ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

アリアうるさいゾの巻き。

では、本編どうぞっ。



第二十五話 レヌール城で肝試し

『ぎゃーーーー!!!』

 

 

 アリアの絶叫が暗い部屋に響いた。

 

 そのアリアの叫び声と共に、“ピシャン! ゴロゴロ、ピシャンッ!”と城の上空では雷鳴が轟いている。

 レヌール城へと侵入を果たしたアベル達だったが、塔の中へと入った途端、鉄格子が下りて退路を塞がれたのだった。

 

 

「……っ……!」

 

 

 アベルはアリアの悲鳴に驚き、耳を咄嗟に塞ぐ。

 キィィィン……と、耳鳴りがしていた。

 アリアはアベルに抱きついて、ぶるぶると身体を震わせている。

 

 

「……びっくりしたぁ……、今雷近くに落ちたみたい……(けど悲鳴みたいな声も聞こえたような……?)」

 

 

 ビアンカも突然下りて来た鉄格子に一瞬驚いてはいたが、冷静に辺りを見回した。

 

 

「……アリア、大丈夫だよ……?」

 

『っ、……ぅ、うん……。ご、ごめんね……』

 

 

 アベルがアリアの手を強く握ると、アリアの震えが多少治まる。

 

 

「アベル、どうしよう? 閉じ込められちゃったみたい。ここからは出られそうにないわ」

 

 

 ビアンカは固く閉じられた鉄格子を掴んで揺すろうとしているが、びくともしなかった。

 

 

「みたいだね……。先に行くしかなさそうだ……」

 

「そうね……。少し怖い気もするけど……行くしかないわね」

 

 

 アベルが臆することなく柔和な顔で言うので、ビアンカも「うん」と深く頷く。

 そして、部屋の奥へと歩いて行くのだった。

 

 

『……っ、だから二人とも逞し過ぎでしょって……、ぁぁああ……待ってぇ……(心の準備がぁ……!)』

 

 

 アリアはアベルに問答無用で手を引かれ、連れられて行く。

 

 

 

 

 

 

 ――部屋の奥まで行くと、棺が六つ見えて来た。

 暗さに目が慣れて来たのか、部屋の中は思った程暗くなく見通しが利く。

 

 

『不気味……何このお(あつら)え向きな演出……(絶対何かあるよね!?)』

 

 

 つんつん。

 

 アリアは一番手前にある棺を、人差し指で恐る恐る突いてみる。

 

 

「ん……? おあつ……?」

 

 

 アリア、さっきから何言ってるんだろう?

 

 面白いからいいけど……。

 

 

 アリアの呟きにアベルは、“アリアって変なことばっかり言うなぁ”と微笑ましく思いながら彼女の横顔を見ていた。

 

 

「このカンオケ開けてみる?」

 

『ええっ!?』

 

「……何か出たら嫌だわ」

 

「何か出たら、僕が何とかするよ」

 

「…………ありがと」

 

 

 アリアが驚く中で、アベルは繋いでいた手を放すと、ビアンカと共に棺の蓋を開けて中を調べて行く。

 

 

『ぁっ、ち、ちょっと、アベル。……む、無暗に蓋を開けるなんて、死者への冒涜だよ?』

 

 

 アリアは手が離れると、心細くなってしまったのか、アベルのすぐ後ろに寄って来て彼のマントを掴んだ。

 そんなアリアにアベルは首だけアリアに向けて、

 

 

「………………、調べ終わったらたらまた繋いであげるから、そこ掴まってていいよ」

 

 

 そう告げて、優しく微笑んだのだった。

 

 

『っ!!? そ、そんなつもりじゃ……(あぁ……恥ずかしい……。私大人なのにアベルの方がしっかりしてる……)』

 

 

 アリアは恥ずかしさにぽっと頬を赤らめるが、マントから手は放さない。

 そんな中、アベルとビアンカは六つ全部の棺を調べ……。

 

 

「……んー、何にもなかったわね」

 

「そうだね、下に行ってみる?」

 

「そうね」

 

 

 アベル達は棺群を抜けた先の階下へと続く階段へと向かう。

 

 すると、

 

 

『っ、あ、アベルっ……!』

 

「……え?」

 

 

 アリアの声がしたと思ったら、アベルのマントを引くアリアの手の感触が突然途絶えた。

 同時、目の前が真っ暗になり……。

 

 

「きゃあ~~っ!!」

 

 

 ビアンカの悲鳴が部屋に響いたのだった……。

 

 

 

 

 

 

「っ! ビアンカっ! アリアっ!!」

 

 

 アベルは二人の名前を呼んで辺りを手探りするが、傍に居たはずの二人の感触は得られなかった。

 

 次第に闇が薄くなっていき、元の明るさへと戻る。

 そこにビアンカとアリアの姿は無かった。

 

 

「っ……、二人共どこへ……!?」

 

 

 っ、ちょっと待って……。

 これ……、また(・・)だ。

 

 僕は、前にもこんなことが……?

 

 

 アベルは靄が掛かる記憶のようなものに、眉間に皺を寄せ考え込んだ。

 

 

「……っ、二人を捜そう」

 

 

 あの時(・・・)、アリアは居なかったから。

 もしかしたら……。

 

 

 アベルは階段を下り、下の階へと辿り着くと辺りを調べ始める。

 下の部屋には立派な騎士の石像が六体飾られていた。

 

 

「……確か、この石像達のどれか……、っ……どれだっけ……?」

 

 

 アベルは「うーん」と頭を捻り、“また(・・)”から解決方法を探ってみるが、そのまた(・・)とやらは肝心なことは記憶してくれていない。

 

 本当は、また(・・)を繰り返したくはないのだが。

 

 

 

 前にも、ビアンカが消えたことがある気がする……。

 

 

 何度も、何度も。

 

 僕はそれ(・・)を繰り返しているのかな……。

 

 

「……ふぅ……特に何も変わったところはないか……」

 

 

 結局思い出せないので石像を一体一体調べるのだが、その行動すらもまた(・・)と感じてしまう。

 また(・・)は決して便利なものではないなとアベルは思う。

 

 それ(・・)が起きる直前にしか、また(・・)と気付けないし、また(・・)と気付いたら何だかがっかりしてしまうのだ。

 

 

 事前にわかったら、行動も変えられるのに……。

 

 

「不便だなぁ……」

 

 

 アベルは繰り返されているであろうまた(・・)にうんざりしていたのだった。

 

 

 そうして、石像を一体一体調べていくと、その内の一つが一瞬妖しい動きを見せる。

 

 

「っ! 今、動いたっ!?」

 

「見~た~な~っ!!」

 

 

 アベルが目聡く気が付き、背中のブーメランに手を掛けると、動く石像が襲って来たのだった……。

 

 

 

 

 

 

 動く石像との戦いが終わると……――。

 

 

「はぁ、はぁ……。っ、ちょっと危なかったな……(独りだと結構キツイかも……)」

 

 

 アベルは息を切らしながら、足元に崩れた動く石像の残骸を見下ろし、ムシャムシャと薬草を噛み砕く。

 すると、傷付いた身体が回復していった。

 

 残骸は次第に儚く消えていく。

 残ったの70ゴールドと、【まもりの種】。アベルはそれを拾う。

 

 何とか勝利は収めたものの、随分長く戦ったので疲れがどっと押し寄せた。

 

 

「はぁー……」

 

 

 両膝に手をついて、床を見ながら深く息を吐くと顔を上げる。

 

 

「……待ってて、すぐ行くから」

 

 

 顔を上げたアベルの表情はキリッとしていた。

 




アリアさんのポンコツ具合が日に日に酷くなっておりますが、アベルとビアンカがしっかりしているのがホンマ異世界人タフだなぁ、と。

いや、だってね、八歳と六歳で夜中無人のお城に侵入せんやろ……。
廃墟とか怖すぎ。

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読んでいただきありがとうございましたっ!

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