身体に染み込んだ社畜魂は抜けない。
では、本編どぞ~。
「ったく、アベルは馬鹿力だなぁ!」
「此度の主殿は意外とシャイですね……」
「っ……! と、とりあえず、上から見えない場所で待機しようよ……!」
二人にツッコまれアベルは顔を上げると階段の側へ行こうと促す。
そうしてアベル達は階段のすぐ脇で控えることにし、アリアの様子を大臣に気付かれないように見上げた。
階段の上では……、
『デールさまに軽食をお持ちしました』
『っ!! そなたは……!? そっ、そうか……! そっ、そなた新しい使用人か!?』
アリアの声がしたかと思うと、大臣の上擦った声が聞こえてくる。
下からアベル達が見上げていると、大臣が目を剥き、アリアの美貌に見惚れているではないか。
アリアの手元を見るついでに、胸元をチラチラと覗こうとしていた。
「あのおっさん……! アリアのおっぱいガン見してんぞ!」
「アリア嬢……!(頑張ってください……!)」
「……くっ……(消す……)」
――あれは僕のなのに……!!
階下でヘンリーとピエールがハラハラと見守る中、アベルは【やいばのブーメラン】を膝より
「っ、主殿っ!!」
「おいっ、アベルっ! どうどうどう……!」
「……くっ、放せっ! アリアがセクハラされるのは見ていられない!! すぐ駆け付けて あいつを遠ざけないと……!!」
【やいばのブーメラン】を放とうとするアベルを、ピエールとヘンリーは慌てて止めた。
「っ、気持ちはわかるけど、呼ばれるまで待とうぜっ! なっ!?」
「そうですよ!!」
「けどっ、イヤだっ!!」
階下でアベル達が対立している間に、アリアはというと……。
・
・
・
「はい、本日から働かせていただいています。……お持ちしても?(……今、アベルさん達の声が聞こえたような……?)」
大臣と話をしながらアリアは階下の様子が気になっていた。
「ん? う、うむ……。最近王は食が細い故、モモガキなら食されるかもしれないな。よし、通って良いぞ」
大臣はアリアの胸元が見えそうで見えず、これ以上眺めているのも不自然に映るのでスッと下がる。
大臣としての威厳は保ちたいらしい。
「はい、では失礼致します」
――やっぱり殿方って、胸やお尻がお好きなのですね……。
大臣の横を通り過ぎ、デールに【モモガキ】を運びながらアリアはバニーガールをしていた時のことを思い出す。
今まで色んな男性客に接客して来たからか、男性が自分のどこを見ているのかは大体わかっている。
嫌だなと思う時もあるが、バニーガールの時は違う自分になれたようで楽しかった。
修道院では厳しい戒律に縛られていた為に、
修道院に居た頃は言葉遣いや所作等も事細かに指導されていた所為で、アリアは窮屈に感じていたのだった(今更ではあるが、海から流れ着いたアベルが目覚め彼女が挨拶をした時、ポッシスがほっとした顔をしたのはアリアの所作がきちんと出来ていたからである。出来なかったら後でお小言をくらっていたに違いない)。
今、記憶には無いが、元々転生前は男性の多い職場での営業職に就いていた。
時に男性と成績を張り合うようなこともあった環境に身を置いていたわけで。
子供の頃は親からは放置され誰かに指導を受ける……何てことは殆どなく、時々父親に殴られはしたものの、自由に生きて来たのだ。
女性だらけ、まして修道院という特殊な環境の下、シスター達との生活は厳し過ぎて、水が合っていなかったのだろう。
マザー達には恩があるし嫌いというわけではないが、求婚の話が無かったとしても、奉公が終われば修道院から逃げ出していたかもしれない。
言葉遣いや所作こそ矯正されたが、アリアは淑女……というには ほど遠い精神の持ち主なのである。
(モンスターじいさん様に勧められて購入した服とはいえ……、もうちょっと、露出の少ない服の方が良かったかしら……。)
今更ですよね……、とアリアは自嘲し自己を見下ろしてから、目の前でぼんやりしているデールに声を掛ける。
「デールさま。モモガキをお食べになられませんか……?(元気がなさそうですね……)」
アリアは優しく
「…………、少々お待ちになって下さいませ。只今デール様に必要なお方を呼んで参ります!」
――ここはヘンリーさんにお声掛けして頂いた方が良さそうです……!
アリアは踵を返し、大臣に話し掛ける。
「大臣さま。私の友人がデールさまにお会いしたいと望んでいるのですが、宜しいでしょうか……? とても気持ちの良い方々で、彼等のお話を聞けばデールさまもお元気になられると思うのですが……」
「ム……それは……」
「……えっと……、少しだけでもダメ……、ですか?」
確か……胸を寄せて、首を傾げて上目遣いと……
……こういうの、嫌いなんですけど……。
アリアは内心イライラしながらも、レイラに教わったあざといポーズを大臣にかました(レイラには男性客に可愛くお願いするテクニックを色々教えてもらっている)。
「うっ……、…………ゴホンっ、コホンッ、……ウ、ウム。いいだろう……」
大臣はアリアに見つめられ……、なんと!
頬を赤くし許可してくれたのだった。
「ありがとうございますっ! さすが大臣さま! 心が広いお方ですね!」
“お願いを聞いてくれたら、お礼と褒めておくのも忘れないようにね!”
そうしたら、気分良くコインをたくさん懸けてくれるから! とレイラの顔が浮かんだ。
(あれ……? コインは今関係ないですよね……?)
アリアは褒めるのは余計だったかと思ったが、
「ま、まあな……」
大臣が嬉しそうな顔をしているので、良しとした。
「……アベルさん! 上がって来て下さい!」
アリアは階下に居るアベル達を呼ぶ。
アベル達は階段を上がって来るのだが……。
「……アリアさん……、君、名女優だな……」
「アリア嬢……、大臣殿はお客ではありませんよ……」
「あははは……、す、すみません……。つい……バニーガールの時の癖が……」
ヘンリーとピエールに
アベルは傷付いたような顔をし、無言でアリアの横を通り過ぎる。
(アリアがあんな……、男に媚びる仕草をするなんて……ショックだ……)
アリアの行動に胸を痛めたアベルだった。
「アベルさん……?」
「……あ、う、うん……」
アリアに声を掛けられ、アベルはつい返事をする。
――僕にさっきのポーズをしてよ……!! 僕だけにそうしてよ……! そうしたら、何でも利いてあげるのに!!
アベルの想いなど知らず柔和な顔をしているアリアに、アベルは何も言えなかった。
可愛い娘の営業スマイルは、効果抜群である。
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