ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

くらえ、ラーの鏡っ!

では、本編どぞー。



第二百五十三話 真実を映す鏡

 

「で、こ、これが……、ラーの鏡なんだけど……」

 

 

 キャシーとの仲の誤解も解け、アベルは今日自分が寝るであろうベッドにアリアと共に腰掛け、【ふくろ】から【ラーの鏡】を取り出していた。

 

 

「ぁ、はい……。その鏡、不思議なチカラを感じますね」

 

 

 アリアはアベルの手元にある【ラーの鏡】を隣から見下ろす。

 

 

「う、うん……」

 

 

 ――アリアが……近いっ!! もうちょっと寄ってくれないと【ラーの鏡】に映らないけど、“もっと傍に寄ってくれ”なんて緊張して言えない……!!

 

 

 アベルの拳二つ分空けて離れて座るアリアの様子をアベルはちらっと見るのだが、アリアはアベルの手元の【ラーの鏡】を注視していて気付かなかった。

 これが今の二人の距離なのだろう。

 

 アベルはアリアとの距離を縮めることは出来なかったものの、気持ち身体をアリア側へと傾ける。

 身体を近付けていくとアリアの好い匂いがした。アベルは鼻孔を広げ、めいっぱい香りを吸い込むように鼻をひくつかせる。

 

 

 と、

 

 

「……では、アベルさん私に鏡を向けて見せてください」

 

「っあ! うんっ!」

 

 

 アリアが急にアベルへと視線を移すので、アベルはハッとして身体の位置を戻したのだった。

 途端、アリアの香りが遠ざかってしまう。

 

 

 ――アリアって何でこんな好い匂いがするんだろう……。

 

 

 甘くて爽やかで柔らかなアリアの香り。気分を落ち着かせることもあれば、興奮してしまうこともある不思議なアロマ。

 アベルはまたの機会に嗅ごう……と、【ラーの鏡】を持ち上げ、アリアに向けた。

 

 アリアは【ラーの鏡】に自分の姿を映す。

 

 

 

 

「ぁ……………………、……………………、……………………」

 

 

 

 

 鏡を覗き込んだアリアは小さく声を発したかと思うと黙り込んでしまった。

 大きな瞳を何度も瞬かせる。

 

 

「……どう……かな……? 何か思い出せるといいんだけど……」

 

 

 ――これで駄目なら……、もう自然に記憶が戻るのを待つしか手立てが無い……。

 

 

 アベルが恐る恐るアリアに訊ねるが、アリアは黙ったままだった。

 

 

「…………っ、アベルさんっ、これ…………、…………どういう…………??」

 

 

 長い沈黙の後で、漸くアリアは【ラーの鏡】の中の自分を指差し口を開く。

 

 

「…………ん?」

 

「……あの、私の背中に……、翼のようなものが……(どうして……?)」

 

「っ!?」

 

 

 アベルはアリアを【ラーの鏡】に映したまま、バッ! と素早く場所を移動し、彼女のすぐ隣で一緒に鏡を覗き込んだ。

 

 

「あぁ……。……アリアの翼だ……!!(翼を奪われてもラーの鏡には映るのか……!)」

 

 

 アベルは鏡の中に映る天使の姿に目頭が熱くなる。

 鏡に映るアリアの背には真っ白で艶のある美しい翼が生えていた。

 

 

「アベルさん……? 私の翼って……どう、いう……?」

 

「…………記憶、戻ってない……?」

 

 

 ――この様子じゃ……戻っていない……かな?

 

 

 ちらっと、アリアに視線を移しアベルは訊ねた。

 

 

「ぁ…………はい……。残念ながら……」

 

「…………、…………そっか……」

 

 

 ――【ラーの鏡】でも駄目なのか……!

 

 

 アリアが首を縦に下ろすと、もう手立てがない……としてアベルが頭を抱えようとするが、

 

 

「……私が記憶を失くしたきっかけが何だったのか、詳しく分かればもしかしたら……」

 

 

 アリアは【ラーの鏡】に触れ、呟く。

 

 

「え……」

 

「……私、怪我をして倒れていたとしか聞いていないんです。ピエールさんのお話だと、古代の遺跡近くで倒れていたそうで……。両親らしき人達も居なかったようですし、どうしてそんな場所で一人倒れていたのか 自分でも不思議で……」

 

 

 鏡の中のアリアの翼が一度だけ大きく羽ばたいてみせる。

 

 

「アリア……」

 

「……両親が生きていれば何があったのか話も聞けたのでしょうが…………あ。私が倒れていた場所に行けば、何か思い出せるでしょうか……? ……って今まで各地を回りましたが、戻らなかったですもんね……。望み薄でしょうか……」

 

 

 アリアはどうにか自分の過去を探るためのヒントを欲しがっているようだ。

 

 

「……っ!」

 

 

 彼女の話にアベルは息を呑む。

 記憶を取り戻す手立てが全部失われたわけではない。

 

 

 もう一つ。

 

 

 ――辛い現実を突き付けることになるが、あと一つだけ、あったじゃないか。

 

 

 いずれは思い出すであろう辛い過去があったとしても、出来ればアリアには楽しい思い出から記憶を取り戻して欲しかった。

 と、アベルは到頭アリアに過去を話すことに決めたのだった。

 

 

「……アリア。僕、まだ君に話していないことがあるんだ」

 

「…………え?(話していないこと……?)」

 

「……とりあえず、ラインハットで使うから ラーの鏡はしまっておくね」

 

「あ、はい」

 

 

 アベルは【ラーの鏡】を手にして立ち上がり、【ふくろ】に仕舞おうと持ち上げる。

 

 

「……っ……えっ?」

 

 

 アリアがアベルに片付けられる【ラーの鏡】を見て、小さく声を出した。

 

 

「……ん? どうかした?」

 

「っ、あっ、いえ…………、…………??(今のは何……?)」

 

 

 アベルが【ラーの鏡】を【ふくろ】に片付けると、アリアは首を捻って困惑した顔をしていた。

 

 

「……ん? そう……?」

 

 

 ――翼が気になってしょうがなかったのかな……?

 

 

 アベルはこれから説明するから安心してね、と心の中で語り、アリアに笑顔を見せる。

 

 

「あ、はい。光の加減……? 見間違いかもしれないので……。……不思議な鏡でしたね……」

 

 

 アリアは捻ったままの首を戻し、アベルを見上げた。

 

 

「え……あ。ラーの鏡ね、うん。真実を映し出す鏡って云われているよ」

 

「真実を映し出す鏡……。あの…………、翼が私の背中についていたのですが……、ラーの鏡は鏡に映った人に翼を授けた姿を映し出すものなのですか……?」

 

「え? 違うよ。さっき僕の背に翼なんて生えてなかったでしょ? ハハッ、アリアはラーの鏡を勘違いしてるみたいだなあ……」

 

 

 ――真実を映し出す鏡って言ってるのに、アリアは何を勘違いしてるんだろう……。

 

 

 映り込む者を天使にしてしまう鏡に、何の需要があるというのだろうか。

 アリアは記憶がなくとも時々変なことを云うのだな、とアベルは思わず笑ってしまう。

 

 

「あっ! そ、そうですね……! ……えと……、鏡の中だけでも天使になれたらちょっと嬉しいかなって思ってしまって……」

 

「……天使……(は……君なんだけどね……)」

 

 

 “天使になれたら嬉しい”というアリアの言葉に、アベルは目線を床に落とした。

 記憶はないのに、彼女が元の姿になることを望んでいるように感じられる。

 

 

 ――やっぱり話したらショックを受けるのかな……。

 

 

 ここまで来て、アベルは躊躇(ちゅうちょ)するのだった。

 




はい、ラーの鏡じゃダメでしたー!www
もうどないせえっちゅうねんってゆー。
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