ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

乙女の祈り。マリアちゃんにお任せ☆

では、本編どぞ。




第二百四十三話 乙女の祈り

 

 

 

 

 

「さあ行きましょう。神の塔は修道院から南東の方角ですわ」

 

 

 僅かな休憩を終えると、マリアが「修道院は確かあっちですから、南東はあちらですね!」と、正確に南東の方を指差した。

 アリアだったら恐らく違う方角を指していたのだろう。

 

 

「おぉー、マリアさん正解!」

 

「え?」

 

 

 思わずアベルが拍手すると、マリアが首を傾げた。

 ヘンリーも「何だ?」と同様の動きを見せる。

 

 

「アリアなら、全然違う方向を示したろうなって思ってね。マリアさんに来てもらって良かったよ」

 

 

 アベルは十年前の彼女を思い出し、顔を綻ばせた。

 

 

「ぁ……、っ。アリアさんは方向音痴なのですか……?」

 

「うん、昔はね。今はどうか知らないけど……ハハッ! 彼女、よく迷子になるから捜すのに苦労したんだ」

 

 

 ――小さい頃のアリアも可愛かったなぁ……。

 

 

 アリアがいなくなるのはよくあることだったが、レヌール城で泣いて抱きついて来た彼女がふと浮かんで、アベルの瞳は優し気に細められる。

 

 

「っ……アベルさん……」

 

 

 アベルの様子にマリアは一瞬ハッとしたような顔を見せて、柔和に微笑んだのだった。

 

 

「……ア、アリアってそんな方向音痴だったんかー! オ、オレ知らなかったなあーー!」

 

 

 ――どうにかフォローしないと……! けどどうやって……!?

 

 

 マリアの表情の変化に気付いたヘンリーは見ていられず、考え無しについ口走る。

 

 

「ああ、あれはかなり筋金入りだと思うよ。多分、今も治ってないんじゃないかなぁ……(ピエールが付いてくれてたからオラクルベリーに行けたんだろうなぁ……)」

 

 

 アリアの話をするアベルは何となく機嫌が良さそうに見えた。

 

 

「へ、へえ~……。その点、マリアは優秀だよなぁ! オレ、そういうのいいと思うよ! 素敵だよ!」

 

「え? あ、ありがとうございます……」

 

 

 ヘンリーがフォローを入れると、マリアはよくわかっていないような顔で軽く頭を下げる。

 

 

(ちょっと褒め方が大袈裟だった気もするけど、まあいいよな!)

 

 

 ヘンリーはマリアに明るい笑みを向けておいた。

 

 

「マリアと一緒に旅ができるなんて、オレ達きっと縁があるんだな。とにかく、マリアにだけはケガさせないように気を付けようぜ」

 

「ああ、ヘンリーが庇ってあげるといいよ。その間に僕が魔物を倒すから」

 

 

 ヘンリーの言葉にアベルは「うまく連携してやっていこう」と前腕を差し出し、互いにクロスし打ち合わせる。

 

 

「私がアベルさん達のお役に立てるといいのですけど……」

 

「大丈夫だよ、マリアさんが居れば扉は開くから」

 

 

 自信なさげに告げるマリアに、アベルは口角を上げ一度だけ頷いた。

 

 

「え……?」

 

「マリア、後ろに行こう」

 

「あっ、はい」

 

 

 アベルの顔が確信めいているように感じられ、マリアは瞳を瞬かせるとヘンリーに馬車の後列へと連れられて行く。

 

 そうして、アベル達は再び神の塔へと向かって歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 神の塔……――。

 

 

 あれからアベル達は何度か戦闘を繰り返し、神の塔へとやって来ていた。

 

 目の前には昨日見た開かない青い扉。

 壁や柱にはツタや植物が生い茂っているのに、扉だけはまるで新品のように傷一つない。

 これも神の御業なのだろうか。

 

 

「……………」

 

 

 マリアは神の塔を前に少し緊張しているのか、不安そうだ。

 

 

「この扉が開かない扉なんだ。見ててね」

 

 

 アベルは扉に触れ開けようとしたが、どうやっても開かない!

 

 

「ほら……」

 

 

 ほらねと、アベルが言おうとするとマリアが塔を見上げて口を開く。

 

 

「ここが神の塔ですね。私、ここに来るのは初めてなんです。私でお力になれるとよいのですが……」

 

 

 マリアは跪き手を合わせ天に祈り始めた。

 すると、天から光が降り注いだかと思うとその光が扉を発光させ……、

 

 

 

 

 なんと扉が開いた!

 

 

 

 

「開いた! マリア開いたよ!! キミ、すごいなあ!! な、アベル!」

 

「ありがとう、マリアさん。さすがだね。お陰で中に入れるよ」

 

 

 ヘンリーとアベルに褒められ、マリアは穏やかに目を細める。

 

 

「まあ! よかったですわ……。ではアベルさん、参りましょう」

 

 

 何故かマリアはアベルにだけ声を掛ける。それにアベルは黙ったまま頷いて、さっさと塔の中へと入って行ってしまった。

 アベルにピエールが続き、マリアも追い掛ける。

 

 

「……マリア……」

 

 

 残されたヘンリーの小さく切なげな声は霧散し、マリア本人に聞こえることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレはマリアなら絶対にできるって信じてたぜ!」

 

 

 ヘンリーも慌てて三人を追ってマリアに先程のことをもう一度褒めておく。

 すると、

 

 

「アベルさん達のお役に立てて うれしいです。本当によかった……」

 

 

 マリアはほっとしたような顔で、微笑んでいた。

 

 

「さあ、行こうぜ! マリアも居るんだから慎重になアベル」

 

「ああ。わかってるよ」

 

 

 ――慎重にか……。

 

 

 ヘンリーの声掛けにアベルは一人先に数歩歩くと、何やら思案顔をし出す。

 

 

「……アベルどうした?」

 

「うーん……(確かあの階段じゃなかったと思うんだけど……)」

 

 

 ヘンリーが声を掛けるが、アベルは二手に分かれた通路左側の先に見える上り階段を見つめている。

 

 アリアが修道院で待っている為、さっさと【ラーの鏡】を持ち帰りたいアベルは記憶をより鮮明に思い出そうと試みていたが、生憎塔の内部構造までは思い出せなかった。

 

 

 ――そこまで都合よく思い出せるもんじゃないな……。

 

 

 だが、一つ確実なことがある。

 この塔には魔物が住み着いているのだ。

 

 

「ヘンリー、ここは魔物が出る。気を引き締めて行こう」

 

「っ、そうなのですね……!」

 

「了解!」

 

 

 それぞれに辺りを見回すが、今はまだ魔物の気配は感じなかった。

 

 

「で、どっちに行くんだ?」

 

「あの、そちらの扉は……? 中庭……のようですが……」

 

 

 ヘンリーが“右から行くか左から行くか”と左右の通路をそれぞれ見て訊いて来るが、マリアは目の前の青い扉が気になるらしい。

 

 

「ん? よし、決まりだな。マリアが気になるなら中庭から行くか!」

 

 

 マリアの声でヘンリーは二つ返事で扉の方へと向かう。

 

 

「あっ、そんな、私、そんなつもりでは……」

 

「いいから、いいから。…………いいよなアベル?」

 

 

 ヘンリーはアベルに振り向き、有無を言わせない鋭い眼光を見せた。

 

 

「ハハ……、別にいいよ」

 

「よっしゃ、じゃー、行こうぜ!」

 

 

 アベルが乾いた笑いを浮かべ了承するとヘンリーは扉を開け放ち、四人は中庭へと足を踏み入れたのだった。

 




アベルにその気はないぞ、ヘンリーがんがれ!

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