おはようございます。
では、本編どぞっ!
「……っ、アベルっ! 今のは……!?」
「何があったのですか……!?」
眩しい光が突然辺りを包んだものだから、修道院から何があったのかとヘンリー達が慌ててやって来る。
メンバーはヘンリー、マリア、イモシスの三名(イモシスは朝の鐘を鳴らしていた)。
馬車からも見えたのだろう、ピエール達が「主殿!」「主さまっ!」「ダーリン!!」とそれぞれ心配してアベル達を窺っていた。
皆危険があるかもしれないと、遠巻きである。
「あ……、えと……僕は大丈夫……」
ちらっと、アベルはアリアを見る。
彼女は放心状態で未だぼーっとしていた。
「あ、アリア……? だ、大丈夫かい……?(今のは何だったんだ……?)」
「…………ぁ……」
「…………ん?」
「…………あ、……べ、……る……」
アリアは何処か焦点の合わない瞳でアベルの名を紡ぐ。
「うん、……大丈夫……? びっくりしたね。今の何だったんだろう……」
「…………アベル」
アベルがアリアの顔の前で手を振ると、アリアはまたアベルの名を呟く。
「ん……? アベル……?(呼び捨て……?)」
「アベル」
急に呼び捨てにされアベルは首を傾げるが、アリアは今度はアベルと目を合わせ告げた。
アリアのアメジストに涙が滲む。
「……う、ん?(あ、綺麗な瞳……、涙が……?)」
「っ、アベルっ!! …………っ!!」
首を傾げるアベルにアリアは手を伸ばし、急に抱き着いた。
「えっ……ぁっ」
ドサッ!!
アリアの勢いに押され、アベルは彼女に抱きしめられたまま、後ろに尻餅を搗く。
「っ……ア、アリア……サン……!?(みんなの前なんだけど……)」
――ちょっと苦しいけど……、お、おっぱいが……密着して……!!
アリアに抱きしめられ、アベルの頬が真っ赤に染まる。
柔らかい胸に彼女の香りで下半身が反応してしまいそうになった。
「アベルっ、アベルっ、アベルっ!!」
アリアは何度もアベルの名を呼び、その声は泣き叫んでいるようにも聞こえる。
「…………っ?? ……ひょ、ひょっとして…………!?」
アベルは目を見開き自分に抱き着くアリアの腕を掴むと、彼女を無理やりに剥がす。
「ぁっ……痛っ! こらっ、女の子の腕を乱暴に掴んじゃダメだよ。も~、アベルは女の子の扱い 時々乱暴なんだから……」
アリアは腕を掴まれたまま苦々しく笑う。
アベルは彼女のその表情に既視感を覚えた。
「あ…………、……うそ……」
「ふふっ、ウソって なあに? ……って……あはっ、手は離さないんだ……?」
アベルが信じられないといった顔で、何度も瞬きを繰り返す。
アリアはそれを見て、満面の笑みを浮かべていた。
「アリア……。記憶が……」
彼女の表情にアベルは確信し、掴んだ腕を解放する。
――アリアの記憶が……戻った……!!
「ふふふ……おはよう、アベル。今日もいいお天気だね」
“おはよう、アベル”
アリアは昔のように優し気な笑みで呑気に空を見上げた。
「っ、寝過ぎだよ……」
「寝る子は育つっていうでしょ? ほら、ご挨拶は?」
アベルの指摘にアリアは即返答する。
「え? あ、さっき言ったよ……?」
「いいからっ」
「お……、おはよう?」
アリアに急に子ども扱いされ面食らうが、アベルは渋々挨拶をしたのだった。
「……おはよう、アベル。起こしてくれてありがとう。さすがは主人公ね! カッコイイよっ!」
「ん? 主人公って何……? …………(か、格好いいんだ……)」
改めてアリアが挨拶をして褒めると、アベルは褒められて嬉しかったらしく、頭の後ろを掻いた。
そして、
「ああっアベルっ、やっぱりアベルが起こしてくれたのねっ! ありがとうっ!!」
アリアはわざとらしく大声でお礼を告げると、再びアベルに抱き着く。
「っっ!? ぁふんっ……」
――アリア、柔らかい……好い匂い!!
アベルはアリアの感触に性的な興奮を覚えてしまうのだが、それだけじゃない安心感と、懐かしさも同時に感じていた。
そうしている内にアリアがアベルの耳元でこっそり囁く。
「……ね、アベル。……私のこと、好きなの……?」
アリアの吐息が耳に触れ、アベルの身体がピクッと揺れた。
「えっ!!??」
――何で知ってるの……!?
アベルは目を見開く。
「……ふふっ、でもダメよ。あなたは主人公だもの……」
――アベル、起こしてくれて本当にありがとね……。
ぎゅぅううううっと、アリアはアベルを強く抱きしめる。
そして、彼女は気が済むまでアベルを抱きしめてから彼を解放したのだった。
「ぁ……、っ、べ、別にアリアの事なんて全然好きじゃないけどっ!?」
――っ、柔らかかった……。
解放されたアベルは顔を真っ赤にしながら、アリアから目を逸らす。
「あら……残念。アベル格好良くなったから、ちょっといいかなって思ったんだけどな~?」
「本当っ!?」
アリアが顎に人差し指を当て、首を傾げて口角を上げるとアベルが振り向いて食い気味に身体を近付けた。
「ん……?」
「あっ、いや、何でもないっ!! とにかく、僕はアリアの事なんか なんとも思ってないんだからね!」
「…………………………ふふっ、そっか!」
アベルが昔のように無邪気な態度で否定し再び視線を逸らす様子を、アリアは目を細め穏やかに見つめる。
すると……。
「アリアっ!」
様子を見ていたヘンリーが走ってやって来る。
マリアとイモシスはアリアの変わり様に驚いた様子で、茫然としていた。
「……ん? あ、ヘンリー……サン……」
「はぁっ、はぁっ……記憶、戻ったのか……!?」
「……ええ、すっかり」
「よかったなぁ!!」
ヘンリーは涙目でアリアに抱きつこうと腕を広げる。
ヘンリーもハグがしたいらしい。
アベルがヘンリーとアリアの間に片手を差し入れ制止しようとしていた。
ところが……、
「…………えと……、ヘンリーサン」
アリアはヘンリーを見上げ、無反応で首を傾げる。
「ん? ヘンリーサン?(敬称付き……?)」
――何だ何だ? イヤな予感がす、る……?
アリアの反応にヘンリーは広げた腕もそのままに、固まってしまった。
「あ~……、えっとぉ……。ヘンリーサン、昔、私と友達でしたっけ……?」
「……は?」
気まずそうにアリアが後れ毛を耳に掛けながら話すとヘンリーの涙が引っ込む。
……記憶は戻ったはずなのに、ヘンリーとのことは憶えていないという……。
ヘンリーの顔がショックで徐々に青くなっていった。
アリアが帰って来ましたよ、と。
でもヘンリー君のこと憶えてないwww