旅の扉を行けば……。
では、本編どぞー。
第二百三十五話 旅の扉
地下へと下りたアベル達の目の前に地下室の扉が現れる。
「この先に、旅の扉があるんだ」
「旅の扉……? っつーか、何でお前が知ってるんだよ……」
説明しながらアベルが地下室の扉に手を掛けると、ヘンリーが首を捻りながらツッコんで来た。
「アハハ……、まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか。僕には予知能力があるんだよ」
そう云うと、アベルは地下室の扉を開け放つ。
「は……はぁ!? 何だよそれ、初耳なんだけど!? って……、マジかよ……!」
「わぁ……アベルさんは魔物を手懐けられる能力だけじゃなく、予知能力もお持ちだったんですね! すごいです……!」
扉を開くアベルにヘンリーが声を上げながら部屋の奥を見て目を見開いた。
アリアも部屋の奥を覗き、感心したのか瞳をキラキラと輝かせてアベルを見つめる。
部屋の奥、中央には青白い光の渦がゆっくりと円を描くように旋回していた。
「あの旅の扉で、日記に書かれていた塔へ行くんだよ」
「私、旅の扉を見たの初めてです!」
アリアは心が弾んでいるような笑顔でアベルを見上げる。
【旅の扉】を本で見たことはあるが、実物を見るのは初めてのようだ。
「そっか……。実は僕も初めてなんだ」
――この世界では……だけどね。
アベルはアリアの期待に満ちた笑顔に目を細め口角を上げた。
「城の中に旅の扉があるなんて不思議だよな。誰が作ったんだろ?」
「……誰が作ったのかは知らないけど……、ヘンリーのずっと前のご先祖様が作ったんじゃないかな?」
「なるほど、そうかもな~……、で、どこに繋がってるんだ……? 塔の中か?」
「それは入ってからのお楽しみかな」
ヘンリーの質問にアベルははにかむ。
「あ、何だよその にやけ顔は! 知ってるって顔じゃん! お前そんな能力まで持ってたのかよ……あっ! お前!」
ヘンリーはアベルの傍に寄って行くと、何かを感じ取り彼の首元……マントを掴んで引っ張った。
「う、ん?」
「大神殿に居る時、脱出できるってわかってたんだな!?」
「え……あ、……まぁ……、何……となく……?? けど」
いつも突然気が付くから始めから知っていたわけじゃ……、とアベルが説明しようとするが、ヘンリーは眉間に皺を寄せアベルに詰め寄る。
「何だよ、知ってて教えてくれなかったっていうのかよ……。オレ、あのままずっとあそこに居ると思って真面目に働いてたのに……。それでお前よくサボってたっていうのか……?」
不快感を露わにヘンリーのマントを掴む手に力が入ってしまった。
「いや……べ、別にそういうわけじゃ……ぅ」
アベルは“誤解だよ”と言おうとしたが、絞まる首が苦しくて言えず……。
「予知能力があるとか、初めて聞いたし……。何でもっと早く言ってくれなかったんだよ……。お前、性格悪いぞ! オレ達親友じゃなかったのかよ!?」
ヘンリーはマントを掴んでいた手をパッと放すと、旅の扉へと歩いて行ってしまう。
どうやらヘンリーを怒らせたようだ。
「あっ、ヘンリーさんっ!?」
「アリアさん、行こうぜ」
アベルとヘンリー、二人の話が終わるのを旅の扉の前で待っていたアリアの手を引いて、ヘンリーは旅の扉に入って行く。
「あっ……(アベルさんっ!)」
「っ……ヘンリー……!(アリアっ!)」
アリアは後ろのアベルを心配そうに見ていたが、ヘンリーに連れられるまま旅の扉の中に消えてしまった。
「……主殿……。下手に話しては混乱するのでは……? それに予知能力というのは異なりますよ?」
残っていたピエールがアベルに問い掛ける。
「…………うん、ヘンリーには言わない方が良かったかな。それに……予知能力じゃなかったね」
「ええ……、我々が知っているのは……」
「うん…………別の世界の……」
――全部、
その後、丁度ヘンリーとアリアが居ない状況となったので、アベルはピエールに今回はどこまで思い出したのかを話した。
ピエールもアベルに質問しながら、互いの記憶を擦り合わせていく。
アベルの思い出した記憶分を話す分には息が詰まるといったようなことはなかった為、二人はラインハットの問題が解決するまでの道程を確認していった。
別世界の記憶を持つ者同士ならば、双方が思い出した分までは話すことが出来るのかも……と、現時点では確証は持てないが、ピエールは次回、アベルの記憶が降りて来た際にはっきりさせようと思うのだった。
その話が終わると、アベルとピエールもヘンリーとアリアを追って旅の扉へと足を踏み入れて行った……。
◇
アベルとピエールが話を擦り合わせている間、一足先に旅の扉から転移して来たヘンリーとアリアはというと。
「なんだよ、アベルの奴……、オレのこと親友って思ってなかったのかよ……昔から何でも相談しろって言ってたのに……」
「ヘンリーさん……」
二人は旅の扉を抜け、辺りを見回しながらアベルを待っていた。
森の中深く、湖の中央に浮かぶ
残った柱や床には苔やツタが生い茂り、随分昔に建てられたものだということがわかった。
「……あ、悪い。つい、アリアさんのこと連れて来ちまった。……アイツの事、何でもわかってるつもりだったから、ちょっと悔しくてさ」
「……ヘンリーさんはアベルさんのこと、とても大切に想っていらっしゃるんですね」
「っ、そっ、そんなこたぁ~ねぇえけどぉおお~?? ほっ、ほらっ、オレってアイツの親分だから子分のことは把握しておかないとだろっ!??」
祠の出入口辺りでアベル達を待つことにし、移動しながらヘンリーは大袈裟に否定する。
「プフッ……。そうですね……」
――ヘンリーさんはアベルさんのことが大好きなんですね……!
アリアはヘンリーの態度に吹き出し、微笑んだ。
「……アリア……さん、キミは悔しくないのかい?」
「え……?」
「ほら……、大事な友人が大切なことを黙ってたらさ、何で教えてくれなかったんだってさ!」
「あ……、…………、…………うーん……。私は特に……。……大事だから言えないこともあるのかなって……」
ヘンリーの話に、アリアは首を横にふりふり答える。
「あ……、そ、そういう見方もあるのか……、確かに……。けど……」
自分はまだ、アリアの過去の核心を話せていない。これは彼女の為であって、決して言いたくないわけではない。伝えるタイミングを計っているのだ。
そして、それはアベルに委ねてある……。
ヘンリーは自分も彼女に黙っていることがあると思い出した。
「……もしかしたら言えなかった事情があるのかもしれませんし……、教えて下さっただけでも、私は嬉しいです」
「……アリアさんは大人だなー……、オレ、アベルが謝るまで許せそうにないよ」
――オレ達が全部話しても、アリアはわかってくれそうだな……、けど、オレはそんな聞き分けの良い男じゃないから無理だぜ……。
アリアって昔から大人びてるよなぁ、とヘンリーは感心してしまった。
ふと旅の扉に目をやると、転移してきたアベルとピエールが歩いてこちらに向かって来ている。
「ヘンリーさん……。本当にアベルさんが大好きなんですね……」
「なっ!? 何でそうなるわけっ!? ちっ、違うよっ!!?」
アリアがにこにことヘンリーを見上げると、ヘンリーはほんのり頬を赤らめる。
「お待たせ……、……ん? 何の話?(ヘンリー……何で顔を赤くしてるんだ!?)」
合流すると、アベルはヘンリーをじっと見た。
「っ、フンッ!」
対してヘンリーはそっぽを向いてしまう。
「…………ヘンリー……、何で怒ってるんだい? 僕何か悪いこと言った? あ、道案内は任せてくれ。ここを出て……」
「……行こうぜ」
ヘンリーはアベルの声を無視して祠から一人で出て行った。
「ヘンリー! …………、……はぁ……、いったいどうしたんだ……?? 道案内は僕がするって言ったのに……」
――ヘンリーと仲違いなんて初めてなんだけど……、これもアリアの存在の所為……?
アベルはちらっとアリアを窺う。
アリアは優し気な瞳で柔和な顔をしていた。
「…………アベルさん、行きましょう」
「あ、うん……」
――アリアは普通だな、可愛い……、心なしか嬉しそうな気もするけど……。何でだ?
アリアの穏やかで優しい顔にほっこりと癒され、アベル達もヘンリーの後を追ったのだった。
ヘンリー君拗ねるの回でしたね。
親分的には子分のことは全て知っておきたいのです。
BLじゃないんだ。友情なんだ……。
----------------------------------------------------------------------
評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。
読んでいただきありがとうございましたっ!