勘違い……、しちゃうこともあるよねえ……。
では本編どぞ~!
『どっ、せぇええええいいいいぃぃ~~んン!!』
……――野太い野生の声が聞こえた。
『ピ、ピキィィイイイーーーー!!!?(助けてぇええええ~~ん!!)』
そして、スラりんの叫び声……。
ヒュゥウウウウ~~~~という風を切る音。
スラりんがアベルとアリアの方へと飛んで(否、飛ばされて)来ていた。
「ん? スラりんの声……?(さっきの野太い声は何だ……?)」
「え、あっ、スラりんさん! わっ、わっ……!」
「え、アリア……?(どこへ……?)」
アリアは柵の外から宙を舞い、涙を撒き散らしながら飛んで来るスラりんに気付き、咄嗟に方向を変えスラりんを迎えに走った。
アベルはスラりんの声に気付いたものの、自分の背後からまさかスラりんが飛んで来ているなどとは露程にも思わず、急に全速力で走り出したアリアの行動に面食らう。
ズザザザザッ!
と、アリアの足が草と砂を滑る音が聞こえる。アリアの見事なスライディングに砂煙も舞っていた。
そして、
ぶにょん。
スラりんの潰れた音が聞こえた気がした。
「はぁ、はぁ……。……っ……ふぅ、ふぅ……(ま、間に合ったぁ……!)」
アリアは仰向けにすっ転んで、スラりんを無事キャッチしていたのだった。
「アリアちゃん……、アリアちゃーん! わーん! ママぁああ!!」
「っ、あっ、ぁっ……、ゃ……、だからそこはダメですってば……。……もぅ……(怖かったんですね……)」
潰れたと思っていたスラりんは実は潰れていなかった。一時的に重力にならって潰れたように見えただけのようである。
スラりんがアリアの上でゆらゆら揺れる。
丁度、胸元に縋りつく感じで揺れていたため、アリアの顔は真っ赤に染まってしまった。
それでもスラりんを優しく宥めるように撫でていた。
「っ、スラりん!? いったいどうし……」
アベルは一瞬何が起こったのか把握できずに、アリアとスラりんの方へと歩いて行く。
「アリアっ」
アベルがアリアへ近付こうとすると、目の前を何かが遮り温かな感触が伝わって来た。
「ぁっ……」
アリアは横になったまま、小さく息を呑む。
「………………、っ、馬車に残って……って言ったよね……?」
「アリアじゃないのン。きゃっしぃ~! ううン、はにぃ~デショ? ダーリィぃン!!」
ギュゥウウウウッ!!
キャシーの熱い抱擁がアベルの身体を締め付けていた。
「ぐぇっ……(チカラ強っ!)」
「…………ねえ、ダーリン♥ 今夜は一緒に寝てあげてもいいのよン?」
胴回りをきつく締めあげられ苦しむアベルに、キャシーは片手を放して上目遣いに彼の胸の真ん中辺りに人差し指でハートを描く。
胴に抱きついていた手は今度はアベルの腕を掴み、腕を絡めていた。
「……えぇ……、いや、それは遠慮して……」
「あらン。アタシ達、もうキスした仲じゃないのン♥」
「何言って……。僕はキャシーのことなんて何とも……。ほら、放して……」
勝手に話しを進めるキャシーに辟易して、アベルはキャシーに手を放すよう促すのだが……。
「っ、アベルさん。私、お仕事の途中でした。……おかえりなさい。そろそろ日が暮れます。今夜は泊まって行ってくださいね」
アリアはスラりんを地面に下ろし、立ち上がって自分についた砂を払っていた。
スラりんは「ありがとう、アリアちゃん助かったよぅ!」と馬車へと戻って行く(いい子である)。
アリアは優し気に微笑み手を振ってスラりんを見送ると俯いてしまった。
「え、ア、アリア……? ど、どうし……」
「……アリアってアンタのことよねン? アタシのダーリンにちょっかい出さないでもらえるン?」
アリアの急な態度の変化にアベルの心臓が“ドクンッ”と強く波打つ。
何かしてしまったのか訊ねようとしたが、キャシーがアベルの言葉を遮るようにアリアに棘のある強い口調で言葉をぶつけていた。
キャシーの目付きはアリアを威嚇するように鋭い。
「……キャシーさん……。邪魔してごめんなさい……。私、そんなつもりじゃなくて……」
「人の男に抱きつこうとしておいてよく言えたもンよねン!」
「っ……、ご、ごめんなさい。……失礼します……!」
アリアは何度もキャシーに頭を下げていたが、キャシーに指摘され頬を赤くすると洗濯カゴの方へと走って行き、洗濯物を持って修道院へと行ってしまった。
「っ、アリアっ! 待って……! 違うんだっ……!!」
アベルはキャシーから(物理的に)逃れられず、走り去るアリアに手を伸ばすが、もうちょっとで掴めるという所で避けられてしまい、アリアを逃してしまう。
「っ……!?」
――アリア……! そんな……、嘘だろっ……!?
アベルの顔が絶望したように真っ青になってしまった。
「……ダーリン。浮気は許すけどぉン。あんな地味な子、ダーリンには似合わないわン……?」
ツンツン。
キャシーはニヤニヤしながらアベルの脇腹を突く。
アベルは俯いてしまっていた。
「……キャシー……いい加減にしてくれ。僕は君のことは仲間だと思ってはいるけど……女の子として見てはいないよ」
アベルはゆっくりとキャシーに伝わるように言葉を紡いでいく。
その声は普段より低く冷ややかだった。
「……あらン。照れちゃってマーー! いいのにぃン!」
「……照れてる……? どこが……?」
「どこがってぇン……」
「……君、僕の話全然聞かないんだな」
空気が読めないのかキャシーの態度が変わらない為、アベルは一つ一つ冷淡に返していく。
目線も据わっているのだが、キャシーはアベルの腕にしがみつき頬を摺り寄せていて気付いていない。
「ダーリンの言いたいことはわかるわン」
「……全然わかってないよ。はぁ……」
ブンッ!!
と、アベルはキャシーの腕を乱暴に振り払った。
「っ、痛っ……! ……ダーリィン……?」
「……君は馬車に戻れ。僕は彼女の元に行く。今度邪魔をしたら君をモンスターじいさんの所に送る。わかったね?」
腕を振り払われた拍子に腹に自分の腕を打ち付けてしまい、痛みに声を上げたキャシーだったが、アベルは冷めた目で命令してくる。
「っ!? っ……だぁー………………、っ……わ、わかったわン……」
漸くアベルの様子に気付いたキャシーは、怯えた目で首を縦に下ろしてトボトボと馬車へと戻っていった。
「……はぁ。……っ、こうしてる場合じゃない!」
アベルは溜息一つ吐いた後、今度はアリアを追い掛けようと修道院へと走り出す。
と、ヘンリーとマリアがこれまでの様子を見ていたのか、二人とも気まずそうな顔をして近くに立っていた。
「アベルさん……」
「なあ、アベル。アリアなら客室に行ったぞ」
マリアが心配そうにアベルを見るが、ヘンリーは先程アリアに声を掛けていたらしく、客室に行くと聞いていたのだった。
そうしてヘンリーが片手を挙げる。
するとアベルはすれ違いざま、その手を“パンッ!”と叩き合わせた。
「ヘンリー! ありがとう!」
アベルは修道院の中へと一人、入って行くのだった。
アリアさん、アベルさんとキャシーちゃんがデキてると勘違いwww
他ヒロインとのドロドロは書きたくないので、キャシーちゃんに白羽の矢が立ったわけです。
ちなみにキャシーちゃん、後に正式に恋人が出来る予定www(無駄設定w)
ハッピーエンド至上主義。基本皆で幸せになろうがコンセプトなもんで。