やっとレヌール城に向かいます。
では、本編どうぞ!
草木も眠る丑三つ時……よりは随分前。
夜の帳は疾うに下りて、昼間賑やかだった人々の声が消え、アルカパの町はしんと静まり返っていた。
アベルの泊まっている部屋では、時折“コンコン、コホッコホッ”とパパスの乾いた咳の音が聞こえている。
それでもパパスの容態は多少治まっているのか、朝のような酷い咳き込みは無くなっているように感じる。
おかみさんやアリアの看病のお陰なのかもしれない。
そんな中、
「アベル起きて……。アベル……」
「んん……」
ビアンカの声がして、身体を揺すられアベルは目を開けた。
「さ、アベル、行きましょう? ネコさんが待ってるわ」
「んー……わかったー……。すぐ行くから、部屋の外で待ってて……」
目を擦りながらアベルはベッドから抜け出すと、ビアンカにお願いをしたのだった。
「…………、わかったわ。アリアも一緒にって言うんでしょう?」
「え? あ……」
ビアンカの言葉にアベルは一瞬
アベルの視線は、隣のベッド。
眉間に皺を寄せるパパスの額のタオルを取り替えようとしているアリアを見ていた。
「……早くしてね」
ビアンカは何も聞かずに部屋を出て行く。
部屋の扉が閉まると、アベルは口を開いた。
「……アリア、貸して……?」
「うん、お願い。大分温くなってて」
アベルはアリアからタオルを受け取ると、冷たい水に浸して硬く絞り、パパスの額に再び当てる。
するとパパスの表情が和らぐのだった。
「起きてたんだね」
「うん。置いて行かれないようにと思って」
「置いて行かないよ?」
「ふふっ、うん。ちゃんとついて行くから安心して?」
アベルは腰に袋を下げ、ブーメランを背中に背負うと、部屋を出る。
アリアも後ろについて行くのだった。
パタン。
と、アリアが部屋を出ると扉が閉じる。
扉の向かいの壁にビアンカは寄り掛かって待っていた。
「お待たせ、ビアンカ」
「…………? ……今、扉が……」
ビアンカはアベルが部屋から出て来るのを見ていたが、何かおかしい気がして目を瞬かせた。
扉の閉まるタイミング、おかしくない?
今、まるでもう一人、誰か後ろに居たみたいなタイミングで閉まったよね……?
……気の所為?
それとも、アベルの言ってるアリアって子の所為……?
アベルの妄想じゃなかったの……?
ビアンカは半信半疑だった“アリア”の存在を少し信じてみようかと思い始めるのだった。
「さあ、行こうか!」
『うん!』
「ええ!」
そうして、三人はアルカパを後にした。
◇
レヌール城へ行くまでに何度か魔物の群れに襲われるも、アベルとビアンカは連携し、難なくそれを倒していく。
「っ、はーっ! うん! 昨日鍛えただけあるわねっ」
魔物の群れが倒れて、ビアンカが腰に手を当てドヤ顔をする。
「へへっ。でしょでしょ!?」
アベルも鼻の下を人差し指で当て擦り、得意げに微笑んだ。
「昨日は、ちっともレヌール城に行こうとしないからどうしたのかと思ってたけど、こういうことだったのねっ! 私さっきの攻撃軽く避けれるようになってたわ」
ビアンカは「うえぇ……気持ち悪い」と焼け焦げた【グリーンワーム】を見下ろす。
焼け焦げ黒くなったグリーンワームは次第に粉々になり、ゴールドを残して完全に消えていった。
『……二人共、強過ぎ……(ていうか、洞窟でもそうだったけど、魔物って……、倒されると消えるんだよね……からの、お金……、便利だなぁ……)』
アリアは魔物が昇華していく様を見つめる。
遺体の処理とか要らないんだなぁ、などと感心していた。
そこへ。
「あ、ビアンカ、お肉どうする?」
『ん? お肉?』
アベルは袋から小さなナイフを取り出すと、倒れた【いっかくうさぎ】の耳を持ち上げビアンカに訊ねる。
アリアは首を傾げて様子を見守っていた。
「んー、帰りならいいけど、今は要らないかな。荷物になるもの」
「わかった。じゃあ、このままにしておくね」
「うん」
ビアンカに云われて、アベルはいっかくうさぎから手を放し、ナイフも袋に仕舞った。
『……このままとは……?』
「ん? いっかくうさぎは食べられるよ? でも倒して直ぐに解体しないと消えちゃうから、必要なら急がないと」
『そうなのっ!!?』
食べれるのっ!?
ていうか、食べるんだ!?
アベルの言葉にアリアは衝撃を受ける。
「あれ? アリアは食べたことないの? おいしいよ?」
そんな話をしていると、いっかくうさぎの身体が消え始め、アベルが慌てて解体しようとしたが間に合わず、「あっ、アリアに食べさせ……、あー……」と残念そうに口をへの字にしていた。
『っ……そ、そうなんだ……』
すごいな、異世界。
魔物まで食べちゃうんだ……。
いや、驚くのはそこじゃないか……。
アリアはアベルとビアンカを交互に見る。
「いっかくうさぎ美味しいけど、皮剥ぐの難しいよね~。私かなり分厚く削いじゃうのよね」
「あ、僕もだよ! いつも父さんがやってくれて……」
『はぁ……』
二人の会話にアリアの口からため息が零れる。
驚くべきは、アベルとビアンカが普通に魔物を倒して、当たり前のように
逞し過ぎるでしょ……。
初めてではないカルチャーショック第何弾目なのやら。
と、これが異世界の文化なのだとアリアは思うことにしたのだった。
『そりゃ、私だって魚くらい捌けるけどさ……』
「え? 魚が捌けるの!? すごいね、アリア! 今度魚釣ったら捌いてくれる?」
『え? あ、ああ、今度ね……』
三枚おろしでいいかな……?
しょぼいことしか出来なくて申し訳ないなぁ……。
アリアは遠い目で自分の出来得る事を思い浮かべていた。
「ねえ、アベル。ゴールド全部拾い終わったよー。もー、独り言言ってないで拾うの手伝ってよねっ」
アベルとアリアが話す中、ゴールドを拾っていたビアンカが作業を終えて戻って来る。
「あ、ごめん、次は手伝うね」
「うん、よろしくー!」
そんなこんなで、三人はレヌール城へと向かう。
次の戦闘では、アリアもビアンカにバレないようにゴールドを拾うのを手伝うのだった。
『はい、3ゴールド。これで多分終わりだと思うよ』
「ありがとう」
アベルにゴールドを渡しアリアは「ふんっ」と鼻から息を勢いよく吹き出し頷く。
「ん?」
『……私も、逞しくならないとねっ!』
「逞しく?」
『そうだよ? アベルやビアンカちゃんを見習ってね。今はまだ攻撃とか出来ないけど、アベルといたら身体、少し逞しくなってるような気がするし、身体と同じで心も逞しくならないとって思ってね』
カルチャーショックを受けてる場合じゃないよね、とアリアはアベルとビアンカの度重なる戦闘やその後の行動を前に、何とかこの世界に適応して行こうと受け入れていくことにしたのだった。
「ふーん……。アリアって面白いね」
心も逞しく……?
って、何だ?
アベルはアリアの云っている言葉の意味がよくわからなかったので、とりあえず笑って誤魔化しておく。
『っ、面白いってなによぅ……』
「アリアはそのままでいいんじゃない?」
『そのままって……、何にも出来てないじゃない』
「え? そう? お金拾ってくれたよ? 充分充分」
そう言うと柔和に微笑んで、ぽんぽんとアリアの頭を撫でた。
「アベル―! ちょっとこっち来てー!」
少し離れた距離からビアンカがアベルを呼ぶ声がする。
「はーい! ……ほら、ビアンカの所に行こ?」
アベルはビアンカに返事してアリアを誘い、そちらへと走って行った。
が、途中で立ち止まり振り返ってアリアを手招きをする。
何が楽しいのかはわからないが、アベルは常ににこにこと顔を綻ばせていた。
『っ……笑顔が尊いな……っ!(もー……アベルって底抜けに優しいな!!)』
アリアはアベルの笑顔に釣られるように口角を上げる。
『…………ん? ちょっと待って……』
けど……、あれかな。
よくよく考えたら、私、大体の魔物から見えないから何も期待されてないだけなんじゃ……?
はは……、……そういうことね。
まぁ、そうだよね。
そう思いながら、アリアは置いて行かれないように走り出したのだった。
モンスター肉といえば、ビルダーズ2。
愛犬・愛猫のため、トラップを仕掛けアルミラージを狩りまくっていました。
場所は確かムーンブルク島のムーンペタの先。
アルミラージが出現する一帯にトゲ罠を無数に配置し、山の一部にガラス張りの部屋を作って暖炉を置いてソファーに腰掛け高みの見物。
しばらく待ったら大量の生肉ゲット、という……。ことをしているのは私だけではないはず。
話が脱線しましたがこの世界の住人、モンスターの肉、きっと食べてますよね。
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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!