ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

恋煩いって言いますもんね。

では、本編どぞ~。



第二百四十二話 恋とは病のようなもの

 

 

 

 

 

「お気を付けて……」

 

 

 アリアが修道院の外扉の前でアベル達に手を振る。

 アベル達はアリアに見送られ、再び神の塔を目指すことになった。

 昨日北上した道程を今日は南下し、神の塔へと向かう。

 

 マリアに祈りを捧げてもらえば扉は開く。

 アベルは別世界の記憶の通りに歩みを進めていた。

 

 今日はアベルとピエールが馬車の前を、ヘンリーとマリアが後ろを歩いている。

 そんな後衛の二人はというと。

 

 

 

 

「マリアさんが一緒に来てくれるなんて嬉しいなあ」

 

「マリアでいいですよ。また一緒に行動できて私も……うれしいです」

 

 

 ヘンリーはマリアと楽しそうにお喋りをしながら歩いていたのだが、マリアが時々アベルを ちらちらするのが気になって仕方なかった。

 

 

(マリア……、やっぱアベルのことが気になるんかなあ……。アベルモテるもんなあ……羨ましいぜ……!)

 

 

 自分の話に相槌を打ち、笑顔を見せてくれるマリアだったが、アベルを前にすると気恥ずかしそうにすることは知っている。

 

 

 ――問題はどれくらい惹かれてるのかってことだな……。

 

 

 マリアがアベルに好感を抱いているのはわかっていたが、まだ完全に惚れている感じではない……!(……と、ヘンリーは思いたい。)

 自分のことはともかく、マリアがアベルを好きになってしまったら、彼女が傷付くのは必至なので それだけは避けなければ。

 

 そしてあわよくば、自分を好きになってもらいたい。

 ヘンリーは今回のマリアの同行で、彼女ともっと仲良くなれるよう全力で努力することにした。

 

 

「それにしてもアベルさんも、ヘンリーさまも、少し雰囲気が変わりましたよね」

 

「えっ、そ、そぉかな……?」

 

「どことなくカゲを帯びられたというか……」

 

 

 マリアが言葉を選ぶように告げる。

 

 

「…………、まあ……、色々あったからな……」

 

 

 サンタローズの惨事に美女達の誘拐、国の衰退……、思い出すとヘンリーの顔から笑顔が消えてしまった。

 

 

「ヘンリーさま……?」

 

 

 ――私、何かいけないことを言ってしまったのでしょうか……。

 

 

 マリアはヘンリーを窺う。

 するとヘンリーは頭を左右に振るい、感情に蓋をするようにマリアに微笑み掛け前方を見る。

 

 

「…………ん? あれ? 何か海に向かってない?」

 

「あら」

 

 

 南に向かっていたはずの馬車の前方に大海原が見えて来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 “約束ですっ”

 

 

 修道院の南にある橋を渡り、歩いている間にアベルの脳裏に何度もアリアの可愛い笑顔が浮かぶ。

 

 

「……フフフ……(約束って……いいな……)」

 

 

 彼女と一緒に行けなかったのは残念だが、アリアと指切りした小指の感触が(くすぐ)ったくて、小指を見下ろす度アベルの口元が弛んでしまう。

 

 

「……ル、……アベル、……おい、大丈夫か?」

 

「え……? 何が……?」

 

 

 ヘンリーが後衛からやって来てアベルの肩を叩くと、彼はアベルを訝し気に見ていた。

 

 

「……何だよ、さっきからニヤニヤして……お前気持ち悪いぞ……。何回も話し掛けてんのに無視するし……」

 

「え……、僕笑ってた!?」

 

 

 アベルはハッとしてこめかみに手を当て、目を見開く。

 

 

「おう……、何かやらしい顔してたぞ」

 

「やらしいって……。失礼だな……、ってどうしたんだい?」

 

「いや、どうしたはこっちの台詞だぜ。お前海にでも入るつもりか?」

 

「え…………、あ」

 

 

 アベルの目の前に海が迫っていた。

 いつの間にか進路がずれ、海へと向かっていたようだ。

 

 

「ピエールが何度呼び掛けても止まらないっていうから、オレが止めに来たってわけ。せっかくマリアと楽しくお喋りしてたってーのに邪魔しやがって……」

 

「っ、ご、ごめん……」

 

 

 ――アリアのこと思い出してて いつの間にか海に来てたんだな……。

 

 

 アベルは頭の後ろを掻いて参ったなと、軽く頭を下げる。

 

 

「海に入るのは おすすめしないけど、せっかくだから、少し休憩するか」

 

「え……?」

 

「もう結構歩いてるだろ? マリアも疲れてるかなーって。休ませてやりたい」

 

 

 ヘンリーは馬車の後ろに居るマリアを眺めると目を細めた。

 自分の代わりにピエールが後衛に行ったためマリアは今、ピエールとお話し中である。

 

 

「あ、ヘンリー、マリアさんのこと呼び捨てなんだね。いつの間に……?」

 

 

 アベルはニッと口角を上げた。

 

 

「っ……! マリアがそう呼んでいいって言う……から……、だな……」

 

 

 アベルに指摘され、照れてしまったヘンリーはしどろもどろで口元を腕で隠してしまう。

 

 

「へえ~、上手くやってるんだね。ヨカッタヨカッタ」

 

 

 “ヘンリーとマリアさんお似合いだよ”とアベルは思ってはいるのだが、朝から二人のいちゃつきを見せ付けられていたからか、顔には僅かに笑みが乗っては いるものの声には抑揚がなかった。

 

 

「……おまっ、人の気も知らないでよく言えるよな~!」

 

「ん?」

 

「けどまあ、お前にその気が全くなさそうで良かったよ。あとはオレが頑張るだけだな」

 

「ん? うん、よくわかんないけど……、ガンバレヘンリー!」

 

 

 アベルは拳を軽く挙げる。

 心が込もってないのか その声は棒読みで、あまりやる気は感じられないエールに聞こえた。

 

 

「……あのな……、応援するならもっと心を込めてだな……」

 

 

 ――アベルの奴、興味ないって顔して……! 散々オレの前でアリアといちゃついてたんだ。お前にも見せつけてやるんだからな!!

 

 

 ヘンリーはアベルの態度に「はぁ」と溜息を吐く。

 

 

「ははは……(アリアに会いたい……)」

 

 

 修道院を出てまだ一時間程しか経っていないというのに、アベルはもうアリアに会いたくなってしまっていた。

 

 

「マリアと一緒に神の塔へ行くことに なるなんて思いもかけなかったな」

 

「……ははは……。そうだね……」

 

 

 僕は知ってたんだけどね……。とは言わず、アベルはヘンリーがマリアを呼んで来るというので手を振って見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗ですね~。修道院から眺める海もいいですが、何もない砂浜から眺める海もまた……」

 

「ああ、綺麗だなあ~~!」

 

 

 浜辺で僅かばかり休憩することにし、マリアが海を見つめる横でヘンリーが彼女をニヤニヤうっとりと眺めている。

 

 

「…………ピエール、僕もあんな感じだった……? ヘンリーの顔、気持ち悪くない?」

 

「主殿、失礼ですよ。……恋とは病のようなものですから、感情の乱れに形相が変わることもございましょう」

 

 

 ヘンリーとマリアから距離を取り、アベルとピエールは馬車の影で三角座りをしながら話をしていた(二人に気を遣ったらしい)。

 自分もアリアと居る時、ヘンリーのような気持ち悪い顔をしているのかと訊ねたのだが、特に答えてはもらえず(たしな)められてしまう。

 

 

「……恋は病か……。はは……、今までの僕ならこんなに悩んだりしてなかったんだろうなあ……。はっきり憶えてないけど……戦ってばっかりだった気がするよ」

 

「……そうですね、我々は常に戦いに明け暮れていましたから」

 

 

 アベルが砂浜に人差し指でハートマークを描いて、その上を何度もなぞる。この世界のアベルは乙女チックな一面も持ち合わせているらしい。

 

 

「なのにさ……、もう今はなんていうか……別の事ばっかり浮かんじゃって……」

 

 

 ……なんて口にしつつ、今度は相合傘を描き始めた。

 左右それぞれに、“アベル”と“アリア”と名前を記入する。

 

 

「……………………………………、アリア嬢のことですか?」

 

 

 ピエールがアベルの手元を見て訊ねると、アベルは手を止めた。

 

 

「……ピエールには悪いけど、彼女は渡さないよ」

 

「! ………………、はっはっはっはっ!! そうですか。ええ、ええ。今は(・・)それで宜しいのですよ! わっはっはっはっ!!」

 

 

 アベルが窺うようにピエールを見ると、彼は高らかに笑い出す。

 

 

「ムッ!? 何だよピエール! 今は(・・)ってどういう意味なんだい!?」

 

「はっはっはっはっ! いえっ、どうぞお気になさらず! フフフ……あ、失礼……」

 

 

 ピエールの態度にアベルはついムキになって立ち上がるのだが、ピエールは声を上げて笑うだけで、首を左右に振っていた。

 

 

「気になるに決まってるだろっ?」

 

「……主殿。私の愛はとても深いのです。恐らく人間のそれとは大きく異なるものでしょう。アリア嬢が苦しい時は私の愛を必要として下さるはず……。それまではどうぞ、主殿の大きな愛で包んで差し上げてください」

 

「……っ? 何だよ……、いったいどういうこと……。あ、愛って……まだ早いんだけど……」

 

 

 アベルは声を荒げたが、ピエールの言葉を聞いてアベルの声は小さくなっていく。

 

 

 ――この先、僕はアリアを愛するようになるのかも……。

 

 

 オラクルベリーの時は驚いたが、今は何となく、自分の中に彼女に対する愛が芽生え始めていることに気付き、アベルはそれ以上何も言わなかった。

 




ピエールさんの愛は深い、とても。
アリアのことは姫さまって感じが一番近いのかな。
父性も感じます。

そして、ヘンリー君はマリアゲットの為奮闘中!

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読んでいただきありがとうございましたっ!

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