと思うぞ」
「っ……、僕はそんなつもりじゃ……。ただ、アリアが可愛くて。それにお腹空かせてるのも可哀想で……」
「可愛いのも可哀想なのもわかる。けど、一生懸命我慢してんだから、黙っててやろうぜ! あんまりしつこいと嫌われるかもしれないぞ」
「っ!?(嫌われるっ!?)」
アベルの顔が青ざめる。
そして、ピエールと共に俯いて待つアリアを見る。
今は俯いていないといけないから俯いているだけなのだが、もしかしたら落ち込んでしまっているのかもしれないとアベルは気が付いたのだった。
「っ、わかった。もう言わないし、笑わない」
「おう、そうしろそうしろ」
二人はアリア達の元へと戻って、王の間に続く扉を開いて中へと入る。
中には兵士が一人立っていて、やって来たアベル達に目を向けていた……。
アリアは自分の荷物を覗き「おやつ食べたい……」と零したのだった……。
アリアの持ち物:
ビアンカのリボン、空瓶(物乞い姉弟にあげたお菓子が入っていた)、水筒、発酵した何かが入っている瓶、小麦粉、塩、砂糖、バター……なんてね。食べ物ばっかりwww
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