ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

笑いは突然やってくる。

では本編どぞ。



第二百三十二話 笑いは突然に

 

「城の倉庫か……、確か一階の……」

 

 

 ヘンリーが先頭を行き階段を下り、アベル達は一階の台所に戻って来た。

 

 

「台所に戻って来たけど……」

 

「こっちだ、こっち」

 

 

 アベルが台所を見回し告げると、ヘンリーは台所の外扉へと向かい開く。

 そうして一旦中庭へと出た。

 

 

「中庭に戻って来たね」

 

 

 アベルが中庭に戻って来たことを告げつつ、アリアに「今度モモガキを買ってあげるね」と話し掛けると、アリアは「べ、別にモモガキを見ていたわけでは……」と恥ずかしそうに首を横に振っている。

 台所に戻って来た際に、アリアが果物カゴをじっと見ていたのを、アベルは見ていたらしい。

 

 

「おう。んで、倉庫は確かあっちの扉の奥だ(ったく、またイチャついて……)」

 

 

 アベルとアリアの様子をつまらなそうに眺めつつ、ヘンリーは中庭の北東に位置する扉を指差し向かった。

 

 

「……アリアさん、何か思い出せるといいな(まぁ、良い思い出でもないけどな)」

 

 

 記憶を辿りながら北東の扉の前で云うと、ヘンリーは扉を開け放つ。

 

 

「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、ここは……」

 

 

 再び城内へと入るなりアベルは眉を(ひそ)め唇を噛み締めた。

 

 

「アベルは憶えてるだろ?」

 

「うん……まあ……」

 

「あの辺だったっけ……」

 

 

 ここは十年前、ヘンリーとアリアが誘拐された場所。

 二人は誘拐された裏口に何となく視線を向けてしまう。

 

 もし、アベルの記憶がもう少し早く戻っていたのなら、二人が(さら)われることは無かったのかもしれない。

 

 

「…………っ、僕がもっと早く気付いていたら、ヘンリーも、アリアも攫われることは無かったのに……」

 

 

 十年前のあの時(・・・)を思い出し、ぎゅっ、とアベルは拳を握り締める。

 

 

「……何言ってんだよアベル。オレが油断してたのが悪いだけだよ、お前は何も悪くないって」

 

「…………、…………ああ」

 

 

 アベルの思い詰めたような顔に、ヘンリーは気にするなと力強くバシバシとアベルの肩を叩いた。

 

 

 ――こうして慰められるのは何度目だったかな……。

 

 

 ヘンリーに申し訳ない気持ちと、ありがたい気持ちの両方でアベルは薄っすらと口角を上げる。

 そんな二人の様子を後ろで見ていたアリアは首を傾げていた。

 

 

「…………、……私も……? ……どういうことですか……? 私も攫われたんですか……? あれ? 私両親と一緒に旅をしていたのでは……?」

 

「「っ!!?」」

 

 

 アリアの言葉にアベルとヘンリーの二人が目を剥く。

 二人の額には徐々に汗粒が浮かんでいった。

 

 

「っ、あ、アリア……こ、これには訳があってね……!」

 

「そ、そうだぜ、アリアさんっ! これには深ーい訳があってだな!」

 

「っ、……ま、先ずは不思議な鏡を調べないとね! ヘンリー! 倉庫はここかな!?」

 

「だ、だなっ!! その扉だ!」

 

 

 アベルとヘンリーがアリアの傍にやって来たかと思うと、二人は必死に誤魔化し始め、【ラインハットのカギ】で倉庫の扉を開け中へと入って行ってしまった。

 

 

「…………ぁ。……ピエールさんは、何か知っていますか……?」

 

「……あ……、いえ……私は……」

 

 

 ピエールに訊ねてみても、ピエールは首を横に振るだけで答えてはくれない。

 素顔が見えない為に、本当なのか嘘なのか判断がつかなかった。

 

 ピエール自身は一部しか知らない為に下手に彼女に話すわけにはいかず、黙っていただけなのだが。

 

 

「……そう、ですか……」

 

 

 アリアは眉尻を下げ、落ち込んでしまう。

 

 早く記憶を取り戻したいと思っているのに。

 アベルもアリアに記憶を取り戻させてやりたいと言っていたのに。

 

 

 ――どうして、教えてくれないのですか……?

 

 

 アリアは先程アベルとヘンリーが見ていた城の裏口の扉をちらと眺めてから倉庫へと向かった。

 

 

 ……何も思い出せなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「この本棚かな」

 

「ああ、らしいな」

 

「……うーん……、それらしき本は無いな……」

 

「そんなわけ……」

 

 

 アリアが倉庫にやって来ると、アベルとヘンリーは倉庫にある本棚を漁っていた。

 本棚は二台あり棚は五段に分かれている。左をアベル、右をヘンリーが探していた。

 

 

「……どうですか? 何か見つかりましたか?」

 

 

 先程のことには触れずにアリアは二人の背に問い掛ける。

 

 

「あっ、う、うん、今探しているところだよ! アリアはそこで待っててね」

 

「そうだぜ、オレ達が見つけるからさ!」

 

 

 アベルとヘンリーは本を一つ一つ確認していった。

 アリアの身長では最上段に手が届きそうにない。

 

 

「はい……」

 

 

 アリアは言われた通りに二人の邪魔にならないよう、本棚の左側に置かれた大きなツボの縁に腰掛けて待つことにする。

 

 

「……モモガキ栽培……? 違うな……」

 

「こっちは、兵士の育て方に、ラインハット建築か……、この辺じゃないみたいだな。おい、アベル一番上の棚はどうだった?」

 

「一番上は無かった」

 

「そうか、こっちもだ」

 

 

 アベルとヘンリーがパラパラパラと、内容を確認しながら探していくが中々お目当てのものが見つからない。

 

 

「……見つかるでしょうか……」

 

「……すぐ見つかりますよ。待ちましょう」

 

 

 身長が足らない為ピエールもアリアの傍で待っていたが、彼女の言葉に力強く頷いた。

 

 

「はい……、…………ふぅ」

 

 

 ピエールに相槌を打つと、アリアは本棚を探るアベルの姿を見つめ小さく溜息を吐く。

 

 

 アベルさん、私に思い出して欲しくないのかしら……。

 私はアベルさんのこと、思い出したいのにな……。

 

 小さい頃のアベルさん、きっと可愛かったと思うの。

 一緒に遊んだこと、思い出したい。

 思い出したら、いつも親切にしてくれる理由がわかる気がするもの。

 

 

 真剣な顔で不思議な鏡について書かれた書物を探すアベルの横顔に、アリアは早く記憶を取り戻したいなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………っ」

 

 

 アベルは本棚を探りながら何となくアリアからの視線を感じて、頬を染める。

 

 

 ――アリアが僕を見てる……!? いやっ、さっきの事を訊きたいのか……!?

 

 

 いつかは説明しなくてはならないが、どう説明したものかと目当てのものを探しつつ、アベルは考えていた。

 

 

 そんな時、

 

 

「きゃっ!」

 

「アリア嬢っ!!」

 

 

 アリアがツボの縁からバランスを崩し身体が後ろに倒れると、ピエールが驚きの声を上げる。

 

 

「っ、アリア!?」

 

 

 何事かとアベルはすぐさま本棚から離れ、アリアの元へ向かった。

 

 見ればアリアのお尻がツボに嵌っている。投げ出された白い太ももの一部と膝下がバタバタと動き藻掻いていた。

 

 

「っ……ご、ごめんなさい……。お尻が(はま)っちゃいました……。……お恥ずかしい……」

 

 

 恥ずかしさにアリアが両手でもって顔を覆い縮こまっていると、やって来たアベルがそれを見て笑う。

 

 

「あ……、……プッ! くくくっ! 大丈夫かい?」

 

「な……、プフッ! アリアさんどうしたんだよ……! あははははっ!!(面白過ぎるだろ!)」

 

 

 ヘンリーもやって来て腹を抱え笑った。

 

 




アベルもヘンリーも早く言ってやればいいのにね。

お尻にツボが嵌ったまま歩いたらヤドカリみたいですね。

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
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