ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

266 / 822
いつもありがとうございます、はすみくです。

さて、マザーに挨拶したら行きましょうね。

では、本編どぞ。



第二百六十五話 再出発

 

 

 

 

 

「え……?(な、何で……?)」

 

 

 アベルは急に追い出され、閉じられた扉を見つめる。

 

 

 ――僕、何か悪い事したっけ……??

 

 

 アリアの態度に違和感を感じ不安になってしまった。

 

 

 そんなところに不意にポンッ! と。

 アベルは背後から肩を叩かれる。

 

 

「……よっ、アベル。アリアはどうなった?」

 

 

 ヘンリーだ。

 アベルが【特別室】から出て来たのを見てやって来ていたのだ。

 

 

「あっ、うん、一緒に行けるようになったよ」

 

「そっか! 良かったな!」

 

 

 アベルの返事にヘンリーは目を細め、喜んでくれる。

 

 

「あ、ああ……。そうなんだけど……」

 

「ん……? どした? 何かあったのか?」

 

「あ、いや……、何でもない……」

 

 

 アベルはヘンリーに相談しようかと思ったが、直ぐ後ろにマリアも居たため止めておいた。

 

 

「アリアがすぐ準備するから待っててくれって」

 

「そっか。んじゃ、アリアが来れば出発ってことだな。それならオレとマリアは先に馬車で待ってるよ。な、マリア?」

 

「そうですわね。外でお待ちしていますわ」

 

「ああ、わかったよ。悪いね」

 

 

 アベルが頷くと、ヘンリーはマリアの荷物を片手に外扉へと向かった。

 

 マリアが「ヘンリーさまっ! 自分で持ちますわ!」とマリアの荷物を運ぶヘンリーを追い掛けて行く。

 ヘンリーは「いいから、いいから」とマリアに笑顔を向けると、彼女は恐縮しつつも笑顔を彼に向けていた。

 

 何だかいい雰囲気である。

 

 

「……お似合いだな……」

 

 

 ――僕もアリアとあんな風に歩けたら いいのに……。

 

 

 アベルは二人の背を羨ましいと思いながら眺めていた。

 

 

「いやっ! 僕だってこれからあんな風に歩けるハズ……!!」

 

 

 ――記憶が戻ったんだ。昔のように町を歩けるよね……!?

 

 

 閉じられた【特別室】の扉の前でアベルはアリアが出て来るのを待つ。

 さっき感じた違和感は気になる所だが……。

 

 

 ――アリアは僕を“愛してる”って言ってくれたんだ、彼女を信じないと。

 

 

 演技をお願いされただけということも忘れ、アベルは舞い上がったままである。

 

 

「愛してる……か……」

 

 

 ――言ってしまった……、我ながら思い切ったな……。

 

 

 マザーに“アリアと結婚します”宣言をしたことに、今更ながら恥ずかしさを覚え、頬が熱くなる。

 アリアに演技じゃないと早く伝えたいが、さっき遮られた気がしてアベルは、そこだけが気になってしまっていた。

 

 そうしてアリアを待っていると……。

 

 

 カチャ、と。

 扉が小さな音を立てて開く。

 

 

「お待たせ。マザーに挨拶してから行こっ」

 

「あ……、……うん……(靴下……穿いたんだ、似合う……)」

 

 

 【特別室】から出て来たアリアは旅の間来ていた服装だったが、生足ではなく、二―ソックスを穿いていた。

 記憶が戻ったアリア曰く、生足はさすがに恥ずかしかったらしい。

 二―ソックスでも充分恥ずかしいと思われるのだが、長旅に耐えられそうな服は他に持ち合わせていない為、致し方なし。

 

 アリアはそのままマザーの居る祭壇の方へと歩いて行ってしまう。

 

 

「アリアっ」

 

 

 アベルは祭壇に向かうアリアの手を取り、彼女を呼び止めた。

 

 

「……ん?」

 

「……マザーの前はこうしてようよ」

 

 

 アリアの手に自分の指を絡め、アベルは手を繋ぐ。

 

 

「っ……、そ、そうね。ここを出るまではしょうがないよね」

 

 

 絡めとられた手を見下ろし、アリアは一瞬声を詰まらせ、直ぐに笑顔で頷いた。

 

 

「………………照れてる?」

 

「…………、…………別に? 演技だもの、何ともないよ?」

 

 

 アベルが優しい瞳でアリアを見るが、アリアはスッと一瞬目を逸らしてからにこにこと微笑んでみせる。

 

 

「…………そう……なんだ……(そっか……、全部演技だったっけ……)」

 

 

 アリアの瞳が一瞬冷たくなった気がして、アベルの胸が痛む。

 と、さっきの出来事が自分の気持ち以外は 全て演技だったことを思い出した。

 

 

 ――アリア……? 何だか急に冷たくなったような……? 気の所為か……?

 

 

 彼女の態度の変化がどうしてなのかはわからないが、手を振り解くことはしなかったので、アベルとアリアは そのままマザーの待つ祭壇へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くのですね……?」

 

「はい」

 

 

 祭壇でマザーに問われ、アリアは静かに頷く。

 

 

「今後もし、近くに来ることがあったなら必ず顔を出すのですよ?」

 

「はい、マザー……。見ず知らずの私の面倒を十年もの間、看て下さりありがとうございました。このご恩は一生忘れません……」

 

 

 アリアは深く深く頭を下げた。

 マザーはそんな彼女の肩に触れる。

 

 

「ああ、アリア! こちらへ。よく顔を見せて頂戴」

 

「はい、マザー……」

 

 

 マザーに呼ばれると、アリアはアベルから手を放してマザーの傍に寄った。

 すると、マザーはアリアを抱きしめ、包み込む。

 マザーの瞳には涙が光っていた。

 

 

「……怪我などせずに元気でやるのですよ。そして、アベルとお幸せに……、辛く長い旅でも二人がいつも笑顔で居られるのならば、それが一番の幸せなのでしょう」

 

「は、はぃ……」

 

 

 ――私はアベルと結婚はしないのだけど……。

 

 

 マザーの言葉にとりあえず、アリアは頷いておく。

 

 

「……アベル、アリアさんを宜しく頼むわね。彼女の呪いを解くのは並大抵のことではないでしょう。もし彼女を泣かせたら、この韋駄天のマリアが黙っていませんよ? 何処にでも飛んで行きますからね」

 

「っ、い、韋駄天のマリア……ですか??」

 

 

 ――どゆこと?

 

 

 アベルはマザーの話に面食らう。

 マザーがアリアを自分の腕から解放して笑った。

 

 

「フフフッ、遠い昔の私の二つ名ですわ……」

 

「……道理で……!!(逃げ足が速いと思った!)」

 

 

 特別室まで捉まらなかったマザーのメタルスライムばりの逃げ足の速さに、今更ながらアベルは納得する。

 

 

 ――というか、マリアって……マリアさんと同じ名前なんだな……。よくある名前なのかな……?

 

 

「ウフフ」

 

 

 マザーは不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

「……マザー、では……」

 

「ええ、旅先で呪いが解けることを祈っているわね」

 

「ありがとうございます」

 

 

 アリアがアベルの隣に戻ると、アベルが手を差し出す。

 

 

「……アリア、行こう」

 

「……うん!」

 

 

 アリアはアベルの手を取り、二人は修道院を後にした。

 

 

 

 

「……お似合いだわ……。ああ、神さま、二人の未来に幸多からんことを……!」

 

 

 

 

 仲睦まじく手を繋いで去り行く二人の背に、マザーは祝福の祈りを送ったのだった。

 




さて、記憶が戻ったアリアと再出発です。
アベルとアリアは果たして、結ばれるのでしょうか!?

韋駄天のマリア……。
疾風のマリア・駿足のマリア等々、悩んだ末に結局韋駄天のマリアに落ち着きました。
韋駄天が通じるのかは不明だけどアベルには通じたのでヨシ(適当)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。