ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

マザー捉まえた!

では、本編どぞ~。



第二百六十三話 説得開始

 

 二人は寝室を後にし、講堂に向かったがマザーの姿は見つからなかった。

 代わりにヘンリーとマリアが講堂にやって来ている。

 

 

 

***

 

 

「マリアはオレが守るぜ! できることなら一生ずっと……」

 

「えっ? ヘンリーさま、何かおっしゃいましたか??」

 

「な、なんでもないぜ。あ、あはは……」

 

 

 ――マリア……。やっぱりキミは……っ、いやっ! オレは諦めないぜ!

 

 

***

 

 

 

 

「ヘンリー!」

 

 

 ヘンリーとマリアが何やら話をしているところへアベルが声を掛ける。

 

 

「や、やあ、マザーは捉まったかい?」

 

 

 アベルが声を掛けると、ヘンリーはマリアと一緒に楽しく話をしていたらしく、機嫌が良さそうだった。

 

 

「それが、逃げられてしまって……」

 

 

 アリアは眉をハの字に下げる。

 

 

「まあ、それは困りましたわね………………、あ」

 

 

 不意にマリアの視線が二階に留まる。

 アリアもマリアの視線の先を辿った。

 その先ではマザーが客室から出て、吹き抜けの二階通路をそーっと歩いているではないか。

 

 

「……ん? ……あっ! マザー! そこに居てくださいっ、ぁっ、行っちゃう! アベルっ!」

 

「ああ! 急いで追い掛けよう!」

 

 

 アリアが走り出そうとすると、アベルは彼女の手を引いて共に走って行った。

 

 

「……ぁ……」

 

 

 アベルとアリアが手を取り合って二階へと走って行く様子に、マリアが小さく声を発する。

 

 

「……マリア……?」

 

「……アベルさんは いい旦那さまに なられると思います。……あっ、もちろんヘンリーさまもですわ」

 

 

 ヘンリーの不安そうな顔に マリアは目を細めていた。

 

 

「そ、そんな取ってつけたように言ってくれなくても……」

 

 

 マリアの笑顔が少し淋しそうに見えたのは気の所為かなと、ヘンリーは憂える。

 

 

 ――キミはオレが幸せにするから、いつも笑っていてくれないか?

 

 

 二階の通路を走って行くアベルとアリアを見守るマリアに、ヘンリーは優しい笑みを向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……。マザー……足早い……!」

 

 

 二階の通路を走っているとマザーが祭壇に戻ったのが見えたので、そちらへと向かうが、彼女はアベル達に気付くと一階へと下りてしまう。

 祭壇までやってきたアベル達は一旦立ち止まることにした。

 

 

「……はぁ……、大分息が上がってるみたいだけど、アリア大丈夫かい?」

 

「うん……、はぁ、はぁ……。私体力と力が絶望的に低いのよね……」

 

 

 アベルは一息しただけで呼吸を整えると、息苦しそうなアリアを気遣う。

 アリアは祭壇に伏せるようにして呼吸を整えていた。

 

 

「その分魔力が高いから仕方ないよ」

 

「はぁ、はぁ……そう言ってもらえると うれしいなっ」

 

 

 アベルの言葉に伏せていた顔を上げ、アリアは彼を見上げ花が綻ぶような笑みを浮かべる。

 汗が頬を伝っていった。

 その様子が酷く艶めかしく見えて……。

 

 

「……っ……(ゴクリ……)」

 

 

 アベルは息を呑んだ。

 

 

「ふぅ……。このまま黙って出て行きたくないんだけどな……」

 

「……アリア……」

 

「……だって、恩知らずでしょ? 諦めたらそこで試合終了ってケンタッキーのおじさんが言ってたから、もうちょっと頑張ってみる。付き合わせちゃって ごめんね」

 

 

 手を絡めて伸びをしながらアリアはアベルに告げる。

 

 

「ケンタッキーのおじさんて何……」

 

「ん? あっ、んふふふ~っ! ケンタのおじさんは、おいしいフライドチキンを作る人! あれ? でも何か違ったかも……?? ……ま、いいや。ここで待ってたら戻って来るでしょ」

 

 

 アベルのツッコミにアリアが答えると、彼女は祭壇に頬杖をつき講堂を見渡す。

 ……マザーの気配はなかった。

 

 何処へ行ったというのか。

 

 

「……ふっ。アリアって明るいよね」

 

「……そう?」

 

「……そういうの、いいと思う。昔、そういう所に凄く救われたんだ」

 

 

 アベルは祭壇を挟みアリアの向かい側に膝をつくと、彼女と同じように頬杖をついて顔を合せる。

 

 

「…………、褒めてくれてありがとね。何にもお返し出来ないけど……」

 

 

 アリアはアベルと目が合うとスッと立ち上がって祭壇を離れてしまった。

 さっきまで柔和な顔で微笑んでいたのに何故なのだろう、悲しそうに見える。

 

 

「お返しなんて……! 僕は……」

 

 

 ――アリア、やっぱり僕は君のことが……!

 

 

 記憶が戻ろうと戻るまいと関係なく、アベルはどちらのアリアにも惹かれているのだ。

 

 

「……はぁ~あ、マザーどこに行っちゃったんだろう……」

 

 

 アベルが続きを話そうとするが、アリアはアベルの話を無視して階段を下りて行ってしまう。

 

 

「ぁ……っ……、アリアっ、は、話が……!」

 

「……んー? ね、アベル。ヘンリー君にもう一回訊いてみよっ?」

 

「っ……あ、ああ……」

 

 

 アリアを呼び止めてはみたが、彼女がヘンリーを指差して「行こう」と誘うので、アベルは了承するしかなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ……一周して来ちまったな」

 

 

 講堂の席に着いて話すヘンリーとマリアの元に戻って来ると、ヘンリーは“お疲れさん”と笑っていた。

 

 

「はぁ……本当だよ、もう……。どうなってるのよってね……」

 

 

 アリアはヘンリー達の席から通路を挟んだ横並びの席に腰掛け、頭を抱える。

 アベルはアリアの傍で見守っていた。

 

 

「アリアさん、そんなに落ち込まなくても大丈夫ですわ」

 

「へ……?」

 

「さっき、マザーは特別室に入られましたから」

 

「! ……マリアさんっ! ありがとう!」

 

 

 マリアにマザーが何処に要るのか教えてもらうと、アリアはアベルと共に【特別室】に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっとだぁ……」

 

 

 【特別室】に入るとアベルには扉の前に立ってもらい、逃げられないように見張っててもらう。

 中に居たマザーは本棚の前で本を探していたのだが、アリアがやって来た事に気付くと振り返る。

 

 

「…………、アリアさん…………」

 

「マザー、私」

 

 

 アリアがマザーに近付くと、彼女は踵を返し走り出そうと構えを取った。

 

 

「わ、(わたくし)用事を思い出し……」

 

「マザー、今日までお世話になりました。昨日もお話しましたが、旅を続けたいと思います。ですからどうか、旅に出ることをお許し下さい」

 

 

 逃げようとするマザーにはっきりと宣言し、アリアは頭を下げる。

 それに対しマザーは複雑な顔で手を組み、頭を垂れるアリアを見下ろした。

 

 

「……アリアさん、あなたは呪われているのですよ? ここに居れば聖なるチカラでその呪いも悪さをすることが出来ないというのに……」

 

「呪いを解くためにも、各地を回りたいのです」

 

 

 マザーはアリアの呪いが今までにないものの為、得体が知れず心配していたのだが、アリアはだからこそだと食い下がっていた。

 

 

「……解けなかったら……?」

 

「それは……」

 

 

 解けなかったら……?

 例え話にアリアはマザーから視線を逸らす。

 

 

 ――解けなかったら解けなかったで……それ程困ってないんだけどな……。なんて言ったらマザー怒るんだよね……。

 

 

 寿命が縮まるとか そういうことならまだしも、時々体力が減るとか魔力が減るぐらい、アリアはもう慣れてしまっているので気にしていないのだ。

 

 それを初めてオラクルベリーに出掛ける際に伝えたら「何てことを言うのです! 自分のことを大事にしなさい!」と泣かれてしまった過去がある。

 

 

「ここなら、あなたの面倒を一生看て差し上げられますわ。外には魔物が多いですし、最近ではその魔物も凶悪さを増していると聞きます。たとえ結婚できなくても安心でしょう?」

 

「……いや、私別に結婚は望んでな……」

 

 

 マザーはアリアの肩に手を置き説得してくるが、アリアはアリアで何とか言い返そうとする。

 

 

 ……だが、マザーの方が一枚上手だった。

 

 

「あなたは丁度適齢期……。きついことを言うかもしれないけれど、身体に傷……それに、呪われている人を嫁にしようと思う人はいないと思うわ。呪いが子に伝播したら困るもの。女性が不幸になるのを黙って見ているわけにはいきません。……私はあなたのためを思って……うっ、うっ……」

 

 

 マザーは幾人もの問題を抱えた女性を見て来たのだろう、終には泣き落としに掛かって来た。

 

 

「…………ぅ、それは……きっつ……ぃ、すね……(まぁ、結婚しないからいいんだけど……)」

 

 

 マザーの力説にアリアはボソッと呟く。

 

 

 ――いつも痛い所を突いて来るから言い包められちゃうんだよね……。

 

 

 自分は特に結婚願望が強い方ではないが、前世では世間一般の適齢期(・・・)と呼ばれる時期に結婚出来なかった。

 

 そして、今世でも呪いの所為で出来ないという……。

 もし運良く結婚出来たとしても、呪いが夫婦間の諍いに発展しないとも限らない。

 問題が女にあるのなら、女は責められ虐げられることもあるかもしれない。

 そうなれば最終的には別離することだってあるわけだ。

 

 アリアはマザーから“一生独り身確定!”というお墨付きを頂いてしまったのだ。

 

 こんなことならデールの求婚を受けていれば……という話なのだが、ハーレムのような場所には入りたくなかったわけで。

 それにはマザーも同意していて……、……ままならないものである。

 

 

「ううっ……アベルはお母様を捜す旅なのでしょう? アリアさんがいたら足手纏いにならないかしら?」

 

「えっと……」

 

 

 マザーの話にアリアはどう言い返そうかと言葉を探した。

 

 

 と。

 

 

『っ、それはないですっ!!』

 

 

 不意に扉の前に居るアベルが大きな声を上げる。

 

 

「まあ……、そうなのですか……?」

 

「……っ、ちょ、ちょっとアベルを連れて来ますね」

 

 

 アベルの大きな声に面食らい、マザーが瞳を瞬かせるとアリアはアベルを呼びに扉へと向かうのだった。

 




マザーはアリアの事を本気で心配しているようです。
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