マリアさんを仲間にしましょう。
では、本編どぞ~。
「シスター」
「あら、思いがけぬお客さまだこと。でもお顔が……。何かお困りですか?」
アベルがパイシスに話し掛けると、彼女はアベルの顔を見て眉根を下げる。
別世界の記憶が無い自分ならば、神の塔について困った顔をしていたのだろうが、ここでのアベルの顔はアリアに会えないのが辛いのか、弱った顔をしていた。
「はい、実は……、ここから南にある不思議な鏡が祀られている塔に入りたいと思っているのですが、鍵が開かなくて……」
しばらく待っていれば会える為、“アリアに会いたいんです……”とは言わない。
アベルは神の塔に関することを訊ねることにした。
「え? 不思議な鏡が祀られている南の塔に入りたいと? それは困りましたね。あの塔の入り口は、神に仕える乙女にしか開くことはできないのです。とはいえ魔物の出る中、女の足であそこまで行くのは……」
パイシスが手の平を頬に添え、困り顔をする。
「私に行かせてください!」
「マリア…………!」
不意にマリアが席を立ち、アベル達の元へとやって来た。
パイシスは驚きに目を見開いている。
ヘンリーも目を瞬かせ驚いていたが、アベルはわかっているので柔和な顔で小さく頷いた。
「この人達は私にとても親切にして下さいました。今度は私の番です。それに試したいのです。この私にも、あの神の塔の扉が開かれるかどうかを……」
「分かりました。そこまで言うなら、もう止めません。アベルさん。どうかマリアを連れて行って下さいましね」
マリアがパイシスに力説すると、パイシスは観念したように首を縦に下ろし、アベルに告げる。
「はい。わかりました」
「私、できるだけ足手まといにならないよう気をつけます。さあ、行きましょうか」
アベルが了承すると、マリアはすぐ出るつもりなのか、外扉へと向かって行った。
割と行動派である。
ヘンリーも後をついて行き、二人は何やら楽しそうに会話を始める。
「オレが絶対守るから、マリアさんは安心してくれていいからなっ!」
「ふふっ、ありがとうございます」
そうしてヘンリーとマリアの二人はアベルを残し修道院を出て行った。
・
・
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「……アベルさん、行かなくてよろしいの?」
「あ……、いや、行きます。……けど……」
一人残されてしまったアベルはチラッと【特別室】に目配せする。
すると……、
「……ふぅ……」
ぐったりした様子のアリアが漸く部屋から出て来たのだった。
服装が再会した時に着ていた白シャツと紫のロングフレアスカートに戻ってしまっている。
彼女は扉で待ち構えていたショコシスに気付くと、ぺこぺこと頭を下げていた。
その後でショコシスがアリアに笑顔を向け【特別室】に入って行く。
「っ、アリア!」
「ぁ、アベルさん……」
アベルは【特別室】の扉まで駆け寄ってアリアを見下ろした。
彼女の顔はまだ朝にも関わらず、疲れが見える。
「……大丈夫かい? 何だか元気がなさそうだね?」
「はい……、その……。あ、ちょっと外でお話ししませんか?」
「え? あ、うん、いいよ」
アリアの提案にアベルは二つ返事で外へと行くことにした。
◇
修道院の外に出ると、ヘンリーとマリアがベンチで腰掛けアベルを待っていた。
「おーい、アベル行かないのか? って、そっか。アリアさんも行くんだったな」
「あっ、アリアさん、お話は終わりましたか?」
ヘンリーとマリアは仲睦まじい様子で、やって来たアベルとアリアに声を掛けて来る。
「それが……、っ、アベルさん、こっち……」
「え……? あっ……」
二人に声を掛けられたアリアは、アベルのマントを引っ張って修道院脇へと連れて行こうとする。
アベルは何となく嬉しそうな顔をしていた。
「……アベルさん……」
「……マリアさん……」
マリアがアリアに連れられて行くアベルを切なそうに見送ると、ヘンリーはその横顔をこれまた切なそうに眺めていたのだった。
◇
にゃぁん……。
修道院脇にやって来ると猫が居て、猫はアリアに気付くと背伸びをした後で、擦り寄って来る。
「……ふふっ、ただいま。元気だった……?」
アリアはアベルのマントを放し、しゃがんで猫の首を掻いてやる。
猫と戯れていると海風がアリアの髪を揺らし、彼女は崩れたサイドの髪を耳に掛けた。
そんなアリアの横顔がアベルには眩しく映っていた。
「……綺麗だなぁ……」
アベルはアリアを見下ろし、知らず知らずのうちに小さな声で呟く。
「……アベルさん、ごめんなさい」
「え……?」
アベルの呟きは聞こえなかった様子で、アリアは急に立ち上がって丁寧に頭を下げる。
「私……、やっぱり神の塔には行けません……」
「な、なんで……!?」
「っ……、マザーが心配なさってて……」
アリアは眉をハの字にして、自身を抱くように両腕を掴んだ。
「せっかく記憶が戻るチャンスなんだよ……!?」
「ぅ……はい……。わかっています……。ホントは私も一緒に行きたいんですけれど……」
“マザーに泣かれてしまって……”と、アリアが瞳を伏せてしまう。
昨晩、マザーと話し合ったのだが納得してもらえなかったという。
修道院に十年もの間居たアリアはマザーにとっては娘も同然のようで、簡単に手放してはくれないらしい。
「マザーを説得すればいいんだね!?」
「っ……マザーを説得するには時間が必要だと思います……。その間ラインハットの方々のことを思うと心苦しくて……」
アベルが「すぐ説得するよ!」と修道院に戻ろうとするのを、アリアは彼のマントを引いて留める。
「アリア……」
「アベルさんが神の塔に行っている間、私、何とかマザーを説得してみます。その……、これからもアベルさんと一緒に旅を続けたいので……」
アリアはアベルのマントから手を放し、俯いて告げていた。
アベルからは判り辛いが、彼女の頬がほんのり薄紅に色付いている気がする。
「え……、ほ、本当に……?」
「はい……。アベルさんがお嫌でなければ……、不思議な鏡を手に入れたら迎えに来て下さいませんか……? その鏡を見たら、もしかしたら記憶が戻るかもしれません……。私、アベルさんのこと、思い出したいんです……」
アベルの声が上擦り嬉しさに笑みが零れそうになると、そんな彼の腕にアリアが触れて見上げた。
毎度のことではあるが、身長差から自然と上目遣いになってしまう。
「っ……。ああっ、もちろんだよ! すぐ迎えに来るよ!」
「アベルさん……、うれしい……」
アベルが快諾すると、アリアはやっとほっとしたような顔で破顔した。
「っっ!!?(笑顔が可愛い、尊い……!!)」
「……私、待っていますね。だから約束……して下さい」
アリアは小指を差し出し、首を少しだけ傾げる。
彼女のアメジストの中に、アベルだけが映っていた。
「っっ!!!?(約束っ!? 指切りってこと……!?)」
――可愛い……!! 尊い……!!
少々あざといポーズに、アベルは悶絶する。
頬がカッと熱くなってしまった。
「アベルさんの指、出してくださいっ」
「っっ……、ん……」
アリアがアベルの手を取ると、アベルは照れて少々ぶっきらぼうに小指を差し出してみる。
「ふふっ、約束ですっ!」
きゅっと互いの指を絡め合わせると、アリアはアベルをじっと見上げ、弾けるような笑顔を見せてくれたのだった。
「っ……(距離が近い……!)」
――アリアの匂いがする……! あぁ……好い匂い……。
アリアから香る柔らかく甘い匂いに、アベルの顔が真っ赤に染まる。
「……気を付けて行って来て下さいね」
「あ、ああ……」
――すぐ戻って来るから……!! 待ってて……!
アベルは【ラーの鏡】を早く手に入れ、アリアの元に戻ることを心に誓った。
アリア「……お留守番です……」
アリアはマザーに泣きつかれてお留守番。
ヘンリー君とマリアさんの恋愛をサラッと書いていきたいなーと思いまして。
ホントサラッとだけど。
……裏話をしてしまえば、4人の会話を書くのが大変そうだったのでね!
後で合流するんだけどさ。
ちなみにピエールさんは基本無言なので居てもオケ!
そんなこんなで、アリアに引っ込んでもらいましたよ、と。
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読んでいただきありがとうございましたっ!