責任は取れるの?
お、大人やで……?
では、本編いってみましょう。
「……アリア、大丈夫?」
「うん。ね、アベル、協力して欲しいんだけど、いいかな?」
アベルの元へとアリアがやって来ると、二人はコソコソと話し始める。
「ん? ああ、もちろん。何をすればいい?」
「これから私が言うことに、全部“はい”って話を合わせてくれればいいから、お願い」
アリアは上目遣いでアベルを見上げる。
彼女は少し照れたように頬を赤く染めていた。
「……? わかった」
――何で、赤くなってるんだ……!?
アベルが意味を理解しないまま頷くと、アリアは手を繋いで来る。
「……じゃ、行こ……?」
「ん、うん……」
――アリアの手、気持ちいいな……。
自分よりも小さく温かな手にアベルの口角が自然と上がってしまった。
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「……アベル、アリアさんのこと……連れ出すなら責任は取れるのでしょうね?」
アベルをマザーの元へ連れて行くと、アリアは手を放す。
マザーが不機嫌そうに訊ねて来た。
「あ、はい。僕も旅をしていますし、彼女の助けになれると思っ……」
「いいえ、そうではありません」
「へ……?」
「アリアさんと一緒になるつもりは あるのかとお訊きしたのです」
「え」
――どういうこと……?
マザーの話にアベルは目を見開く。
「アリアさんは修道女ではありませんが、私達修道院の仲間。ここから連れ出すなら、きちんとお約束して頂かなければ彼女をお渡し出来ませんわ」
「マザー! 私、今は無理だけど、
ぎゅっ!
アリアはアベルの腕を抱きしめ、頬を寄せる。
(っ、何だって!?!?)
アベルは自分の腕を抱きしめるアリアを見下ろした。
腕を柔らかく圧迫してくるのと同時、アリアの甘い香りがふわっと香ってくる。
――ああっ……。この感触…………スキっ!! 筋肉質なキャシーと全然違うじゃないか!
話の内容はよくわからないが、アリアの柔らかな感触にアベルは翻弄されてしまった。
『……アベル、話合わせといて……!』
アリアがコソコソと呟いてアベルを見上げて来る。
『…………ふぇ……、ぁ、ぅん……?』
アベルは夢見心地で何度も首を縦に下ろしていた。
「……アベル、それは本当ですか?」
「……ふぇ……? あっ、はい。ほ、本当です。僕はアリアさんを愛しているので結婚します……!」
マザーに問われ、アベルはハッとして肯定する。
どさくさ紛れに想いも吐露しておいた。
「ブッ!! あ、愛って……(そこまで乗ってくれなくてもいいのにっ!!)」
アベルの言葉にアリアは思わず吹き出してしまう。
「ぶっ……?」
アリアの吹き出す様子にマザーの眉がピクリと動く。
そして、懐疑的な視線を二人に送った。
「あっ、いえ……。私もアベルのことを……あ……、あ、あぃ……(何でこんなこと……)」
アリアはどうしたものかと チラッとアベルを見上げる。
と、
(……アリア……大好きだ……)
見上げた先のアベルは優しい瞳でアリアを見下ろしていた。
(アベルは演技が上手ね……! こうなったら私だって……!)
「っ、愛してるからっ……!!」
アリアは顔を真っ赤にして叫んだ。
「それ、本当……?」
――顔を真っ赤にして……可愛い……!! やっぱり僕を意識してくれてたんじゃないか……!
アベルはアリアに訊ねる。
「っ、本当!(ウソだよっ!)」
――アベル、これ演技だよね!?
アリアは優しい瞳で見下ろしてくるアベルに何度も眉をピクピクさせて最終的には目を細めて微笑んだ。
アリアの返事にアベルの顔が綻んでいく。
「アリア……っ!!(僕達やっぱり両想いだったんじゃないか……!!)」
「わっ……!?」
アベルは感極まってマザーの前にも関わらず、アリアを抱きしめる。
アリアはアベルの腕に包まれ覆い隠されてしまっていた。
「……まあ……、二人ともいつの間に……。そんなに想い合っているのなら止めませんわ。アリアさん、お式には呼んで下さるわよね?」
瞳をぱちぱち。マザーが口元に手を当てあっさりと修道院を出ることを許可してくれる。
「っ、アベル、放し……っ、ぁっ、えと、大分先になると思いますが……(これは演技過剰じゃない……!?)」
アリアはアベルが放してくれないため、抱きしめられたまま話を続けることにした。
「ええ、ええ。いつでもいいのよ。あなた達が仲良くやっているならそれで……! アリアさん、よかったわね。アベルはきっといい夫となるでしょう」
「はいっ、いい夫になれるよう努力します!」
「っ……(もう、演技はいいってば……)」
アリアはアベルの体温を感じながら、瞳を伏せる。
――アベル、あなたの花嫁は決まってるんだから……私はアベルのお嫁さんには なれないんだよ……、だって私は……。
……ヒロインじゃないから。
抱きしめられたアベルの体温が高すぎて、アリアは早く離れたいと思った。
それからアリアの気持ちとは裏腹、マザーは安堵したのか嬉しそうに、
「ここを出る時は教えて下さいね。ふ~……、これで安心してお勤めが出来ますわね……」
ふ~ヤレヤレと薄っすら笑みを浮かべて【特別室】を出て行ってしまった。
マザーが出て行くと扉が静かに閉じられ、部屋には二人だけが残される。
「………………(アリア……)」
マザーが出て行ってもアベルはアリアを離さず、ただただ強く抱きしめていた。
「…………っ、アベル」
「……アリア……さっきのは……」
アリアの腕がアベルの胸を押して来る。
アベルはまだ放したくなくて そのままにしていた。
――まだ早いけど、何れはそうなっても……いいよね……?
“さっきのは演技じゃないんだよ”、アベルはアリアにそう伝えようとするのだが。
「…………アベル放して」
「え……? あ、うん」
アリアの口から出た声が何だか普段より冷たく聞こえ、アベルはアリアを解放する。
「…………ふふっ、ありがと、助かっちゃった! アベルって演技上手だねっ! さっすが~!」
アリアはアベルを見上げて満面の笑みを浮かべた。
「っ……さっきのは演技じゃ」
「すぐ出掛ける準備するから、アベルも準備して待ってて?」
アリアはアベルの言葉を遮り、手を引いて扉まで連れて行くと【特別室】から彼を追い出したのだった。
このくっついたり離れたり感……。
モヤりますかね……?