気絶しちゃった、アベルさん。
では、本編どぞー。
アベルが気を失ってどれくらい経ったのだろうか……。
「……ぅ……」
――あれ……、何か柔らかい……?
アベルは横になっていたのか後頭部に柔らかい感触を感じつつ、眉間に皺を寄せ目蓋を開く。
と、アリアが柔和な顔でアベルを見下ろしていた。
「……あ、気が付かれましたか……?」
「ぁ、アリア……、僕……気を失って……(アリア唇を怪我して……?)」
――あ、この柔らかいの……アリアの膝枕だったのか……。
アベルはまだぼーっとした様子でアリアの頬に手を伸ばす。どうやらアリアの膝に頭を乗っけていたらしい。
彼女の唇は先程のアベルとの衝突で赤く滲んでいた。アベルの唇にも同様の小さな鬱血が見られる。
「……っ、大丈夫ですか……?」
アベルがアリアの頬に触れても、彼女は頬を染め優し気な瞳でアベルを窺っていた。
ふと、その隣から……。
「……ヨクゾモドラレタ! アベルドノ。オオ、カミヨ! コノモノニアナタサマノゴカゴノアランコトヲ!」
ヘンリーが本棚に寄り掛かり、ジト目で棒読みさながら教会の神父が言いそうなセリフを吐き出した。
「……っ!!?」
アベルは瞬時にハッと目を見開き身体を起こす。
「あっ! 急に起き上がっては……!」
「っ……、僕、どのくらい気を失ってた!?」
アベルはアリアから離れちょっとクラッと来たらしく、頭を抱えながら訊ねた。
「えと……そんなには……ですよね、ヘンリーさん?」
「……まったく、お前には参ったよ。魔物に襲われたわけでもないのに気絶するなんてさ」
アリアがヘンリーを見上げると、ヘンリーは“鼻血出してたから脱脂綿貰いに走ったんだぞ!”と腕組みしてムスッとしていた。
「っ……、すまない……」
アベルはゆっくりと立ち上がり、ヘンリーに軽く頭を下げる。
「まあ、いいよ。……鼻血も止まったみたいだし良かったな?」
「……え? あ、うん……」
ヘンリーがアベルの肩に手を置き意味深な笑みと共に告げると、アベルはとりあえず頷いた。
すると、ヘンリーは距離を詰めこっそり囁く。
「…………一応、それとなくお前の ふくろを置いといたけど、今回のはバレてたと思うぞ」
「え」
「…………治まって良かったな」
ヘンリーはアベルの下半身に視線を落とした。
「え、どういう……えっ!?」
――っっ!!?? まさかっ!?
アベルは慌てて自分の下半身を隠すように手で押さえる。
「……アベルさん……? どうかしましたか……?」
アリアはいつの間にか立ち上がっていて、不思議顔でアベルを見上げていた。
「っ……、ぁ……、ぃゃ……ぇと……」
アベルの顔がみるみる内に茹ってゆく。
「え……?」
「っ……、ご、誤解なんだ! ぼ、僕は決して君に邪な気持ちなんて……!」
「えっ……、ぁっ……、…………っっ……、……や、やだ……アベルさんのえっち……」
要領を得ていないアリアだったが、アベルの態度で気が付いたらしく、ゆっくりと両手で顔を覆って俯いてしまった。
耳が赤い。
「……っ……」
――ああ、大人になるって辛い……。
アベルはそれ以上何も言えず、黙り込んでしまうのだった。
◇
「……で、この日記が見つかったと……」
アベルの手にヘンリーが見つけた古びた日記が握られていた。
「そっ! ちらっとだけ読んだけどさ、お前の意識が戻ってから全部読もうと思って待ってたんだ」
「そっか。じゃあ……」
アベルは日記を開き、読んでみる。
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“○月×日。今日この城の旅の扉より南の地に
“南の地には古き塔あり。真実の姿を映し出す鏡が祀られていると聞く。”
“しかし塔の扉は我には開かれず。そのカギは修道僧が持てり。”
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「……これって……、あ……」
「デールが言ってたのはどうも この日記のことみたいだな。真実の姿を映し出す鏡か……なるほど。よし、その塔へ行ってみようぜ!」
アベルが鏡について何かに気付くが、ヘンリーは気付いていない様子で意気込んでいた。
そして……。
カチッ……と、何かが嵌るようにアベルのこめかみに突然チリッとした痛みが走る。
「っ……!! …………っ、ピエール!」
「は、はい!? 何でしょうか!?」
「……っ、来たよっ! 来たっ!!」
アベルは痛むこめかみを押さえながらピエールに視線を投げると力強く頷いた。
「あ……まことでございますか! それは良かった!! ……で、どの辺りまでで……?」
「…………今回は、結構長いよ。……後で教えるね」
「かしこまりました。これで漸く先が見えますね……!」
「ああ、そうだね!(これならラインハットの問題も余裕で解決できそうだ……!)」
アベルとピエールが話す中、ヘンリーとアリアはというと……、
「……あ、アベルの奴、またわけわかんない話してるし。アリアさん、オレ達もスイーツの話とかしちゃうかい?」
「……え? あ、はい……?(何が来たのでしょうか……?)」
アベルとピエールの話に追い付けず、二人を遠巻きに見ていたのだった。
「……ヘンリー、そこの階段から地下に行こう」
「ん? 地下に? 何で……?」
アベルは部屋の奥にある下り階段を指差すと、歩き出す。
「道案内は任せてくれ! アリアも行こう!」
「えっ、あっ、はい」
「っ? な、何だよ急にハキハキし出しちゃって……まあいいけど……。あ、そういやそこにあったツボん中に小さなメダルが入ってたぞ。お前にやるよ」
アベルの後を追いながら、ヘンリーは小さなメダルをアベルに投げる。
「ん? あっ」
アベルはパシッと、不意に投げられた【小さなメダル】を掴んだ。
「お前が気絶してる間、アリアさんがツボの中が気になるっていうから割っといたぞ。お前、こういうの好きだろ? オレは興味ないからさ。アリアさんも要らないってさ」
「あ、ありがとう……」
ヘンリーに渡された【小さなメダル】をアベルは見下ろす。
――貴重なものなのに、アリアもヘンリーも何故要らないんだろうか……。
収集癖があるのは自分だけなのかもしれないなと、【ふくろ】に【小さなメダル】を仕舞いながら、中に入っている数々の武器や防具が目に入って、昔アリアに『あなたあんまりモノ捨てない人なのね?』と云われたことを思い出した。
――その内整頓しないとな……。
アベルはチラッとアリアの方を見る。
「…………? どうかしましたか?」
「あっ、いや……」
アベル達は地下へと階段を下りて行った。
アリアにバレちゃった。
そこには触れずにいたのにね。
さて、アベルはどこまで思い出したのか……。
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