ヘンリーの弟なんだよね……。
では本編どぞ。
◇
「さて、じゃー、オレが声を掛けてやっかな」
デールの傍までやって来ると、ヘンリーは玉座の前で腰に手を当て踏ん反り返った。
「デール王、話がある」
「…………。………………。そこにいる大臣から聞いたであろう。今日は誰とも話したくないのだ。下がるがよい」
デールは返事はするものの、ヘンリーの方には顔を向けなかった。
そこで、ヘンリーは彼の耳元に小声で囁く。
「ですが王さま。子分は親分の言うことを聞くものですぞ」
“!”
デールがハッとヘンリーの顔を見上げると、目を剥いた。
「…………!! そんな……。まさか…………。おい大臣! 私はこの者と話がある。下がっておれ!」
わなわなと震え、デールは玉座に近付いたヘンリーを排除しようと向かって来る大臣を止め、下がるように告げる。
「は? ……はい、分かりました」
大臣は、訝しそうに眉を顰めたが、王に云われたので渋々階段を下りて行った。
・
・
・
「兄さん! ヘンリー兄さん、生きていたんだね!」
大臣が居なくなると、先程までぼんやりしていたデールの瞳が輝き出す。
「ああ、ずいぶんと留守にして悪かったな。実は……」
ヘンリーは地下牢で太后と会ったことと、城に居る太后がニセ者ではないかということをデールに伝えた。
「え! 母上が地下牢にっ!?」
デールの声は思いの外大きく、ヘンリーは慌ててデールの口を塞ぐ。
「っ!」
「シー! 声が大きいぞ。デール」
「そういえば いろいろ思い当たることがあるな……」
ヘンリーが口元に人差し指を立てると、デールは頷いて腕組みすると話し出した。
「いつだったか、ボク読んだことがあるんだ。不思議な鏡の伝説を。この城の倉庫の本棚だったと思うな。そうだ。このカギを持ってお行きよ。きっと役に立つから」
デールはポケットに入っていた【ラインハットのカギ】をヘンリーに渡す。
「不思議な鏡の伝説……? そういえば、そんな話聞いたような。しかし、その鏡がどう関係あるんだ?」
「……不思議な鏡って……(ひょっとして……?)」
ヘンリーは【ラインハットのカギ】を「お前に預けとくよ」とアベルに差し出した。アベルはそれを受け取り【ふくろ】に仕舞う。
不思議な鏡が何かはわからなかったが、何となく大事な物な気がする。
「……頼むよヘンリー兄さん、不思議な鏡を探して来ておくれよ」
「わかった。不思議な鏡だな……! 鏡か……。あ、ところでデール。確認したいことがあるんだがいいか?」
「何だい?」
「お前、妃を何人娶るつもりなんだ?」
ヘンリーはデールに妃候補の女性達について訊ねたのだが、デールは始め何のことかと首を傾げ……、
「え……、ええっ!? 何ソレ!? ボク知らないよ!? ボクまだ成人してないんだよ!? 女性とだって母上くらいしかまともに話したこともないくらいなのに……」
本当に何も知らない様子で首を横にブンブンと振っていた。
「……だよな。うん、何かそんな気はしてた。アベル」
「ああ、恐らくニセ者の仕業なんだろうね」
ヘンリーが話題を振ると、隣りに居たアベルは首を縦に下ろす。
「っ……、どういうことだい?」
「……ニセ者の太后はお前の妃候補と偽り、各地から美女を誘拐し牢に入れ、一人ずつ石像に変えては、何処かに売り飛ばしているらしい」
「な、なんだって……!? 初耳だよ!!(人を石に!?)」
とんでもない話を聞いてしまい、デールは心底驚いた表情で自分は何も知らないと訴えた。
「……オレの友達も狙われてる。お前は知らないかもしれないが、そういうお触れが出てるようだから、即刻取りやめてくれ」
「友達って……、わかった! すぐ手配するよ」
デールはヘンリーとアベルの間から見える、後ろに居たアリアをチラッと見やる。
一目見て綺麗な
「あと、地下牢に女性が二人囚われてる、その隣にも老人が一人。出してやってくれ」
「わかった。……っ、友達って……、ひょっとしてそこにいる女性だったりする……?」
デールはアリアが気になるのか、ヘンリーを窺う。
「ん? あ、ああ……、アリアさん」
ヘンリーがちょいちょいとアリアを手招きすると、彼女がデールの目の前にやって来る。
「あ、……えっと……。ヘンリーさまにはお世話になっています……」
「“さま”なんて付けなくていいっつーのに! ……この
「どうも……」
アリアが頭を下げると、ヘンリーはアリアとアベルをデールに紹介した。
アベルも軽く会釈をする。
「ぁ……、っ……。さっき、声を掛けてくれた……お姉さん……ですよね?」
デールはアベルには目もくれず、アリアを真っ直ぐに見つめた。
頬がほんのりと赤く染まっている。
「あ、はい。デールさま、私はアリアと申します。ヘンリーさまの友人で……」
「そっ、そのモモガキ貰ってもいいかなっ!?」
デールは玉座から身を乗り出し、アリアが手にしている【モモガキ】を指差した。
その様子にアベルは“ムッ”と頬を膨らませる。
「へ……? あ、はい……どうぞ……?(ちょっと色が変わって来ちゃいましたけど……)」
「っ、食べさせてくれると嬉しいんだけど……! だめ……ですか……?」
アリアが【モモガキ】の載った皿を差し出すと、デールは目を潤ませ甘えたような声を出す。
(ダメに決まって……!)
アベルが割って入ろうとしたが、
「え……。あ、はぁ……、どうぞ……?」
アリアはモモガキにフォークを刺しこみ、デールの口に運んでやった。
デールは“パクッ”と【モモガキ】を口に含み咀嚼する。
すると、
「んっ! おいしい……!! こんなおいしいモモガキは初めてだ! お姉さん、ボクのお嫁さんになってくれませんか……!?」
「ぁっ……!」
アリアに【モモガキ】を食べさせてもらい、気を良くしたデールはアリアのフォークを持つ手首を掴んだ。
すかさずアベルもアリアの手首を掴むデールの腕を掴む。
「痛っ!? っ……!?」
「…………。……デール王……。今はそんなことをしている場合ではないと思いますが……」
ゆっくりと低音で告げたアベルの目が据わり、冷ややかにデールを見下ろす。
その目線に彼を怒らせてはいけない……と、デールは瞬時に理解した。
「っ…………あっ、はい……! そ、そうでしたね……!」
デールがアリアの手首を放すと、アベルはアリアの手を引いて自分の背後に彼女を隠してしまう。
「……ははは……(血は争えねーなぁ……)」
ヘンリーが十年前の自分を見たような気がして、乾いた笑いを浮かべていた。
「……アベルさん……」
アリアはアベルの背中をじっと見つめる。
彼女はそのまま黙って話が終わるのを待つことにした。
それからヘンリーがデールと二言三言交わすと、不思議な鏡とやらを探しに動き出す。
「じゃあ……、オレ達は不思議な鏡とやらを探して来るよ。絶対ニセ者を暴いてやるぜ!」
「無理をしないようにね。……あ、アリアさんも……、気を付けて……」
デールはアベルの手前、恐る恐るアリアに手を振る。
「え……? あ、はいっ、お気遣いありがとうございます」
アリアは深々と頭を下げたのだった。
アリアが求婚されるのは適齢期? なので……ってことで。
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