日々ポンコツ度の増すアリアさん……。
では、本編どうぞっ。
アベルは部屋を出ると、アリアが言っていた三階のバルコニーへ出る扉を開けた。
「あ」
「ふふっ。ここ気持ちいいよねっ、あっちから来たの? へぇ、そうなんだ」
バルコニーではアリアが陽の降り注ぐ中、小鳥達に囲まれ柔らかい笑みを浮かべ語り掛けていた。
濡れた枕はどこからか椅子を持って行ったらしく、その上に置かれ干されている。
「……アリアって不思議」
「ん……? あ、アベル……。さっきはごめんね、上手く絞れなくて……」
アベルの声に気付いたアリアは振り返って頭を下げる。
「気にしないで! アリアが看病してくれたことは事実なんだし! 誰でも苦手なことはあるよ?」
僕だって、早起きは苦手だしネ! とアベルは明るくウインクをアリアに送った。
「っ、う……。そ、そうダネ……。気にしないようにするよ……(何か悔しいけど……、主人公って万能過ぎだな……)」
屈託なく微笑み、自分を元気付けようとしてくれるアベルに負けた気がして、アリアは苦笑いを浮かべたのだった。
「力が必要なときは僕を呼んで?」
「え?」
「ほら、僕力強いし。アリアは
アベルは目を細めて自分の胸元に手を当て自信満々にアリアに告げる。
グサリ。
アベルの言葉はアリアの心臓を突き刺していた。
「ぅっ、弱いって……、はっきり言わないでよ……。凹むなぁ……」
いててて……。
と、アリアのMPが5減ったのだった。
「あっ、えと、そうじゃなくてっ! アリアってビアンカに比べたら貧弱っていうか……ほら、【ひのきのぼう】も持てなかったし!」
グサッ、グサッ!
アベルの口撃が続き、アリアに容赦なく突き刺さる。
「貧弱……。OH……(ていうか、それは掴めなかっただけで……)」
アリアがショックで胸元を押さえて顔を俯けると、小鳥達が彼女の頭や翼を突いてきたのだった。
物理的にダメージ(5)を受けてしまった。
「っ、ごめんっ、落ち込ませるつもりは……!」
「……アハハ。イイノイイノ。キニシナイデ……。本当、私何にも出来ないポンコツだからネ……(魔法とか使えるといいのに……)」
アベルが慌ててフォローするも、アリアは遠い目でバルコニー越しにアルカパの町を眺めている。
遠目だったが、昨日の子供達が嫌がる子ネコを引っ張って走っているのが見えた。
子ネコちゃん……必ず助けるから待っててね……。
アベルとビアンカちゃんがきっと……!
私は……ポンコツだけど、二人はしっかり者だからっ!!
アリアは“ぐっ”と、両手拳を握り力を込めたのだった。
「そんなことないよっ! アリアはそこに居るだけでいいんだっ。そこに居るだけで価値があるんだから!」
そう、君は今まで出会ったことのない、特別な存在なのだから!
アベルはアリアの手を取り、ぎゅっと力強く握る。
もちもちした小さな手の感触は温かくて、ほっとした。
すると、アリアの目が見開かれる。
「っ、っ!? ど、どういうこと? えらく持ち上げてくれてありがたいけど、存在給でも出るの……?」
「存在給が何かはわかんないけど、アリアが居てくれるだけで、僕は救われてるんだよ!?」
きっと、今言っても伝わらない。
僕自身もまだ掴め切れてなくて、今は上手く伝えられない。
だけど、君はきっと“初めて”なんだと思う。
――呆気にとられ、首を傾げるアリアにアベルは語気を強めるのだった。
「えぇ? ……意味わかんないんだけど……(私何もしてないし……)」
アベルの言葉にアリアは引き気味で頭を捻る。
「君みたいな人、僕初めてだから!」
ずずいっと、アベルは瞳を爛々とさせながら、アリアとの距離を詰めていく。
「ちょ、近っ……! な、何……? アベル何興奮して……」
「興奮せずには居られないよ! だって、君は
「また……? な、何が……?」
アベルってば何で、そんなに真っ直ぐ見つめてくるのよ……。
っ、可愛いおめめしてぇっ!
くぅっ!
アリアは距離を詰めてくるアベルに“この瞳に見られると弱いんだってば!”と後退った。
「……っ、アリアっ!!」
不意に、アベルは戸惑うアリアに抱きつく。
「っ……!? な、何で急に抱き着いて……」
アベルに抱きつかれアリアは石の様に固まってしまう。
「君と一緒なら、毎日が楽しい!」
「……っ……そ、そう……。よ、良かった……ね?」
アベルがアリアの耳元で楽し気に話すと、アリアはやんわりと放すように手を剥がそうとしてくるのだが、アベルは逃がさなかった。
「アリア、まだしばらく一緒に居てくれるよね?」
「え? あ、うん……。行くとこないし……アベルしか私のこと見えないし、あなたさえ良ければ……」
「僕は大歓迎! これからもよろしくねっ!」
アベルはそこまで言ってやっとアリアから離れ、片手を彼女の前に差し出す。
「う、うん……、よろしく……ね?」
すると、アリアは差し出された手を握り、二人は握手をしたのだった。
(アベルって、スキンシップ多いな……、子供ってこんなものなのかな……?)
アリアは、満足そうに満面の笑みを浮かべるアベルを上目で窺う。
「じゃあ、ビアンカが下で待ってるから行こっか。父さんまだしばらく起きそうにないし」
「え? あ、うん」
それから二人は一階へと下りる。
◇
――一階に下りてくると、待合所にビアンカの姿を見つけた。
ビアンカは宿入口近く、待合所のテーブルに着いており、アベルがやって来た事に気が付くと片手を挙げて軽く振ってくれる。
「アベル。パパスおじさまの具合はどう?」
「うん、さっき戻ったら寝てたから、起きたら薬飲ませるね」
アベルはビアンカの向かいの席に腰掛けてテーブルに頬杖をついた。
その隣でアリアは聞こえないのは重々承知で『ビアンカちゃん、おはよう!』と笑顔で挨拶している。
「うん、そうしてあげてね。あ、三階のお部屋はパパスおじさまが治るまで使っていいって、お母さんが言ってたわ。看病も任せてって」
「そうなんだ、ありがとう」
アベルが頷くと、後ろからお客なのか業者なのかはわからないが、知らない大人が通り過ぎて、受付で従業員と会話を始めた。
そのためか、
「……パパスおじさまのことは気になるけど、お母さんが看てくれるし。これで今夜も外に出れるわね。……行くよね?」
ビアンカは大人に訊かれないようにか、テーブルに手をつき身を乗り出すと、小声で告げた。
「うん、もちろん」
アベルも釣られて身を乗り出し、頷く。
「そうこなくっちゃ。そしたら夜眠くならないように、お昼寝しておかなきゃね」
ぱちんっ!!
と、アベルとビアンカは手を合わせ叩き合い、二人して不敵に嗤った。
『……ぁ~、二人共悪い顔してるぅ~……(全く頼もしいなっ、君達は!)』
アリアはほくそ笑む二人に“ふぅ”とため息を吐いて、目を細める。
――そうして、三人はまだ明るいうちに床に就き、夜に備えるのだった……。
アベルとビアンカが頼もしいので、アリアはただの見届け人みたいになってしまうのではと危惧しています。
さて、ようやく次回レヌール城に向けて出発です。
のろのろ展開ですみません。
……楽しいですwww
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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!