やっとこさレヌール城に潜入です!
では、本編どうぞっ。
第二十四話 潜入、レヌール城
レヌール城――。
アベル達三人はアルカパから西に向かい、その先を北へ。
橋を二つ渡り、ここまでやってきた。
闇の中にそびえ立つ城の表には無数の墓が建てられ、今は誰も墓参する者がいないのだろう、墓の幾つかには枯れて朽ちたかつての花らしき残骸が散らばっている。
城の表の壁は風化が進んで
そして、たまに暗闇のレヌール城上空に、カメラのフラッシュのような閃光が走ると直ぐに“ピシャッゴロゴロゴロ……”と雷が鳴り響く。
人の気配はなく、そこはただただ不気味であった。
「なんだか暗いし、不気味な感じ……。今にもお化けが出て来そう……。でもネコさんのために頑張らなくっちゃ。さあ、アベル行こうよ」
ビアンカが怖いのか、アベルの腕に掴まりながら恐る恐る目の前に迫る城を見上げた。
『っ、よくこんな所に子供二人で来ようと思ったね……(お化けとか怖いのとか苦手なんだよね……)』
アリアも怖いのか、アベルの空いている側の腕に掴まりながら震えていた。
アベルは両腕に掴まる少女二人を順に見て、頬をほんのり赤くしてから、コホンッと咳払いをすると……。
「……っ、大丈夫だよ。僕がついてるし」
弾けるような笑顔で、うんうん、と二人に力強く頷いて安心させたのだった。
「っ、頼もしいっ!」
『っ、頼もしいっ!』
ビアンカとアリアの声がハモる。
二人はほっとして柔らかく目を細めた。
「…………っ! っ、でっ、でも、魔物は出ると思うからっ、放して……? これじゃあ動けないよ……」
二人とも笑顔が可愛いな……。
なんて、アベルはビアンカとアリアの笑顔に一瞬見惚れてしまったのか、はっとして二人に手を放すよう促す。
「っ、あ、ごめんっ!」
『っ、ごめん!』
二人は同時に手を放し、ビアンカは腰に付けていた【いばらのむち】に手を添えた。
魔物がいつ襲ってきても対応できるように、とのことだろう。
アリアは何も持っていないので両手指をお腹の前で組んで、城を見上げた。
『……っ、肝試しみたいね』
こんな所、大人だった私でも行ったことないんだけど……!?
ゲームの中とはいえ、異世界の住人になってしまった今、これは現実なのだとアリアは実感する。
ひゅぅ、と。
冷えた空気がアリアの髪を掬って、頬を撫ぜ消えていく。
背中に冷たい何かが這うような気さえする。
その感覚がリアルで、アリアはぶるぶると肩を小さく震わせた。
『罰が当たりませんように……』
アベルとビアンカが城の表扉を開けようとするそのすぐ後ろで、アリアは手を合わせ神に祈った。
その神がどんなものなのかはよくわかっていなかったが、こんな時は神に祈ってしまうものなのだ。
「……あれ? 開かないや(びくともしない……)」
「困ったわね、どこか他のところから入れないかしら……?」
扉に手を掛けたアベルだったが、錆び付いているのか全く動かず、張り付いているようだった。
「……他のところ……?」
探してみようかと、三人は表扉を後にする。
そして、城の周りを一周し、
「……ここかな……」
「っ、ここ……しか入れるところはなさそうね」
『……はー……、これはまた目が回りそうな……』
城の裏手側に回ると壁が崩れた塔があり、螺旋階段が剥き出しの状態で上へと続いていた。
三人は地上からそれを見上げる。
どこまで続いているのか地上からはわからないが、ここしか他に入れそうなところはなさそうだ。
『うわぁ……、さも上って来なさい的な……?』
「…………、階段は壊れてないみたいだね」
三人が螺旋階段下までやってくると、アリアがげんなりした顔で呟く。
それをアベルは目をぱちくりさせながら見てから、階段の状態を確認したのだった。
螺旋階段の支柱に壊れは見受けられない。
アリアって面白いことばっかり言うなぁ……。
さっきまで震えてたくせに、怖くないのかな?
トントンと、拳を打ち付け支柱を確認しながら、ビアンカやアリアから見えないようにアベルは「くくくっ」と、こっそり吹き出す。
「……うん。すっごい頑丈みたい」
タンッタンッ。
ビアンカは階段の一段目の上でジャンプし階段を踏みつけると、強度を確かめていた。
砂埃がほんの少し舞うだけで、階段は欠けることは無いようだ。
「……じゃあ、行こうか」
「ええ、行きましょう」
『……っ、私ここで……(待っててもいーかなー……?)』
アベルとビアンカが階段を上り始める中、アリアは尻込みしてその場に留まった。
「……ん……?」
アベルはアリアが上って来ないことに気付いて振り返り、下を見る。
すぐ後ろにはビアンカがいて、階段下にはアリアが不安気な顔で上を見上げていた。
「どうしたのアベル?」
「……アリアを連れて来るね」
「え?」
アベルは階段を下りビアンカの隣を通り、最下まで下りるとアリアの手首を掴む。
『っ! いやっ、あのっ、私、こういうとこ苦手で……っ!』
「…………ふふっ、行こうよっ」
アベルは黒い笑みを浮かべてアリアの手を引いたのだった。
『っ、そんなぁっ! ……っ、アベルのバカぢからぁああああっ!!(怖いよ、おかーさぁあああん!!)』
ギャーッ! とアリアは泣き叫ぶも、アベルにしか聞こえないので、ビアンカの隣を涙目で通り過ぎても気付かれなかった。
「よぉし。早く解決して温かいお布団で眠るわよっ。そして、明日はネコさんを助けなきゃ!」
「うん!」
ビアンカも最初は怖がっていたはずなのに、何故か明るく元気に告げる。
アベルはそもそもお化けが怖くないのか、アルカパを出る前から楽しそうだ。
『っ、ぅう……何で、君達はそんなにポジティブなの……(しかも、何か強いしさ……)』
アリアは半ば諦め、項垂れながらアベルに連れられるままに階段を上っていく。
そんなアリアにアベルは声を掛けた。
「ねえ、アリア。下で待っててもいいけど……、一人で居た方が怖くない? 僕達と一緒の方がいいよね?」
『え……? ……あ、た、確かに……』
アベルの指摘に、それもそうかとアリアは納得する。
「怖いなら、手、繋いでてあげるから」
って、恥ずかしいから嫌って断るかな……?
アベルは断られるかもと思いながら言ってみた。
けれど、意外にも……。
『っ、本当?』
「……うん、本当だよ。ほら、こうして指を絡めておけば外れにくいでしょ?」
本当に怖かったのかアリアが了承したので、アベルは掴んだ手を一度放し、今度は互いの指を絡めて手を繋いだのだった。
『っ、恋人繋ぎ……』
「コイビトツナギって……何?」
『っ、いやっ、何でもない!』
アリアの頬が赤くなる。
こんな子供に何故どぎまぎしてんの……、微笑ましいことじゃない。
そもそもアベルにはビアンカちゃんがいるし……!
アリアは数段下を上っているビアンカをちらりと見下ろす。
『可愛い……』
アリアがぽつりと呟いた。
「……ん? 今何か言った? っ、可愛いって……、っ。やだっ、アベルってば急に何言って……!?」
「ううん、僕は何にも! あっ、入口が見えてきたよ!」
「そ、そうなの? ……わぁ! 本当……、……不気味ね……」
階段は残り僅か。
上り切ったその先には城内へと続くであろう入口が、闇を内包し口を大きく開けていた。
『……あー……これ絶対何かあるやつだよ……(中真っ暗で何も見えないじゃない……。ここに入ったらなんかあるって、ゲーマーとしてわかるんだからね……!)』
「プッ。何でそんな顔するの?」
アリアがまたしてもげんなりした顔をするので、アベルは吹き出す。
『だって……、お化け出たら嫌だし……』
腰が引けるのか、アリアが立ち止まってしまった。
「それは中に入ってみなきゃわからないよ」
『そうだけどっ!』
「大丈夫だって」
『あっ、アベルっ!』
アベルは尻込みするアリアの手を引いて残りの階段を駆け上がる。
そして、暗闇の中へと消えていった。
「…………アベル、また一人で喋ってるし……」
アリアって子本当に居るの……?
未だ半信半疑なビアンカもアベルを追い掛けたのだった。
所々イチャついてすみません。
そもそもそういうお話なのでお許しを(今更~)。
今更で思い出しましたが、挿絵を描きたいな~と思いつつ、挿絵描く時間で多分三話分くらい書けてしまうので、躊躇しております。
その内キャラ設定画像くらい描きたいなぁと思っています。
絵、難しいですよね……。
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読んでいただきありがとうございましたっ!