林檎……。
では、本編どぞ。
神の塔を後にしたアベル達は北上し、名もなき修道院へと向かっていた。
このまま行くと修道院に着く頃には夜の帳が降りて、魔物達の時間がやって来そうだ。
どうにかそれまでには辿り着きたいのだが……。
「っ、アリア! メラをお願い!」
「はいっ! 焼きりんごにしちゃいます! メラっ! メラッ!」
アベルの指示の下、アリアは赤い林檎に一つ目、牙の生えた大きな口が特徴的な魔物【エビルアップル】二体にメラを放った。
アリアからの火の玉をぶつけられた【エビルアップル】が悲鳴を上げ焦げていく。
林檎が焼かれたような甘い匂いが辺りに立ち込めた。
そう、今は戦闘中である。
この辺りの魔物は然程強くないのだが今は黄昏時、魔物と遭遇する回数が増えて来ていた。
「アリアお見事!」
「ありがとうございます!」
【エビルアップル】が地面に沈むと魔物の群れは一掃された。
アベル達は武器を仕舞っていく。
アベルに褒められ、アリアは【チェーンクロス】を仕舞うと鞄の中から空の瓶と小さなナイフを取り出し、今にも消えていきそうな【エビルアップル】に近付いて行く。
そして、【エビルアップル】の頭の枝を掴むと、小さなナイフをその身に向けた。
「ちょ、ちょっとアリア何して……?」
「え? 消える前に焼きりんごを瓶に詰めようかと……」
驚くアベルにアリアは頭の枝を掴んだまま、地面に置いた空の瓶をナイフで示した。
「っ、焼きりんごって本気だったの!?」
「へ……? あ、さっき好い匂いがしたので、エビルアップルさん おいしそうだなって。食べてみようかと……。ほら、さっき戦ったクックルーさんも食べられるじゃないですか……」
「……た、逞しいね……。けど……、多分美味しくないと思うよ……? ……プハッ! ……っ」
“クックルーさんは毛を
今の戦いの前にも魔物の群れと遭遇し、【ピッキー】の上位種、背中の青い羽毛と緑の飾り羽が特徴的なオウムに似た魔物【クックルー】の群れと戦ったのだが、そこで【クックル】が仲間になっていた。
モンスターじいさんにすぐ預けた為、同行はしていないが、今の発言をクックルが聞いていたらショックを受けていただろう。
――【クックルー】はともかく、【エビルアップル】を食べようとしてる人は初めて見たよ……!
アベルは、天使の彼女もすっかり地上に慣れたんだなー……と、嬉しいやら淋しいやらで笑いを堪えるのだった。
「そうなんですか……? あっ……!!」
アリアが掴んでいた【エビルアップル】の身体が揺れ動き、驚きに声を上げる。
「アリア! 手を放して! まだ生きてる!」
「はっ、はい!!」
アベルの声にアリアが【エビルアップル】から手を放すと、アベルに手を引かれ背後に匿われた。
すると【エビルアップル】が身体を起こす。
「ボ、ボクは食べられないよ……?(危ない危ない……起きるのが遅かったら食べられる所だった……)」
「あっ!(ひょっとして……!?)」
起き上がった【エビルアップル】をアベルの背後からアリアが窺っていた。
「あ、ひょっとして……」
「ボクはアプール。仲間にして欲しいな!」
武器を構えようとしたものの、【エビルアップル】が喋り出したのでアベルは【やいばのブーメラン】に添えた手を放す。
「わっ。お仲間希望の方だったのですね! 大歓迎ですよ! ね、アベルさん?」
【アプール】の主張にアリアがアベルの背後から出て来て弾けるような明るい笑みを見せる。
「え? あ、うん……(カワイイ……)」
アベルはアリアの笑顔につい見惚れ、ただ頷いた。
「はは……、アベルはアリアに弱いなぁ……」
「ですね……」
少し離れた場所でヘンリーとピエールがゴールドを拾いながら笑っている。
……そんなわけで、アプールが仲間になったのだった。
「アプール、よろしくね」
「よろしくね! ……ボ、ボクをおいしく食べないでね……?」
アベルが仲間になることを了承すると、アプールは嬉しそうに笑う。
……が、アリアの方をチラリと見やるや否や、その唇は引き攣っていった。
アリアの手には未だ小さなナイフが
「え……あっ、はいっ! 食べられないのですね! 残念ですっ」
「っっ……!!?」
アリアは慌てて小さなナイフを鞘に収め鞄に仕舞う。
彼女の言葉にアプールはビクッと身体を震わせていた。
「あっ、冗談ですよ! 仲間を食べたりはしませんよっ」
「……う、うん……よ、よろしく……」
「アプールさん、私はアリアです。よろしくお願いしますね」
「う、うん……」
アリアはアプールの頭をナデナデ。
「でもアプールさん、とってもいい艶ですね~……、……おいしそうな色……」
「っっ……!!?」
ボソッとアリアが瞳を伏せがちに小さな声で呟くと、アプールの身体が震え上がった。
「……ふふっ、大丈夫、食べたりしませんよ?」
「っっ!!!!(絶対っ、いつか食べる気だーーーー!!!!)」
アリアの嫣然とした態度にアプールは目を見開いた途端涙目になる。
「……アハハ……、アリア、あんまりアプールを苛めちゃダメだよ……」
――時々するその瞳、色っぽくて僕はドキドキするからたまに見たいけど……。
怯えるアプールが可哀想に思え、アベルはアプールをモンスターじいさんに送ることにしたのだった。
◇◆◇
「行っちゃいましたね……、残念です」
アリアは空を見上げ、アプールがモンスターじいさんに送られていく様子を眺めていた。
「ハハ……。アプール好い匂いするもんね……」
実は【エビルアップル】と戦っていると、甘い匂いがするのである。
「はい。食べられませんが、香料に使えるかもしれないなと思って……協力して頂こうと思ったのですが……」
「香料……? ……プッ……! アリア、君いったい何をしようとしているんだい?」
またアリアが変なこと云い出したぞ……!? とアベルは吹き出してしまった。
「え……? あ、長旅だと服を洗う機会が中々ないので好い香りで誤魔化せたらいいかなと……」
「くくくっ……! そっか。そうなんだ……!」
笑壺に入ったのか、アベルは腹を抱えて笑い出す。
「……あっ、もしかして私おかしいですか……?」
「くはっ……。あはははっ! いやっ、そうじゃないけど……! くくくくっ!! っ、笑ってごめんねっ、あははっ!!(そんなこと気にしたことないんだけどっ!)」
――そうそう、アリアってこういうとこあったよね!
天界と地上の常識が違うのか、十年前にも妙なところを気にしていたなとアベルは思い出していた。
「っ……、そ、そうですか……?(アベルさん大笑いしてる……)」
「うんっ、面白いこと気にするんだなって思っただけ!」
アリアが弱り目で窺って来るので、これ以上笑うと不味いと思いアベルは笑いを何とか堪える。
「えぇ……、でも……汗臭いのより好い香りの方がいいじゃないですか……」
「ん? そうかな?」
「……汗臭いと……何だか恥ずかしくて……」
アリアは瞳を虚ろわせ、自分の鎖骨や首に触れる。
先程の戦いで汗を掻いたのだろう、雫が僅かにアリアの手に付着した。
アベルからはその仕草が酷く艶めかしく見える。
「っ……、アリアの汗……っ」
ゴクリ。とアベルの喉に唾が飲み込まれていく。
――嗅ぎたい……!! 絶対甘い! 好い匂いがするはず!!
アベルの瞳が爛々と輝いたのだった。
そんな中、
「さー、お二人さん! ゴールドも拾い終わったし、修道院までもうちょっとだ。急ごうぜ! ピエールがパトリシアを連れてったぜ!」
「っ、ヘンリー!!」
“ぽんっ!”
ヘンリーが背後からアベルの両肩に手を置いて告げる。
「あっ、はい!」
アリアは「ピエールさーん!」と馬車の前衛に走って行ってしまった。
エビルアップル……絶対食える!w クックルーは毛を毟って食べる。トリ肉ですね。
アリア、本当逞しくなったわ……www
出番殆ど出なかったけど、クックルがいたら……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アリア「クックルさん! お昼ご飯は焼き鳥(材料:クックルー)ですよ!」
-@0@0-ヤキトリ
クックル「ピルルッ!!?(これを食うんでっか!? 共食いなんですけどっ!?)」
アリア「お肉、中々手に入らなくって。材料がなくなったらよろしくお願いしますね!」
クックル「ピルルル!!?(何をよろしくなんですっ!?)」
アリア「ウフフ」(妖しい笑み)
そうして、材料が無くなったある日のこと……――。
クックル「ピ、ピーロロロー……(あぁ、もう煮るなり焼くなりしやがれってんだい! アリアちゃんに食われるならそれもええわい! もうどうにでもなれ~い!)」
カサッ、バサッ、カサッ、バサッ(自ら羽を抜く音)
アリアの前に自ら毛を毟り、身を投げ出すクックルの姿がそこにはあったのだった……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
……なんてことがあったかもしれないwww
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