ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

逃げ足の速いマザー。

では、本編どぞ。



第二百六十二話 マザーを追って

 

 

 

 

 

 修道院で朝食を済ませ、アリアはアベルの手を引いてマザーを捉まえに食堂を出ようと走り出した。

 

 

「アリアさんっ! はしたないですよ! 記憶が戻ったのですからより一層淑女としての立ち居振る舞いを心掛けてですね。前にもお教えしたように、淑女とは……」

 

 

 走るアリアにポッシスが説教を始めようとするが、アリアは立ち止まり片手をポッシスの前に突き出す。

 

 

「っ、そんなこと言っている場合じゃないんです! マザーに逃げられたら困るっ! それに私っ、前は言えなかったんですけど、別に淑女を目指してはいないんで!!」

 

「な、何を……!? 私があなたを立派な淑女にして差し上げ……」

 

「淑女やめます! 私にはムリッ! 向いていないんですっ!!」

 

 

 口をぱくぱくさせるポッシスにアリアは畳み掛け、きっぱりと言い放つ。

 “プッ!”とアリアの後ろでアベルの吹き出す音が聞こえた。

 

 

「アリアさんっ!!?? 貴女いったいどうしてしまったの……!?」

 

「どうしたもこうしたも……これが、元々の私なのっ!! 詳細はヘンリー君に聞いて下さい! ヘンリー君お願いね! アベルっ、行こっ!!」

 

 

 ポッシスが目を剥いて戸惑いの顔を浮かべるが、アリアは躊躇(ためら)うことなくはっきり告げると走り出した。

 アベルは笑いを堪えて手を引かれ連れて行かれる。

 

 アベル達三人よりも先に修道院に戻ったマリアとイモシスから、ざっくりとアリアの記憶が戻ったことは聞いていたが、性格がまるっきり変わっているとは聞いておらず、ポッシスは困惑していた。

 

 ヘンリーが茫然とするポッシスに「あ~……えっと、アリアさん記憶が戻って……。あれが元々の彼女で……」と説明を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 タッタッタッタッ、

 

 

 アリアはアベルと共にマザーを捜し、修道院の中を走る。

 いつもの祭壇にいるかと思ったらいなかったのだ。

 

 

「……はぁ、はぁ……いない。この時間はいつもここに居るのに……」

 

 

 祭壇までやって来たアリアは息を切らし、アベルの手を放して腕組みをする。

 ムムム……。と眉間に皺を寄せ難しい顔をしていた。

 

 

「プププッ! ……ぷはっ! さっきのっ、淑女やめますって……アハハッ!!(その顔もっ!!)」

 

 

 アベルは堪らず笑い出してしまった。

 今朝までのアリアとはまるで違うが、昔の彼女につい目元が緩む。

 

 

「こ、こらっ、笑わないでよ……!!」

 

 

 ――さっきまでの私は私じゃないんだからねっ……!

 

 

 不意にアリアがアベルの方へ顔を向けると、ばつが悪そうに笑った。

 

 

「っ、あ、うん……!」

 

 

 ――アリアは面白いなぁ……!

 

 

 アベルはアリアに手を引かれながらマザーを捜して走っていた。

 昔は自分が手を引いていたのに、手を引かれる側になるとは……。

 

 

 ――何だか擽ったいな。

 

 

 アリアの細くて小さい手をアベルは何となく照れ臭く眺めていた。

 

 

「あっ! マザー!!」

 

 

 アリアは吹き抜けの講堂から見える通路の先、屋上から下りて来たマザーが二階の自習室(アベルが意識を取り戻した日にマリアとヨムシスが本を読んでいた部屋)に入って行こうとするのを見つけると、大きな声で彼女を呼んだ。

 マザーはアリアの一声で、ビクッと肩を揺らしチラッと二人を見やるや否や、部屋に入って行く。

 

 

「アベル! 二階の自習室!(やっぱりわざと逃げてるっ!)」

 

「う、うん!」

 

 

 アリアが二階の自習室を指し示すと、二人は再び走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……マザー! 失礼しますっ!」

 

「…………失礼します(アリアって体力無いんだなぁ……)」

 

 

 自習室にやって来ると、アリアは扉をノックしてから部屋に入る。

 アベルは息を切らしているアリアが少しセクシーだな、なんて彼女の横顔を見て、薄っすら額に浮いた汗にそう思ってしまった。

 

 

「ンナーーーーッ!!??」

 

「っ!?」

 

 

 部屋に入るなりアリアが大きな声で叫び頭を抱える。部屋はもぬけの殻、誰も居なかったのだ。

 アベルは急に叫ぶアリアに一瞬驚いたがその後で吹き出していた。

 

 

「っ、何で居ないの……!?」

 

「くくくっ……、あ、あー……多分そこの階段から下りたんじゃないかなぁ……?」

 

 

 狼狽(うろた)えるアリアにアベルは奥にある一階の寝室に繋がる階段を指す。

 

 

「っ! 絶対捉まえなきゃ! アベルっ」

 

「……はいはい」

 

 

 アベルは興奮気味に階段を指差すアリアに手を差し出した。

 

 

「ん?」

 

「階段踏み外すと危ないから」

 

 

 首を傾げるアリアにアベルも首を傾げ彼女を窺う。

 するとアリアは目を瞬かせ胸の前で両手を左右に振り振り、ちょっぴり恥ずかしそうに遠慮する。

 

 

「っ、大丈夫だよっ! 私そんなドジっ子じゃないよ!?」

 

「そう? 大人になってから よく転んでた気がしたけど……」

 

「あれはほらっ、多分、翼が無いから重心がズレてバランス崩しただけ! その内慣れるから平気よっ(これでも転ばなくなった方なんだよね~)」

 

 

 アベルの不思議そうな顔にアリアはにこっとはにかんだ。

 

 

「え……?(翼が無いから……?)」

 

「っ、何でもない! ……じゃあ、アベルのお言葉に甘えさせてもらうねっ」

 

 

 アリアは笑顔を崩さないままアベルの手を取り繋ぐ。

 これまでアベルが翼の事を気にし、責任を感じていたようなので咄嗟に話題を変えたアリアだった。

 

 

「あ、うん。僕が先に下りるよ」

 

「うん」

 

 

 アベルはアリアの手を引いてゆっくりと階段を下りて行く。

 

 

「……はい、到着」

 

 

 一階に下りるとアベルは手を放す。

 本当はもう少し繋いでいたかったが、今のアリアは今朝までの彼女とは違い手を繋ぐことに何の抵抗も無さそうなので、少し悔しくて放したのだった。

 

 

「……ありがと。アベルって、優しいよね」

 

 

 ――さすが主人公さま……!! 大人になったら めっちゃイケメンになっちゃてるし……いい旦那さんになりそうだなぁ……。

 

 

 ビアンカちゃんとフローラさん、どっちと結婚するんだろうか……。そしてそれはいつ……?

 

 ……アリアは気になってしまう。

 

 

 ――どちらを選んだとしても、きっと奥さんに優しいんだろうな……。いいなぁ……。

 

 

 少し胸がチクッと痛んだ気がしたが、アリアは笑顔を崩さなかった。

 

 

「そうかなぁ……?」

 

 

 ――君にしか優しくしてないと思うんだけど……。

 

 

 アベルは頭の後ろを掻く。

 

 

「そんだけ優しいと、モテるよねぇ~」

 

「そうかなぁ……」

 

 

 アリアがニヤニヤしながら訊ねると、アベルは首を傾げてとぼけてみせた。

 

 

「……っと、そんなこと言っている場合じゃなかった!」

 

「ああ、行こうか」

 




さあ、追いかけっこが始まりました!
BGMはドラクエ外ですが、オッフェンバック/喜歌劇「天国と地獄よりカンカン」辺りでお願いします。

運動会シーズンですね!
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