ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

アリアのお母さん。

では、本編どぞ~。



第二百五十六話 天使の母

 

 昔のアリアは快活な女の子で、今のアリアは控えめな女性だ。言葉遣いも随分違う。

 今のアリアに惹かれているのは事実だが、優しい所は変わらないし、見た目が変わるわけでもない。

 

 アベルはアリアの記憶が戻った場合を少し考えてみた。

 

 

 ……昔のアリアは僕と一つしか違わないのにお姉さん風吹かせてたっけ……。

 浮世離れしていて、何か不思議な女の子だった。

 今のアリアは大人しいけど年相応って感じかな……。

 

 

 ――確かに僕は今の彼女に惹かれてるけど……、ヘンリー程の拘りはないかな……。

 

 

「……問題ない……と、思う……けど……?(そもそも、昔から彼女のことはいいなって思ってたわけだし……)」

 

 

 “アリアはアリアだから”とアベルは腕組みし、首を捻る。

 

 

「ふーん? オレは昔の彼女が好きだったから戻ってくれたら嬉しいけどさ。昔のアリアはオレ達を手玉に取るお姉さんだったんだ。違和感とか出て来るかもしれないぜ?」

 

「手玉に取るって何……彼女そんなことしてたっけ……? 違和感……? はは……アリアはアリアだよ……」

 

 

 ヘンリーの拘りなのだろう、彼はいつでも昔の彼女推しだ。

 

 アリアの存在をなかったことにしていた後ろめたさもあってか、今のアリアには見た目の可愛さと優しさで一般的にいい女だな、とは思っているがそれ以上の気持ちは無いようで、アベルは“ヘンリーは拘りが強いんだなぁ”と苦笑していた。

 

 

「…………ふーん……。ま、オレは一応止めた。ただ、想いを伝える伝えないは最終的にはお前の自由だから好きにしろ。…………ふぁ……そろそろ寝ようぜ」

 

 

 ヘンリーは眠くなって来たのか、欠伸を一つするとベッドに横になる。

 

 

「……ヘンリー……僕はさ……」

 

「おやすみ! 明日は頼んだぜ、相棒」

 

 

 アベルがヘンリーに伝えようとしたが、ヘンリーは布団を被って目を閉じてしまった。

 

 

「……ああ、おやすみ……」

 

 

 ――ヘンリー……僕はね、気まずくなるかもしれないけど……、やっぱり伝えたい。

 

 

 アベルは窓の外の月を眺め、その月にアリアの笑顔を見ていた……――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アベル達が寝静まった頃、アリアも【特別室】で眠っていた。

 

 

「ぅ……」

 

 

 ……ベッドの中でアリアは夢を見ている。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 ――場所がどこなのかは定かではない。

 とある部屋の一室でプラチナブロンドのウェーブが掛かった髪に、真っ白な翼を持ち、青く澄んだ瞳、白過ぎる肌の女性が椅子に腰掛け、幼子を膝の上に座らせ抱いている。

 

 

(彼女は天使……? 私に似てる……)

 

 

 アリアは初めて見る夢に目を瞬かせる。

 自分は今、透明人間で彼女の座る椅子の傍に立ち天使を眺めており、幼子を見下ろしていた。

 

 

 その幼子は一歳から二歳といったところだろうか。

 この女性の子なのだろう。母親譲りのプラチナブロンドのおかっぱ頭に白い花飾りがついおり、幼子は女児だと推察された。

 

 今は母である天使に抱かれすやすやと眠っている。背には天使同様、小さな翼が生えていた。

 眠るその子は血色も良く、健やかに成長しているようだ。

 

 不意に幼子が身動ぎすると、母親である天使の身体までもがぐらついた。

 

 

『あっ……』

 

 

 幼子の身体の位置がずれ、座っていた天使の膝から落ちそうになるのを抱え直そうとしたが、彼女は非力なのか天使の力では敵わず幼子が床に落ちてしまいそうになる。

 

 

(あぶないっ!)

 

 

 アリアは思わず手を伸ばす。

 

 

 すると、

 

 

『……っと……。大丈夫……?』

 

 

 優し気な女性の声が聞こえた。

 

 

(あれっ? 今の、私の声……? だけど私じゃない……腕も……)

 

 

 床に落下しそうになった幼子に白く細い手が伸びて、その腕が力強く幼子を抱き上げたのだった。

 

 抱き上げた腕が眠る幼子を抱きしめ、安心させるように背中をトントンと優しく叩きながら身体を左右にゆったり揺らす。

 黒く長い髪と、長いスカートが視界の端に見えた。

 

 どうやら夢の中のアリアは、幼子を抱き上げた女性の中にいるらしい。

 

 

 “うあぁあああん~!”

 

 

 幼子は急に抱き上げられ、びっくりして目を覚ます。

 

 

『起きたのね~……。おお、ヨシヨシ。アリアは良い子ね~……』

 

 

(アリアって……私……!?)

 

 

 黒髪の女性が幼子を大事に抱きしめ、あやす。

 アリアと呼ばれた幼子は、あやされたものの泣き止まなかった。

 

 黒髪の女性があやし続けるが、幼子は「うあぁあああん~!」と機嫌が悪いのか泣きじゃくっている。

 

 

『ジュ……ア、今日はもうここまでにしましょう。顔が真っ青だわ……ゆっくり休んで。アリアならいつも通り私が看ているから』

 

 

(名前……なんて言ったの……? 私……? が煩くてよく聞き取れなかった……)

 

 

 幼子、アリアの泣き声で黒髪の女性の声が遮られ、自分の口が動いたにもかかわらず、天使の名前を聞き取れなかった。

 黒髪の女性が天使に視線を移すと天使の顔色は悪く、ぐったりした様子で今にも倒れそうだ。

 

 

『……はい……、ありがとうございます……。ごめんね……アリア』

 

 

 天使は「お言葉に甘えて……」と椅子からヨロヨロと立ち上がり、すぐ傍のベッドに横になった。

 そして黒髪の女性が幼いアリアを横になった天使の顔元に近付ける。

 

 

『っく、ひっく……まぁま……』

 

『あら、泣き止んだ。ふふ……大丈夫よ、この子、ママのこと大好きだもの。もう泣かないわよね~』

 

 

 幼いアリアが黒髪の女性に抱えられたまま天使に手を伸ばすと、天使は細い腕を伸ばして幼いアリアの手を取った。

 

 

『アリア……。私の愛しい娘…………おばさまの言う事をよく聞くんですよ。っ、ゴホッゴホッ……。いつもご迷惑をお掛けしてすみません……アリアを頼みます』

 

 

 天使は幼いアリアに笑顔を向ける。

 身体が弱いのだろうか、黒髪の女性にアリアの面倒を看てもらっているようだ。

 

 アリアの手を放すと、天使は目を閉じる。

 その顔色は青白く、腕も細く骨が浮いており、眠る彼女には生気が感じられなかった。

 ただ、小さな寝息だけが すぅすぅと聞こえて来るので、辛うじて生きてはいるようだ。

 

 

『……ええ、任せて。また連れて来るわね。アリア、行きましょうか』

 

『ぁう、まぁま……』

 

 

 黒髪の女性は幼いアリアを再び抱き上げ、天使を部屋に残し去って行く。

 幼いアリアは女性の肩越しに、眠る母親を求めるように呼んでいた。

 

 

『……アリア……、また……、来ましょうね。……うっ、うっ……』

 

 

 黒髪の女性は幼いアリアを強く抱きしめる。

 目頭がじわりと痛み、頬に熱い何かが伝った気がした。

 

 

(……お母さん……、は……)

 

 

 天使の居た家を出て、気が付けば黒髪の女性と幼いアリアが遠くに見える。

 

 どこの町なのかは知らないが、複数の建物と、彼女達の行く先には池がありその周りには花々が咲き乱れているのが見えた。

 

 

 それをアリアは遠くから眺めていた。

 いつの間にか黒髪の女性の身体から抜け出ていたのだった。

 

 

 

 

 ――私のお母さんと……、女の人……。

 

 

 

 

 アリアは二人の女性が誰なのかはわからなかったが、懐かしい気がした。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 ――次の日の朝。

 

 

「ぅ……ん……、はぁ……(あれは……夢……?)」

 

 

 アリアが目を覚ましベッドから抜け出して窓の外を見ると、辺りはまだ陽が昇り始めたばかり。

 いつもより早く目が覚めてしまったようだ。

 

 

「……よぉし……! 早くお仕事を終わらせちゃいましょう……!(マザー、今日こそ解って頂きます……!)」

 

 

 アリアはマザーを説得する時間を捻出するため、着替えをサッと済ませて早めに仕事に取り掛かる。

 先ずは、昨日汚してしまったアベルのマントとハンカチを回収して、それから草むしりだ。

 

 昨日はマザーにあれこれと用事を押し付けられたり、上手くはぐらかされたりと逃げられてしまったが、今日はそうは行かない。

 

 自分に与えられた仕事は出来るだけ先に済ませ、マザーに逃げる口実を与えないようにしなければと、アリアは部屋に干していたアベルのマントとハンカチを洗濯ロープから取り外した。

 

 

「……まだ寝ていますよね……」

 

 

 ――アベルさん……。

 

 

 アリアは丁寧に畳んだマントとハンカチをぎゅっと抱きしめる。

 洗濯をしたがアベルの匂いが残っている気がして、アリアは頬が熱くなってしまった。

 

 これを客室に持って行こうとも考えたのだが、今は陽も昇りきっていない早朝。アベルとヘンリーを起こすと悪いと思い、客室の前にカゴを置き、中に置いておくことにした。

 




アリアのお母さんは身体が弱い人だったみたい。
現代でも確かそうだったような……(うろ覚えw)。
そういう母親に縁があるのでしょうねえ。
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