ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

泣き虫は困るんだけどなぁ……。

では、本編どぞ~。



第二百五十二話 泣かないで

 

 

 

 

 

 修道院、二階客室……――。

 アリアはベッドのシーツを取り替えていた。

 

 アベル達が戻って来たら気持ち良く休んで欲しいという想いから、今朝早くからシーツを洗って準備していたのだった。

 

 

「……アベルさん……。………………………………、………………………………、…………………………あはっ……」

 

 

 ――私……、ずっとからかわれていたんですね……。なのに、自惚れて……バカみたい……。

 

 

 ぽっぽっ……、と替えの白いシーツに灰色の染みが出来ていく。

 

 

「ぁ……、いっけない……。今日、アベルさん達が使うのに汚しちゃった……」

 

 

 アリアは自分がいつの間にか泣いていることに気が付いて涙を拭った。

 そんな所に、

 

 

 コンコン。

 

 

 扉を叩く音がアリアの背後に聞こえた。

 

 

「……ふ……ヤダ……止まらない。グスッ…………はい(シスター……荷物でも抱えているのかしら……)」

 

 

 アリアはノックだけして入って来ない誰かを不思議に思い、返事をする。

 シスターならノックした後ですぐに入って来るはずなのにどうしてだろうかと不思議に思った。

 

 もしかしたら、シスターは大きな荷物を抱えていて扉を開けられないのかと思い、アリアは扉に近付いて行く。

 扉を開けようとすると、戸の向こう側から声が聞こえた。

 

 

『……あ、ぼ、僕……』

 

「っ! その声……、ア、アベルさん……!?」

 

 

 扉の向こうでアベルの上擦ったような声が聞こえ、アリアは瞳を見開いた。

 まだ涙は止まっておらず、頬を伝っている。

 

 アリアは慌ててゴシゴシと腕で乱暴に拭った。

 

 

『開けてもいい……?』

 

「っ、ま、待ってください……! 今はダメっ!」

 

『えっ!? でも、ラーの鏡を持って来たんだ……!!』

 

「っ、ちょ、ちょっと今は……そ、その…………ズズッ」

 

 

 アベルの声にアリアは必死で涙を拭う。

 漸く涙は止まったが、今度は鼻水が垂れて来てしまった。

 

 

 ――あぅ、鼻水が垂れて来ちゃった……!

 

 

『…………ごめん、アリア開けるね』

 

「だ、だめ……っ!」

 

 

 ガチャ。と、アベルはアリアの了承を得ることなく扉を開けてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アリア」

 

「……っ、……な、なんでしょう……?」

 

 

 アベルが部屋に入って来るとアリアは背を向け、部屋の奥の本棚の整理をしていた。

 

 

「え、だからラーの鏡を……」

 

 

 ――距離遠いし、振り向いてもくれないのか……。さっきのは誤解だって言った方がいいかな……?

 

 

 アリアとの距離が遠くてアベルは彼女に近付いていいものか迷う。

 

 

 誤解も何もキャシーはそもそも魔物で、アベル的には何とも思っていないわけで。

 アリアが誤解した意味がよくわからないのだが……。

 

 

「っ……、今、仕事中なので後にしてもらえませんか?」

 

「あっ、すぐ済むから!」

 

「っ……でも……」

 

「お願いだ! っ、こ、これ……!」

 

 

 アリアが振り向かず応対して来ることにアベルは焦って、【ふくろ】から【ラーの鏡】を取り出そうとするが、焦った所為で別の道具に引っ掛かり出て来なかった。

 

 こんな時、【ふくろ】の中を整頓していなかったことが悔やまれてならない。

 昔、パパスやサンチョ、アリアにも整理整頓は大事だと言われていたのに。やろうやろうと思っていた矢先、こんな羽目になろうとは。

 

 

 ――とりあえず彼女の傍に行こう!

 

 

 アベルはアリアの元へと歩き出す。

 

 

「…………、……アベルさん……、恋人が出来たんですね……」

 

 

 ふと、アリアがアベルに背を向けたまま口を開いた。

 

 

「え、コイビトってナニ?」

 

 

 アリアの言葉にアベルは足を止める。

 

 

「……キャ、キャシーさん……。溌溂(はつらつ)として可愛い方ですね……」

 

「えっ、どこが!?(アリア、目が悪いの!?)」

 

 

 ――キャシーのどこを見てそう思ったの!? ていうか……それってどういう……?

 

 

 アリアは振り向くことなくキャシーを褒めるので、アベルは目を見開く。

 

 

「……可愛さは見た目だけが重要じゃないってこと……私、知っています」

 

 

 ぽっぽっ……とアリアの手の甲にやっと止まった涙がまた零れ落ちていた。

 

 

「アリア……?」

 

「……アベルさん……、あんまり私のこと……からかわないで下さい……。本気にしちゃうところでしたよ……ぅ……っ」

 

 

 アリアは口元を両手で覆って、嗚咽が漏れないよう堪える。

 肩が小さく震えていた。

 

 

「からかう……? 僕は君をからかったことなんて一度も……」

 

 

 ――あれ? アリアの様子おかしくないか……?

 

 

 アベルは縮こまるアリアの肩に触れ、振り返らせる。

 

 

「っ……。私っ、アベルさんのこと…………!」

 

 

 振り返ったアリアは涙を流しながら くぐもった声でアベルを見上げた。

 

 

「っっ!? アリアっ!? ……ご、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!! 僕の所為で泣いてるの!?」

 

 

 アリアの涙を見た途端、アベルはその場で膝から崩れ落ち土下座をする。

 アリアの涙を見ると胸が苦しくなってしまうのだ。

 

 

「っ……ぅぅ……」

 

「ごめんなさいっ!! ……キャシーは神の塔で仲間になった魔物で……、僕の恋人ってわけじゃなくて……」

 

 

 床に額を擦り付けながらアベルは言い訳をする。

 彼女には何でも正直に話さないと納得してもらえない……、そんな気がしたのだった。

 

 

「……っ、でもっ、キャシーさんはアベルさんのことダーリンって……!」

 

「ぅ……、それは勝手にそう言ってるだけで……、僕はキャシーのことなんか何とも思ってないし……」

 

「…………、…………っ」

 

「……それに僕は別の女性(ひと)を想っているわけで……」

 

 

 アベルはそこまで言ってから顔を上げ、アリアを見つめた。

 

 

「……っ!?」

 

 

 アベルの様子にアリアは驚いて目を丸くする。

 眉が下がり、瞳をうるうるとさせたアベルの顔が、捨てられた子犬のように見えてしまったのだ。

 

 

 ――アベルさんっ、な、なんて顔をして……!?

 

 

「アリア……ごめんね。君を泣かせるつもりじゃなかったんだ……。何度でも謝るから……、もう泣かないで欲しい……君の涙を見ると僕は……(胸が痛い……)」

 

「っ……ぁ……(……はい……)」

 

 

 アベルが悲し気に瞳を揺らし懇願するので、アリアは声を出せなかったが首を縦に何度も下ろした。

 

 

「……本当? じゃあ、涙拭いてもいい……?」

 

 

 アリアが許してくれたのでアベルは立ち上がって、ハンカチを取り出しアリアの顔に近付けていく。

 

 

「…………っ、はい……。ぁ、えと、私、鼻水が出ちゃってて……」

 

 

 ――恥ずかしい……!!

 

 

 ズズッと鼻を啜りながらアリアは口と鼻を手で覆ったまま、アベルに涙を拭いてもらっていた。

 

 

「鼻水? かめばいいよ。洗えばいいんだから」

 

「んぅ……」

 

 

 アベルはアリアの手を避けて、鼻をハンカチで包む。

 

 

「ほら、チーンして」

 

「っ……」

 

「おもいっきりどうぞ」

 

「ぅ……、で、では……」

 

 

 ブーーーーッ!!

 

 

 ……とアリアはこの際なので思いっきり鼻水を出してやった。

 

 

「……いっぱい出たね。…………(アリアの鼻水……か。これ……聖水と呼んでもいいんじゃ……?)」

 

 

 ――……ハッ! ダ、ダメだ。鼻水まで愛おしくなるなんてどうかしてる……!!

 

 

 アベルはまじまじとアリアのかんだ透明な鼻水を見下ろし、良からぬ考えが浮かんでハンカチを折り畳んだ。

 頬がほんのり赤い。

 

 

「……アベルさん? あ、私洗います……」

 

「いいよ、後で洗っとくから」

 

「……アベルさん……」

 

 

 ――アベルさん、優しい……。

 

 

 優し気な瞳で自分を見てハンカチを仕舞うアベルに、アリアの胸が温かくなる。

 

 

「もう、平気……?」

 

「ぁ、はい……」

 

「はぁーーーー……………………、良かった……」

 

 

 ――アリアの涙は心臓に悪い……。

 

 

 アベルはアリアを窺い、彼女がやっと微笑むと、長い溜息を吐いてから胸を撫で下ろしたのだった。

 




アリアの涙に弱いアベルさん。誤解がとけたようで何より。
ちょいちょいヘンタイ発言失礼致しますw

というか、キャシーとの仲を誤解するアリア……www
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