修道院再び!
では、本編どぞ!
「じゃれ合ってるから邪魔しないように遠巻きで見てたけど……アベル、お前さぁ……」
「な、何……?」
「……むっつりだな……。何想像してた……、ん? 言ってみ?」
「っ……、っ、は、早く、行こう!」
ヘンリーに横目でチラリとされるとアベルは頬を真っ赤に染め、馬車を追い掛けて行く。
「ははは、アベル……お前が幸せそうな顔してるのを見ると、オレもちょっとは許された気がするよ……」
前を行くアベルの背中に、ヘンリーは優しく笑うのだった。
◇
【海辺の修道院】に着く頃にはやはり日が暮れ暗くなっていた。
修道院の敷地に入ろうとすると、ピエールは馬車に残るということでアベル、ヘンリー、アリアの三人で中に入ることに。
閉ざされた修道院の扉の前で、アリアが足を止める。
「……あれ? アリアさん、どうかした?」
「……アリア……? 入りたくないのかい?」
「い、いえ……、そういうわけでは……」
ヘンリーとアベルが扉を開き修道院に入ろうとする中、アリアはその場で
と、
「ぁぁああ……!! ……アリアさんっ!!!!」
修道院の奥からマザーの声が響き、彼女が二階の祭壇から階段を下りて走って来る。
「「ん?」」
アベルとヘンリーはマザーが走って来るのを瞳を瞬かせ見ていた。
「っ……、わ、私、馬車で待って……」
アリアの足が踵を返そうとするのだが、それは止められてしまう。
「アリアさんっ!!」
「ぁっ……! ま、マザー……っっ!!」
アリアは走って来たマザーに手を引かれ、
“ぎゅぅぅううううっ!!”
と、強く抱きしめられてしまった。
マザーの法衣にアリアが埋まってしまう。
「私の可愛いアリアっ! いったいどこへ行っていたのです!! 私がどれだけ心配したと……!!!!」
マザーの瞳からは涙がきらりと光っていた。
「「私の?」」
二人の様子を見ていたアベルとヘンリーが首を傾げる。
「っ……、っ、すみません……っ、修道院にご迷惑が掛かるかと思っ」
ぎゅぅぅうううう!!!
マザーはアリアの弁明を許さず、腕に力を込めアリアを覆い隠してしまう。
(っ、苦しいです、マザー!!)
アリアは抵抗するもののマザーの力は強く、逃れられなかった。
「…………え、えっと……、マザー……? あの……落ち着い」
「アベルさん、ヘンリーさん! あなた方がアリアさんを連れ去ったのですね!」
アベルが「落ち着いて……」と声を掛けようとするが“キッ”とマザーはアベルとヘンリーを強く見つめて来る。
「「え……?」」
初めてマザーの激しい一面を見た気がして、二人は呆気に取られてしまった。
「この子は、ここに居る方が安全なのです。どうか無闇に連れ出さないで下さいませ」
「……っ、はぁ、はぁ……マ、マザー! 違うんですっ、アベルさんとヘンリーさんは……!」
マザーが腕の力を緩めると、アリアが息苦しそうにマザーに告げる。
「お黙りなさい、アリアさん。あなたは修道女ではありませんが、私の……いえ、神の子なのですよ……!?」
((……今、
マザーの言葉にアベルとヘンリーは互いに顔を見合わせ「ハハ……」と乾いた笑いを浮かべた。
「で、でも、私。記憶を取り戻したくて……」
「コホンッ。ああ、アリアさん。求婚のお話は無くなりましたからもう安心していいのですよ。ずっとここで神にお祈りしていれば、記憶も呪いも解けるはずですわ」
アリアが話し始めるとマザーは咳払いをして止め、彼女の頬を撫でて喋り出してしまう。
「……マザー! 違うんです。呪いは教か……!」
「いいことアリアさん。今日はもう遅いからあなたは おやすみなさい。そして、アベルさんヘンリーさん。あなた方も今日はどうぞお泊りになって」
またもアリアが何か言おうとすると、マザーは喋らせないように遮ってアリアの手を引いて修道院の中へ。
「あ……、アリア……!」
「っ、アベルさんっ! ……っ、お、おやすみなさい……! また明日……」
「あ、ああ……おやすみ……?(何でそんな顔を……)」
アベルが呼び止めるとアリアは振り返ったものの、泣きそうな顔で微笑み挨拶だけして そのままマザーに連れられて行ってしまった。
「どうなってんだ……?」
「さ、さぁ……。とりあえず……中に入ろうか……」
「……だな」
アベルとヘンリーも修道院へと足を踏み入れる。
中へと入ると、講堂には夜だというのにマリアが椅子に座り祈りを捧げていた。
「……マリアさん!」
マリアの背中を見た途端ヘンリーの足は早くなり、彼女に声を掛けていた。アベルもヘンリーを追ってマリアの元へと駆け付ける。
「まあ! 神さまが私の願いを聞き届けて下さったのかしら。アベルさまとヘンリーさまにはまたお会いしたいと……。ぽっ」
マリアがアベルとヘンリーを交互に見上げ、頬を赤く染める。
「元気にしてたかい?」
「ええ。私は元気です。皆さんとてもよくして下さるし……」
「そっか。元気そうでよかった……!」
ヘンリーが訊ねると、マリアは優しい笑顔を見せてくれたのだった。
マリアの美しい笑顔にヘンリーも心が弛んで自然と笑顔になる。
と、二人の後ろからカンテラを手にしたポッシスがやって来ていた。
「まあ! アベルさんとヘンリーさんではありませんか! お元気でしたか? ご無事で何よりですわ。マザーからお聞きしました。お部屋は空いておりますからどうぞこちらに……」
ポッシスが客室へと案内してくれるというので、二人はマリアに会釈してポッシスの後について行く。
「再会は嬉しいけどアベルの名前を先に呼ぶなんて、ちょっと悔しいな」
ポッシスの後をついて行きながら、ヘンリーは口を尖らせていた。
「アハハ……。僕も似たようなことを感じたことがあるよ……」
「ん? そうか? それってアリアに言われたってことかい?」
「うん……、まあね」
「へー……、知らなかったなあ……。ふーん、お前も悔しい思いしてたんかー。そうかそうか」
思いも寄らないアベルの告白に、ヘンリーは心なしか嬉しそうだった。
◇
客室へと着くと、ポッシスは部屋の灯りにカンテラの炎を移す。
すると部屋は明るくなり、以前お世話になったベッドが二台。変わらない光景が見て取れた。
「どうぞゆっくりお休みになられて下さい」
「ありがとうございます。シスター……、あの、アリアは……?」
アベルはアリアについて訊ねてみる。
「アリアさんなら特別室に連れて行かれましたわ。今夜はもう会えないと思います。明日にでもマザーと交渉するといいと思いますわ」
「交渉……?」
――なんか……嫌な予感がするんだけど……。
ポッシスの言葉にアベルは訝しい顔で呟いた。
「ふふっ、マザーはアリアさんをとても大事になさっているのですわ。それこそ娘のように思っているのかもしれませんね」
「そうなんですか?」
「ええ、何でも自分の若い頃に似ているようで放っておけないと……」
それだけ云うと“では おやすみなさいませ”……ポッシスは客室を出て行ってしまう。
「「どこがっ!!?」」
「あ……、だよね」
「な……そうだよな……」
マザーの髪色はベールに隠れていてわからないが、ぽっちゃり体形のマザーはアリアとは似ても似つかない容姿なのは明白。瞳の色も肌の色も随分違う。
アベルとヘンリーは顔を見合わせたのだった。
アリアが連れられて行っちゃったよ、っと。
ヘンリーの「アベルの名前を先に呼ぶなんて~」という発言はゲーム中の台詞なのですが、このお話ではオラクルベリーでアベルがアリアに話し掛けて貰えていないという事がありまして(百三十話参照)、アベルも似たような感覚を経験していたという……。
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