ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

とうとう、言っちゃいますか。
言っちゃいましょう!

では、本編どぞ~。



第二百五十四話 どうして?

 

「で、では……あれはいったい何だったのでしょうか……。アベルさん……」

 

 

 躊躇(ためら)うアベルの様子に気付かず、アリアは素朴な疑問をアベルにぶつけてみる。

 

 

「…………うん。それが君に話していないことの一つだよ」

 

 

 ――やっぱり、話すしかないよな……。

 

 

 アリアが乞うような瞳で見上げるので、アベルは彼女の隣に再び腰掛けた。

 

 

「え……」

 

「……君には辛いことかもしれないけど……。でも、重要なことだと思うから話すね」

 

 

 アリアは隣に座るアベルに視線を合わせる。

 アベルは普段と違いアリアと真っ直ぐ目を合わせ、真剣な顔をしていた。

 

 

「…………っ、はい。……あっ、ちょっと待っていただいてもいいですか?」

 

「ん?」

 

 

 アベルの前にアリアは両手をやんわりと突き出し、断りを入れる。

 アベルは首を傾げていた。

 

 

 すると、

 

 

「すぅーー……はーー…………、すぅーー……はーー…………、……………………、……………………」

 

 

 アリアはゆっくり息を吸い、吐き出し、何度か深呼吸を繰り返す。

 

 

(……アリア、緊張してるのかな……?)

 

 

 アベルは少し強張った顔のアリアに目を細め、深呼吸が終わるのを待った。

 

 

「…………っ、覚悟を決めました。では、一思いにどうぞ……!」

 

「……フフッ……一思いって……、君って……ホント……(面白いなぁ……)」

 

 

 深呼吸が終わるとアリアは瞳を ぎゅっと閉じて手を組み合わせ祈るような仕草でアベルの言葉を待つ。

 彼女は小さく丸くなり、それは怯えているようにも見えた。

 

 

 ――怯えなくても大丈夫なんだけどな……。けど、怯えてるアリア、可愛い。……守ってあげたくなる……。

 

 

 アベルは小さく縮こまるアリアが愛おしくなってしまう。

 

 

「じゃあ……、アリア。君のことについて、今まで伝えていなかったことを話すね」

 

「……っ、はいっ」

 

 

 ビクッと目を閉じたアリアの肩が揺れるので、アベルは「怯えなくても大丈夫だよ」と頭を撫でてやる。

 すると、アリアは ほっとしたような顔で目蓋を開くと、アベルと目を合わせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アベルがアリアに全て話し終える頃には、空は藍色に染まり小さな星々が煌めいていた。

 

 

「……天使……? 私が……?」

 

 

 アリアはピンと来ない様子で首を傾げる。

 

 

「うん……。君は僕の前に現れた、初めての天使だったんだ……。君は天空人なんだと思う……」

 

「天空人……本で読んだことがあります……。では……、鏡に映った翼は私の……? それで、その……」

 

 

 アベルに確認を取るように先程聞いた話をアリアは繰り返していた。

 

 

「ああ……。ある魔族の男が君から翼を奪ってしまったんだ。それで、君は酷い傷を負っていたんだよ」

 

 

 ――ゲマッ……! 絶対許さないからな……!!

 

 

 アベルは自分の膝に掛かる服を強く掴み、眉間に皺を寄せると奥歯を噛み締める。

 ゲマを思い出すだけで(はらわた)が煮えくり返る。アベルの拳は怒りに震えていた。

 

 

「…………そう、だったんですね……。アベルさんとヘンリーさんが攫われた現場に私も居たんですね……。そう……」

 

 

 アリアは俯き自分の手元を見ており、アベルの怒気を(はら)んだ表情は見ておらず、意外にも冷静に受け止めている様子で「そうだったんだ……、そっか……」と一人納得したように何度も頷いている。

 

 

「……アリア。どう……? 何か……思い出せそうかな……?」

 

 

 ――ここまで話したんだ。思い出せるよね……?

 

 

 これで思い出せないのなら本当にもう、後に続く手立てがない……。

 アベルはゲマのことは一旦忘れ憎悪の表情を引っ込めると、話をする前とあまり変わらない様子のアリアに焦り、今度は額に冷や汗を浮かべてしまった。

 

 

「……………………、……………………、………………アベルさん」

 

 

 アリアは黙り込んでしまう。

 しばらく黙り込んでアベルの名を呼んだ。

 

 

「……うん……」

 

「……ごめんなさい……、何も……、思い出せません……。私……、もしかしたらアベルさんの仰っているお友達の“アリア”じゃないのかもしれません……」

 

 

 “ごめんなさい……。”

 

 

 アリアの瞳からボロボロと大粒の涙が零れ落ちていく。

 思い出せない自分に失望しているようだった。

 

 

「アリアっ!? なっ、泣かないで……! 別に僕はっ……!(記憶なんて戻らなくたって構わないんだから……!)」

 

「ぅう……! ごべんな゛ざい゛……っ、わた、私……。あなたのこと……何も思い出せない……!! どうして? どうしてっ……!?」

 

 

 突然泣き出したアリアにアベルは ぎょっとして宥めるが、アリアは首を横に振って泣きじゃくる。

 

 そんな彼女にアベルは堪らず……。

 

 

 

 

「……っ、アリアっ! 泣かないでくれっ! 僕は君の涙を見たくないっ! 君には笑ってて欲しいんだっ!!」

 

 

 

 

 アベルはアリアを抱きしめていた。

 自分の腕の中に匿い、あらゆるものから守るように彼女を閉じ込める。

 

 

「うぅ……。アベルさん……!」

 

 

 ――アベルさんっ、アベルさんっ、アベルさんっ……!

 

 

 アリアもアベルに縋るように彼の背に手を回した。

 そして……しばらくアリアは泣いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……時が経ち、アリアが泣き止むと……。

 

 

「……すんっ……」

 

 

 アリアの鼻を啜る音が聞こえ、その後――。

 

 

 チーン!!

 

 

 と、鼻をかむ音が聞こえる。

 

 

「…………お、落ち……ついた……?」

 

「ふぁい……、ずみ゛ま゛ぜん゛……っ。……ハンカチ、どろどろになっちゃいましたね……、マントまで……。本当に、ごめんなさい……」

 

「っ……フフッ。いいよ、気にしないで(カワイイなぁ……子どもみたいだ……)」

 

 

 アリアが泣き止んですぐ、アベルはハッとしてアリアから離れていたのだが、その拍子にアリアの鼻から鼻水がアベルのマントに付着し、伸びに伸びていたのだった。

 アベルはハンカチで再びアリアの鼻をかんでやっていた(マントは汚れてしまったので取っ払っている)。

 

 

「……私、子どもみたいですね……。恥ずかしい……」

 

 

 アリアはアベルのマントを手にして丸める(中にはハンカチも回収してある)。

 これから洗いに行って来ますと立ち上がり扉の方へと行ってしまった。

 

 

「…………そこが可愛いんだけどね……」

 

「……え? 何か言いましたか? マント、明日の朝には乾くようにしますから安心してくださいね」

 

 

 アベルの小さな呟きはアリアには届かず、彼女は振り返って首を傾げる。

 

 

「……あ、いや……。ははっ……、ありがとう」

 

「…………では……私、今日はこれで……。あ、お夕食が出来たら どなたかが呼びに来ると思いますので……」

 

 

 アベルは頭の後ろを掻いてアリアから視線を逸らすと、はにかんでお礼を告げた。

 アリアはアベルに目を逸らされたものの照れているのかなと思い、柔らかな笑みを浮かべて会釈し、ドアノブに手を掛ける。

 

 

「あっ、アリア! 君、明日からまた旅に出られるよね……!?」

 

「え……? あ……。っ……、うーん……。明日の午後までに説得してみますね……! 実はマザー……朝から捉まらなくって……」

 

 

 咄嗟にアリアの背中に問い掛けると彼女は振り返ったのだが、その表情は曇っていた。

 マザーの説得が終わっていないようだ。

 

 

「……そっか……。明日……僕が説得してもいいかい……?」

 

「……いえ、私の問題ですから私が説得します。でも……、もし聞き入れて下さらなかった時は……」

 

 

 アベルの提案を拒否したアリアだったが、アベルのマントを抱きしめ顔を埋める。

 

 

「……ん?」

 

「……連れて逃げてくださいませんか?」

 

 

 アリアはそっとマントから瞳だけ覗かせ窺うようにアベルを見つめた。

 

 

「えっ!? っ、うんっ、わかった! その時は任せてくれっ! あっという間に攫って行くから……!! 君は僕に任せてればいいからっ!」

 

 

 アベルの頬が瞬時に茹る。

 アリアからそんなことを言われるなんて思ってもみなかったという顔で、けれども即了承したのだった。

 

 

「うふふっ、アベルさん頼もしいですね……。もしもの時はお願いします。……では……」

 

 

 アリアはアベルのマントから顔を離すと再び会釈して部屋を出て行った。

 彼女の頬も赤く染まっていた気がするが、暗くてアベルにはよくわからなかった。

 ただ、アリアの唇が弧を描いていたのだけはわかったので……、

 

 

「……アリア……」

 

 

 アベルの胸がドキドキと逸る。

 

 

 ――アリア……もしかして、君も僕のことを……!?

 

 

 胸元に手を当てると鼓動が早いのが解って、アベルはアリアに想いを伝える時期が近いなと予感した。

 

 

「……いや、でもまだ早いか……? ……ヘンリーに相談してみようかな……」

 

 

 そうは言いつつも、アリアも自分と同じ気持ちなら早い方がいいよな? とアベルは今夜寝る前にヘンリーに相談してみようと思うのだった。

 




アリアの記憶はいつ戻るのでしょうかねw
フヘヘw

そして、アベル告白するんかな?w
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